King's Souls ~二人の王子の物語~ 作:ヨイヤサ・リングマスター
それではシースを倒したその後の話をお楽しみください。
辺りに漂うは静寂。
その場にいる三人は誰一人として声を出すこともなくたたずんでいた。
「……なんとかこの国を滅ぼそうとした元凶は倒したな」
口の端から血を滲ませるライル。
口調こそ穏やかでいつものように明るいが、その腹にはシースの動きを抑えるために自ら突き立てたエクセレクターが今も刺さったままである。
「ラ……イルぅ……」
泣きじゃくるミーナ。
ようやく出てきた言葉も力なく、それを聞いたライルも悲しそうな表情になる。
「そんな顔するなよミーナ。
俺はこの国を救うために死ぬことに何の悔いもない。
ただ滅びに向かうだけだったこの国の運命と引き換えに俺の運命が終わるだけの話だ」
ライルの言葉に嘘はないだろう。
満足そうに、幸せそうに……笑う。
父を救い、国を救い自分の使命を全うしたことを誇ることはあっても自らの運命を恨むことはない。
「お前にも迷惑かけたなアリオナ。
結果的に俺の国の騒動に巻き込んじまって最後はこんな感じの別れになっちまうとはよ」
先ほどから微動だにせず、一言も言わないアリオナに声をかけるライル。
そしてライルを見つめるアリオナは胸の内で大きくなっていく表現できない感情をどうやって表現しようかと考えているような顔だった。
「ライル……僕は国を救うために自らを犠牲にした君の行いは素晴らしいものだと思う。
逆の立場なら僕も同じことをしただろう。
だけど! このまま君と別れるなんて納得できないッ!」
すでに致命傷のライルは自分の死を受け入れているのだろう。
ミーナも……辛いながらもライルとの別れを覚悟しているのだろう。
しかしそれでもアリオナにはこの無二の友の死を受け入れられなかった。
「ライル、僕は修行の旅としてこの国に来てよかったと思っているよ。
君やミーナと出会えたこのたびは僕にとって掛け替えのないものさ。
だから君をこのまま死なせはしない」
アリオナは自身の剣、イシリウスの加護を受けたボーレタリアに伝わるルーンソードとルーンシールドに魔力を込め始めた。
「アリオナさん……それは一体……」
ミーナはアリオナの意図が分からず困惑するがライルには分かった。
アリオナは自らの魔力と引き換えに今まさに燃え尽きようとしているライルの命を再び燃え上がらせようとしているのだ。
「ライル……僕は君を助ける」
そしてアリオナの魔力を歳代まで溜め込めたルーンソードをライルの腹部に刺さっていたエクセレクターに叩きつけて粉々に打ち砕いた。
それと同時にアリオナのルーンソードも砕けたが二つの剣の破片が空中に舞い散るとライルの傷に破片が集中し、みるみるうちに傷を塞いで行った。
「――――――っはぁ、はぁっ、はぁっ」
「アリオナ……お前……」
「僕の剣に込められていたイシリウスの力と、ライルの剣に込められていたライル自身がこれまでに得てきた経験のすべてと引き換えにして僕の魔力を繋ぎに使って傷を癒した。
おかげで僕は魔力を全て失って魔法が使えなくなったし、ライルはこの旅で得た経験のすべてを失ってしまったけどね」
アリオナの表情から察するに本来これは賭けだったのだ。
魔力や経験などで治せるほどライルの怪我は軽いものではなかったし、ライルは国と父親を救うことと引き換えに自らが死ぬという運命だったのだから。
だが運命は一つではない。
ライルが滅びに向かう国を救ったようにアリオナにもライルを救うために運命を捻じ曲げる力があったのだ。
「こんな別れはどうしても嫌だった。
だから僕は、君とはずっと友達でいたい」
「……まったく俺の友達は自分勝手だな」
互いに笑いあうライルとアリオナ。
「でもそのおかげで助かったんならライルは運が良かったと思うべきじゃないかな?
ほら、ミーナの笑顔の理由も君ならわかるだろ?」
ライルが視線をめぐらせればいつも自分の傍にいてくれたエルフの少女は涙を拭って満面の笑顔をライルに向けていた。
「ライル……助かったのよね?」
「ああ、アリオナのおかげで助かったよ。
お前にも心配かけたな」
失った血は戻らなかったために若干ふらつきながらも起き上がったライルはミーナの頭に手を乗せると優しくなでた。
「ミーナ、俺はもう死ぬと思っていたから言えなかったけど助かった今なら言える。
君に言いたかったことがある。
……ミーナ、俺と一生を添い遂げてくれないか?
