King's Souls ~二人の王子の物語~   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 こっちの話はオーラント王を救うために書いてますが『読んで楽しむデモンズソウル』と違って全部のデーモンと戦ったりはしませんし設定もかなり違うものとなる予定です。

 しかしハッピーエンドでデーモンのほとんどを倒さない展開ってのはごり押しになりそうなんですよねぇ……

 言ってしまえば根幹を直接滅するような感じのラストになると思います。



デモンズ編
第十四話:立ち上がる二人


 ヴァーダイト王国の危機がライル達によって過ぎ去り、平穏な時間が流れていた。

 

 ライルが王として就任し、誰もが平和を信じ、人々が日々に希望を見出し徐々に国としても復興しはじめたこれからという時にそれは起きた。

 

 

「ライル陛下!、アリオナ様! 大変です!!」

 

 

 王であるライルの客人としてヴァーダイト王国の復興に尽力をしていたアリオナと、あまり政(まつりごと)は得意ではない大雑把な性格のライルは二人して書類の山に向かっていたのだがその場に現れた兵士によって作業は中断された。

 

 

「なんだ騒々しい、俺達は見ての通りこれだけの書類を今日中に仕上げなければいけないんだからつまらん事で時間とらすなよ」

 

 

「ライル、もう少し王としての威厳を持った方がいいよ。

 さっ、兵士さん。 一体どうしたんですか?」

 

 

 王になっても性格の変わらないライルと違い、さらに大人びてきたアリオナ。

 

 本来ならアリオナの修行は国を救った時点で終わったとみなしてもいいのだが、修行の期間が決まっている訳ではないので王として未熟なライルのためにもまだしばらくは逗留することになりそうだ。

 

 もっともアリオナの性格的に魔物に支配されていたヴァーダイト王国をもう少しまともにしておかなければ帰るに帰れないという思いもあったのだろうが。

 

 だがアリオナの考えとは裏腹に、現れた兵士の報告はアリオナを動かすことになってしまう。

 

 

「アリオナ様……アリオナ様の祖国、ボーレタリア王国が謎の霧に包まれ隔離されてしまったとのことです!」

 

 

「はぁっ!? そりゃどういう意味だよ。

 国一つ消えちまったってのか?」

 

 

「まさか……ソウルの業か」

 

 

 アリオナには心当たりがあった。

 

 ボーレタリアでは近年ソウルと呼ばれる人間の中にある新しい力が発見され、『魔術』や『奇跡』、武具の強化などの幅広い用途に使われていたのだ。

 

 そしてそのソウルの更なる探究は国の課題となっていたが、それと同時に危険なものであるとも思っていた。

 

 ソウルという便利すぎる新たな力は人の欲望を無限に増加させ、オーラントは王として大量のソウルを求めていたのも知っていたからだ。

 

 

「この報告をしてくださったのはボーレタリアの『王の双剣』の一人、ヴァラルファクス様です!

 ここに来た時にはすでに傷が深く、助かる確率は五分五分ですがいまこの城の治癒系魔術師と薬師に治療に当たらせています。

 アリオナ様もすぐにこちらにお越しください!」

 

 

 アリオナとライルは呼びにきた兵士に連れられてすぐに城の医務室へと向かった。

 

 

「(分かっている。

 きっと父さんは『楔の神殿』の奥へと踏み込んでしまったんだ)」

 

 

 

 『楔の神殿』

 

 そこはボーレタリアでも一部の人間しか知らないがデーモンの世界へと直接つながっている入口がある場所だと言われている。

 

 その場所が最初に発見されたとき、国の大臣達は年々増していく国民のソウルに対する欲を満たすためにもその神殿の研究をもっと進めるべきだと進言した。

 

 だがオーラント王は断固として首を縦には振らなかった。

 

 ソウルの業は人間に扱いきれるものではないから今からでも制限を設けるべきだといった。

 

 だがこれまで当たり前に仕えていた便利な力を今更捨てられない国民たちはその事で国に対する不満を募らせており、その事がオーラント王の頭を悩ませてもいた。

 

 だが、それでもソウルによる魔術を学問として体系づけた『賢者』フレーキ。

 

 ソウルにより奇跡を起こして民の心の救いとなっていた『司祭』ウルベイン。

 

 この二人が率先してソウルの力に制限を書けるオーラントを非難していたために魔術師、神職者双方からの大きな不満は大国とはいえ、ボーレタリアの存亡にかかわるほどに大きなものとなっていったのだ。

 

 

「アリオナ、そんなに心配するなって。

 俺だってボーレタリアの双剣の一人、騎士ヴァラルファクスの名は知っているがその人がそんなに簡単に死ぬはずがないさ。

 それにボーレタリアにはほかにも有能な人がたくさんいるんだからアリオナの親父さんもきっと無事さ」

 

 

「……ありがとう、ライル」

 

 

 希望的観測かもしれないがライルの言葉は友を心から気遣ったものであることを理解したアリオナはそうであってほしいと願いながらヴァーダイト王城の回蝋を駆け抜けていく。

 

