「おりゃ!」
「うわ~~~~~~~~~!」
休日の朝の島津寮、クリスは大和にボールの様に投げ飛ばされた。
「う~~~~~~~、やっぱり大和には敵わないな。」
「徐々に上手になってきているんだからそう落ち込むな。」
大和はクリスに手を差し出し、クリスは立ち上がる。
「すまないな、大和。あっ!そうだ大和、ちょっといいか?」
「なんだ?」
「実は日本の絵の展示会のチケットが二枚あるんだ。それで一緒に行ってくれないか?」
「いいけど・・・・・・もしかしてその絵って浮世絵の事か?」
「そう!その浮世絵という奴だ。筆で描いた感じではないが昔の日本人はコピー機を持っていたのか?」
「いやいやいや、違うから。アレは版画って技法を使ったものだから。」
「版画?」
「あー、ちょっと分かりやすく説明するとな―――――」
大和はしばらく簡単に版画について話した。
「なるほど。日本の技術は凄いものだな。」
「まあ複雑な部分を彫る技術があるからな。手先が器用って世界からも言われてる。」
「そういえばそうだな。日本の彫刻にも細かいのもあるな。仁王像もあんな大きいのをミスせずに彫れてるからな。」
「クリス、それも違う。」
「え?」
「アレ・・・・・・・・実はパーツごとに作ったのを一つにしているんだ。」
「そうだったのか!知らなかったぞ!」
「お前大和丸が好きだからなー。」
午後になってクリスト大和は一緒に美術館に来ていた。
「クリス、間違っても美術館では静かにな。話すときは小声だ。」
「うむ、了解した。」
二人は受付にチケットを渡し、中に入る。
「ほわ~~~~~。」
日本の浮世絵にクリスは眼を輝かせる。
「こんなにもすごいとは思わなかったな。だが・・・・・・何で切れているんだ?」
浮世絵によくある絵が切れている部分があった。
「それな、昔の人がちり紙とかに使ったんだ。」
「なっ!?」
「間違っても大声出すなよ。」
大和の言葉にクリスは口を塞ぎ、頷いた。
「昔はそんなに価値が無いと思われていたんだ。手軽に買えたからな。だが、今となっては価値は結構あるぞ。原画にも価値があるが。」
「原画?」
「そ。原画はここにある全ての浮世絵のベースとなったもの。原画があるから浮世絵があり、浮世絵があるから原画がある。二つは切っても切り離せない存在なんだ。」
「そうか。しかし日本の絵はなんとも風情があるな。」
「まあ、庶民の風景を描いているからな。他にも歌舞伎や相撲と言ったところもあるな。」
「昔の風景を写生してたんだな。」
「ああ。」
浮世絵を見終わった二人はお土産ショップで土産の品を見ていた。
「う~む、どれも欲しいが金が・・・」
「図鑑みたいなのにしたらどうだ?それなら今日見たヤツや他のも見れるぞ。」
大和は手にしていた浮世絵の図鑑を見せる。
「おお!それは良い名案だ!ところで大和、お前も買うのか?」
「ああ。けどこれは別の意味でな。」
「別の意味?」
クリスは疑問符を浮かべる。
「ちょっと知り合いで絵が好きな人がいるんだ。日本には来たがってんだけど家庭の事情で無理なんだ。」
「それは残念だな。」
「まあ本人は向こうでも見れる絵を鑑賞して楽しんでるよ。」
「そうか。」
クリスは浮世絵の図鑑を手にレジに向かった。
クリスは上機嫌に鼻歌を歌いながら大和と一緒に島津寮に帰っていた。
「今日は嬉しかったぞ、大和。日本の浮世絵の不思議な部分も教えてもらったしな。」
「それはよかった。」
「なあ、大和。」
「なんだ?」
クリスは頬を赤らめて言う。
「また・・・・・・・・・・こういう機会があったら一緒に行ってくれるか?」
「?・・・・いいけど。」
「本当か!本当に本当だな!」
「あ、ああ。てかなんでそんなにがっつくんだ?」
「い、いや、それはその・・・・・・・・・や、大和と一緒だともっと奥深いものを知れるからだ。」
「そうか。俺に出来る範囲で協力するよ。」
「う、うむ。頼んだぞ。」