Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】 作:たい焼き
つまりGWに間に合ったから
Rシステム、またの名を楽園の塔というそれは、伝説の黒魔道士『ゼレフ』の復活を目指していた。
最高峰の黒魔道士の力を借りて今いる人間や権力者達を皆殺しにし、より良い世界を作るために世界毎作り変える事が、この計画の立案者である『ジェラール』と名乗る男の目的だった。
エルザが連れ去られてからしばらくしてナツ達もそれを追って楽園の塔を目指した。
それ相応の警備もあったし、暗殺ギルドからも刺客が何人か送られていたにも関わらず、彼らはそれらを全て下し、現在はジェラール本人との一騎打ちをエルザが行っていた。
戦況はエルザが優勢のように見える。これ以前に彼女を超える剣技を持つ暗殺ギルドの刺客と交戦して多大な消耗を受けているエルザだったが、それを物ともせず果敢に攻め続けてジェラールを追い込んでいく。
ジェラールも躱し続けるが、ジェラールの魔法はエルザには届かない。
魔法を切り裂き、遂にエルザがジェラールに肉薄する距離まで接近し、押し倒して首筋に切っ先を向ける。
後は刀を突き刺す工程を踏めばジェラールの命は消える。だがエルザはそれをしようとしない。
評議院が保有する
個人では到底到達出来ない領域の魔力を使った純粋な魔導砲。高ランクの対軍宝具以上の宝具を除けば匹敵する魔法は存在しないため、抑止力として使えばこれ以上の物は早々無い。
勿論防ぐ事など出来ず、裁き光と言っても差し支えないそれは晒されただけでその身を蒸発させ無と化す。
エルザは本心からジェラールを倒す気など無く、ジェラールと戦ってケジメを付けたかった。
幼い頃に、まだジェラールが友だった頃に彼を救えなかった事をずっと後悔していた。
空に魔法陣が展開され、発動まで秒読みの段階になり、塔の全て光で覆われた。
エルザはどこまでいっても優しかった。倒すべき敵となった友を切れず、見捨てなかった。そんな慈愛の心とも言えるような優しさを―――――
――――利用された
エーテリオンは間違い無く落ちた。なのに何故五体満足で生き残っている?
辺りを見渡すと、柱や装飾品の類は全て吹き飛び、代わりに魔力を蓄えた魔水晶があった。
否、塔が魔水晶に成り代わったと言った方が近い。
「何故、私はまだ・・・」
エーテリオンが落ちたにも関わらずまだこの世に体が存在しているという矛盾が生まれる。
目の前の現実に脳が追い付いていない所に、邪悪さを孕んだジェラールの冷笑が聞こてくる。
「くくっ・・・あははははっ!!」
冷笑はやがて高笑いへと変貌し、ゆっくりと立ち上がる。
この場での勝者は最後まで他を騙し続けたこの男だ。
「エルザ。お前は言ったよな?確かにRシステムの起動に必要は27億イデアの魔力は
「まさか・・・ジェラール・・・」
「そうだ。そのまさかだ!!この塔はエーテリオンを吸収する事でRシステムとして完成したのだ!!」
騙していたのだ。ジェラールの野心は、その傲慢さは欠片も消えていなかった。全ては時間を稼ぐための芝居。嘘で塗り固めた偽りの仮面をエルザは見せられていた。
「始めから騙していたのか」
「それは違うぞエルザ」
「ジェラールも本来の力を発揮できなかった。だから騙すしかなかったのさ」
ジェラールと全く同じ声をジェラール以外の者が発する。
会話に割り込んできた男はエーテリオンを落とす事を最初に提案した男、評議院であり聖十大魔道の一人のジークレインで、ジェラールの双子だと名乗る男だ。
「なぜ貴様がここに!?始めから結託していたのか?」
「結託?それは少し違うぞ、エルザ」
「「俺達ははじめから一人だった」ただそれだけだ」
ジークレインの姿が少しずつブレ始め、やがては薄くなってジェラールと一つになる。
「思念体!?」
つまりは評議院に潜り込んでエーテリオンを落としたのは自分自身だったのだ。聖十大魔道になったのも名を上げるためと評議院の上層部になるために都合が良かったからだけのことだった。
「貴様は一体・・・どれだけの人間を欺いて生きて来たんだ!!」
怒りに身を任せ、剣を取り出してジェラールに斬りかかろうとする。だが彼女の体はピクリとも動かなかった。原因は彼女の体を刺青のように這いまわる魔法の蛇。
「何だこれは!?」
「
体が動かず、抵抗も出来なくなったエルザをジェラールは魔水晶の中に押し付ける。
後は魔水晶が生け贄を求めて勝手にエルザを取り込んでRシステムとして起動する。――――はずだった。
「む?何故発動しない?」
条件は揃っているはず。術式の他に膨大な魔力と復活対象のゼレフに相応しいであろう上質な肉体もこの場に存在している。だが何故か一向にRシステムは作動しない。
