川神学園の日常は波乱万丈があるのは当たり前である。まあ主に決闘であるが。
そんな川神学園の昼休み、大和はライトニングと一緒に屋上で寝転がっていた。
「ライトニング、暖かいな。」
「キィー。」
二人がくつろいでいると大和は気配を感じた。
(一人。敵意は無いけど気配を消している。)
大和は起き上がると気配がする方向に右拳を突いた。
「うわっ!」
気配があったほうにいた女性は驚きながらも防御する。
「びっくりした~。急に突いてこないでよ。」
「それは失礼しました。ですが何故彼方は気配を消してまで私の方に近づいて来たんですか?」
「(気付かれていた!)いや~、ちょっと驚かせようかなーって。」
「そうですか。(驚いているな。一瞬表情に出してはいたがほんの一瞬だ。相当出来ると見た。)わたくし、直江大和と申します。以後お見知りおきを。」
大和は女子生徒に名刺を差し出す。
「これはどうも。名刺じゃないけどコレをどうぞ。」
女子生徒は腰のポーチから納豆を取り出し、大和に差し出した。
「これはどうも。」
大和はそれを受け取る。
「私の名前は松永燕、二年生。よろしくね大和君。」
「松永・・・・・もしや四天王のお一人の?」
「燕でいいよ。まあ世間ではそう言われているけど四天王って自覚ないんだよねー。私はこっちを売る方が性に合っているんだけどね。」
「世間性に囚われないその心構えは重要です。」
「褒めてくれてありがと。ん!」
燕は決闘を行っている薙刀部と剣道部の姿が目に入った。
「おー、決闘だねー。大和君、どっちが勝つと思う?」
「ん?そうですね・・・・・」
大和は二人の状況を冷静に分析して見る。
「互いに感情に任せている・・・・・・・神経戦は互角。しかし・・・・・これは剣道部ですね。」
「え?私は薙刀部と思ったんだけど・・・・」
「ええ、普通は。ですが二人には圧倒的差が有ります。」
大和がそう言うと二人は決闘を始めた。結果、剣道部が勝った。
「すごい、当たったね。」
「いえ、当てたのではなく最初から勝敗が決まっていたのです。」
「というと?」
「薙刀は長い分リーチで勝てるかもしれませんがあの人は長さという特性を活かしていませんでした。対して剣道部は自分のリーチをよく理解していました。」
「刀で言う刀身のこと?」
「いえ、刀で言うリーチとは剣先から腕の付け根までのことを言います。自分の身体も武器の一部として活用出来るからこそ勝てたのです。」
「成程。」
燕は大和の言葉に納得する。
「ねえ大和君。」
「何でしょうか?」
「決闘しない?」
「お断りします。それに彼方とて本気では無いでしょう。」
「あらバレちゃった?」
「ええ。それに私には戦うときというのは決まっていますので。」
大和はそう言うと立ち去ろうとするが燕は呼び止める。
「待って!じゃあ君は何の理由で戦うの?」
「それは・・・・・・・守るべき者のためです。自分の誇りよりも師匠や、仲間の名誉のため。例えどんな人であろうと仲間であることに変わりありません。私はそのために戦います。」
大和はそう言うと屋上を後にした。
大和が教室に戻ると同じクラスの男子生徒、ヨンパチこと福本育郎が机に突っ伏していた。
「どうなさいましたか?」
「ん?あー、大和かー。実はなー、ショッキングなことがあったんだ。」
「どのようなことですか?」
「一つは俺が撮った写真の女子のパンツが写っていなかったこと。」
「お前は今泣いていい。」
ガクトが涙を流し同情する。
「もう一つは裏麻雀で大負けした事だ。」
「裏麻雀?」
大和は聞きなれない言葉に首を傾げた。
「確か学校非公認の決闘だよね?」
ワン子がそう言うとヨンパチは頷いた。
「S組の不死川って奴に大負けしたんだ。」
「そもそも賭場なんてしないで下さい。私の知っている先輩で一万の額を億の借金に変えた人いますから。」
『どんな先輩!?』
「皆から“人間の屑”と認められるほどの男だ。」
大和がそう話していると廊下から女性の高笑いの声が聞こえてきた。
「にょー、ほっほっほ!全く猿が泣く姿とは無様よのう。」
着物を着た女子生徒が入って来た瞬間ライトニングが音速の速さで扉に移動し、扉を閉めた。
「よくやったな、ライトニング。ほらバナナ。」
「キィー。」
ライトニングは大和からバナナを受け取る。
「こらー!此方の話を聞けー!」
「どちら様ですか?自分以外の教室に入る際は失礼しますというのが世間の常識でしょう。」
「そんなこと此方には関係ないわ!」
「そいつだ!そいつが俺を麻雀で負かしたS組の不死川って奴だ!」
「成程。」
大和は不死川の方を見る。
「ほほほ、しかし此方がそこの山猿を笑いに来たのはついでじゃ。転校してきたヤツがどんな奴か少々気になってのう。しかしどんな奴かと思ったが普通だのう・・・・・」
「まあそうでしょう。」
「まあここにいる蛮族と同じ輩よのう。期待して損したわ。」
不死川が立ち去ろうとした瞬間であった。
「お待ち願いたい!」
「む、なんじゃ?」
「先程の蛮族という言葉を訂正していただきたい。私のことをとやかく言うのは構わないが、他は関係ない!」
「ふん、童より劣る蛮族に詫びる言葉など無いわ。」
