金曜集会が行われる秘密基地では百代を除いた風間ファミーが集まっていた。
「しっかし大和の奴ヒーローだったんだな。」
「でもよ、なんで俺らに隠してたんだ?」
「それは秘密にしておくほうが僕たちを守ることに繋がるしそれにそっちの方がカッコよくない?」
「それもそうだな!んで大和は回復するまでしばらく休まないといけねぇから皆で変わり番子に介抱してやっか。」
キャップたちの話を聞かず風間ファミリーの女子達はソファーに座ってあの時の羞恥を思い出していた。
『うわーん!大和―、私好きだったのにー!』
(あ、あの時思わず言っちゃったよ~!)
『じ、自分も愛していたぞ!』
(じ、自分はなんという事を言ったのだ!あんな土壇場で大和に告白するなんて!)
『大和さん、私も大和さんのことが好きです!』
(わ、わわ私如きが大それたこと言ってしまいました!)
(まさかここまで大和がライバルを作っていたなんて!油断出来ない!)
四人とも睨み合いになってしまっている状況。その光景にキャップたちも恐怖する。
(す、すげぇ恐ぇ・・・・・)
(俺たち、この部屋を出てもいいのだろうか・・・・)
(でも出たらなんか嫌な予感が・・・・・)
三人もその場に留まる以外他になかった。
「あ、あたしちょっと大和の様子を見にっ!」
ワン子が立ちあがり部屋から抜け出そうとするところをクリスト京が睨みつける。
(犬の分際で出すぎた真似を!)
(大和には近づかせない!)
「な・・・・・何でもないです。」
ワン子は諦め座ると京とクリスは微笑み、まゆっちは胸を撫で下ろす。
「あっ!そうだ!ちょっと散歩に!」
クリスが続きを言おうとした瞬間ワン子、京、まゆっちが睨みつける。
(お前いつも散歩なんか行かねえだろうがコラクリキチ!)
(大和のところに行くつもりでしょ!)
(抜け駆けは許さない!)
「ま・・・・またにしよう。」
「あー、あのちょっとお手洗いにっ!」
まゆっちをワン子、クリス、京が睨みつける。
(騙されないわよ!)
(自分の目は不死穴ではない!)
(おとなしい振りしたなんてふしだらな!)
「だ・・・・大丈夫みたいれふ。」
まゆっちは震えながら座る。キャップたちのその修羅場に恐怖し、モロに関してはガクトに身を寄せていた。
時計の秒針は一秒、また一秒と動く中、四人は睨み合いをしていた。
(先には行かせない!)
(でも先に動いたらやられる!)
(でも行きたい!)
(こ、困りました!お手洗いにも行けません!)
まゆっちだけズレていた。
(怯むなまゆっち!みんなまゆっちが一歩リード警戒しているのを警戒しているんだ!)
(そうなのですか松風?)
(おうよ。弱気なところを見せたら喰われるぜぇ!ここは攻めの構えで先行逃げ切りだまゆっち!)
(はい、頑張ります!)
まゆっちはそう決意を固めるが目の前にいるワン子とクリスの殺気に押されたいた。
(しかしこの殺気パネェぜ。)
しかしまゆっちはプルプル震えていた。どうやら本当に限界のようであった。
(え?まずいまゆっち!今まだマズイぜまゆっち!あ・・・)
まゆっちは立ち上がると駆け出そうと動く。
(ま、まゆっち―――――!)
(い、行ける!)
