Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】   作:たい焼き

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息抜きで投稿した小説なのに予想以上評価があったので、本命の小説を一時休載しようかと思ってる始末。


鉄の森

 「今戻った。総長(マスター)はおられるか?」

 

 捻れた巨大な魔物の角を片手で担いで妖精の尻尾の門を潜った女性の名は『エルザ・スカーレット』

 

 妖精の尻尾最強の女魔導師として名高い騎士である。当然実力も折り紙付きで、外部からも内部からもその名を二つ名と共に知られている。

 

 「お帰り!!総長は定例会よ。」

 

 「そうか・・・」

 

 エルザの帰還の挨拶にミラジェーンの返事が返って来る。その後に土産代わりに持ってきた角を床に下ろす。ズドッっという重い音と共に埃が舞う。よく床が抜けないと思う。

 

 「エ・・・エルザさん・・・そ・・・その・・・バカでかいの何ですかい?」

 

 「ん?これか?」

 

 ギルドのメンバーの一人が恐る恐る聞く。エルザは頼りになる仲間であると同時に、恐ろしく強く厳格で規律を重んじる性格のため、畏敬の念を持っている者も多い。

 

 「討伐した魔物の角に、地元の者が飾りを施してくれてな・・・綺麗だったのでここへの土産にしようと思ってな・・・迷惑か?」

 

 「い・・・いえ滅相もない。」

 

 周りからは驚きも声が上がっている。

 

 「それよりお前たち、また問題ばかり起こしているようだな。総長が許しても私は許さんぞ。」

 

 

 

 

 ルーシィはこの時確信した。総長が居ない状況でのボスは間違いなくエルザだ・・・と。

 

 「カナ・・・なんという格好で飲んでいる。ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸い殻が落ちているぞ、ナブ・・・相変わらず依頼板(クエストボード)の前をウロウロしているのか?仕事をしろ。・・・まあ今日のところはこの辺りにしておこう。」

 

 随分色々言ってませんでしたか!?これ完璧に委員長ね。それも風紀委員長と来た。

 

 かれこれ小一時間は説教をしていたのではないか?驚きつつもそれ以上に気になっていたケーキを一口頬張る。

 

 「口の中に風味が広がる上に程よい甘み。何これ美味しい!!」

 

 付け合わせに乗せられているのはいちごのみだが、それに合うように生クリームを調整しているみたいで、かなり相性良く仕上がっている。

 

 「ついでに砂糖も控えめにしている。だからあまり気にせず食べてくれ。」

 

 わお、女性の味方ですね。ちょっぴり嬉しいです。

 

 食べ終えたところでエルザと呼ばれている女性の方を向く。なんというか、口答えしてはいけないオーラが漂っている。

 

 「ところで、ナツとグレイはいるか?」

 

 「あい。」

 

 ハッピーが頭を下げて道を譲っている。やっぱり怖いのね。

 

 「「や・・・やあエルザ・・・オレたち今日も仲良し・・・よく・・・や・・・やってるぜぃ。」あ゛い」

 

 ナツがハッピーみたいになった!?いつも暴れているナツがここまで萎れて大人しくなるのも珍しいわね。

 

 「ナツもグレイもエルザが怖いのよ。」

 

 「ええっ!?」

 

 ミラさんが分かりやすく?図で説明してくれる。申し訳ないけど下手です。

 

 「ちなみにナツは喧嘩を仕掛けて、グレイは裸で歩いているところを見つかってボコボコにされている。」

 

 「あらら・・・」

 

 それよりグレイはよくわからないけど、ナツまでボコボコにされるなんて一体どんだけ強いの!?

