大和の部屋に曲者が入ってきた。言うまでも無く、京である。
(ふふふ、寝ている大和を襲うチャンスを私は逃さないよ。)
京は大和の布団にダイブする。京は布団をしっかり掴むが何故か手ごたえが無かった。
「ん?」
京は布団をめくると『ワンパターン回避』と書かれた張り紙の丸められた布団があった。
「してやられた―――――――!」
京の叫びが島津寮に響いた。
朝食時になり、大和たちは共に朝の朝食を摂っていた。京は朝食のカニコロッケのありったけのタバスコを掛けながら考え事をしていた。
(どうしたら大和は振り向いてくれるのだろう?)
そんな京を余所にキャップが隣に座っているゲンさんに頼みごとをしていた。
「ゲンさん、カニコロッケ一個くんね?」
「誰がやるか。」
「ちぇ。俺カニコロッケ大好物なんだけどな~。」
キャップがそう愚痴っているとゲンさんは何も言わずカニコロッケを一つキャップに譲った。
「ほらよ。」
「サンキュー。ゲンさんは優しーよなー。」
「勘違いすんな。やらねぇと何時までもうるせえから恵んでやっただけだ。」
「ゲンさんってもしかしてツンデレ?」
「なんだそれ?」
ゲンさんはツンデレの意味を知らないようだ。
「麗子さん、味噌汁お代わり。」
「あいよ。今日の味噌汁は由紀江ちゃんが作ったんだよ。」
「へー。おいしいよ、まゆっち。」
思わず吹いてしまう。
「そ、そそそそんなお世辞を私などが褒め言葉いただくなどもったいない!」
「いや、お世辞じゃないよ。まゆっちはいいお嫁さんになるね。」
大和が笑顔でそれを言った瞬間まゆっちはゆでだこになった。
「よ、よよよよお嫁さん!」
「やったなまゆっち!今夜から婚姻届のサインの素振り百回だ!」
松風は嬉しそうにまゆっちに言う。そんなまゆっちを見て、京は不機嫌な顔をする。
「(まずい・・・・)大和、私のコロッケ食べない?」
「いいのか?んじゃ頂くわ。」
大和は何の躊躇いも無く京のタバスココロッケを貰う。
「んぐんぐ・・・・っ!」
大和は顔を紅くしてしまう。
「京・・・・・・・・・そういや辛いのが好きだっけ。」
「うん。どうだった?」
「け、結構からすぎる。舌が痛くなってきた。」
「ちなみにこのタバスコ私の秘蔵コレクションのデストロイドソース!百万スコビルの美味しさだよ。」
「百万スコビル?」
「辛さの単位。タバスコが約二千五百スコビルだから百万スコビルは四百倍の美味しさ!」
「道理で辛いわけだ。結構いけるけど。」
クリスがタバスコのラベルの説明を読む。
「なになに、皮膚に付いたらすぐに水で洗い医師の診断を受けること。」
「もはや食べ物の説明じゃねぇ。」
松風がツッコム。だが大和は問題なく口に運んだ。
「食べてくと慣れるな。」
「それって舌おかしくなってんじゃね?」
今日は珍しく皆で川原を歩いていると百代が寄ってきた。
「おはよう、姉さん。」
「遅いぞ大和。」
そう言うと百代は大和の首に腕を回す。
「ど、どうしたの百代姉さん?」
「ここんとこ溜まってんだ。戦ってないから欲求不満なんだ。」
「そういや川神大戦がテレビ中継された挑戦者がめっきり減ったんだっけ。」
「そらあんな戦い見たら誰でも怖気づくわな。」
「それ以前に大和が勝ったことが問題だがな。」
ワン子が大和の言葉に相槌を打ち、ガクトが問題を指摘した。
「そういうわけだから今日は私と戦ってもらうぞ。」
「いや、流石に無理。ここ危ない。」
「なら川神院に―――」
「鉄心さんが許しません。それより姉さん、借金は?」
「・・・・・」
百代は反転すると脱兎の如く走り出した。
「逃がすか!びた一文でも持ってたら返済に回せ!」
大和は百代を追いかけ始めた。
下校しながらも京は大和のことを考えていた。
(モモ先輩は何かと大和に絡むし、ワン子やクリスは朝の修行をして大和との時間を過ごし、まゆっちは大和に弁当渡してる。わたしだけのけ者になってるよ。)
「京?」
「え?」
京は声を掛けられた方向を向くとそこには大和とライトニングの姿があった。
「珍しいな。こんなにボーっとして。」
「キー。」
大和の言葉にライトニングは相槌を打つ。
「ううん、なんでもないよ。」
「そっか。一緒に帰るか?」
「うん!」
京は上機嫌に答える。
京とは大和と並んで歩いていると、ふと大和の方を見る。
(そういえば大和、大分変わったよね。最初は私を毛嫌いせずに優しく接してくれて、困った時には助けてくれて、そして風間ファミリーできたっけ。)
京は昔を顧みた。
当時小学生だった京は学校からいじめを受けていた。周りからは毛嫌いされたが大和だけはそんなことはしなかった。回りは大和のことを『変人』と呼んだが大和はそんなヤツらに対しこう言った。
「俺の尊敬する人がさ、こう言ってたんだ。“人間は皆違う。一人たりとて同じ人間などいない。違うことを理解しないからこそいじめが生まれてしまう。”ってさ。」
その言葉には教師ですら舌を巻いた。
そんな矢先に担当していた金魚が死んだ。京は泣きながら埋葬しているとクラスの男子が京に死ねと言ってきた。だがそんな状況に偶然大和が駆けつけてきてくれた。
「命は尊いもの。誰一人として失っていい命なんか無い!」
大和はそう言い放つとクラスの男子を拳で倒していった。時折石を投げられることはあったが大和は投げ返すことはしなかった。額から血を流す大和に京は心配したが大和は逆に京を心配した。都は何でそんなことを聞くのかわからなかった。
「俺は傷付いてもいい。でも、守ろうと思う人が傷付くのは嫌なんだ。」
それは大和の師匠、クラウスの影響でもあった。その後、金魚を故意に殺した犯人が判明し、京は悪くないことが全員に知れ渡った。その日から京は大和に惚れた。
しかし六年前に急に大和は尊敬する人の下で修行すると言ってきた。当然風間ファミリーは驚きを隠せなかったが大和の決意ある目に負け、大和を空港で見送ることにした。京はそんな時でも泣いていたが大和は京の頭を撫でた。
「大丈夫。きっとまた会えるから。」
大和がそう言うと京は泣くのを止め、笑顔で見送った。
しかし大和がいない分自分への風当たりは少々悪くなってきた。そんな時キャップとモロが金曜集会を開いてくれた。これで寂しい思いをせずに済んだのであった。
「そういや京、俺がいなくなってからも大丈夫だったか?」
「ん?うん大丈夫だったよ。皆が助けてくれたからね。」
「そうか。よかった。実はさ、あのあと少し不安だったんだ。またイジメを受けるんじゃないかって。」
京はその言葉を聞くと嬉しかった。
(私のこと心配してくれたんだ・・・・・・・嬉しい//////)
京は頬を赤く染めた。
「ん?顔が赤いけど熱があるのか?」
「ううん、夕日のせいだよ。」
京は笑顔でそう答えた。