Fate/Fairy Tail 錬鉄の英雄【無期限休載中】   作:たい焼き

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 リセマラの末、十連引いてようやくエミヤが出ました。おまけに星3の兄貴と、エミヤの伴侶のアルトリアさんが二人出ました。

 両手に花とはやりおるな唐変木。


呪歌

 駅を穴の中を通って出てきたルーシィ達は駅の外の光景に驚いて居た。

 

 魔風壁の余波によって街中の軽い物は全て飛ばされていたからだ。ゴミの類も飛ばされているため、結果的には綺麗になっているのだが。

 

 「うわっ、すごい風。」

 

 気を抜けば飛ばされしまいそうな程の強風は、まるで台風を思わせる。

 

 それによってスカートがめくれ、中の下着が見えそうになる。

 

 「姫!!下着が見えそうです。」

 

 「・・・自分の隠せば?」

 

 バルゴは主のスカートを隠そうとするが、逆にバルゴのスカートがめくれ、下着が見えてしまう。

 

 そこに追いついたオレは下着を見て顔を赤らめているグレイに実体化して拳骨を食らわせる。

 

 「呆けている場合か?戯け。」

 

 「ぐえ・・・すまねぇエミヤ。」

 

 「その辺りにして早く乗れ!!」

 

 エルザは魔導四輪車を用意して既に待機していた。だがオレ達が借りた物と細部が異なっている。

 

 「エルザ。この車はどうした?」

 

 「そこで借りて来た。」

 

 昔有名だった漫画作品の中に似たような物が摩耗した記憶の片隅にあった気がする。確か『ジャイアニズム』だったか?

 

 「それは盗むっていうんじゃないの?」

 

 気を失っていたカゲがいつの間にやら目を覚ましていた。幸い峠は超えたようで、ここから更に傷を負わない限りは命を落とすことはないだろう。

 

 「借りただけだ。問題ない。」

 

 「自信有りげな顔をしようが罪は消せんぞ。非常時だから致し方無いが。」

 

 魔導四輪車に乗り込む。後から三人が続いて乗り込み、最後にカゲを放り込んで出発する。

 

 「そういえばナツはどうした?」

 

 「あれ?ハッピーも居ないぞ。」

 

 「どうやら先に行ったようだな。」

 

 だがナツを一人で行かせたくなかったというのが本音だ。

 

 弱らせてあるとはいえ、ナツの炎はエリゴールの風と相性が悪い。追い風が吹けば炎は流されて届かないからな。

 

 「今は先に行くことを優先しよう。エルザ、魔力がキツイなら変わるぞ。」

 

 「いやいい。まだいける。」

 

 だがエルザも限界近い。今の状態ではまともに前が見えているかも怪しいところだ。それでも魔導四輪車をここまでの速度を出して走らせることが出来るとは・・・成長しているな。

 

 「だが無理はするな。私の負担が増えるからな。」

 

 「ああ、元よりそんなつもりはない。」

 

 だが魔導四輪車の速度は更に上る。口では冷静を装っているが、実質かなり余裕が無いように見える。

 

 「・・・なぜ僕を連れて行く?」

 

 カゲが力無い声で問う。もう彼に抵抗する力も無い。今の所は抵抗する気も無いらしい。

 

 「しょうがないじゃない。街に誰も人が居ないんだから。クローバーのお医者さんに連れて行ってあげるって行ってんのよ。感謝しなさいよ。」

 

 「何で助ける!?敵だぞ。そうか、僕を人質にエリゴールさんを止めようと・・・」

 

 「死にてぇなら殺してやろうか?」

 

 「なっ!?」

 

 静かに聞き入っていたグレイが口を開く。

 

 「生き死にだけが決着の全てじゃねぇだろ?もう少し、前を向いて生きろよお前等全員さ・・・」

 

