放課後になり大和は宇佐美の待っている空き教室に向かっていた。
「ま、皆あんな感じに言ってたから普段からあんな性格か演技か・・・・・前者か。」
大和は宇佐美が学校でどんな感じなのか聞いてみた。
『ヒゲ。』
『だらけのオッサン。』
『梅子先生にラブアタックしているけど失敗している残念な男。』
(尊厳なんて無いな・・・・・・・・・・いいのか、教師?)
そんなことを思っていると空き教室に着いた。
「すいませーん、大和でーす。」
「おーう、入れや。」
宇佐美が入るように促す。大和が空き教室に入ると畳の上で将棋版を置いてくつろいでいた。
「まあ座れや。」
「はい。」
大和は宇佐美と対峙するように座る。
「俺が先手でいいな?」
宇佐美はそう言うと駒を動かす。
「もうやってるじゃないですか。」
大和も駒を動かす。
「で、彼方はライブラの諜報員で間違いないですか?」
「ああ、間違いないよ。俺は戦闘はからっきしなんでね。でも、こっちの支部は戦闘できる奴は全滅だ。まあ最も、日本じゃHLほどのことは起きないけど。せいぜい誘拐犯を捕まえたり麻薬犯を抑えたりと規模の小さい事ばかりしてた。」
「でもそこに出てきたレディナ=オーレルと血の眷属・・・・・・・・・束の間の平和に訪れた天災と言ったところでしょうか?」
「まあそうだね。でも・・・・・・・天災というより悪魔だったよ。死んだ人の中には家族がいる人だっていた。事情を知っている人は覚悟していたみたいだが泣いていた。事情を知らない人には交通事故だとかと言って誤魔化したが死体の一部はエンバーミングした。」
「そうですか・・・・・・お疲れ様です。」
「なに、この仕事をしていれば覚悟していたことだよ。」
「覚悟と現実は違います。彼方もわかるはずです。」
「そう・・・・・だな。」
二人はそういいながら将棋を指した。
「それで誰が裏で手引き、いや正確には誰に化けているか分かっているんですか?」
「かなりの大物というところまでは分かっているんだ。あの研究には莫大な予算が掛かる。日本の企業なんかを探ったが大きい金の動きは無かった。そこから更に範囲を広げようと潜入調査員を入れたが、襲撃された。」
「そうですか・・・・・・・・ちなみに何処を探ろうとしたのですか?」
「政治家だ。政治家の表立って動かない金はこちらでも把握しているからね。」
「じゃあ血の眷属は・・・・・・」
「おそらく政治家と見て間違いないだろう。それか政治家を助けている大者。」
「成程・・・・・・・・・潜入調査員は血の眷属を見ましたか?」
「鏡で確認したところそんなのは無かったらしい。」
宇佐美の言葉を聞くと大和は顎に手を当て考える。
血の眷属と人間を見分ける方法は鏡に映るか映らないかである。だが大和には一つだけ血の眷属でありながらも鏡に映れる方法を知っていた。
死体の皮を被ることである。クラウスが以前、地下闘技場で戦った血の眷属も死体を使ってクラウスと渡り合った。日本支部とはいえライブラの仲間。血の眷族とはいえ生き残れる人物が一人いてもおかしくは無い。なのに誰も生き残っていないということは・・・・・
「相当できますね。」
「ああ、ホントにそう。てかこんな話しながらこっちを追い込まないでよ。おじさん悲しくなってくるから。」
将棋盤の上では大和が宇佐美を積んでいた。
「これで王手。」
「げっ!チクショー、おじさん負けたわ!」
「ははは、じゃあこっちの方のライブラにも調査を頼んでおきます。」
「おーう、なんか会ったら何時でもここに来い。おじさん放課後、基本ここにいるから。」
「へーい。」
大和はそう言うと空き教室を後にした。
「彼がブレングリード流血闘術使いのクラウスの弟子か。さっきの将棋で分かったが頭が回って戦闘が出来る・・・・・・・なんとも頼もしいな。」