かと思った瞬間目にも止まらぬ速さでワン子、クリス、京が踏み押さえる。
「す、すみません!スミマセン!御免なさい!見逃して下さい!漏れそうなんです――――!」
修羅場の光景にキャップ達は身を寄せ合っていた。
少し前の病室では百代、大和、揚羽がいた。
「それで?あの人、橘さんはどうしてあんな身体に?」
「気付いていたのか、大和君。」
「ええ。」
「そうか。では大和君、橘天衣。元四天王で川神百代、及び黛由紀江に破れその座を奪われた彼女の本職は何か知っているか?」
「自衛官でしたか?」
「そうだ。天衣はとある極秘作戦の作戦指揮を執っていたそうだ。そして作戦中、敵の攻撃を受け不幸にも・・・・・殉職した。」
『っ!?』
その言葉に大和と百代は驚く。
「我は卒業後、九鬼財閥にて軍事部門統轄となり、その職務に就いている。二本の兵器産業というのは実に面容な業界でな。輸出が出来ない上に国が競合させないのでまともなライバルがおらず、数社による独占状態が何十年も続いている。部品が外れたり、作動異常を起こす銃、被弾すると現地で修理の出来ないハイテク車両、爆走するとまともに旋回出来ない攻撃機。そんな実戦経験のない粗末な武器でも天下りの小遣いのために高い音で売られる上手い商売だ。だが、その割を喰っているのは兵達だ。予算が無駄に使われるほど兵たちに必要な装備が行渡らなくなる。それに加えて政治家の建前だ。その出来が悪い武器ですらも持たせてもらえないまま海外派兵で本物の戦争の町中に配置され、命の危険にさらされる。たまったものではないだろう。」
「何が言いたいのですか、揚羽さん?」
「兵と言えど、国の民に変わりはない。民の命を粗末にする国など栄えた試しは無い。我は、九鬼財閥軍事部門をもって世界的に披見を取らない世界一の兵器を開発することにした。兵の命を粗末にせぬ武器、誇りを持って職務に装備を開発し供給する。これぞ力を持って正義を全うする者の勤め。」
「・・・・・・・・」
大和も揚羽の言いたいことは分かっていた。力には力が必要であるが国はその力を極端な方向で求めている。危険にさらされる兵士を救うには強い力しかないと。
「そう考えていた我は、開発室でかねてより開発中だった一つのテーマに手を止めた。」
そう言うと揚羽は大和に一枚の丸められた紙を差し出す。
「それは、サイボーグ義手、戦闘強化孤高だ。これは元々、戦や災害で負傷した兵や民の生活を助ける民開発されてた。兵器の中で一番金が掛かるのは何か分かるか?」
「人ですよね。機械なんかはプログラムを組み込んだり手順どおりのままに動く。でも人は機械じゃない。思うように成長する者もいればいない者もいる。」
「そうだ。費用や時間が掛かる上に負傷や戦士をすると保守金もかかる。負傷した兵士をリタイヤさせるのは経済的にだけではなく、人材的にも効率が悪い。だが、負傷した肉体を機械の身体で補い再び戦える身体に戻せるのなら経験豊かな優秀な兵士を再起させることが出来る。そこで我は従来から開発している義手義足にクッキーの技術を投入し、新たな戦闘装備を挿入した。」
「それってまさか・・・・」
「橘は、極秘作戦で負傷し、生死の境をさ迷っていた。機密保持のため、訓練中の事故で死亡で偽って処理されたところを九鬼の情報網が拾ってな。裏から手を回し、戦闘用孤高の実験用ドナーとして回収したのだ。放っておけば死んでいた。四天王を外れたとはいえ、野にさらすには惜しい才能。助ける術があれば助けてやりたかった。だが流石は元四天王。橘天衣を体力はすさまじく、改造手術を行うとみるみる回復していった。戦闘強化孤高の融合も融和性が高く、まるで自分の手足だと言わんばかりに馴染んでいった。そして、十分に回復した先日、初めて兵器としての評価試験を行った。するとなぜか、天衣の手足は設計時のスペックを超える戦闘力を持っていたのだ。」
