静岡県御殿場北富士演習場。そこでは自衛隊の演習が行われていた。一台の戦車が所定の位置の目標をロックし、砲弾を放った。
「命中!」
戦車を指揮する隊長が目標をズームするとそこには人がいた。
「待て!攻撃止め!標的空域に人がいる!」
「なんだアレは?」
そこにいたのはコートの下に紅いシャツを着た長髪の女性の姿であった。
「この間の続きだ。」
女性は戦車まで跳ぶと拳を振るい戦車に損傷を与える。
「うわぁっ!」
「リアクティブアーマーが爆発しただけだ!」
女性は戦車前方に拳を振るうと上に跳び、戦車の上部を拳で突き、変形させる。そして止めと言わんばかりに戦車の前方の車輪を壊し、女性は戦車から離れる。戦車は爆発する。
爆発した戦車から距離を取った女性に通信が入る。
「三時の方向に敵影四、96Wです。」
「対処が早いな。」
自衛隊の96Wが女性に向け機関銃を発砲する。
「実戦でもその判断が欲しいものだ。」
女性は銃弾の雨の中をためらいも無く進む。そして女性が96Wに着いたと同時に四つの爆発が起こった。
「お見事です、三佐。」
「もう階級で呼ぶな。」
「申し訳ありません。慣れなくて。」
もう一人の女性は緑色の機械の目を眼帯で隠した。
「評価試験はいかがなものでしたか?」
「見ての通り良好だ、帰還する。誘導を頼む。」
「了解。」
もう一人の女性はゴスロリ服を着ていた。ゴスロリ服の女性は空を見上げる。
「霧が出てきたな。」
ゴスロリ服の女性が見上げる遥か先には、人工衛星が二人の姿を監視していた。
朝の川神院。百代は枕を抱きながらゴロゴロと布団の上を転がっていた。
「あ~、退屈だー。誰か挑戦者来ないかな?どっかで強くて長持ちするヤツ以内かな~?世界ランカーは粗方倒したし、町の不良も来なくなったし。どっかに手ごたえのある奴いないのか?」
百代はそう言うと立ち上がり服に着替えようとシャツを脱いだ瞬間であった。大和のことを思い出す。
「そうだ!大和がいるではないか!あ、でもアイツ二回目はしないからな~。」
そこへノックもせず鉄心が百代の部屋に入ってくる。
「百代、百代はおらんか?」
「開けてから聞くなジジイ!うら若き乙女の部屋だ!開ける前にノックくらいしろ!」
百代は鉄心が入って来る前に素早く着替えていた。
「なんじゃもう着替えは終わったのか。」
「確信犯かよ!」
「その確信犯の使い方は誤用じゃよ!」
「そうだジジイ、たまには私の相手をしろ。本気の試合をしないでいると腕が鈍ってしまう。」
「ワシとお前が本気でたたこうたら町中火の海じゃ。二秒くらいでよければ相手してやらんでもよいが?」
「十秒!」
「川神市長に安全対策を届け出て許可を貰わねばならん。三秒、それ以上はまからん!」
もはや秒単位の戦って何処の次元?