 グレイはナツ達の世代では一番古くから妖精の尻尾に居る。年はエルザよりも一つ小さいが、現在の主要メンバーの中では纏め役になることも多い。だからこその意見であろう。

 

 服を脱ぐ悪癖さえ無ければ頼りになる存在だ。

 

 「私達妖精の尻尾のメンバーは皆、意味の無い殺生が苦手なんだ。だから君も罪を償って第二の人生を楽しむといい。」

 

 「・・・」

 

 鉄の森と妖精の尻尾。二つの対極とも呼べるギルドの空気が、カゲの心を揺さぶり動かしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大分進んだはずなのだが、ナツはまだ見えてこない。オシバナ駅からクローバーへ進んだ途中にある峡谷に辿り着いた。

 

 ここは切り立った崖が多数存在しており、汽車は崖の間を縫うように高架橋を建てて通されている。

 

 そのため崖の間は風が強く、汽車自体もかなり不安定の中走っている。だがこの鉄道が無ければクローバーの街は物流の輪から外れ孤立してしまうため、かなり重要な交通機関と言える。

 

 現在線路を道路の代わりとして走っている魔導四輪車が一台。妖精の尻尾一行とおまけ一人を乗せて暴走気味で走行中だ。

 

 やがてやけに気温が高い場所に辿り着いた。

 

 自然の現象では有り得ない程の気温の上昇。それに有り得ない場所に出来た上昇気流。これを可能に出来るのは、感情によって火力を上げるナツの魔法くらいであろう。

 

 「ナツ!!」

 

 「お、遅かったじゃねぇか。もう終わったぞ。」

 

 足元には大の字になってボロボロになったエリゴールが転がっていた。

 

 「流石だな。」

 

 「ケッ」

 

 一方ナツに大した傷は見当たらなかった。おそらく初撃で決着が着いたのだろう。

 

 「こんなの相手に手間取りやがって。妖精の尻尾の格が下がるぜ。」

 

 「どこが!?圧勝だよ。な?ハッピー?」

 

 「元々ボロボロだったから微妙なトコです。」

 

 何はともあれ、これで鉄の森の計画も阻止された。後は呪歌を封印か破壊すれば完了だ。

 

 だがナツ達はエリゴールを打ち負かしたことでとあることを失念していた。まだ行動可能な鉄の森が居たことを。

 

 操縦者を失った魔導四輪車がひとりでに動き出す。カゲがエルザの代わりに魔導四輪車を操ってナツ達を仰け反らせ、自身の魔法で呪歌を回収したのだ。

 

 「油断したな妖精ども。笛は・・・呪歌はここで!!ざまあみろ!!」

 

 「あ、あんのヤロォォォ!!」

 

 取り残された四人と一匹(・・・・・)は急いで追いかけるが、車と人の足では出せる速度に差が大き過ぎる。あっという間に距離を離され、取り残される。

 

 だが周りを確認したエルザは本来そこに居るはずの男が居ないことに気付く。

 

 「・・・エミヤはどこだ?」

 

 一行の中でも特に目立っていた紅い外套の男の代わりに縄で拘束されたエリゴールしか見当たらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クローバーの町 定例会会場

 

 日が沈む一歩手前の頃、人々が本日の夕食の献立を楽しみにしているであろう時、魔導四輪車を走らせて定例会会場となっている屋敷に辿り着いたカゲが居た。

 

 計画の完遂という報酬が、ボロボロだった上に魔導四輪車を走らせて魔力が尽きかけているカゲを動かしている。

 

 (よし、定例会はまだ終わってないみたいだな。この距離なら十分音色が届く。)

 

 無意識に笑いが込み上げてくるのを抑えながら笛を握る手の力を強める。

 

 (ふふふ・・・ついにこの時が来たんだ・・・)

 

 「ほう?そんなに楽しみか?」

 

 ショックでカゲの心臓が止まりかける。誰も乗っていないはずである後ろの魔導四輪車から声が聞こえて来たのだから無理もない。

 