 

 「二人とも仲が良さそうでよかった。」

 

 逆らう気が起こらない程ボコボコにしちゃえばそうなるわよね。

 

 「実は二人に頼みたい事がある。二人の力を貸してほしい。ついてきてくれるな?」

 

 エルザさんが放った言葉は皆を驚愕させるほどのことらしい。エルザさんからの頼みは二人からしても驚きだったみたいだが、それ以上に納得出来なかったらしく、エルザさんに食って掛かった。

 

 「詳しくは移動中に話す。明日までに準備しておけ。」

 

 エルザさんはナツ達に有無も言わさずに依頼の約束を決めてしまった。眼力だけでも怖いのに、実際の実力ってどんな物なの!?

 

 「ああ。それと忘れていたが、エミヤ!!」

 

 「・・・何かね?」

 

 私のいるカウンターの方に歩み寄ってくるエルザさん。エミヤさんは何もやってないはずなのに、何かあるのだろうか?

 

 「ん?君は・・・見ない顔だな。」

 

 「わ、私は新人のルーシィといいます。よろしくお願いしますエルザさん。」

 

 「私はエルザだ。それに私のことはエルザでいい。」

 

 「自己紹介は大切だな。それで、私に何か用かね?」

 

 「ああそうだった・・・実は・・・」

 

 何!?一体何が口から出てくるっていうの!?

 

 「しばらく依頼で街を離れていたからな。久し振りに甘い物が食べたいと思ってな。」

 

 ・・・へ?

 

 「ふむ。確かに君が依頼に出てからしばらく経つな。携帯食料では味に乏しいだろう。何がいい?」

 

 「そうだな。隣のルーシィと一緒のショートケーキを二つ頼む。」

 

 「分かった。ついでに紅茶もつけておこう。何がいい?」

 

 「アールグレイで頼む。」

 

 餌付けした上に飼い馴らしてる!?初対面で怖いというイメージが私の中で定着してしまったエルザが、主人に餌を求める飼い犬のように見える!?

 

 「了解だ。二つでいいんだな?糖分の摂り過ぎは体に良くないが。」

 

 「しばらく食べてないからな。今日くらいいいと思ってな。」

 

 「ふっ、君らしい。そういえば甘い物が好きだったな。」

 

 完全に二人の世界に入っていってるよあれ。ギルドの皆が怖れるエルザをああも簡単に飼い慣らすなんて、エミヤさんって一体何者!?

 

 「ああそうだ、ルーシィ。ナツ達の仲裁役としてエルザに着いて行ってくれないか?私も同行しようと思うが、二人も面倒は見れん。」

 

 え!?私が同行!?狂犬達の中に生まれたての子犬を放り込むようなものでしょ!?・・・私生きて帰れるかな・・・?

 

 ちなみにこの時は気が付かなかった。エミヤさんが参加すると宣言した時、エルザが帰ってきた時以上のざわめきが起きていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日 マグノリア駅ホーム

 

 

 早速修羅場になっていた。

 

 ナツとグレイは互いに殴り合いの喧嘩を始め、周りの迷惑を考えずに暴れる。辺りに積み込み待ちの荷物等があったが、そんなものはお構いなしである。

 

 「お前一人で行けよ!!オレは行きたくねぇ!!」

 

 「じゃあ来んなよ!!後でエルザに殺されちまえ!!」

 

 「迷惑だからやめなさいっ!!」

 

 これがエミヤさんが言っていた理由なのね・・・ナツとグレイの仲の悪さは話以上だ。これをハッピーだけで止められるわけがない。

 

 むしろハッピーは煽って楽しむ立場だもん。

 

 その上殴り合いの喧嘩を止めても、何かといちゃもんをつけ合っているため、収まる気はしない。

 

 「あ、そうだ。」

 

 私はいい策を思い付いた。

 

 「あ!!エルザさん!!」

 

 「よし今日も仲良くいってみよー。」

 

 「あいさー。」

 

 バカ面になりながら肩を組んで誤魔化そうとするが、当然エルザがいるわけがない。私が喧嘩を止めるためについた嘘だから。

 

 「「騙したなテメェ!!」」

 