「仕方ない、三秒で勝負だ!」
「よいじゃろう。ただし条件がある。」
「条件?」
「ワシが勝ったら今日おぬしは一日スクール水着で過ごすのじゃ!」
「私が勝ったら?」
「その時はワシが涙を呑んでワシがお前のスクール水着を着よう。」
「嬉しそうな顔をするな!」
鉄心、変態である。
「さぁ、かかってくるがよい!」
「・・・・・・・その条件、本気で戦う気無いだろ?」
「・・・・・・」
図星であった。
「止めだ止めだ!三秒じゃ返って欲求不満が溜まるー。」
そう言って百代は外に出る。
「全く、百代の戦いたい病には困ったものじゃの。武道を極める者、衝動を抑えることも極めて欲しいものじゃが。・・・・しまった!肝心なこと伝えるの忘れておった!」
誰もいない海に一隻の船が待機していた。
「ねー、まだー?全然釣れないよー。」
「この辺りで合っている筈なんだけどなー。潮で流されちゃったかなー?」
水着姿でマグロ用の釣竿を持っている辰子は退屈し、スマホを持っている天使はモニターのGPSを見ていた。
「天、暇ならオイル塗りな。」
胸部の水着を着けていない亜巳が天使にオイルを塗るように命令する。
「えー、手がベタベタするからヤなんだけどなー。」
「お!それなら俺が塗ってやろうか?」
操縦席から釈迦堂が顔を出す。
「私に豚と言われて嬉しいなら奉仕してくれてもいいですよ、師匠。」
「あー、俺そっちの趣味はねーなー。」
その時、辰子の竿が反応した。
「あー、引いてるー!よーし、タッちゃんの一本釣りだー!」
辰子はリールを回すと海の中から隆平が姿を表した。
「大量だぜ、姉貴!」
すると海の中から浮き輪の付けられ物が次々と浮上してくる。
秘密基地で百代はソファーに寝転がっていた。掃除をしているクッキーが百代の注意をする。
「あー、ヒマだー。」
「ダメだよ百代。若いもんが昼間っからゴロゴロしてちゃ!」
「いーんだよ!若さの無駄遣いも若さの特権なんだから。」
そこへ大和が入ってきた。
「お帰りなさい、大和。何にする?」
「炭酸水で。」
「はい。血行良くするよ。」
「キー。」
「はいはい。ライトニングにはバナナだね。」
大和は炭酸水をクッキーから貰うと栓を開けて飲み、ライトニングはバナナをもらい食べる。
「なんだ大和疲れているのか?」
「姉さんが借金を返してくれないから疲れが溜まってね。」
「ほう、いい度胸だ。罰として―――」
「大和、ここにいたのか。」
百代が大和に言おうとした途端にクリスが扉を開けて入ってくる。その瞬間、百代は不機嫌な顔になる。
「どうしたんだ、クリス?」
「とにかく来い!一緒に大和丸のDVDを見よう。」
「待ってクリス、別に今じゃなくても・・・」
「一番いいシーンで止めてあるんだ!」
そう言うとクリスは大和の腕を引っ張って秘密基地から引っ張り出した。ライトニングもそれに付いて行った。
「相変わらず慌しいね。」
そんなクッキーとは対照的に百代はふてくされた。
百代は島津寮の前に来るとキャップに声を掛けられた。
「あれ?モモ先輩。なにやってんの?」
「別に。」
「んなところ突っ立ってないで中入れば?」
キャップが促した時、大和が島津寮から出てくる。
「あれ?姉さん。」
「っ!」
「そういやさっき言うとしてたのって何?」
「ああいや、別に大した用事じゃないが・・・・」
百代が言おうとした時、京が大和に跳び付いてくる。
「大和―!」
「のわっ!何急に!」
「愛する大和に抱きつくのに何の理由が必要か!いえ必要ではない!」
「漢文の応用をここでするな!反語否定でも説得力無いから!」
「そんな大和も好き!そして大和とデートするんだったらもっと素敵!」
「いやないから!ちょっと用事あるし!」
「もしかして大和私のことが嫌い?」
「いや、そうじゃないけど・・・・」
「じゃあ結婚して!」
「お友達で!」
そんな光景を見ていると百代は大和から視線を外した。
「モモ先輩、大和になんか用があったんじゃ?」
「いや・・・・いい。」
キャップの言葉に百代はそう言うとその場から去った。
