Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】   作:たい焼き

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妖精女王

 オシバナ駅

 

 クヌギ駅の次の駅の停車駅であるここは、現在厳戒態勢が駅員と軍の手によって敷かれていた。

 

 「遅かったか。」

 

 既に駅や軍の関係者と野次馬によって道が塞がれ、さらに様々な情報が出回り過ぎて状況が把握しづらい。

 

 だが負傷者は出ていても死者は出ていないらしい。

 

 「すまない。駅内の様子は?」

 

 「な、何だね君・・・ウボッ!?」

 

 いや、負傷者の大半はエルザが現在量産している。即答出来る者以外は要らないというわけだ。

 

 「妖精の尻尾の者だ。私達が追っている者達が犯人なんだ。入ってもいいか?」

 

 「おお、妖精の尻尾の方か!!できればそうしてください。」

 

 「すまんな。適切な判断に感謝しよう。行くぞ。」

 

 すんなり通してくれた駅員はかなり賢い人物と見た。より鎮圧する可能性の高い方を選んだのだからな。

 

 「何故だ・・・エミヤと私とのこの差は・・・」

 

 「良識があるかどうかの差じゃねぇの?」

 

 「ナツ、お前ぇだけには言われたくねぇよ。」

 

 「あんたにもよ、グレイ。」

 

 「無駄口を叩く暇は無い、行くぞ。」

 

 如何せん妖精の尻尾のメンバーは個が強過ぎる上に緊張感という物が足りない。

 

 「この先にいるぞ。各自、戦闘準備。」

 

 階段を上がり切った先、電車があるであろうホームから聞こえてくるのは、殺気を含んだ不気味な声。

 

 「よう妖精(ハエ)共。」

 

 鎌を持った男が、エルザの言うエリゴールという奴だろう。中々の魔力を持っている。

 

 「貴様等の目的は何だ?返答次第ではただでは帰さんぞ。」

 

 まともな返答をしてもただで帰すつもりもないのによく言う。殺気が駄々漏れだぞ。

 

 「遊びたいんだよ、仕事もないもんでね。」

 

 その言葉に続いて鉄の森メンバーが高笑いを上げ、エルザの表情は怒りに染まる。

 

 「まだ分かんねぇのか?駅には何がある?」

 

 風の魔法で風を纏い、空中に浮かび上がり拡張器を示すように拳で叩く。

 

 「呪歌を放送するつもりか!?」

 

 「そうさ。この駅には何百、何千という野次馬が集まっている。そこで死のメロディを流せばどうなるか・・・」

 

 「大量無差別殺人だと!?」

 

 「これは粛清なのだ。権利を奪われた者の存在を知らず、権利を掲げ生活を保全している愚か者どもへのな。この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。よって死神が罰を与えに来た。」

 

 エリゴールは空を飛んでどんどんオレ達から離れて行く。やはり何かおかしい。

 

 「『死』という名の罰をな!!」

 

 「そんな事したって権利は戻ってこないわよ!!」

 

 その通りだルーシィ。報復に返されるのはより大きな報復のみだ。そしてそれは積み重なるごとにより強大になっていく。

 

 「ここまで来たらほしいのは『権利』じゃない。『権力』だ。権力があれば全ての過去を流し、未来を支配する事だって出来る。」

 

 「アンタバッカじゃないのっ!?」

 

 「ああ、そうだな。妖精の尻尾のメンバーも馬鹿ばかりだが、ここまでたわけた奴らは中々に珍しい。」

 

 後ろでずっと睨みを効かせるのもいいが、少しばかり怒りを覚えていたからな。ここで少々言いたいことを言っても問題ないだろう。

 

 「全く、今ある平穏で満足していればいいものを・・・欲を出せば痛い目に見るのは必然だというのにな。」

 

 「何だとテメェ!?」

 

 「そんな先の見えない未来に縋るようでは貴様らの格もたかが知れていよう。」

 

 「言わせておけばテメェ・・・お前ら!!蝿共を殺せ!!皆殺しだ!!」

 

 エリゴールの命令に賛同し、オレ達目掛けて攻撃を開始する。

 

 敵は仮にも魔導師達だ。オレはともかく他は気を抜けばダメージは避けられない。

 

 切り込み隊長として敵の内の一人がルーシィに自身の影を使って攻撃を仕掛ける。

 

 だがこれは乗り物酔いから復活したナツの魔法によって防がれる。

 

 「後は任せたぞ。オレは笛を吹きに行く。」

 

 エリゴールが飛び上がってオレ達の攻撃が届かないであろう位置まで移動する。窓を割って隣のブロックに逃げ込むつもりだろうが、オレには大した問題ではない。

 

 何故なら、オレの本分は・・・弓だからだ。

 

 ―――投影、開始

 

 誰にも聞こえない声量で呪文を紡ぐ。

 

 借り物の黒塗りの弓と剣から変化させた矢を数本投影、一発はエリゴール本体へ。他はエリゴールの逃げ道の先に放つ。

 

 「ッ!?」

 

 だがエリゴールも一筋縄ではないようだ。迫る敵意に反応したのか体を翻して狙った本体の矢を弾く。

 

 「テメェ・・・どこまでも邪魔しやがって・・・」

 

 「そうそう好きにはさせないさ。それに気を抜く暇は無いぞ。次の矢は特別製だ。」

 

