いつもの通学路でまゆっちは大和にお弁当を渡す。
「あ、あの大和さん!こ、これどうぞ!」
「ありがと、まゆっち。」
「キー。」
大和はまゆっちの弁当を受け取り、ライトニングと一緒に礼を言う。その様子を見ていた百代は大和に話し掛ける。
「なんだ大和、まゆまゆに弁当を作らせているのか?」
「そんなんじゃないよ。まゆっちが自分から俺に作ってくれているんだ。それに美味しいからね、まゆっちの弁当は。」
「キー。」
ライトニングは大和の言葉に相槌を打つ。純粋な大和の言葉にまゆっちは顔を紅くした。それを見ていたクリス、京、ワン子は負けじと大和に自分の食べ物を分ける。
「や、大和!稲荷寿司を分けてやろう。少し買いすぎたのでな!」
「大和、私のウルトラデストロイドソースあげる!」
「アタシもランニングの補給用に持ってきたブドウ糖をあげるわ!」
(ワン子、葡萄と白砂糖でブドウ糖じゃないと今度教えてやる。)
「ブドウ糖ってそういうのじゃないから。」
「え?」
クッキーがワン子にツッコミを入れた。そんな光景を見ていた風間ファミリーも加わってくる。
「面白そうだな!俺も葱やるぜ!」
「よーし!俺様は特性プロテインだ!」
「それじゃあ僕はグッキリマンチョコ。シールは抜いた残りだけどね。」
「よし、なら私はこの焼きそばパンをやろう!」
「あはは・・・・・皆ありがとう。」
大和は少し苦笑いする。
昼休憩になり大和は気分転換に屋上で食べようと扉を開けた。先客の姿に見覚えのある大和はその者の名を口にした。
「井上君?」
「ん?おー直江じゃないの。どうしたのその荷物?」
「皆が分けてくれた。でもワン子がちょっと残念。」
「どして?」
「これ。」
大和は葡萄と白砂糖を出す。
「本人がブドウ糖と思っているものです。」
「本人の知識が心配だな。」
「うん。」
「キー。」
大和の言葉にライトニングも同情する。
「ライトニングにでも分かるくらいってことだな。」
「まあね。隣いい?」
「別に構わないけど。」
「お邪魔します。」
大和は井上の隣に座り風間ファミリーから貰った物を口にする。
「お前さんのところは気楽で過ごしやすそうだな。」
「そういうそっちは何かあったの?」
「聞いてくれるか?」
「俺でよければ。」
「助かるわ。実はウチのユキなんだがな、また新しい童話を作ったんだ。」
「ほうほう。」
「だが本心がハートフルといいながらも全然ハートフルじゃなかったんだ。毎回毎回そのレベルが上がってきたんだ。」
「大変だね。」
「同情してくれてありがとよ。」
準は大和に礼を言う。
「あっ!」
大和は思い出したかのように懐を探る。
「ちょっと頼まれて欲しいことがあるんだけどいいかな?」
「ん!なんだ?」
「これ。」
大和は封をしてある手紙を準に差し出す。
「コレを英雄君に渡して欲しいんだ。」
「いいけど・・・・・・お前さんが直接渡せばいいんじゃないのか?」
「表立って話すとそっちのクラスがね。」
「ああ、成程。」
準は大和の言いたい事を理解した。S組はF組を軽視する傾向があり、大和が英雄と話していると何かイチャモンをつけられると思ったからである。
「わかったよ。でも中身は何なんだ?」
「それはちょっと言えないな。込み入った事情があってね。」
「ふーん。ま、お前さんなら大丈夫だろ。」
準はそう言うと大和から手紙を受け取った。
準がS組に戻るとあずみと共にいる英雄の姿があった。
「おーい、英雄―。」
「む、なんだ井上。我に何か用か?」
「大和からちょっと預かりもんがあるんだ。」
準は英雄に手紙を差し出す。
「おいハゲ、英雄様に変なもん渡そうって魂胆じゃねーだろーな。」
「ちげーよ。何でも他人には言えない内容みたいだぞ。それとハゲじゃねえ。」
「どうしますか、英雄様。」
あずみは英雄に問う。
「ふむ・・・・・・・・王たる者、下々の言葉を聞くのもまた王たる者の勤め。わかった、受け取ろう。」
「さすが英雄様!それでこそ王の中の王です!」
あずみは英雄を褒める。
英雄が封を開けると中には手紙が入っていた。一枚目には『事前に読んで下さい』と書かれていた。英雄はその手紙を読んだ
“拝啓、九鬼英雄様
突然このような形で手紙を渡すことを許して下さい
この手紙の本題に入る前にこのことに注意してください。
まず始めに、これは貴方の身体のことに関する内容であり、コレを自分が最も信頼する人物以外には公開しないで下さい。
次にこの内容の返答は手紙、もしくは使者を使って何時、何処で話すかを決めてください。また、同席する人にいたっては先程申し上げた最も信頼する人との同席を認めます
そして最後に、コレを読む時には覚悟をして下さい。内容は貴方にとって今後に関わるといっても過言ではないほどの内容です。“
「ふむ・・・・・・」
英雄は誰にコレを一緒に読むか考えた。真っ先に出てきたのは家族である揚羽であった。
「井上、礼を言おう。コレに関してはまた使いとして使う。」
「へいへい。中身がなんだか知らねえが、そん時になったら呼んでくれ。」
準はそう言うと自分の席に戻った。