百代は気分転換に最寄のハンバーガーショップでハンバーガーを食べているが、その量はうら若き乙女が食う量とは到底思えない量であった。
「タイミング悪いよなー。ま、たまにはこういう日もあるか。いや、たまにか?最近ずっとこういう感じじゃないか・・・」
百代が呟いていると、大和が道中を通っているのを見かけた。
「おっ!やっと京から解放されたか。たまには奢ってやるか!」
百代が声を掛けようとした瞬間、松風が大和に声を掛ける。
「おい大和!」
「ま、松風いけません!いきなりそんな大声で!」
「だってまゆっちが気遅れして声掛けねえから。」
「私はあだ心の準備を整え―――」
「どうしたの、まゆっち?」
大和はまゆっちに気付いた。
「な、なんでもありません!今松風が勝手に!」
「今後に及んで何ビビッてんだよ?腹決めちまえよ。」
まゆっちは顔を赤らめながらも、大和に弁当を差し出す。
「あ、あのこれ!今日はお休みなんですけどお天気がいいから今日はお外でお弁当でもと思って作ったらやっぱり作りすぎてしまったのでもし良かったら食べていただけませんでしょうか?」
「ありがとうまゆっち。いつもゴメンね。」
そう言うと大和はまゆっちから弁当を受け取る。
「い、いえ・・・・そんな・・・・・・それで・・・・・あの・・・・あの・・・・」
「?」
まゆっちは顔を真っ赤にし、勇気を振り絞って話す。
「もし良ければなんですが一緒に!お弁当食べやってもらえないでしょうか!松風と!」
「俺とかよ!」
松風がツッコム。少しずれてしまったまゆっち。
「うん、いいよ。」
「あ・・・・・ありがとうございます!」
「ほらなー?言ってみるもんだろー。」
「あ、はい。」
「よかったなー、まゆっちー。」
まゆっちと大和は共にその場を去って行った。その光景を百代はハンバーガーを食べながら見ていた。
百代はふてくされながら川辺にいた。
「なんだよ大和・・・・・・昔はあんなに一緒にいたのに・・・・・」
百代は行き場のない感情をただ溜め込んでいた。
翌日の秘密基地。キャップが依頼を持ってきた。
「『心の乱れは服装の乱れ!ひいては風紀の乱れ!このような物が学園に蔓延するなど言語道断!此度の頼みはこのいかがわしい物の流通元を成敗することである!』と言うことだ。」
「要約するとエロ本狩りをしろと?」
「ま、そうだな。最近この手の本が学園に出回ってるらしいぜ。最近持ち物検査で輸入物のエロ本が摘発されてんだとさ。」
「はぁ・・・・・ガクトとモロは?」
「“エロを摘発することは信念に背く”だとさ。」
「信念をそこで使うのか・・・でもまぁ、この国の改革が急すぎるのが原因と見ていいんじゃないのか?」
「ダメよ!エッチな物は絶滅するべきよ!この依頼、必ずやり遂げてみせるわ!」
「ワン子、何でそんなにやる気なのか分からないが急な改革ほど国が滅びる魁なんだぞ。それに、俺たちの歳だと性行為への感心が高く、性欲が最も高いって前に本で読んだことがある。」
「じゃあ大和、私と子作りして。」
「お友達で。」
京の言葉にいつも通りの対応をする大和。
「それにだ、強い抑圧は時に爆発的暴走を生む。」
『?』
大和の言った言葉に一同疑問符を浮かべた。
「簡単に炭酸水で例えよう。炭酸水は振ると中の酸素が外に出ようとするだろ。アレがもし、同じ体積でありながらも含まれる酸が十倍だった場合、発生する量も十倍になると仮定する。一定量に耐えられるペットボトルも十倍の量には耐えられない。じゃあどうなるか・・・・・・・キャップ、分かるか?」
「ん~~~~~~~~・・・・・・風船みたいにパーン、てか?」
「その通り。今回の改革は正にそれだ。ま、理解を得るのは無理だろうけどね。」
「大和、ワン子が燃えているのはそこじゃなくてかなまら祭の写真がワールドワイドで公開されているからだよ。」
「あらま。」
クッキーはワン子がやる気を出す理由を大和に説明する。本人が嫌がっていた展開を本人が作ってしまったようだ。
「なんでワン子が俺より目立ってんだよ!俺のはないのか!」
