Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】 作:たい焼き
最近、六魔将軍と呼ばれる闇ギルドの活動が活発であるという情報が出回っている。
他の追随を許さないその危険性故に、正規ギルド達は連合軍を結成。妖精の尻尾、青い天馬、蛇姫の鱗、化け猫の宿の四つのギルドから実力者を数人選び出しての少数精鋭部隊での攻略が主な作戦である。
妖精の尻尾からはS級魔導士のエルザを筆頭としてナツ、ハッピー、ルーシィ、グレイといつもの最強チームが、青い天馬からはホステスのような格好をしているヒビキ、イヴ、レンと色物枠の一夜の四人が、蛇姫の鱗からはかつてナツ達が敵対したグレイの兄弟子であるリオンとシェリーにマカロフと同じ聖十大魔導の一人であるジュラが、化け猫の宿からはか弱い少女、ウェンディとハッピーと同じ猫のシャルルが参加した。
連合の魔導士達の作戦がほぼ全員を囮として六魔将軍を一箇所にまとめ、魔導砲を搭載した魔導爆撃艇『クリスティーナ』で跡形もなく消し去るというものだ。
過剰かもしれないが奇襲としての効果は高く、逃しにくい点では群を抜いているだろう。
だがその作戦は失敗した。というより筒抜けになって先手を打たれた。
六魔のメンバーの中に人あらゆるものをコピーして姿形から記憶や性格まで写し取る魔法の使い手がおり、それによって一夜がすり替えられ、作戦を敵に知らされ、更にジュラが深手の傷を負った。
作戦の要であったクリスティーナが無残な姿に変わり果てて落ちていく姿を見ながら悪が姿を表した。
毒蛇を使う毒の魔導士『コブラ』速さを操る魔導士『レーサー』天眼の異名を持つ『ホットアイ』心を覗けるという情報がある『エンジェル』情報が少ないが『ミッドナイト』と呼ばれている男、そして六魔将軍の司令塔である『ブレイン』
この六人だけで闇ギルド界の頂点の一つを担っているというのは紛れもない事実であり、実際に奇襲に近い形だが現在進行系でナツ達連合軍を相手にして圧倒している。
唯一冷静に対処しながら戦えているエルザ六魔を複数人相手にするのは厳し過ぎた。やがて押され始め、コブラの毒を受けて戦闘不能にまで陥る。
「ここまでだな。まとめて消えるがいい」
流石は闇ギルドの頂点の司令塔。少なくとも置物ではない。ナツ達も感じたことのないくらい巨大で邪悪な魔法によってナツ達を消し去ろうとする。
が、既の所でそれを止めた。
「・・・ウェンディ?」
「え?」
後に判明するのだが、ウェンディはナツと同じ滅竜魔導士で天空を司っている。今回の作戦に参加したのもナツに会えるかもしれないからというものだった。
そして天空の滅竜魔導士は失われた魔法である治癒に特化している。それがあれば六魔が重要視しているある男を治療できるからだ。
「これはいい拾い物をした。来い」
ブレインの魔法でウェンディと助けようとしたハッピーが捕らえられる。そしてブレインが魔力を集中させる。今のナツ達ならば容易く戦闘不能にできるほどの魔力だ。
これに対して今のナツ達には対抗手段はない。それが放たれようとした瞬間だった。
『おい。いつまで遊んでいる?』
ブレインの魔法が止まった。貯められた魔力が霧散し消える。
「お、王よ!!今しばらくお待ち下さい!!もう終わります!!」
突然ブレインが跪いた。残りの六魔も、寝ていたミッドナイトも起きてそれに従う。
『ならば私にやらせろ。それで終わりにしてやろう』
ブレインの魔力なぞ比較にもならないほど黒く暴力的な魔力が森の奥から溢れ出して来る。それに当てられただけで並の人間は失神してしまいそうだ。実際に六魔のメンバーですら震えている。
「ですが王よ!!わざわざ貴方様の手を煩わせる程ではございません!!」
『くどいぞブレイン。私は一宿一飯の恩を返すためだけにここにいる。貴様がそれさえいらないというのであれば、貴様らから真っ先に切り捨てる。私も暇ではないからな』
「ッ・・・!?」
魔力による重圧、それだけでブレインは口を閉じた。
「なんだこの魔力は!?」
深手を負ってなおも立ち上がって来たジュラと一夜が後から合流するが、すぐにあの魔力に飲まれてしまった。
「・・・貴様らの始末は我らが王が自ら行うとお決めになられた。そこを動くなよ」
動けない。怪我やダメージの問題ではない。あまりの存在感によって金縛りのようなものになっているからだ。
「・・・ほう。面白い力を持った子がいるな」