 おそるおそる後ろを振り向く。

 

 そこには、鉄の森屈指の実力を誇っていたエリゴールを無傷で倒した男、エミヤが腰をかけていたからだ。

 

 肘を座席の背に掛け、片足を組んでくつろいでいるが、中身は油断や隙といった雑念は淘汰され、鷹の目に似た威圧感をカゲに向けている。

 

 「テ、テメェ・・・どうしてこんなに早く・・・乗って居たとしても姿は無かったはずだ。」

 

 「さてな。その笛と君達の計画とやらに思考を割いていた分、私を認識出来なかっただけかもしれぬぞ。」

 

 実際はカゲが笛を回収したのを確認した瞬間に魔導四輪車に飛び乗りつつ霊体化を行って潜んでいただけであるが、そんなことは全く知らないカゲが結論に辿り着くことはない。

 

 「いくらテメェと云えども笛の音を聴けば死は免れないはずだ!!」

 

 笛に構えて吹く準備をするが、そこにエミヤが待ったを掛ける。

 

 「待ち給え。笛の音を聴くのが私一人と言うのは些か寂しかろう。ギャラリーは多いに越したことはないのではないかね?」

 

 「だったらどうした!?」

 

 「その笛を聴きたがっている人が他にもいるということだ。」

 

 その言葉の後で肩を叩かれる。同じく振り返ると指で頬を指される。

 

 「なっ!?」

 

 「ふひゃひゃひゃ!!」

 

 カゲをからかったのはやたらと背の低い老人。妖精の尻尾の総長である。

 

 「いかんいかん。こんなことしてる場合じゃなかった。急いであの三人の行き先を調べねば・・・おまえさんもはよォ帰れ、病院に。」

 

 この世の終わりを見たような顔をしながらその場を立ち去ろうとするマカロフ。

 

 (マカロフ・・・!!こいつ妖精の尻尾のマカロフだ!!)

 

 憎き妖精の尻尾の親に驚きながらも、標的の一人であるマカロフを呪殺するべく言葉回しを考え始める。

 

 「あ、あの・・・」

 

 「ん?」

 

 「一曲・・・聴いていきませんか?病院は楽器が禁止されているもので・・・誰かに聴いて欲しいんです。」

 

 おそうおそる口を開く。ここから先一歩でも誤れば死ぬのは自分だ、という重圧(プレッシャー)に耐えながら罠を張る。

 

 「むう?エミヤ。此奴は?」

 

 「ちょっとした私の知人です。この町に怪我の見舞いに立ち寄りました。」

 

 「ほう・・・気持ち悪い笛じゃのう。」

 

 「見た目はともかくいい音が出るんですよ。」

 

 「彼は笛が得意でね。期待していいぞ総長。」

 

 「・・・急いどるんじゃ一曲だけじゃぞ。」

 

 「ええ。よぉく聴いててくださいね。」

 

 (勝った。)

 

 笛を吹けば勝ちという条件を満たすための口実を作り出し、今真に笛を吹くために口を掛けようとしている。

 

 だがカゲはそれを吹くことが出来ずにいる。

 

 今までカゲは鉄の森の一員として今まで行動してきた。自分達から権利と仕事を奪った魔法界に復讐することを目的として来た。

 

 だがカゲには復讐に身を染めるだけの覚悟が足りなかった。正規ギルドを憎んで来たのは周りの影響を受け流されたのが大きいとも言えた。

 

 だからこそ今、妖精の尻尾の仲間を想う心に触れ、己の今までの行いとの矛盾に心が潰されそうになっているのだ。

 

 一体どっちが正しいのか、その答えを出すことが一人では出来ないのだ。

 

 「どうした?早くせんか。」

 

 マカロフの威圧が更に増す。それは先程のエミヤが見せた自分を認識させるためだけの威圧とは比べ物にならない程巨大な物だった。

 

 このままでは潰される。そう感じ取ったカゲが覚悟を決める。

 

 (吹けば・・・吹けばいいだけだ。それで、全てが変わる!!)