 オレはそう言い終える前には矢を既に構えていた。漆黒の幾つかの刃が細い芯に螺旋を描いて巻きつき、そのままやや外側に反り出したような外観を持ったそれは、北欧の英雄ベオウルフが振るった剣の劣化改造品。

 

 「喰らいつけ、赤原猟犬(フルンディング)

 

 魔力は大した量を込めていないが、それでも人を貫くには充分。

 

 黒塗りの矢から放たれた黒い矢は空気を切り裂き標的まで最短距離を選んで駆ける。

 

 「!?暴風衣(ストームメイル)

 

 慌てて繰り出した魔法は、自らの周辺に風を纏わせて攻撃と防御を兼ねた衣を作り出す魔法。

 

 それはギリギリ赤原猟犬を弾いた。だが衣には綻びが目立つようになったのが見えた。

 

 「危ねぇ・・・なんて威力の矢だ。だがこれでテメェの攻撃は効かねぇぞ。」

 

 「フ、浅はかだな。」

 

 「何・・・ッ!?」

 

 驚いただろうな。その矢は躾は悪いが優秀な猟犬だ。オレが健在である限り標的を捉えて離さない。

 

 壁に埋もれようが、地面に突き刺さろうが、どこまでも食らいついて行く。一撃では貫けなかろうが、叩く数を重ねれば鎧は次第に劣化していく物だ。

 

 「これはマズい!!」

 

 追い詰められたエリゴールが取った行動は逃走。当初の予定通りに窓ガラスを割って外に逃げ出す。

 

 「逃げるか・・・。ナツとグレイは放送室を確保しろ。エルザとルーシィはそいつらを頼む。」

 

 駅を任せてオレもエリゴールの後に続いて外に飛び出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「任されたぞ!!」

 

 ナツは口から炎を出して鉄の森のメンバーを蹴散らす。その隙にナツとグレイは駅のホームから姿を消した。

 

 「二人逃げたぞ。」

 

 ナツ達を追うために鉄の森からも二人追手で別れた。指から影を出す男と自らの影の形を変えて攻撃する男だ。

 

 「あらあら、レイユールとカゲは好戦的だのう。あんなの放っておいてお姉ちゃんと遊んだほうが楽しいだろうに。」

 

 「作戦の為だよ。お前よりずぅーっとエライ。」

 

 それでも鉄の森にはまだ戦力は残っている。これをエルザとルーシィで倒すのだ。

 

 それに残った連中は所謂下品な者ばかり。数で圧倒的に勝ってるために余裕なのだろう。品の無い事ばかり考えているようだ。

 

 「下劣な・・・これ以上妖精の尻尾を侮辱してみろ。貴様等の明日は約束できんぞ。」

 

 掲げた手には一本の魔法剣。だがそれ以上でも無い普通の市販されているような物だ。

 

 「珍しくもねぇ。こっちにも魔法剣士はぞろぞろいるぜぇ!!」

 

 魔法剣士の数人が前衛として突撃する。だがそれよりも早く動いたのはエルザだ。魔法剣士の実力は剣だけでは決まらない。担い手の実力が顕著に出るのだ。

 

 エルザは目にも留まらぬ素早さと華麗な動き、それに無駄のない剣捌きで敵を次々と切り倒して行く。

 

 「それなら飛び道具でッ!?」

 

 魔法を放とうとした時にはエルザは既に剣から間合いの広い槍に持ち替えていた。

 

 他にも双剣、斧、大剣と、その場の状況に合わせて武器を変えて攻撃に転じる。

 

 見惚れていた。とルーシィは後に語った。武器によって得意不得意が目立たないのは、どの武器も使いこなしている証拠だし、換装にラグも見られない。

 

 「エルザの凄いところはこれだけじゃないよ。」

 

 エルザは武器だけでなく鎧まで換装し始めた。通常は換装に時間が掛かり過ぎるために無防備になる時間ができるため、リスクが大き過ぎて誰もやらない。

 

 だがエルザの換装魔法は、類稀なる才能によってこれを可能にし、鎧の付加効果によって戦略の幅が更に広まる。

 

 彼女固有とも言える換装技術は、畏敬の念を込められてこう呼ばれる。

 

 騎士(ザ・ナイト)

 

 「舞え、剣達よ。」

 

 循環の剣(サークルソード)

 

 展開された剣の群れがエルザの意思に呼応して動き、鉄の森のメンバー達を切り裂く。

 

 鉄の森はあっという間に数を減らし、指で数えられる程度にまで減ってしまった。

 

 「こんのヤロォ!!オレ様が相手じゃあ!!」

 

 不意を付く攻撃も叫び声を上げては意味がない。相手に居場所を教えているような物だ。エルザは反応に遅れはしたものの、振り向きざまの一閃で確実に仕留める。

 

 「まさかコイツ!?妖精女王(ティターニア)のエルザか!?」

 

 それは妖精の尻尾最強の女魔導師であるエルザを指す二つ名であり、正規ギルド含めて多くの者に恐れられている名だ。

 

 瀕死の傷を負い、抵抗する手段を無くし戦意を喪失した鉄の森のメンバー達。現状を捨てて大きな賭けに出た彼らに残されたのは独房での貧しく惨めな生活のみとなった。




Grand Orderが配信されましたが、私のぐだおは始まりません

私のぐだおはエミヤが出てから始まるのです

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