「おそらく気ですね。気は人間の体内から生成されるが送り込むのは物質でも出来るから。」
「そうだ。九鬼の最先端技術を次ぎ込んだ超人を超える力に四天王クラスの武人が気を注ぎ込んだのだ。その力は計り知れぬものがある。強力な力を得た天衣は何を思ったのか部下を連れて評価試験中に逃亡した。」
「おそらく国に対する復讐ですね。そしてその日は川神大戦の日でしょう。」
「そうだ。そしてその転移が一昨日、再び来た富士演習場に現れ、思索戦車を破壊し逃亡した。そして、昨日の横浜港のあの騒ぎ。それに彼女を回収した際に私に言った。」
『私は・・・・・国に裏切られた・・・・・・・。国はあの化け物の存在を、化け物の存在を知っていながら・・・・・・・。仲間が殺され、私と紗姫以外の部下が殺された。』
「―――と、言っていた。」
それを聞いた瞬間大和は手を顎に持っていき考える。
「どうかしたのか?」
「すみませんがそいつの特徴は?」
「はっきり言って一般人と変わりない風貌で・・・・・・・・・・そういえば銃弾や爆弾が聞かないと言っていたが・・・・・・・・・・まさか!」
揚羽が気付いたことに百代も気づいた。
「おそらく仕組まれたことでしょう。ですが、俺は橘天衣さんを救うつもりです。」
「それは困る!これは政治的事情が絡んで『関係ない!』っ!」
「私は例え貴方が相手でも彼女を救います。目の前で消えそうな命を見捨てるのはもうゴメンです!」
「・・・・・・・・・・何故そこまでする?何か後悔でもあるのか?」
「・・・・・・・先日HLに行った際に病院に行きましたよね。あの場所は三年前のあの日、血の眷属とそのペットに襲撃され病院の人は二人を除いて重症、結果的に私達は負けました。」
「それがあの場所だったのか・・・・・・」
「先日そいつは師匠が封印しました。でも俺は、まだあの日のことを忘れていません。絶対に忘れることなんて出来ません。」
「そうか。」
「それよりすみませんが少々外に出てくれませんか?」
「ん?・・・・・・・・・・・ああ、そういう事か。百代、外に出るぞ。」
「はい。」
百代と揚羽は外に出るのを確認すると大和は仕込み指輪を手に取り、右指に嵌めると刃で指を切り、血の糸で窓を開けた。すると開けた窓から覗くように辰子が顔を出した。
「よくそんなとこいるね。」
「あ・・・・・」
「入って。」
大和は辰子に手招き。辰子はそれに応え部屋に入る。
「あの・・・・助けてくれてありがとう。」
「え?それを言うためにここへ?」
「うん・・・・・・・・・ダメだったかな?」
「いや・・・・・・・・・・ん~、敵陣に潜り込むなんて初めて見たよ。」
大和はベッドから立ち上がり辰子の頭を撫でる。
「ふわぁっ!」
辰子は頬を赤らめる。
「もうそろそろ誰か来るかもしれないから戻ったら?」
「うん!」
辰子は元気な声で窓から飛び降りた。
「おいおい、どんだけ元気なんだよ。ま、元気になったんだからいっか。」
そう言うと大和はベットに戻った。
時間は過ぎて夜になった。
大和は病室の外からの気配を察知した。
「こんな時間に五人・・・・・英雄君たちかな?」
病室に誰かが入ろうとしてくるが扉が急に開けられ、京、ワン子、クリス、まゆっち、百代の五人が倒れこんだ。しかも何故かナース姿で。
「・・・・・・どういう状況これ。」
「そ、それについては自分が説明しよう。」
クリスが立ち上がり説明をし始めるがナース服姿なのかいつもより脚の露出が多い気がする。
「面会時間を過ぎたので皆で大和の看病をしようと思ったのだ。」
「なるほど。でなんでナース服?」
「面会時間を過ぎたら病院に入れないのでな。そこでナースに変装したのだ。」
「ああ。」