 「あんたら本当は仲良いんじゃないの?」

 

 ここぞとばかりに叫んだ言葉は見事に同じタイミングだった。

 

 「何をしている?あまり周りの者に迷惑を掛けるな。」

 

 エルザさんの前に来たのはおそらく依頼時用の服装を纏ったエミヤさんだった。

 

 「あれ?エミヤさん、その格好は・・・?」

 

 紅い燕尾服を纏った姿から、戦闘用と思われる服装に変わっている。

 

 黒いボディアーマーを着込み、その上に紅いマントのような物を着ており、周囲から浮いてしまいよく目立つ。

 

 「む、これかね?これは私の仕事着のような物だ。それとも、あのまま戦闘を行うと思ったかね?」

 

 「そういうわけではないんですけど、珍しいなと思いまして。」

 

 「普段から着ていても、この外套は邪魔になるだけだからな。それより、エルザも来たようだ。」

 

 エミヤさんの言葉に続いて私も含めてナツ達も振り返る。

 

 そこには明らかに余計な物もあるであろう荷物を載せた台車を引きずって来ているエルザが居た。

 

 「すまない。待たせたか?」

 

 「いや、私は今来たところだ。ナツ達は待ちくたびれているようだがね。」

 

 ナツが不機嫌なのは多分それだけじゃないと思うけどね。

 

 「フン。何の用事か知らねぇが今回は条件つきでついてってやる。」

 

 「条件?言ってみろ。」

 

 「帰って来たらオレと勝負しろ。あの時とは違うんだ。」

 

 多分だけどナツは強くありたいんだ。その上戦闘狂だから自分よりも強い人と戦いたいんだと思う。

 

 「・・・すまないナツ。その条件は多分受けられない。」

 

 「何でだよ!?自信がねぇのか!?」

 

 「違うさ。実は私もこの件が片付いたら戦いたいと思っている人が居てな。・・・エミヤ。」

 

 「む?」

 

 柱に持たれながら腕を組んで様子を伺っていたエミヤさんが目をエルザの方へ向ける。

 

 「帰って来たら私と戦ってくれ。あの時の雪辱を果たしたい。」

 

 「・・・君も成長した。だが私は些か自信がない。それでもいいというのなら、相手になろう。」

 

 エルザさん程の人が苦い思いをするなんて・・・やっぱりエミヤさんって強いの?

 

 「どういうことだ?」

 

 「なに。君程の才能の持ち主ならば、まともな才能を持たぬ私のような者を目標にするべきではないと思っているのさ。」

 

 エミヤさんはあんなこと言ってるけど、結局エミヤさんって強いの?弱いの?

 

 間もなく来た電車に乗り込み、目的地に着くまでお互いのことについて話ながら過ごした。ナツがいつもの様に酔った所をエルザが鳩尾に重い一撃を打ち込んで沈めたくらいだ。

 

 「エルザはどんな魔法を使うの?」

 

 「エルザの魔法はキレイだよ。血がいっぱい出るんだ。相手の。」

 

 「妙な誤解を与えないでくれハッピー。それより私はグレイの魔法の方が綺麗だと思うぞ。」

 

 グレイが構えると冷気が吹き上がり、氷で出来た妖精の尻尾の紋章が手の平に現れていた。

 

 「氷の魔法さ。」

 

 もしかしてナツとグレイの仲が悪いのって、お互いの魔法が反発しあうから?

 

 「エミヤさんのはどんな物なんですか?」

 

 「私か?」

 

 「そういえば私もエミヤの魔法は見たことがないな。」

 

 「オレもだ。」

 

 同じギルドにいるのに知られてないなんて、理解できない超魔法とか!?