「そんなのは簡単な事だ。条件が欠けているからだ」
「ッ!?誰だ!?」
振り向くとそこにはジェラールにとっては想定外の男が居た。
「エ・・・エミヤ・・・?」
「貴様は・・・ッ!!今までどこに隠れていた!?」
無論ジェラールはエミヤを警戒していなかったわけではない。むしろイレギュラー故に最大限の対策を用意していたのだが、全くと言って干渉してこなかったためにいつの間にか頭の中から抜け落ちていたのだ。
一方でエルザは彼を見て涙を流していた。義眼となった右目からは相変わらず流れていなかったが、もう片方の目からはエルザに似合わない程の涙が目から溢れるように流れていた。
「エミヤ・・・腕が・・・」
エミヤの今の体には、右腕が肩ごと抉れたように消えていた。傷口からは止血してはいたが、膨大な量の血が流れた痕があり、彼の体を形成する魔力の粒子は未だ留まる事を知らずに流出を続けている。
「ああこれか。全く、エーテリオンを受け止めるなんて考えるまでもなく無謀だと理解はしていたのだがね・・・体が勝手に動いてしまっていたよ」
投下された瞬間に熾天覆う七つの円環を投影してその大部分の阻止に成功し、半分程度の魔力を霧散させる事が出来た。だがそれでも完璧ではなく、腕は消し飛び、半分程度は魔水晶に吸収されてしまった。
「馬鹿な!!27億イデアだぞ!!そんな出力の魔導砲など止められるわけがない!!」
エーテリオンが脅威なのは防ぐことが出来ないからだ。だからこそ悪行を抑制するための抑止力として選ばれる。
「普通ならそうなのだろうな。だがこの身は仮にも英霊の末端に席を置かされた身。ならば不可能の一つや二つ程度、凌駕しなければならないのだよ」
とはいえエミヤは既に満身創痍だ。簡単に言えばただの魔力とはいえ、その膨大な魔力はサーヴァントの対魔力や耐久値を超えてダメージを与えた。
出血も酷く目は霞み、立っているだけでも精一杯という状態だ。
「もういいエミヤ、早くここから逃げてくれ」
誰が見ても戦える状態ではないと答えるだろう。だからエルザはエミヤを逃がすための行動に出る。
「これが、君の抱えていた闇なんだな・・・?もういいんだ。後は
「だがその体では・・・」
「これでも受けてそこで見ていろ」
突然宙に短剣が浮かび、エミヤの言葉に呼応してエルザに向かって飛来し、エルザの体を縛る蛇に刺さって蛇と共に消え去る。
それとほぼ同時だった。ジェラール目掛けて巨大な炎を塊が飛来する。だがそれが当たる事はなく、ジェラールは息をするように躱す。
「遅かったなナツ」
「おおエミヤ・・・ってなんか腕ねぇし」
「気にしなくていい」
これでジェラールの敵は二人になった。だがジェラールの余裕は消えない。
「英霊だかなんだか知らんが、滅竜魔導士の力には興味がある。消してしまう前に二人まとめてかかってこい」
威圧感が増す。向けられた威圧は人の恐怖を煽る。エミヤは兎も角ナツは僅かながら影響を受ける。
だがナツ・ドラグニルという男はそんな恐怖を常に己の象徴である炎で焼きつくして前に進んできた。今更そんなもので立ち止まるような男ではない。
だがエミヤはそれよりも前に立っていた。強風のように吹き付ける威圧を前に当然のように立って向こう側へと行こうとしている。
“――――ついて来れるか”
地色と血で紅く染まった外套の背中でそう語るかのようにナツは感じた。
気付けばとっくに両手は握りこぶしになっていた。
「へっ!!そっちこそオレについて来やがれ!!」
ナツはいつもと変わらず勢いよく飛び出して行った。
あれだけの余裕を見せるだけあって、ジェラールの力は圧倒的だった。ナツが全力で打ち込んだ技はジェラールの上着を燃やす程度であり、逆にジェラールが使う天体魔法による加速はナツが捉えられない程の速度を出し、ナツを追い込んでいく。
エミヤであれば捉えられるが、既に無理出来ない所までダメージが蓄積した体では攻めに転じる事ができず、飛来したジェラールの攻撃を捌くことで限界だった。そこからカウンターの一つでも打ち込めれば良いのだが、決定打が与えられないと知ったジェラールの一撃離脱の戦法がそれを許さない。
「とどめだ。七つの星に裁かれよ」
ジェラールの魔法の一つ、
それを瞬時に二つ作り出し、それぞれを二人に差し向ける。
彼の言う通り、隕石に相当するであろう二つの巨星が同時に落ちる。凄まじい衝撃と巻き上がった砂煙が視界を遮る。
砂煙が晴れた時、そこには無傷でその場に立つナツが居た。そしてその前には紅く綺麗な七つの花弁がナツを守るように存在していた。
それがエミヤが投影した盾の宝具である熾天覆う七つの円環である事を察することは容易い。
だがナツの前に宝具が展開されているということは、逆に考えれば防御をナツに回したエミヤはどうなっているのか?
