Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】   作:たい焼き

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多分今年のGW最後の投稿です。


究極の一と無限を担う者

 グレイが蛇姫の鱗のリオンとシェリーと共に六魔のレーサーを下した。

 

 レーサーの圧倒的な速度で終始苦戦を強いられたが、リヨンがレーサーの魔法が自身の速度を上げる物ではなく、他者の体感速度を下げる魔法だといち早く気づき、グレイを自分たちから引き離した所をグレイに狙撃させて勝利を収めた。

 

 ルーシィとヒビキが六魔のエンジェルを倒した。

 

 エンジェルの所有する星霊の『ジェミニ』『スコーピオン』『アリエス』がルーシィの主力の星霊達を完封し掛けていたが、二人の星霊を愛する心はルーシィの方が上だったらしく、ジェミニがルーシィへの攻撃命令を拒否、その隙をヒビキから貰った魔法『ウラノ・メトリア』を発動してエンジェルを倒した。

 

 六魔のホットアイが寝返った。

 

 ジュラと交戦していたホットアイが六魔を裏切った。起動したニルヴァーナという魔法の効果は『光と闇を入れ替える』つまり善は悪に、悪は善に入れ替えられる。それには心も含まれ、金に固執していた本当の理由を思い出し、ジュラと和解した。

 

 だがニルヴァーナは復活してしまった。唯一隠し場所を知っている男であり、かつて己の願望を叶える過程でナツ達と死闘を繰り広げたジェラールが封印を解いたのだ。

 

 それと同時に自立崩壊魔法陣をニルヴァーナと自分に仕掛けた。記憶を失った自分が罪を犯していたと薄々感じていて、それを償うという意味を込めてのことだった。

 

 だがその魔法陣はブレインによって無効化されてしまった。そもそも自立崩壊魔法陣はブレインが開発した魔法の一つであり、それらを都合の悪いように使われた時のためにマスターキーかなにかを設けていたのだろう。

 

 それによってニルヴァーナは完全にブレインの支配下となった。

 

 ニルヴァーナとは超大型の移動兵器であり、これを開発したニルビット族が築いた古代都市そのものでもあった。

 

 ニルヴァーナは起動する際に光と闇の狭間にいるもの、つまりその境界線で揺れ動いている物を無差別に入れ替える。

 

 その直前にリオンが死んだと勘違いしたシェリーや弟を探す資金のために六魔で行動していたホットアイが入れ替わった。

 

 シェリーはその後に追いついて来たリオンの姿を確認したことで元に戻ったが、どちらにせよニルヴァーナという魔法をこのまま放って置くことは出来ない。

 

 完全に起動したニルヴァーナはタコのような足が六本あり、それが地面に接続されることで魔力を吸い上げ、兵器の動力源を動かしている。

 

 それを離れた位置で確認したエミヤとセイバーが剣戟を止めて仕切り直しを図った。

 

 セイバーに大きな傷は無いが、鎧の至る所に細かい傷があり、魔力放出を攻撃や防御に回したことで魔力も消耗していた。

 

 一方エミヤはかなり限界が近かった。元々ステータスで大きな差があり、相手の魔力放出や直感スキルや磨き上げられた剣の技量など、常勝を誇ったとされているセイバー相手に苦戦を強いられている。干将と莫邪再投影も二十を超えた。

 

 ここまでエミヤが致命傷を負っていないのは己の保有スキルである心眼(真)の存在が大きい。これは後天的に身についた本物の心眼と呼ばれる物。幾度の戦場を乗り越えて会得した経験則による予想で相手の動きを先読みするものだ。

 

 エミヤの剣の技術は干将莫邪に合わせた己独自の物だが、その根底には在りし日に己のサーヴァントとして共に歩んだセイバー本人の物がある。誰よりも近くで魅せられたその剣は確かにエミヤの中にある。

 

 「セイバー、あれがニルヴァーナか?」

 

 「らしいな。よくない物を感じる」

 

 セイバーが魔力を放出して接近し、エミヤがそれを干将で受ける。放出された魔力によるブーストですぐに支えきれなくなり莫耶も合わせる。

 

 「フッ!!」

 

 そのまま振り抜かれて弾き飛ばされる。がそれすらも攻めの手段に変えてみせる。でなければここに至る前に火力で押し切られている。

 

 「ハッ!!」

 

 エミヤは吹き飛ばされながらも両手の干将・莫邪を投げつける。綺麗な弧を描いて飛んでいく様は夫婦剣の名に恥じてない。空いた手にすぐに弓を投影し、番えた剣の矢を一呼吸の間に三度打ち出す。