「では致し方ない・・・・・・・決闘を申し込む!」
大和は学生服に付いているワッペンを手に取る。
「ほう、此方に挑むというのか?」
「ええ。ただ私は女性を殴る主義ではない。どなたか代理の者を出していただきたい。」
「なんじゃ、紳士のつもりか?」
「師匠からの受け売りです。」
「ほう・・・・・・・・まあいいじゃろう。放課後にグラウンドで決闘じゃ。」
不死川もワッペンを手に取り、互いに地面に叩きつけた。
小休憩の時間にクリスが話し掛けてきた。
「大和、決闘するのは本当か?」
「ああ。しかし女性であるため代理を頼んだがな。」
「そうか・・・・・・・一つ聞いていいか?他人を罵倒されると怒るのは分かるがなんで自分を罵倒されても怒らないんだ?」
「・・・・・大事だからかな。自分に関わる人一人一人が自分を支えてくれる。本人に自覚が無くても何処で支えてもらっている。HLでも多くの人に支えられてきた。私が知っている人に自分に危険が降りかかっているのにもかかわらず一人で抱え込もうとしている人がいた。だがその人は、私の師匠にメッセージを送った。その知らせを聞いて私と、師匠と、その人に関わるすべての人が彼の元に駆けつけた。つながりが無い人なんていないのだよ。」
「成程な・・・・・・決闘、勝つつもりだろう?」
「いいや。」
「?」
「勝つ。ただそれだけだ。」
「ふふふ、頼もしい言葉だな。」
放課後になるとグランドにはルー師範代を挟んで不死川と大和が対峙していた。周りには決闘を見ようと生徒達が集まっていた。その中には風間ファミリー、そしてS組の葵冬馬、榊原小雪、井上準、九鬼英雄、忍足あずみの五人がいた。
「全く、不死川さんには困ったものですね。」
「とーま、仕方ないよー。」
「ユキの言う通りだな。あいつのあの態度はいつもの事だしな。」
「しかしあれも一つの個性と言えよう。受け入れるのも王たる定めだ。」
「さすが英雄様!あずみ、感激です。」
そんな五人を余所に大和と不死川は話をする。
「そちらが負けた場合、ここに書いてある額をこの講座にドルで送金してもらいたい。」
「いいじゃろう。じゃが此方のこまが負けた場合は土下座をしてもらうぞ。」
「構わない。」
「では両者いいネ。東側、二年F組直江大和!」
「はい!」
「西側、二年S組不死川心、及び代理10名。」
「うむ。」
『じゅ、10名!』
不死川の駒の数に回りは驚きを隠せなかった。
「ちょっと不死川さん!卑怯よ!」
「そうだ!一対十とは反則だ!」
ワン子とクリスが文句を言うが大和は手を上げ二人の言葉を止める。
「皆が反則と思うのも分かる。だが、私はあの時代理を頼んでもらうことを頼んだが人数までは言っていない。故に彼女の行動には何の反則も無い。」
大和のその言葉に一同感銘を受けた。
「なんと強い者だ!我はここまでの男を見たことが無い!」
「相手の行動を肯定するなんて男は私も見たことがないです。少し興味がありますね。」
英雄と冬馬は興味を持つ。
「では直江大和君、いいカね?」
「はい!」
「では両方・・・・・・・始め!」
ルー師範代が開始の合図を告げた瞬間10人の猛者が大和を取り囲んだ。それぞれ武器を持っていた。
「まずいわ。あの人たち学園の中でも実力がある人物達よ。」
「そんなヤツらを相手に大和大丈夫かな?」
京とモロが心配する中、大和は左手に籠手を付け、右袖の十字のメリケンを装備する。
「ブレングリード流血闘術、推して参る!」
「行くぞ!」
『応!』
一斉に大和に向かい接近してくる猛者たち。しかし大和に焦りはなかった。
「威力は抑えるが、怪我は覚悟していてくれ。」
「ほざけ!」
大和の忠告も聞かずその足を止めない。大和は右手の十字メリケンを構えると叫ぶ。
「ブレングリード流血闘術11式、旋回式連突(ヴィルヘルムシュトゥム)」
大和はきりもみ回転しながら巨大な十字の手裏剣を飛ばした。
『ぐはぁ!』
一瞬にして10人の猛者は倒された。
「そこまで!勝負あり!勝者、直江大和!」
一同目の前で起こったことが理解できなかった。ただその場できりもみ回転をしただけで相手を倒したからである。
「一応刃引きしてはなったとはいえ打撲はしている。保健室に運ばないと。誰か手伝ってくれ!」
大和の言葉に従うかのように周りの男子生徒が二人一組で猛者たちを運ぶ。ちなみに大和は一人で二人運んだ。
「それと不死川さん、コレよろしく。」
大和は紙を渡すと猛者二人を保険室へ運んで行った。
「融資額・・・・・・・」
不死川はその額をゆっくりと見た瞬間、驚きを隠せなかった。
「な、なんじゃコンばかげた金額は!」
不死川は払わないと思ったが公共の場でのあの言葉を裏切れば自分の立場が危ういと思いしぶしぶ融資した。
『成程、それでこっちの活動費が一気に増えたのか。』
「ええ。勝手な事をしてすみません。」
大和と会話しているのはスティーブンであった。
『いいよいいよ、こっちとしては嬉しいし互いに合意の上だったんだろ?もしコレが盗んだ金なら僕が凍らしていたけどね。』
「そんなこと師匠の名を汚すだけですからしませんよ。」
『そうだったね。じゃあ報告書にそのときの状況を詳しく書いてね。じゃあまた。』
「はい、それでは。」