 

 「何も変わらんよ。」

 

 更に重圧が増す。

 

 「弱い人間はいつまで経っても弱いまま。しかし弱さの全てが悪ではない。もともと人間なんて弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だからギルドがある。仲間がいる。」

 

 その言葉はカゲの心に深く染みるが、それはカゲだけではない。後ろで様子を伺っていたエミヤの心にも浸透していた。

 

 (年を取ればそれだけ人間は熟すというわけか。)

 

 ただひたすら駆けた生前。エミヤは一人だった。カゲとの違いは確固たる理想を持っていたことだ。だがエミヤも不安が無かったわけではない。本当は誰かについて来て欲しかった。

 

 親しかった彼女達と共に歩めば、もっと多くの人を救えたかもしれない。

 

 だがエミヤという男は弱かった。彼女達を巻き込むことを恐れた。衛宮士郎に存在した心の弱さが理想を貫き通すことから目を逸らし、世界との契約の後に英霊エミヤが生まれたのだ。

 

 「強く生きる為に寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし、遠回りをするかもしれん。」

 

 「しかし明日を信じて踏み出せば、自ずと力は湧いてくる。強く生きようと笑っていける。」

 

 マカロフの説法を聞いているのはカゲ達だけではない。追いついたナツ達も、突撃しようとしたナツを止めた青い天馬(ブルーペガサス)四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)の総長、定例会に参加しているその他総長達も聞き入っていた。

 

 「そんな笛に頼らなくても、な。」

 

 (!?すべてお見通しだったか・・・)

 

 そう、マカロフは始めから気付いていた。気付いていたからこそ、やじろ兵衛のように揺れ動くカゲの心を正しい方へ向けるために説いたのだ。

 

 「流石だ総長。思わず聞き入ってしまっていたよ。」

 

 「お主なんと危険な真似させるんじゃ・・・あまり年寄りをからかうでない。」

 

 「だが私が居なくてもそうしていたのであろう?」

 

 「フッ、相変わらずじゃのう。」

 

 そして森の方からマカロフのストレスの時限爆弾であるナツ達もマカロフの方へ駆け寄ってくる。

 

 感激したナツ達は思い思いの行動に走る。

 

 ナツはマカロフの頭をペシペシ叩き、エルザは鎧を着ていることを忘れて抱き寄せマカロフの顔に打撃を与える。

 

 一件落着と思ったのも束の間。まだ諸悪の根源の処置が終わっていない。

 

 「カカカ・・・どいつもこいつも根性のねぇ魔導師どもだ。」

 

 「もう我慢できん。ワシが自ら喰ってやろう。」

 

 呪歌はドクロの口からどす黒い煙を吹き出す。邪悪に満ちた魔力の煙は怪物の形を作り出して行く。

 

 「貴様等の魂をな・・・」

 

 「な!?怪物!?」

 

 現れた怪物の名は呪歌(ララバイ)。魔法界の歴史上最も凶悪だった黒魔導師ゼレフが作り出した負の遺産。

 

 魔法その物が生きた怪物であるそれは、ただ自身の能力に従って行動する。

 

 「腹が減ってたまらん。貴様等の魂を喰わせてもらうぞ。」

 

 「やれやれ。怪物殺しは慣れているが、志願したくはないな・・・」

 

 皆が慌てる中、一人だけ落ち着いている者が居る。

 

 紅い外套を身に纏い、皆の前に立ち、皆に見せる背中が眩しい男が居る。

 

 「ゼレフ書の悪魔よ。丑三つ時はまだ先だ。貴様の髑髏は、己が墓標に掲げるがいい。」




相変わらず進行速度が遅い今日このごろ。

これ原作全部消費するのにどれだけ掛かるんだろう?

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