「私の純情返してー!こうなった以上、責任取ってよね大和!」
『っ!』
ワン子の言葉に百代たちは反応する。
「なして俺!」
「大和の御神体を見せたからじゃないの?」
「わけわからん。」
「もう大和に貰ってもらうしかないわー。」
「おい、自分のはないのか!」
クリスがクッキーに聞くとクッキーはノートPCを手に取り出し、皆に見せる。
「皆のもあるよ。」
PC画面に出された写真には授かり飴を舐めている写真があった。クリスは椅子を持ち上げ、パソコンを壊そうとするがクッキーが押さえる。
「放せー!」
「パソコンを壊してもデータは消えないよ。」
「ワールドワイドでの羞恥プレイ!ああ、燃える!」
「な、なんと恐ろしいことに!」
「ああ~、知り合いがAVデビューするとこんな気持ちなんだろーなー。」
「俺のはないのかよ!俺も喰ってたのにずるいぞー!」
キャップだけズレていた。大和は椅子から立ち上がる。
「あれ?大和どうするんだ?」
「学校に出回らないようにするだけでいいんだろ?だったら見つけて家で管理してもらうように売人に呼びかけるだけだ。」
「エッチなのはいけないわ!」
「まあまあ、個人の自由を奪ったら民主主義じゃなくなるから。それに、本を持つのは公共の福祉、つまり周りの迷惑じゃないでしょ。俺は足で探すわ。」
大和はそう言うと秘密基地を後にした。
大和は町中の知っている人に声を掛けるも誰一人として密売人が誰なのか知らなかった。捜査を続け、気付けば夜になっていた。
「収穫無し・・・・・・・・・ま、血の眷属でもそうだから仕方ないか。」
大和がそう呟いていると電話が入った。
「もしもし?」
『大和君かい?』
「宇佐美さん!どうしたんですか?」
『金の動きとHL支部の情報から八割の確立になったよ。』
「そうですか。で、研究所の場所は?」
『全く。潜入調査した場所は既に蛻の殻。』
「そうですか・・・・・・」
『それよりエロ本の摘発をしているんだろ?』
「ええ。でも収穫無しです。」
『そんな君に朗報だ。学校の生徒で写真撮影をする生徒が本を秘密裏にゲットしているそうだ。』
「写真・・・・・・・・・・・誰か分かりました。」
『うん、彼は分かり易いからね。じゃ、頑張って。』
大和は電話を切り、ヨンパチを探す。
「さーてと、アイツは・・・・・・・・いた。」
探すまでも無くヨンパチの方から来た。
「よっ、大和!」
「ヨンパチ、丁度よかった。お前に聞きたい事があるんだ。」
「俺も会いたかったんだー。いいの仕入れたんだぜ!」
用意ってヨンパチは紙袋の中を見せるとそこには外国のエロ本があった。
「どーだすっげーだろ?」
「ヨンパチ!」
大和はヨンパチの肩を掴む。
「それを誰が売っているか教えてくれ!」
「極秘ルートを言えるわけないだろ。」
「いいから言え!」
大和の威圧に押されたのかヨンパチは教える。
「あそこでゲームやっているやつだよ。スッゲーつえーの。」
ヨンパチが指差す方を見るとゲーセン内には紅いツインテールの女がいた。
(あの髪・・・・・・まさか!)
大和には思い当たる理由があった。大和の視線に気付いたのか赤髪の女はその場を去ろうとする。大和は気付かれないように赤髪の女を屋上から尾行する。
「さて、ライトニング。」
「キー。」
「コレを姉さんたちに。俺の服にGPS仕込んでるから。」
「キー。」
大和はライトニングに携帯を渡すと、ライトニングは百代たちがいる方へと向かった。
大和はしばらく尾行をすると港に辿り着いた。人気の無い港は取引にはうってつけであった。
「あそこか。一旦戻ってからワン子たちと・・・・っ!」
大和は後ろから気配を感じ取り一気に後ろにいる奴から距離を置く。
「ほ~う、いい反応してんじゃねぇか。だが後ろは気付いてっか?」
「しまっ!」
大和は後ろから腕を取られると、そのまま船内に入れられた。
「な、あん時のヤツだろ?」
「言われてみれば似てるような?」
「私憶えてるよー。可愛かったから気になってたんだー。」