 

 「軽いぞ」

 

 干将莫邪が左右から、三発の矢が正面から迫り、それらが重なる瞬間はほぼ同時。だがセイバーそれすら神速の剣捌きで弾き切ってしまう。弾かれて後ろに逸れた剣達が着弾しその衝撃だけで地面を砕いた。

 

 「チィ・・・」

 

 「まだまだ行くぞ」

 

 セイバーが再び接近。再度の投影が間に合った干将莫邪で受けて流す。元々エミヤの剣術は防御に重きを置いた立ち回りをして、隙を見せた相手に重いカウンターを当てるのが基本だ。その防御はケルト神話の最強やギリシャ神話の最強と謳われる大英雄である『クー・フーリン』や『ヘラクレス』ですら容易く突破できるものではない。

 

 接近して離されてそのタイミングで遠距離攻撃を仕掛ける。それを何度繰り返したかも過去の彼方に消え去り、此度の打ち合いもこれで三十は超えたか。

 

 「相変わらず見る度に腕を上げるな、シロウは」

 

 「伊達に長い間現界させられてはいないさ。」

 

 例えば換装の魔法。エルザが得意とする魔法だが、それ自体は簡単で基礎的な魔法だろう。それで投影済みの宝具を取り出すのと一から投影したのでどちらが早いかと聞かれたら、答えるまでもない。あれによってエミヤの戦術の幅は更に広がった。

 

 「例えば、こんなのはどうだ?」

 

 「ッ!?」

 

 剣戟の合間。エミヤの両手の二撃以外に飛んでくる剣がある。セイバーの死角から飛んでくるそれは換装の魔法によって取り出されて発射された宝具だ。エミヤ本人が射線上に被らないように飛んでいき、また回収される。意識外から放たれたこれによって作られた隙は数多いし、そこを付かれて決定打を入れられかけたのも数知れない。

 

 直感スキルによる先読みでその企みを全て潰せているが、それがなければセイバーはとっくに負けている。

 

 「クッ、上手い分忌々しい英雄王よりも質が悪い」

 

 「そう言われて光栄だよ」

 

 ようやく攻めに転じれた。できればこのままの勢いで攻め切りたい。だがふと流れた汗と悪い予感でとっさに仰け反る。エミヤが居た位置を通り過ぎる真名開放並の魔力放出。当たれば間違いなく致命傷レベルのそれは、今まで出し損ねていた聖剣に貯められた魔力を上に振り上げる勢いで放ったものだろう。事実切られて宙に舞った数本の髪が一瞬で蒸発した。

 

 「しまった!?」

 

 瞬間に体中に鈍い痛みが走った。腹の辺りを思いっきり蹴られて体が水平に飛んでいった。近くにあった大岩に激突した。

 

 そこをセイバーがここ一番の速度で接近してくる。聖剣にはありったけの魔力を込め、上から袈裟斬りを仕掛けた。

 

 剣自体を叩きつけた衝撃と魔力の放出によって生じた爆発で大地は抉れたし、エミヤが居た位置の大岩は小石すら残さず爆散した。

 

 「居ない?」

 

 直後に走る嫌な予感。振り向く時間すら惜しく、剣を嫌な気配のする方に向ける。直後に走る金属同士がぶつかる音がする。エミヤは爆発する直前に離脱しており、剣を振りかぶって退避した上空から落ちてきていたのだ。

 

 「ッ、オォォォォォオ!!」

 

 「グッゥゥ!?」

 

 ここまでにエミヤが放った物の中で一番重い一撃。剣もいつもの干将莫邪ではなく『絶世の名剣(デュランダル)』、かのシャルルマーニュ伝説に登場する英雄が所有する、決して折れず、刃毀れもしなかったという伝説を持った名剣だ。

 

 アーサー王が所有していた勝利すべき黄金の剣(カリバーン)と同じく儀礼的な意味合いが強い剣だが、そこらの剣を寄せ付けない切れ味を誇った剣だ。

 

 落下した勢いに加え、強化の魔術で剣と身体能力を可能な域まで強化し叩きつけた。剣の硬度や切れ味、振り抜いた時の膂力は一時的とはいえ魔力放出時のセイバーのそれを上回った。

 

 受けたセイバーの体勢は良くなく、不動のままではいられず今度はセイバーが水平に飛ばされる。というより魔力放出での緊急離脱の方が近いが、これで直撃だけは避けた。

 