空き教室に残った宇佐美はそう呟くと立ち上がり身体を伸ばした。
「さーて、仕事仕事っと。」
大和が島津寮に戻ると玄関で髪を後ろで二つに分けている女子生徒と出会った。
「お、オカエリナサイ!」
ぎこちない顔で挨拶をする女子生徒に大和は頭を撫でる。
「力入りすぎてぎこちないよ。折角可愛い顔してんだからもっとリラックス。」
「はわわわわ///////////」
女子生徒は顔を真っ赤にし、自室に戻った。
「あれ?ライトニング、俺何か悪いことした?」
「キィー?」
ライトニングは首を傾げた。
その頃HLのライブラでは――――
「っ!?また誰か彼に堕ちた!」
チェインが何かに目覚めようとしていた。
夜になった島津寮では寮に住んでいるもの全員+aで歓迎会が開かれていた。
「じゃあ簡単に自己紹介しようか。ていうか大和が知らない人はこのメンバーで三人しかいないけど。」
モロが進行を促す。
「では自分からだな。先刻も自己紹介したがクリスティアーネ・フリードリヒだ。ドイツから留学してきた。よろしく頼む。」
「わ、私の名前は黛由紀江です!い、一年生ですがよろしくお願いします!」
「源忠勝だ。面倒なことは起こすなよ。何かあったらこっちが心配すっからな。」
「はい、じゃあ改めまして直江大和です。HLに住んでて常識がちょっと欠けているかもしれないけどそこはご理解を。それとコイツは音速猿のライトニング。ライトニング。」
「キキィー!」
ライトニングは手を上げて挨拶をする。
「可愛いな、撫でてもいいか?」
「ライトニング、クリスが撫でていいかって。」
「キィー!」
「いいって。」
「では失礼する。」
クリスが頭を撫で始める。
「弟、私達がお前に聞きたいのは今朝のあの技だ。」
百代がそう言うと一同興味津々の顔をしていた。
「ああ、あれ。あれは血闘術っていうものだよ。」
「けっとうじゅつ?なんだそれは?」
「言うより見せたほうが早いね。」
大和はそう言うと指輪を右手に嵌め、刃を出すと親指を切った。
「おい!」
ゲンさんが大和の行動に驚くが大和は左手を前に出し止める。血をよく見ると流血せず、細い手の様な形を作っていた。
「血を武器に変えたり糸に変えたり手に変えたりして戦う技。向こうじゃコレくらい必用だからね。」
「ほ~、あの武器以外にも出来るのか?」
「まあね。」
百代の問いに大和は軽く返した。
「それとその左脚につけているのはなんだ?」
「これ?見てみる?」
大和はそう言うと腰の左側に装備していた籠手を百代に渡した。
「十字架の装飾が施されているが・・・・・・血の匂いがかすかにするな。」
「コレにも血闘術を使うからね。ちなみにそれを使う場合はコレも使うよ。」
大和はそう言うと右の服の袖に隠していた十字のメリケンを出した。
「メリケン・・・・・・・ですね。」
「そうだよ、黛ちゃん。」
「おーい弟、そんな堅苦しい言い方じゃなくてまゆっちって呼んでやれー。」
「はいはい。」
百代の言葉を軽く返す大和。
「コレにも血を使った技、血闘術を用いるんですね?」
「まあね。正確にはブレングリード流と言ってね。999式まである。」
「よし、弟!私と「戦わない。」なっ!」
「だっても百代姉さん退屈だから飢えているからって理由でしょ?だったらダメ。」
「じゃあどういうときに戦うんだ?」
「うーん・・・・・・・自分にとって守りたいモノのため・・・・・かな?」
「なんだその理由。」
「まあ俺もその時その時で使う予定だよ。今朝みたいにね。」
それから少し話をし、歓迎会は終わった。
大和は自室となった部屋で横になると天井を見た。
「さーて、学生兼ライブラか。大変になりそうだな。あ、報告書作成しとかないと。」
大和はそう言うとパソコンを起動させ今日の報告書を作った。