「ぐ・・・あッ・・・」
遮る物は何もなく、直撃を受けて膝を着くエミヤの姿がそこにあった。
「・・・何やってんだ・・・?」
二人は理解が追いつかなかった。自分を犠牲にしてまで他人を救う男を見たことがないからだ。
「フハハハハ!!こいつは傑作だな!!礼代わりにまずは貴様からとどめを刺してやる!!」
連続して魔法を放つ準備を始めるジェラール。先程の比ではない魔力が集中する。
「気持ち悪りぃ魔力だ」
凝縮された魔力は黒いというより暗い。その暗い球体は光を求めるブラックホールのように渦巻いて光と共に希望を吸い込んでいるようだ。天体魔法だろうが天体というよりは宇宙そのもの。
エミヤが再び熾天覆う七つの円環を投影しようとするが、魔力不足なのか、それとも蓄積したダメージで魔術回路が焼き切れようとしているかは定かではないが、投影され集まった魔力は形になる前に霧散する。
「ぐ・・・回路が焼ける・・・」
「自慢の手品は種切れか?」
優勢に事を進めているジェラールはまさに勝ちを確信しているのだろう。
「やめろジェラール!!貴様に私が殺せるか!!」
彼女は飛び出してしまった。あの魔法を防ぐ手立ても無ければその身で受けて死なない保証も無い。
「生け贄には私が必要なのだろう!?」
「エルザ・・・それは違うぞ。失策だ」
「ああ。おおよその条件は聖十大魔道に匹敵する魔力を有する魔導士。だが今となっては別にお前である必要も無い。魔力もそこの男が頑張ったおかげで足りないからな。」
そもそもRシステムに必要な条件全てを防いだ今では計画は延期せざるを得ないのだ。それにジェラールも本気だ。仮に魔力が足りていたとしてもエルザもろともエミヤを消すつもりでいる。
「させるか!!」
体力を残していたナツがこの隙を着いて攻撃を仕掛ける。
「邪魔だ!!貴様も逝け!!」
思った以上に冷静で周りの気配に気を配っていたのか、ナツの我武者羅な突撃は防がれる。
突っ込んだ勢いを利用されて蹴りを腹部の深くまで打ち込まれ、そのまま蹴り飛ばされエミヤ達の元まで飛ばされる。
「ナツ!!」
「これで仲良く逝けるな!!」
球体は更にドス黒く、気味の悪い魔法に変わる。三人を確実に仕留められるくらいまで。
「エルザ!!どけ!!」
ナツの声が虚しく響く。変わらずエルザは動く気はない。
「お前は心配するな。私が守ってやる」
「ああ。お前達はオレが守る」
いつの間にかエルザの前にはエミヤが立っていた。残った腕に魔力を纏わせ形だけでもアイアスの機能を保たせる。
「やめろお前ら!!」
「
考えなくても威力は分かってしまう。触れたら待っているのは死だ。
絶対に受けてはならない一撃は、無慈悲にも着弾する。
―――――三人ではない何者かに。
「シモン・・・?」
ナツやエルザだけではない。魔法を放ったジェラールでさえも一瞬無になっていた。
「エ・・・ルザ・・・」
力尽きてその場に倒れる。彼もその身に受ければ死は免れないと分かっていたはずだ。だが飛び出して来て、その身を捧げた。
それは昔の思い出だった。かつて憧れて惚れた女の子の役にたちたかったという願いだった。
それが結果としてエルザ達の命を救い、シモンという男は命を捨てた。
魂が死んだ肉体はもう二度と目を覚まさない。人は一般的にそれを死と認識する。
「イヤァァァァ!!」
エルザが滅多に出さない悲鳴。それが引き金となって一頭の竜が動いた。
「くだらん!!実にくだらんなぁ!!そういうのを無駄死って言うんだぜ!!」
「黙れ!!」
ナツの拳はジェラールに今までで一番のダメージを与えた。
「ごはァ」
吐血し、確実にダメージを負っている。
「お前・・・何を・・・」
ナツの手から腕をつたって血が流れていた。それの更に上、両手に握りしめられて砕けているのは一対の中華刀。エミヤが担う干将莫耶の刀身だ。
「ナツ・・・まさかお前・・・」
これにはエミヤも驚きを隠せない。何故ならナツが今行っている行為は通常ならばありえないことだからだ。
(宝具の、いや英霊の魔力を喰っているのか!?)
一頭の小さき竜は今この一瞬だけ英霊をも凌駕する。
正直やっちまった感がエグい・・・今更だけど
エミヤさん頑張り過ぎる→魔水晶の魔力が原作以下→エーテリオンの魔力食っても原作以下じゃね?→宝具を取り込めばどうなる?
という一日クオリティのガバガバ設定です