 「フッ、ふぅ・・・」

 

 乱れていた呼吸を整える。決定打には至っていないと察していたが、自分の限界が近い以上、どうしても焦ってしまう。

 

 ドゴンと大きな音と共に魔力が吹き上がり周りの地形が平らに均される。頭から軽く血が流れている程度しか負傷が見られないセイバーがエミヤとの差をこれでもかと示している。

 

 「・・・様子見はこれくらいでいいでしょう」

 

 「クッ・・・言ってくれる・・・」

 

 聖剣エクスカリバーが今まで以上に膨大な魔力を周りから吸い上げているのが分かる。より漆黒により不気味に、輝きを増していく。

 

 「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!!」

 

 「ッ!?投影、開始(トレース・オン)!!」

 

 あの暴風を防げる一手を手繰り寄せる。だがアレは反転していてもこの星の神々が作り出した最強の聖剣。人の希望が込められた最強の幻想(ラスト・ファンタズム)である。

 

 「―――――憑依経験、共感終了」

 

 何重にも並べられる過去の英雄達が担った名剣、聖剣、魔剣達。最強の神造兵器に対抗するには幾人もの宝具を重ねるしかない。

 

 「―――――投影、装填(トリガー・オフ)ッ、虹霓剣(カラドボルグ)赤原猟犬(フルンディング)刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)原初の火(アエストゥス・エストゥス)転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!」

 

 それらは生前も死後も守護者としても含めてエミヤが今まで視認して己の心象風景に貯蔵してきた武器達。どれもが後世に伝説として語り継がれている武器だ。

 

 これらはエミヤが創り出した贋作だが、エミヤもセイバーもそれが真作に劣るなどと欠片も思っていない。

 

 「約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

 

 聖剣から絶望が放たれる。軌道上のものを有機質も無機質も魔術的要素も全て飲み込んで蒸発させながらエミヤに迫る。

 

 「ッ全て持っていけ!!」

 

 号令と共に放たれた武器達は現状でエミヤが一度に投影し制御できる限界数と同等。数に表せば千を軽々と超える。

 

 それらをエクスカリバーの真名開放に向かわせる。それを究極の一と称するならば、エミヤのそれは文字通り無限である。次々と黒い閃光にぶつかって欠け始める剣達。

 

 「壊れた、幻想(ブロークン、ファンタズム)!!」

 

 まず先陣を切ったカラドボルグに着火した。次にそれに続いたフルンディングが連鎖した。内包された神秘が次々と連鎖爆発を起こし、真作のエクスカリバーの真名開放を爆風で飲み込んでいく。

 

 これによってエクスカリバーの魔力を幾らか減衰、可能ならば相殺して押し切るつもりだ。

 

 だがそこまで甘くはない。拡散した爆発では相殺はできなかった。だが確実に勢いは弱まった。

 

 「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

 

 突き出された右手に魔力が集中し、瞬時に七枚の花弁が展開されエミヤを守る七つの盾となる。

 

 エクスカリバーとアイアス。二つの宝具が激突する。余波で互いの視界全てが黒と紅の魔力で覆い尽くされる。

 

 片方は世界九大偉人の一人と言われた男の史上一の候補に挙げられるであろう槍の投擲を防ぎきった盾だ。使い手から離れた物に対しては絶対的な防御力を誇る。

 

 だがもう片方は人々の希望を担った最強の聖剣だ。減衰していてもその逸話に偽り無し。

 

 まず一枚目の盾。これが数秒で割れた。エミヤの顔が苦い物に変わる。

 

 続く二から四枚目の盾。これは拮抗すらできず押し切られた。エミヤが再度盾に魔力を込める。

 

 五と六枚目の盾。最後の一枚に全てを託したエミヤはこれを切り捨てた。

 

 最後の七枚目の盾。ここで防がなければ敗北、即ち死であろう。七枚目に今の己の全てを込める。この盾が守るのは自分だけではない。エミヤを信じてくれたナツ達や、ギルドで待っている妖精の尻尾のメンバー全員、それに己のマスターのためにここで倒れるわけにはいかない。

 

 「ハアァァァ!!」

 

 黒の魔力が消滅する。エミヤの盾が最強の聖剣に勝ったのだ。

 

 「流石だシロウ。だがな・・・」

 

 再度聖剣に魔力が集まる。エミヤの脳裏に絶望に近いものが浮かぶ。

 

 「今の私は後二回、宝具を真名を開放できる。その全てを防げるか?」

 