九鬼家にて英雄は揚羽、あずみ、ヒューム、ステイシー、李の五人と一緒に防音処置が施されている部屋にいた。揚羽は大和からの手紙を一緒に読んだ。
「ふむ・・・・・・・・英雄、本題の文は読んだのか?」
「いえ、まだ読んでいません。他のものに知られてはいけないと思いまして。」
「そうか・・・・・・・・ヒューム、この文をどう思う?」
「この文章から誠意は伝わります。ふざけた文ではないのでしょうが・・・・・・」
「流石に私も疑っちまうわ。」
「ですね。」
ステイシーの言葉に李は相槌を打った。
「それで英雄、どうするんだ?」
「・・・・・・・・読みます。わざわざこんなことまでしてくるのであれば。」
英雄は手紙の本題の方を黙って読む。
最初の方では何の変化かもなかったが、途中から驚愕し目を大きく開けたまま内容を読み進めていく。
揚羽たちは英雄を心配する。
英雄は手紙を読み終えるとそれを机に置き、席を立つ。
「英雄様、どうかなさいましたか?」
「あずみ・・・・・・・・・・すまないが今は一人にしてくれ。少し考えたいのでな。」
英雄はそう言うと部屋を出た。
「揚羽様、その手紙にはなんと書かれているのですか?」
「うむ、読み上げるぞ。」
ヒュームの問いに揚羽は自身で手紙を読み上げる。
“拝啓、九鬼英雄様
この手紙を読むということは覚悟が出来たとお見受けします。しかし、再度申し上げますがこの手紙を読む時は覚悟してください。この手紙の内容は貴方の人生に大きく関わる内容です。覚悟が出来たのであれば以下の本題をお読みになってください。
では、単刀直入に問います。
もし貴方の肘を治せると医者がいるとしたら、どうしますか?
これは冗談では無く、本気の話です。私の知人に医者がいます。その人の腕は私が保証しますが、絶対治るとは言い切れません。これは悪魔で可能性の話です。
元紐育、ヘルサレムズロッドには現代医療を超える医療技術が存在します。表立って知られていないのは誰もこの話を信じようとしないからです。誰もこんな話を信じようとは思わないでしょう。しかし私の知人に、指を刃物で切断された人がいます。その人は切れた指をその医者に縫合してもらい、普通に動かせるようになっています。
この話を信じてくれるのであればいくつか条件が必要となります。
第一に英雄君、貴方の医療カルテが必要です。現在肘がどうなっているのかという明確な情報が無ければ治療できません。また肘の状態によっては治せるか治せないかはわかりません。糠喜びになってしまう可能性だってあります。
第二に、治療を受けるのであればヘルサレムズロッドまで足を運ばなくてはなりません。理由は、その医者はワケあってヘルサレムズロッドから離れることは出来ません。
第三に、成功した暁にはこちらが指定する口座に融資をしていただきたいのです。金額はそちらにお任せします。しかしこれはあくまで成功した場合です。失敗などの場合においては融資を求めません。
九鬼英雄君、君が絶望に落ち夢を諦めてしまったことは一子や揚羽さんからも聞いています。正直私もこの話を持ち出すかどうか悩みました。この話は君にとっても人生に関わる決断でもあり、私にとって君を失望させてしまうものであります。しかし、私は君の助けになりたいと思いました。君が普段から肘をかばっている姿を見る度に助けたいという私の本心からの気持ちが突き動かされます。
何度も言うようですがこれは人生に大きく関わる決断です。僅かな希望に縋るか縋らないかは君次第です。返答は何時でも構いません。待っています。
直江大和より“
『・・・・・・・・・・・・』
揚羽が読み終えると一同静寂に包まれた。
「・・・・・・・私は英雄様の元に向かいます。」
あずみはそう言うと一礼して部屋を出た。
「・・・・・・・皆は、この話をどう思う?」
揚羽が問う。
「私は正直信じ難いです。しかし・・・・・・」
ヒュームは言葉を積もらせる。
「正直アタシもこんなロックな話は生まれて初めてです。ましてや場所が・・・・」
「辺境の極みですからね。」
ステイシーの言葉に李は相槌を打った。
「ああ。私も信じれない・・・・・・・・・・・が、私は彼と対面しているからわかるが彼はちんけな嘘をつく男ではない。それにこれは・・・・・」
「英雄様の問題・・・・・・・・・ですか?」
ヒュームの言葉に揚羽は頷く。
「英雄がどう答えを出すかだな。」
一方英雄は中庭で、雲一つ無い星空を眺めていた。
「英雄様。」
「っ!あずみか・・・・・・」
英雄に声をかけてきたのはあずみであった。あずみは英雄の隣に立つ。
「英雄様はあの話を信じるのですか?」
「・・・・・・・・・・正直、信じれん。だが・・・」
「?」
「直江・・・・・・・・・大和のあの手紙の言葉には一度たりとも嘘の記述はなかった。アイツは自分ではなく誰かのために動く男、それはお前も知っているであろう。」
「・・・・・・・・はい。」
あずみは川神大戦のきっかけになったあの日を思い返す。大和は自分のためでなく委
員長のために動いた。それが彼の人柄である。
「決めたぞ、あずみ。」
「はい。」
「我は
大和の話しに乗る。」