大和は納得した。ここにライブラ一同いれば“気付け!”と言っているであろう。
「それでだな大和!自分はさっき稲荷寿司を買ってきたのだ!食べてくれ!」
「ちょっとクリス!抜け駆けは許さない!大和、今身体拭くから。」
「いや、汗掻いてないし。」
「いいからいいから。」
「よくないって!」
「おーい、大和―。まゆっちの弁当受け取ってクレー。まゆっちが丹精込めて作ってくれた夜食だぜー。」
「よ、よかったら食べてください!」
「ちょーと待ったー!大和は病人なんだからちゃんとしたもの食べないと!」
皆して大和を気遣ってくれる中、百代だけはそこに立ちつくしていた。
「どうしたの百代姉さん?」
「いや・・・・その・・・・・どうしたらいいものか分からなくてな。ついこの先まで私と渡り合える男かと思ったら秘密結社の一員なんて受け入れようとしても・・・・・・」
「だろうね。俺も最初は驚いたよ。ちょっと皆来て。」
大和は一同に手招きをする。すると大和は皆の頭を撫でた。百代たちは大和のその行動に驚いた。
「皆心配してくれたありがとう。その気持ちだけでも俺は嬉しいよ。」
大和は本心からそう言った。そんな大和の言葉を聞いて百代たちは嬉しかった。
大和たちのいる病室にクッキーが血相を変えて入ってきた。
「どうしたんだクッキー?」
「み、皆これを見て!」
クッキーがテレビを付けるとそこには橘天衣の姿が映っていた。
『私は元四天王の橘天衣。この放送を通じて私はこの放送を見ている全ての国民に通達する。
私はこの国を破壊する。私はこの国の国民を抹殺する。例外は無い。容赦は無い。私の目的はこの国の破壊、そして総理大臣の抹殺だ。私の顔を見ろ。私の声を聞け。私の存在を脳裏に焼き付けろ。これがお前たちの敵の姿だ。この姿を間近で見たときは命尽きるときだ。誰にも止めることは出来ない。ただ座して終末の時を待て。」
橘はそう言い終えるとテレビから姿を消した。
「・・・・・・・急がないとな。」
大和はそう言うとみんなからの食べ物を次から次へと食べてゆく。
「大和、本気であの人を救うつもりか?」
「ああ。どうしてもケジメを就けたいんだ。」
「でもなんで大和が救うの?モモ先輩でも・・・・」
京がそう言うと大和は手を止める。
「京、俺はただ見たく無いんだ。誰かが悲しむ姿を。もう、二度と。」
大和の言葉には覚悟があった。百代たちはそんな大和の姿に圧倒された。
「大和、おそらくこれに便乗するバカなやからがいるはずだ。」
「だろうね。それより俺は確認したいことがあるんだ。」
大和は弁当を全て食べ終えると携帯電話を取り出した。
「もしもし、師匠ですか?」
『ああ。先程の放送は私達も見たがそれ以降こちらで日本の番組は見れない。』
「では・・・」
『ああ。おそらく奴の仕業だろう。彼女には私達から話しておく。』
「お願いします。」
大和は電話を切った。
ライブラHL支部ではクラウスが揚羽に電話をしていた。
『わかった。そちらの要望に応えよう。』
「感謝します。」
『なに、我の弟は君たちの協力があって助かったのだ。当然のことだ。』
「ありがとうございます。」
クラウスは電話を切った。
「クラウス、どうだった?」
「向こうは了解してくれたよ。」
スティーブンの問いにクラウスはそう答えた。
「さて、行くメンバーは決めているのかい?」
「ああ。日本に行くのは私、君、レオナルド君、ザップ、ツェッドの四人・・・・・・・いや、チェイン君も加えよう。向こうでどのような状況になっているのかを知るためにも必要不可欠だ。」
「わかった。じゃあ僕が電話をするから君は準備をしていてくれ。」
「すまない。」
クラウスはそう言うとライブラを後にした。
「さて・・・・・・・僕の仕事は汚れ仕事だな。」
スティーブンは誰もいないライブラで一人呟いていた。