 「くっ・・・どこまでも規格外だな君は・・・」

 

 エミヤの中にはもう余力なんて無い。後二回の聖剣を封じきれる自信なんて無い。だがここでの降伏は絶対に許されない。

 

 何故なら、それがセイバーへの、自分を信じて待っている者達の、そしてなにより、己そのモノへの裏切りになるからだ。そんな姿をセイバーも見たくないだろう。

 

 「オレは幾度の戦場を越えて不敗を貫き通し、この身にただの一度の敗走もない。だろう?」

 

 「ふ、聞くまでもなかったな。では受けよ」

 

 二度目の約束された勝利の剣が放たれた。ならば次は己が見た最強に賭ける。

 

 「投影、開始(トレース・オン)・・・」

 

 己の全てを掛けてあの最強の幻想を打ち砕く。

 

 創造の理念を鑑定する。脳裏に浮かぶのは今目の前にある最強の聖剣。それがエミヤシロウの憧れた人が持つ最強だ。

 

 基本となる骨子を想定する。構成された材質を複製する。製作に及ぶ技術を模倣する。

 

 元々エミヤに与えられた解析魔術では骨子も材質も技術も理解するには程遠い物。それが神の手によって作られた物ならば致し方ない。だがそれでも何度も何度も憧れて目に焼き付けたその剣については己の固有結界のおかげでなんとか解析出来た。

 

 成長に至る経験に共感する。蓄積された年月を再現する。

 

 己の身にそれらを憑依させるということは、それを担ったアーサー王の生涯をなぞるということだ。何度も何度も反芻するように体に馴染ませる。これで外殻は投影した。だが魔力が枯渇しかけ、魔術回路が悲鳴を上げて熱を帯びる。だがまだ足りない。魔力をかき集める。体中の魔力を絞り出し、周りの魔力すら吸い上げて己の糧とする。今のこの身を肉体ではなく、剣その物とする。

 

 「あらゆる工程を凌駕し尽くし、ここに、幻想を結び剣と成す!!」

 

 完成した。漆黒の刀身ではなく、黄金色に輝く美しい刀身。溢れ出る魔力は黒ではなく希望に満ち溢れた輝ける光。最強の幻想は今ここに形となった。

 

 「見事ですね。シロウ」

 

 「行くぞ、セイバー!!禁じ手の中の禁じ手だ・・・!この投影、受け切れるか!?」

 

 「貴方の最強で私を超えて行きなさい!!シロウ!!」

 

 お互いが表裏一体の二つの聖剣を振りかぶる。二つの最強に魔力が集中し、地震という自然災害すら引き起こす。

 

 「束ねるは星の息吹、輝ける命の本流。受けるがいい、約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

 

 再び漆黒の聖剣が開放された。先程のそれすら上回った勢いを見せ、エミヤに迫る。

 

 「これはこの光は永久に届かぬ王の剣、いや、これは我が最強(すべて)を持って超えるべき最強(モノ)・・・」

 

 魔術回路が限界を叫ぶ。

 

 (まだだ。この程度で根を上げていては、セイバーの隣に立てない!!)

 

 「永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)!!」

 

 漆黒と黄金。二つの同質の魔力が激突する。両者は拮抗しあい、混ざり合って上空に魔力の柱となって伸びていく。それはもう大気圏すら貫いて宇宙にまで達する。

 

 次いで大爆発が起きる。樹海そのものすら消し飛ばす勢いで起きたそれは、エミヤにもセイバーにも大ダメージを与えた。

 

 セイバーの甲冑は見るも無残な姿になって壊れていた。元々魔力で編まれていたものだが、これでは使い物にならない。ダメージもしっかりと蓄積されていたようで、全身埃と傷だらけで血も流している。

 

 だがエミヤのそれはセイバーの比ではない。ダメージも傷もセイバー以上に受けており、進行形で流し続ける血はあと一歩で危険域に陥るだろう。加えて魔術回路が殆どオーバーヒートしていた。切れてはいなくてもすぐに安静にするべきだ。

 

 「・・・見事ですシロウ。貴方は確かに私に追いついてくれました」

 

 「ッ・・・」

 

 視界がぼやける。立ち上がることすらできないレベルも近い。

 

 「ですが残念です。まだ私には一度の真名開放ができる余裕がある」

 

 再び聖剣に集まる魔力。甲冑は魔力に変換され、美しい黒のドレスとハイヒールに変わる。

 

 「見る限り貴方はもう限界。ですが、貴方はこれすら防いでみせるのでしょうね」

 

 「・・・どう、だかな・・・」

 

 もう手はない。さっきのエクスカリバーで余力はすべて使い果たした。

 

 「これで最後です。シロウ」

 

 万事休すか・・・?と諦めかけたその時、己の中から希望と可能性が湧き上がってくるのを感じた。

 

 (これは・・・オレの中から?)