 

 「私はそんな上等な物は使えないんだ。精々換装魔法くらいだ。」

 

 才能がないって言ってたけど、それなのに一時期エルザに勝ってたってことは才能があるってことなんじゃ・・・

 

 「それよりエルザ、そろそろ本題に入ろう。一体何事なんだ?」

 

 「そうだな。話しておこう。あれは前の仕事の帰りだ。オニバスで魔導師が集まる酒場に寄った時、少々気になる連中が居てな。」

 

 エルザが話していた状況を纏めると、酒場に居たガラの悪い連中がララバイと呼ばれる物の発見して、それの封印を解いて何か起こそうという物だった。

 

 「そこで聞いたエリゴールという名。そいつは魔導師ギルド『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のエースで死神の異名を持つ男で、暗殺系の依頼ばかりを遂行してきた結果、ギルドごと闇ギルドとなったらしい。」

 

 恐ろしい通り名だ。暗殺ギルドは闇ギルドの中でも極めて厄介なため、かなり危ない仕事になりそう。

 

 帰ろうかな?電車から降りてからそう思ったため、もう遅いけど。

 

 「確かにギルド丸ごとひとつだと流石にエルザ一人じゃキツイか。」

 

 「そういうことだ。・・・鉄の森に乗り込むぞ。」

 

 「面白そうだな。」

 

 「あのー、お二人さん。楽しそうなところ悪いんだけど・・・ナツがいません・・・」

 

 「「!?」・・・しまった・・・置いてきてしまった・・・」

 

 「何をしている?忘れ物だぞ。」

 

 「エミヤ!?」

 

 後から遅れてエミヤさんが駅から出てきた。気絶していたナツを小脇に抱えて。頼りになります。

 

 「それと先ほどの電車にその鉄の森らしき魔導師が一人居てな。泳がしておいたら目的地について言っていたぞ。」

 

 それに仕事が早い!?優秀過ぎませんか!?

 

 「エルザ。魔導四輪車を借りて来てくれ。目的地はクヌギ駅だ。」

 

 「分かった。」

 

 エルザが車を借りに言っている間にナツの意識が覚醒する。

 

 「完全復活!!」

 

 「災難だったな。」

 

 まあこれから乗り物に乗るんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでエミヤ。そいつの特徴は?」

 

 運転手はエルザ。魔導四輪車は運転手の魔力を燃料として動くため、魔力が多い者が操れば必然的に速度も上がる。

 

 「そうだな。見た目は好青年といった所だが、魔力は闇ギルドらしく黒ずんでいたな。」

 

 「それだけではよく分からねぇな。他に何か特徴はあったか?」

 

 「そうだな・・・持ち物の影に三つ目のドクロがある笛があったな。」

 

 「何だそりゃ。趣味悪ぃ奴だな。」

 

 「見た目だけなら良かったんだがな・・・ルーシィは気付いたか。」

 

 「はい。もしもそれが呪歌だとしたら・・・」

 

 作り話で一つあるのだ。笛の音色を聞いた者全てを呪い殺す魔法の話が。

 

 「子守唄(ララバイ)、そこから繋がるのは眠り、そして死。」

 

 「その笛がララバイよ。呪歌(ララバイ)、『死』を司る魔法!!」

 

 禁止されている魔法の一つに呪殺という物がある。その名の通り、対象者を呪って死を与える黒魔法。呪歌はその上位とされている。

 

 「ふむ。奴らの目的はクヌギ駅周辺の住民を対象としたテロと行った所か。」

 

 「だったら急がないと!!」

 

 「そうだな。エルザ、運転を頼む。私は上にいる。」

 

 弓を展開して魔導四輪車の屋根に乗る。ここなら弓を引くのに邪魔になる物はない。

 

 だが何か気になる。テロを起こした所で得る物など快感くらいしかない。呪歌程の呪文を手に入れずとも出来ることだ。

 

 考えても頭に引っ掛かったそれが取れることはなく、居心地が悪いままクヌギ駅へと急ぐことにした。




この小説のルーシィは本家と比べて若干冷静なイメージ。

そしてエルザの胃袋は既にエミヤの手の内。

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