 

 そして、医務室に駆け込むとそこには全身を血で染めた幼き頃よりアリオナを見守り続け、最も父の傍で国のために尽くしてきた騎士ヴァラルファクスの姿があった。

 

 

「ヴァラルファクスっ!!」

 

 

「おぉ……アリオナ様。

 ボーレタリアを出る前とは違い、随分と逞しくなられましたね」

 

 

 思わず声を荒げてしまったアリオナに対して優しい声をかけるヴァラルファクス。

 

 

「アリオナ様……申し訳ありません。

 陛……下は、楔の神殿の奥へと入られ、その瞬間より神殿から発生した霧によって国は隔絶されてしまいました。

 王の双剣の一人として、不甲斐ない限りです……」

 

 

 ヴァラルファクスが言うには、ソウルの力を求めるフレーキ、ウルベイン、それに国民や大臣の意見を無視しきれずに楔の神殿の奥へと一人で入っていき、神殿の入り口で待機していたヴァラルファクスが霧の発生によって異変を感じて中に入ってみると現れたデーモン達によって斬り伏せられ、気絶してしまったそうだ。

 

 その後すぐに目覚めたヴァラルファクスは一緒に来ていた部下が全滅していたために一人で神殿から脱出し、途中襲いかかってくるデーモンと闘いながらアリオナにこの事を伝えるためにヴァーダイトに逃れてきたのだという。

 

 

「申し訳ありません、アリオナ様……申し訳ありません……」

 

 

 ヴァラルファクスは、怪我を押してここまで来たとは言え、守るべき主君を守れず、部下を全員死なせてしまい、起こった出来事をアリオナに伝えることしか出来ない自分に対する悔しさが滲んでいた。

 

 

「いいんだヴァラルファクス。

 今はしっかりと怪我を治すんだ。

 ボーレタリアは……僕が救う」

 

 

 そう言ってヴァラルファクスに背を向けたアリオナは医務室から出るとヴァーダイト城に用意されていた自分の部屋に向かう。

 

 シース討伐の時に砕けてしまった愛剣ルーンソードの代わりとしてライルにもらった聖なる水の加護を受けた剣『バキュラシアソード』を腰に提げると少ない荷物をまとめて部屋を出る。

 

 

「一人で行くつもりかよアリオナ?」

 

 

 部屋の入り口に立っていたのはライル。

 

 

「これは僕の国の問題さ。

 ヴァーダイトもようやく国の立て直しの最中なんだから君がいなくなったら困るだろう」

 

 

 アリオナがそう言ったのは目の前のライルが旅じたくを整え、王のみが使える『聖王の鍵』によって守られていた王家の秘宝、『トリプルファング』を腰に提げていたからだ。

 

 

「その剣を持って来たってことは君も戦うつもりなんだろうけど今のボーレタリアは外界から隔絶されてどうなっているか分からない。

 それに敵は魔物なんて比べものにならないようなデーモン達だ」

 

 

「それで引き下がると思ってんならアリオナは俺のことをまるでわかってねぇよ」

 

 

 正面に立ってアリオナを見るライルの眼は見るまでもなく、炎のように熱くたぎっていた。

 

 

「俺の友の国が危機だって言うのに、それに動けない奴なんて友じゃねぇ!

 そしてそんな奴はヴァーダイトの王、ライルでもねぇ!

 俺は王として、アリオナの友のライルとしてアリオナを助けたいんだ!」

 

 

 さすがにそこまで言い切られてしまうと断るのは難しい。

 

 だがライルがそう言ってくれるのと同様の友情をアリオナ自身も持っているからこそ、今回の出来事にライルを巻き込みたくはないのだ。

 

 

「ライル、でも僕はやっぱり「そこまでよ、アリオナさん」……ミーナ」

 

 

 それでも断ろうとしていたアリオナの言葉を遮ったのはミーナ。

 

 すでにライルとの結婚式も済ませた事実上このヴァーダイトの国の王妃だ。

 

 

「ヴァーダイトのことも騎士ヴァラルファクスのことも私に任せなさい。

 アリオナさんはアリオナさんのしたいようにするのです」

 

 

 そしてミーナは今度はライルに向き直り、

 

 

「私はライルの誰よりも熱いところに惹かれて結婚しました。

 そのあなたが無二の友であるアリオナさんの国の危機を捨ておけないのは当然です。

 行ってらっしゃいませ、あなた」

 

 

 ライルはその言葉にただ頷くと再びアリオナを見る。

 

 

「そう言うことだアリオナ。

 一人より二人、俺はお前と一緒に行くぜ!」

 

 

 アリオナはもう止める気はない。

 

 ミーナにまで背中を押されてしまっては頼るしかないではないか。

 

 この友人を。

 

 

「分かったよライル。

 じゃあ行こう! ボーレタリアに!」

 

 

 こうして二人は霧に包まれたボーレタリアへと足を踏み入れた。

 

 その先が絶望であるとわかっているからこそ、希望の未来へと変えていくために。

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