俺はお前が好きだ!」
こんな状況で、と思うかもしれないがここにいるのは三人だけ。
ライルの一言は突然だったが確実にミーナの心に届いた。
「ライル、私も愛してるわ。
ありがとう」
これまで冒険を共にした中で育まれた二人の心の中に会った小さいが、確かに存在していた熱いものがアリオナの手助けで芽を出したにすぎない。
ライルは照れたような顔で、ミーナは涙を浮かべたまま驚きと嬉しさを滲ませながら、そして二人の気持ちに気づいていたアリオナはこの二人の行く末を思い浮かべて自分のことのように微笑ましくその様子を眺める。
「さぁさぁ二人とも。
これからが大変だよ。
闇の白竜シースを倒したことでこの国から魔物による被害は徐々に減っていくだろうけど問題は多く残っているんだから」
アリオナの声にハッとしたライルとミーナは思い出す。
ヴァーダイト王城は長いこと封印されていたために魔物による被害だけでなく、国としての体裁を保つことすらできないほどに人や物にも不足している有様だったのだ。
「こりゃ結婚式はしばらくお預けだな」
「私たちの国なんですもの。
すべてが済んでからでも遅くはないわよ」
アリオナはそこからは席を外した。
その後、国を覆っていた暗い雲が消え、明るい太陽が照らした城では一人の王子と一人のエルフの少女が永遠の愛を誓った瞬間だった。
これ以上その場にいるのは野暮というものだろう。
……
…………
………………
「陛下! 陛下!! 陛下ぁー!!!」
「なんだ騒々しい。
いったいどうしたというんだ」
先ほどのアリオナ達のいたヴァーダイトから遠く離れたボーレタリアの地。
この国の王は自室で政務をしていたところだったのだが騒がしい側近、『王の双剣』の一人、ビヨールがあわただしく扉を開けて入ってきたことに少しばかりの不満を見せていた。
「アリオナ様から手紙が届きました」
「そうか、中身はなんと書いてあるのだ?」
アリオナの手紙なのだから父であり、王であるボーレタリア王国のオーラント王が一番に読むのが筋なのだろうがその手紙はすでに開けられた跡があった。
おおかたアリオナからの手紙が読みたいがために待ちきれなくなったビヨールが先に開けて読んでしまったのだろう。
もちろんこんな所もビヨールらしさであり、ビヨールの良さでもあるのだから別段叱るつもりはないがその騒がしさは少し抑えてほしいと思ったオーラントでもあった。
「どうやらアリオナ様が修行に向かったのはヴァーダイトという国だったそうなのですがその国は長いこと悪しき竜によって支配されていたそうだったのですがアリオナ様がヴァーダイトの王子と協力して国を救ったことが書いてありました!
さすがはアリオナ様ですね陛下!」
手紙の内容を聞いたオーラントは手紙を受け取り、騒がしい側近を下がらせたあと自分でも読み返してみたが思わず笑みがこぼれた。
「……そうか、アリオナは国を出てからもちゃんと成長したんだな」
静かに浮かべるその微笑みは遠く離れた地にいる息子の成長を喜ぶ父親としての笑顔。
オーラント王は自分が若い頃に修行に訪れた地に息子も行き、自分の予想以上の成長を遂げたアリオナを誇りに思っていた。
「さて、魔物による被害が消えたといってもまだまだ問題は残っておろうしボーレタリアからも何かしら援助してやらんとな」
ここからは王としての顔。
オーラント王の計らいによって運ばれた支援物資やライルがシースを倒すまでに築いてきた人間関係によりシースを倒してからわずかの間にヴァーダイトは見る見るうちに元の姿へと戻って行った。
これにてヴァーダイトでのアリオナの修行は無事に終わったと言っていいだろう。
この旅で無二の友と出会い、人としても未来の王としても必要なものを得ることが出来たのだから。
人を信じること、友を信じること、そして何よりも人を想う慈しみの心。
経験によって身についたものは決して忘れない。
アリオナはそれからしばらく友であるライルのためにヴァーダイトに留まり、ヴァーダイトの地に住む民からも慕われるようになったそうな。
そして誰よりも立派な王になるのはそう遠くない未来だろう。
二人の王子の出会いと友情の物語 King's Souls
やっぱライルは助けないと駄目ですよね。
デモンズと混ぜたことでこの物語のライルは死にかけてしまいましたが、混ぜなきゃ混ぜないでミーナは死んでいたのですからライルが死にかける代わりにどのキャラも死なないハッピーエンドになったのは物語としてはまぁ良しとしましょう。
この物語は二つの話を混ぜることで都合良く人死にが出ないようにする物語です。
あと今回は設定資料集から、本来のキングスフィールド3のストーリーを短くまとめたものも同時掲載します。
丸移しではないですが、長ったらしかったのでかなり縮めています。
そういえばこんな話だったなぁ~とでも思い出していただければ幸いです。