魔力の持ち主が姿を表した。背丈で言えばナツやルーシィと同等以下と小柄だが、その存在感は明らかに人の上に立つ王そのものだ。
黒いバイザーのような物で顔を隠し、黒く染まった甲冑が溢れ出る魔力とよく合う。声から判断すれば女性であるとわかる。
「貴様らがブレインの言う光側の存在か。なるほど、こいつらとは大違いだな」
「なんでだよ・・・なんでお前から竜の匂いがするんだよ!?」
力を振り絞って立ち上がったのはナツだった。それにグレイやリオン達が続く。
「わかるのか?簡単なことだ。私の心臓が竜種のもの。ただそれだけのことだ」
「何訳のわからんことを!!」
グレイが得意の氷の魔法を放つ。リオンがそれに続き、それが周りに伝わり、次々と魔法が打ち込まれて行く。
撃ち切って巻き上がっていた砂煙が晴れる。だがそこには全くの無傷で立つ王の姿があった。
「嘘・・・全部当たってたはずよ!?」
その光景を見ていたルーシィが驚愕の言葉を零した。砂煙で見えなくなったとしても始めのうちは確実に当っていた。
「もう終わりか?一時の抵抗は許した。では消えるがいい」
王が漆黒に染まった剣を振りかぶる。それに魔力が集中し始めるが・・・。
「火竜の咆哮!!」
ナツが渾身の力でブレスを放つ。
「むっ」
不意の一撃で炎に飲まれる王。
「どうだ!?」
「悪くはないが、惜しかったな」
炎が消えた後にはやはり無事な様子で立ち塞がる王がいた。だが甲冑がほんの少しだけ焦げているのがわかる。
「なんでだ?なんで効かねぇんだ!?」
「そうか・・・その圧倒的な魔力、そして存在感。サーヴァントか!?」
「ほう、それを知っている輩がまだ居たか」
「サーヴァント?それって何処かで聞いたような・・・」
「ジュラさん、何なんですかそれは?」
一旦仕切り直しを図るべくお互いに距離が取られる。
「以前ワシが世話になった人から聞いた者達のことだ。その人もそれに当たるが。過去の有名な英雄達を使い魔として召喚された規格外だ」
「そうだ。私は確かにサーヴァントだ。もっとも、ブレインの奴をマスターとしているわけではないがな」
「ついでにサーヴァントにはクラスがある。私はセイバーのクラスで召喚され、そのスキルの中に対魔力というものがある。それのランク以下の魔術や魔法の類は私に触れた瞬間に無力化されるし、それ以上でも軽減できるというものだ」
「じゃあなんでナツの咆哮は通ったんだよ?」
「それは相性だろうな。滅竜魔導士なんだろう?そこの小僧は。先程も言ったが私は竜の因子を持っているからな」
魔導士達は皆黙る。今のままでは絶対に勝てないと本能的に察してしまう。
「さて、話過ぎたな。これで終わりにしよう。貴様らの健闘に敬意を示そう。運が良ければ生き残れるであろうな」
再度漆黒の剣に魔力が吹き込まれる。それを振り抜くと魔導兵器にも匹敵する魔力放出がナツ達を襲う。
「岩鉄壁!!」
それに対して比較的ダメージの軽いジュラが魔法で防ぐ。大地そのものを固くした壁はあと一歩の所まで追い詰められるが防ぎ切る。
「ほう、防ぐか。だが二撃目はどうする?」
再び振り抜かれた剣。そこから放たれたのは先程よりも明らかに強力な魔力放出。下手をしたらジュピターすら軽々と超えるかもしれない。
「ぬ、オォォォォ!!」
限界を迎えていた壁が破壊寸前にまで追い詰められる。
「くっ・・・万事休すか」
膨大な魔力が爆発し、辺りが閃光で埋め尽くされた。
光が収まる。辺り一面が更地になっているが、ナツ達も六魔も無事であった。
「一体何が・・・王?」
黒い魔力が通った道、それは大地を抉ったが、それを遮るようにボロボロになった剣が地面に突き刺さっていた。
それは魔力の粒子になってすぐに消えたが、それが誰の行いかはその人物を知っている人ならばすぐに察せた。
遥か上空、そこから飛来する数本の剣が王のいる場所に殺到する。
それを持ち合わせている直感スキルで気付いてすぐに六魔の方に引いた。
そして何かが地面に着地し、砂埃が巻き上がる。
「・・・そんな・・・どうして貴方が・・・いや、奴はこれを知っていた?」
意外にも一番同様していたのは王であった。
「この魔力は!!」
「クソ・・・やっぱアンタはかっけーよ」
「流石にタイミングが良すぎるぞ・・・」
妖精の尻尾を中心に湧き上がってくる希望。それの体現者が現れた。
砂煙の中で紅い外套を翻し、敵と守るべきものの間に立ち塞がった。
「エミヤだ!!」
「・・・」
「・・・」
王と正義の味方。二人のサーヴァントがお互いに向き合う。
「おいブレイン。貴様らは邪魔だ。とっととここから消えろ」