「小遣い稼ぎのつもりがとんだ物見つかっちまったな。」
天使、亜巳、辰子、竜兵の順に口を開く。
「貴方達はあの時、廃倉庫で襲ってきた連中か。」
「憶えててくれたんだー。」
「いきなり攻めてこられたらいやでも覚えます。そちらの青い髪の女性、お名前は?」
「あ、私のこと?私の名前は板垣辰子。よろしくね。」
「バカ!教えんじゃないの!」
「まあいいじゃねぇか。冥土の土産に名乗っても。俺の名は釈迦堂形部。んでこっちのチンチクリンが板垣天使。名前の方は気にすんな。んでこっちの赤紫髪が板垣亜巳。そんで最後のこの男が板垣竜兵だ。」
「それはご丁寧にどうも。わたくし、直江大和と申します。以後お見知りおきを。」
「これはどうも。けどこれから死ぬ人間の名前を覚える義理はねーんでな。」
「そうですか。ところで貴方達は密輸犯ですか?」
「「いんにゃ、何でも犯だ。頼まれりゃ何でもやるぜ。どうだ直江君?雇ってくれるか?」
「丁重に断りします。」
「そうか、残念だ。お客じゃねぇってことは敵ってことだ。いいもんプレゼントしてやるよ。」
そう言うと釈迦堂はエロ本が入った木箱の中を探り、機関銃を取り出す。
「銃!」
「そうだ。エロ本はただの梱包材だ。」
「どうせ売れるなら梱包材も売れた方がいいからね。」
「会ったばかりで悪いがお別れだぜ。」
釈迦堂が銃を向けた瞬間、大和は中を蹴り上げるとポケットに入れていた。仕込み指輪を取り出し、右の人差し指に嵌め刃を出す。
「我流血闘術、血の鎌(サイブデス)」
大和は血の鎌で機関銃を真っ二つにする。
「てめっ!どっから武器取り出しやがった!」
釈迦堂が大和に気を取られた瞬間、ワン子たち四人が入ってきた。
「皆、早くない!」
「どうせ聞き込みするなら大和と回ろうぜってオラとまゆっちで大和の後を付けてきたんだよ。」
「そしたら何故か皆さんと合流してしまいまして。」
「大和とは私と一緒に回るのって言ったら大和がその女に付いて行くのが見えたから!それとライトニングが教えてくれたし。」
松風、まゆっち、京が説明をする。
「なんてこったぁ、気を消して近づくとはなぁ。」
釈迦堂が後ろを振り向いた瞬間、ワン子は釈迦堂の存在に気付いた。
「っ!あ・・・・あなたは!」
「よぉ、大きくなったな、一子嬢ちゃん。」
釈迦堂が手を上げた瞬間、MK3A2手榴弾の安全ピンを外していた。それに気付いたときには安全ピンが床に落ちていた。そしてその刹那、船は爆発した。
釈迦堂たちは少し離れた場所に着地していた。
「大丈夫かお前ら?」
「いきなりは勘弁してくださいよ。」
「服がこげちゃうぜー!」
「あーあ、燃えちゃったねー。」
「まっ、どうせ予備の分だ。クライアントはおこりゃしねぇだろ。」
「こっちは怒ってっけどな!」
『っ!』
釈迦堂たちが大和の声のする方を向くとそこには四人を抱きかかえている大和の姿があった。
「流石に二度は喰わないから。」
「釈迦堂さん、喰らわないわよ!」
「知っているのかワン子?」
「釈迦堂形部、川神院の元師範代よ。武道に対する考え方が間違ってて破門をされたの。」
「酷い言われようだな。何も間違っちゃいねぇ。力こそが正義って当然の生き方をしているだけだ。こいつらそこんとこ分かっているぜ。」
「まさかその人たちに川神流を!」
「硬ッ苦しい本家よか上達が早いぜ。ちょっと見せてやろうか?」
「長女板垣亜巳!」
「次女板垣辰子!」
「長男板垣竜兵!」
「そしてウチが三女の板垣天使だぜ!」
「Angel?まゆっち!あいつエンジェルって言ってぜ!今、自分のことAngelって!」
「いけません松風!たとえ思っていても面と向かって言うのは失礼です!」
どちらかと言うと、それを堂々と本人の前で言うまゆっちの方が失礼である。
「まゆっち、世の中には痛い名前、通称“痛名”が存在するから。」
「成程!」
「ちなみに天馬と書いてペガサスだったり、炎鳥と書いてフェニックスって名前もある。けど、その名前絶対大人になったら改名手続きする。普通に呼ばれたいか、お前ら?」