 

 セイバーは気付いていない。かつて騎士王が謀略で失った聖剣の鞘の今の持ち主が誰なのかを。

 

 「約束された勝利の剣!!」

 

 三度放たれた聖剣の魔力は寸分の狂いなくエミヤに迫る。

 

 「賭けるしかない・・・か。投影、開始・・・」

 

 内に秘めたる最後の希望を引きずり出す。それは展開すればあらゆる災厄から騎士王を守るとされた聖剣の鞘。

 

 「真名、偽装登録ッ!!」

 

 それから溢れる魔力の光は黒でも黄金でもなく七つの色で出来た虹色。持ち主に不老不死と無限の治癒力を与えるそれは、確かにエミヤの傷を和らげた。

 

 「其は、何れ我が至らなければならない場所。我はその時まで己を剣とし鍛え続ける。未だ我を待ち続ける人にこれを捧げよう」

 

 それは展開すればこの世全ての災厄から所有者を守る盾となる。

 

 「全てを賭けて目指す理想郷(アヴァロン)!!」

 

 アヴァロンとは役目を終えた騎士王が眠るとされる理想郷のこと。それの内側に所有者を入れて守る盾だ。

 

 これはたとえ最強の聖剣や世界最古の乖離剣ですら突破出来ない規格外クラスの最強の守りだ。

 

 「まさか・・・貴方がその鞘を持ち続けていたのですか!?」

 

 これにはセイバーも驚きを隠せなかった。

 

 三度の聖剣の真名開放を、無銘の英霊は確かに防ぎきった。未だ誰も至っていない偉業となるだろう。

 

 「・・・セイ、バー・・・」

 

 干将と莫邪が投影される。それをエミヤは投擲する。

 

 「ッ!?」

 

 セイバーは投擲された二つの剣を弾く。だが間髪入れずに第二第三の干将莫邪が投擲される。

 

 「これは・・・!?」

 

 ―――――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ、むけつにしてばんじゃく)

 

 「くっ・・・」

 

 ―――――心技、泰山ニ至リ(ちから、やまをぬき)

 

 セイバーはこれを知っていた。直接体験した訳ではないが、己が負けた技だからだ。

 

 ―――――心技 黄河ヲ渡ル(つるぎ、みずをわかつ)

 

 とある並行世界の記録であった。そこでかつてのマスターが繰り出した技。これがアーチャーの記憶から得た物だとしたら。

 

 ―――――唯名 別天ニ納メ(せいめい、りきゅうにとどめき)

 

 それが今のエミヤに使えない理由はない。

 

 ―――――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら、ともにてんをいだかず)

 

 無駄だと悟りつつもセイバーは何重にも投影された干将莫邪を弾き続ける。それが少しずつ己の行動範囲を削っていく布石だとしても。

 

 一際大きな、巨大な鶴の翼をイメージさせる白と黒の強化改造された干将莫邪。それを携えてエミヤが迫る。

 

 「ですが甘いですよ。そこッ!!」

 

 全体への魔力放出で一時的に干将莫邪を同時に弾き飛ばし、迫るエミヤに必殺の一閃を与える。

 

 ガキンと、金属を叩きつけたような音がした。

 

 「何!?」

 

 よく見れば先程までエミヤが持っていた干将莫邪だった。セイバーにはそれがエミヤに見えていたのだ。

 

 それが現界したエミヤが独自で開発した人に対してではなく、己の固有結界を応用して編み出した、世界そのものに働きかける幻術だと知る由もない。

 

 「セイバー!!」

 

 エミヤはセイバーの後ろに居た。既に防御も回避も間に合わない距離にまで近づいていた。

 

 「鶴翼ッ三連(かくよく、さんれん)!!」

 

 エミヤの剣が、セイバーの体を切り裂いた。




最後の方に今作でのエミヤのオリジナルの魔法が出てきましたが、後日設定の欄に解説を書きます。お待ち下さい。

あとアヴァロンに関してもオリジナルです。無い頭をフル回転させて考えた厨二の心ガン積みですが、生暖かい目で見守ってやってください。

次回は原作メンバーを活躍させたいけど、どうしようか・・・

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