「・・・はい、仰せのままに」
それに呼応して六魔将軍は姿を消した。
「ナツ、それに他の皆、今すぐここから立ち去るんだ。ついでに六魔を追え」
「でもエミヤ!!アイツつえーんだから皆でやった方がいいだろ?」
「だといいがね・・・はっきり言おう。ここにいる奴は全員邪魔だ。聖十のジュラも含めてな」
全員が驚く。いきなり戦力外通告をされればそれはそうなる。しかし反論の言葉をエミヤが許さない。
「彼女の正体を知りたいか?かの英霊は生前は見た通りの王でね。治めた土地はブリテン島。それも神秘が残っている最後の時代と呼ばれた五世紀後半から六世紀前半のことだ。そして彼女が担った剣は最強の聖剣と名高い・・・」
エミヤが振り返る。そしてその先の言葉で皆が驚愕する。
「聖剣エクスカリバー・・・持ち主はアーサー・ペンドラゴンだ」
王ことアーサー王がバイザーを外す。色の抜けた冷たい髪と目があった。
「久しいなアーチャー」
「どういうわけか、私が知っている彼女とは反転しているがね」
エミヤの頬から一筋の汗が流れる。
「皆、一旦引こう」
ジュラがまずそう言った。ここでは語られていないがジュラは過去に一度エミヤと試合をしたことがあったからだ。サーヴァントの実力というものを一番理解している。
「ワシは昔エミヤ殿と戦ったが、手も足も出なかった。ここに居ても邪魔になるだけであろう。エルザ殿の件もある」
「うちの馬鹿達を頼んだぞジュラ。」
手痛いダメージをもらっているからか、ナツも意外に素直だった。
「エミヤ!!絶対に無事で帰って来いよ!!」
ナツがエミヤに向けて拳を突き出す。
「ああ、私に敗北は無い」
エミヤがそれに合わせた。結束を示す願掛けのようなものだ。
エルザを抱えて皆が離脱していったのを見届けたエミヤは再び前を向く。
「ようやく二人になれたな、シロウ」
「そうだな、セイバー」
セイバーにとっても、エミヤにとっても、お互いは深い縁で結ばれた相手だ。
思い返せば第五次聖杯戦争の後から一度も彼らは会うことがなかった。
「そういえば、君は反転しているのか?にしては随分と大人しいな」
「ああこれか?最初は普通だったんだがな。現界した瞬間あのニルヴァーナとかいうものの影響を多少は受けたのかもしれん。性質はあの青い方だが精神的にはオルタに寄ってるのかもな。あの魔女の短剣で刺せば元の青いのに戻るだろうな」
「そんないい加減な・・・」
なら戦わなくてもいいんじゃないか?という考えが一瞬横切った。
「まあそんな些細なことはどうでもいい。重要なのは私が悪でシロウが善ということ。貴方がまだ正義の味方であるのなら、やることは変わらんだろう?」
「フッ・・・なら私がよくある英雄譚の世界の命運を担った勇者で、君が悪の魔王ってところか?」
「囚われの王女に決まっているだろう馬鹿者」
「・・・なんでさ・・・」
干将・莫耶を投影する。この剣はかの聖剣に比べれば何ランクも見劣りするが、決して敵わないものではないと自負できる。
「シロウ・・・この際ハッキリ言っておこう」
「なんだね突然?」
「アルトリア・ペンドラゴンがあの時衛宮士郎に言った言葉を覚えているな?」
忘れるはずがない。あの言葉はセイバーと出会った時と同じく摩耗した守護者生活の中でも決して忘れなかった言葉だ。
「シロウ、私はお前が欲しい。他には何もいらないと誓える」
魔力の放出で更地になっていた土地に巨大な黒い柱ができる。
「私と一緒に来い。私が貴様を幸せにしよう」
差し出された手は黒い甲冑で染まっていたが、それは甘美な誘惑のようでつい手を取ってしまいそうになる。以前の私ならば迷うことなくこれを受け入れただろう。だが。
「・・・セイバー。オレ、今妖精の尻尾ってギルドに居るんだ。毎日うるさくて手を焼いているけど、楽しいんだ。あの時と同じくらいに。」
「ああ、見ていれば分かる」
「だからさ、お前に着いて行くことはできないよ、セイバー」
「だろうな、ならば勝って力尽くで連れていくまでだ」
「・・・フッ!!」
エミヤも戦闘態勢に入る。かのアーサー王にも決して見劣りしない程巨大で透明な魔力が溢れ、黒い柱の隣に同じ巨大な柱を作り出す。
「ならオレが勝ったら君を貰おう、セイバー!!」
「来なさい、シロウ!!」
漆黒の聖剣と黒白の夫婦剣、常勝の騎士王と錬鉄の魔術師の剣戟が始まった。
Twitterのハッシュタグで最初の星4がママで星5がパパってタグあったけど、
うちだとエミヤとアルトリアになるんじゃが。やっぱり?