『絶対無理!』
大和の言葉に口を揃えるワン子たちであった。
「てめぇら、よくも馬鹿にしてくれたな!川神流ゴルフ護身術の餌食にしてやる!」
「うーん、女性を殴るのはちょっとなー。」
大和が考えていると電話が入った。
「ん?ザップさんからだ。ちょっと失礼。」
大和はザップからの電話に出る。
「もしもし、何の用ですか、人間の屑。」
『いきなりそれか!』
「当たり前でしょ!かなまら祭りで恥をかいたのこっちなんですから!」
『リオのカーニバルみたいなもんだろ、日本の祭りは。』
「ちげーよ!全然ちげーよ!てかなんですか?あれですか?借金でまた首が回らなくなりましたか?」
『そんなんじゃねーよ。オルトロスの件でだ。前に俺たちを襲ってきたヤツらのオルトロス版が俺に襲い掛かってきやがった。』
「下のザップさんは亡くなりましたか?」
『なるか!』
「チッ!」
『舌打ちしたろ!今舌打ちしたろ!』
「気のせいですよ。ザップさんの下のザップさんが亡くなって欲しいなんて口が裂けても言えませんよ。今度あること無いことK.Kさんに言って電撃拷問地獄に合わせたいなんて思っていること口が裂けてもいえませんよ。」
『言えないって言っておきながら言っているじゃねーか!』
「あーもう、うるさいですね。で、それがどうしたんですか?」
『たく・・・・・・・・・・まあいい。んでそいつらを斬ったんだが胴体を縦に真っ二つしねーと死なねーんだよ。』
「そんだけで死ぬってヤワですねー。」
『まーな。だがその分、機動性とか増してっから気をつけろよ。あとそれ以外の方法で殺そうとなると燃やすしかねぇ。足とか斬ってもすぐ再生すっからよ。』
「へーい。」
大和はザップとの会話を終え、電話を切った。
「待たせてすまない。」
「普通に対処するな!こっちが対処しづらい!」
「まーまー、そういう時期だから。」
「どーいう時期だ!」
天使は肩で息をする。
「天、アンタノリツッコミしすぎよ。さすがのアタシもあのカオスには驚いたけど。」
亜巳の言葉に釈迦堂たちは頷いた。
「ま、気ぃ取り直して・・・・・・・・・・死ねや。」
釈迦堂はいきなり大和に銃を向け発砲する。
「はっ!」
大和が血闘術で防ごうとする前に百代が大和の前に立ち、大和に向かってくる弾丸を気を込めた中指で弾き返した。
「百代姉さん!」
「奥義・川神流デコピン!」
百代は釈迦堂に向かい走り出す。
「よくも大和を持て遊んでくれたな!大和をおもちゃにしていいのは私だけだ!」
百代は釈迦堂に向け拳を振るう。百代の拳が釈迦堂の顔面を捉えるかと思ったその時であった。百代の拳が横から入ったきた手によって止められた。
「なに!」
「久しぶりだな、百代。」
「あ、貴女は・・・・」
「そんな!」
「まさか・・・・どうして・・・?」
「知っているのか?」
クリスはまゆっちに尋ねるとそれに答えるかのように京が口を開く。
「あれは・・・・・元四天王、橘天衣!」
何故彼女が現れたか分からない状況に戸惑う一同。だがその時大和は別の気配を感じていた。
(数は・・・・・6、7・・・・・いや15!まずい!)
大和が気づいた気配は百代たちだけでなく、釈迦堂たちにも気付かれた。
「なんだ、この気配?」
釈迦堂が辺りを見回すと周りには十五匹のオルトロスが取り囲んでいた。
「犬?にしちゃ・・・・・・・・顔が二つだよな。」
釈迦堂はオルトロスの姿を見たまま口にする。
オルトロスはまるで微笑むと下顎から口が裂け、顔を半分に割った状態になり、首を挟んだ谷の部分に大きな口が出てくる。
「な、なんだこいつら!」
一同驚きを隠せなかった。
「お前ら・・・・・・・・一回しか言わないからよく聞け。」
「大和さん?」
まゆっちは大和の言葉に疑問符を浮かべる。
「逃げろ!」
大和の言葉を合図にオルトロスの一匹が大和に襲い掛かってくる。
「我流血闘術、断罪の血鎌(ファウキュウレデュサグディラコンダネーション)」
大和は断罪の血鎌を横一線に振るいオルトロスの頭二つを斬る。
「さあ、始めようか!クソ犬!」