King's Souls ~二人の王子の物語~ 作:ヨイヤサ・リングマスター
ヴァラルファクスは「デモンズソウル」ではボーレタリアのその後を外の国で伝えて死んでしまったようですが死なずに済ませるため「キングスフィールド」と混ぜたのですからもちろん助けます。
長きに渡り、大国ボーレタリアの王として誰もが日々の生活を幸せなものとして過ごせるように。
大切な人間が側にいるという当たり前を誰もが享受できるように。
全ての民が笑って暮らせるように。
そんな当たり前の平和の礎となるために若き日より覚悟を持って王として、また一人のボーレタリアに住む人間として生きてきたボーレタリア王国第十二代国王オーラント。
そんな彼はいま、一つの問題に頭を悩ましていた。
「……やはりあの神殿を利用するほかないのだろうか」
一人執務室にてポツリと漏らした言葉。
誰もいないために口から出てしまったが、王として迷いを人に見せる訳にもいかないと思い、すぐに気を引き締める。
「(たとえ悩むことがあったとしても、それを表に出すとは余もまだまだ未熟だな)」
そう言って気を引き締めて目の前にある書類に目を向けてはみるものの、懸案事項は消えることはない。
『今後も増え続けていくソウルの使用量の増加について』
それがオーラントを悩ますものだった。
人間の中に誰もが持っているソウルと呼ばれるエネルギーは近年『魔術』や『奇跡』の行使、武具の強化などにも使えることから多くの人々から利用され始めている。
だが人間一人がその内に宿すソウルの量は極僅か。
英雄クラスの人間のソウルを利用すれば大規模な魔術を発動させることが出来るが、そんな人間は騎士の中にも数えるほどしか居らず、またその事から墓荒らしによる過去の英霊の墓がソウル目当てで荒らされるという事件も頻発している。
ソウルという便利なものは人々にとって、最早無くてはならないものとなっているのだ。
「だが、あの『楔の神殿』の奥にあるソウルは人間に御しきれるものとは思えん。
しかしヨルメダール魔術師と神職者の両方から攻め立てられてはな……」
ヨルメダール魔術学院と教会。
この二つはボーレタリアにおいて王家に次ぐ力を持っている。
魔術学院からはソウルを魔術を用いた学問として体系づけた『賢者』フレーキ。
教会からは『聖職者』ウルベイン。
この二人を筆頭にオーラントは近年発見された楔の神殿からソウルの定期的な採取をするべきだと強く進言されている。
勿論それがただソウルを採取するだけで終わるのならオーラントもここまで頭を悩ませたりはしない。
だが問題はその楔の神殿にはデーモンの世界へと繋がる空間の穴が空いているということなのだ。
その穴からは莫大な量のソウルがこちらの世界に流れ込んできているのだが、それと同時にこちらから向こうにも通じているというわけだ。
それがオーラントにはどうにも不吉な気配がしてならない。
「確かに歴史書をひも解いてみても別段怪しいところはない。
かつてあの『楔の神殿』でソウルを定期的に入手していた民が存在し、今でも神殿のどこかで要人と呼ばれる者たちによって守られているとも聞く。
だが、ソウルは最近になって見つかったもの。
そんな大昔からこれほどに便利なものが存在していたというのにその力を利用していた国が今も存在し続けていないというのはおかしい。
そもそも以前にあの神殿からソウルを利用していた国の名前すら分からないのだ」
ソウルの恩恵を受けていた国がパッと一瞬にして消えてしまったかのように歴史上にソウルを楔の神殿から採取していた国の情報は一切見つかっていない。
やはりあの神殿には近づくべきではないのだろう。
……だがしかし。 そうは言っても年々増大するソウルの定期的な入手経路の確保はこの国のもっとも重要な案件。
オーラントがどうこう言ってもすでに『楔の神殿』を頼らざるを得なくなるのは時間の問題だろう。
むしろ時間をかければかけるほど馬鹿な人間が利益優先で楔の神殿に勝手に上がり込みかねない。
「ならば……余が自ら率先して赴くのが一番確実かもしれんな」
側近でもある『王の双剣』の二人をはじめとした騎士たち、それに貴族や大臣たちの中にも『楔の神殿』の利用を反対するオーラントの気持ちを理解してくれる者はいる。
だがオーラントは日々増していく国民の不満が自らに忠誠を誓ってくれた家臣たちにまで及ぶのが見ていられないのだ。
立ちあがったオーラントはすぐに各官僚に召集命令を出し、楔の神殿へと王自らが出向く旨を伝えることにした。
「避けられない事ならば、せめて成功させるのが王の勤め」
全ては国のために。
これがオーラントの一番の気持ちであった。
■ ■ ■ ■
「はぁっ、はぁっ、ぐっぅぅぅぅ……」
「今はゆっくり休んでください。
あなたはこんな所で死んではいけません!!」
額に油汗を滲ませながらも自分の体を奮い立たせ、立ち上がろうとするヴァラルファクスはヴァーダイト王城の医者に抑えつけられる。
「だが……アリオナ様がボーレタリアに向かうなら僕も向かわなければ……」
「失礼を承知で言わせてもらいますがその怪我では行ったところで足手まといにしかなりません!
いつ動いたら死んでもおかしくない大怪我なんですよ」
「しかし! 僕は陛下をお守りすることが出来なかった挙句、部下たちも全員死なせてしまった。
怪我をしていると言っても私の命を賭ければデーモンの一体くらい相討ちで仕留められる!」
治療を受けた四肢の裂傷も、巻かれた包帯をすぐに赤く染めてしまう。
ヴァラルファクスも自分が戦えないのは自分が一番分かっている。
しかしそれでも動き出す心を止められない。 忠誠を誓った主を救わなければならない。
そんな使命感に押されてヴァラルファクスは止まる事が出来なかった。
王城にはまだ仲間がいる。
ビヨールは他国に出かけてはいるが三英雄がいる。
その他にもボーレタリアには名のある騎士はたくさんいる。
だが、それでもあのデーモン達は人間の手に及ぶものではないのだ。
すでに意識も薄れてきたヴァラルファクスは自身の最後を悟ったが、そこで思わぬ人物が訪れた。
「怪我人はここですか?」
「メルタ様、此方です」
ボーレタリアから発生した色のない霧による情報の交錯により騒がしい中、一人の女性が医務室に訪れた。
「あなたがボーレタリアのヴァラルファクス様ですね。
ミーナ様より連絡を受けて参上しましたメルタ・ラモンドルと申します」
彼女、メルタ・ラモンドルはかつてライルの父アルフレッド王の四人の側近の一人として、アレフがヴァーダイト城の封印をする時に彼から水の魔力を預かっていた女性である。
元々『癒しの魔導師』の呼び名を持つ治癒術師として知られており、ヴァーダイトが二匹の竜による災難から脱したあと、アルフレッド王とともにその側近である彼女ら四人もそれぞれに隠居していたのだが今回のボーレタリアの危機を案じたミーナが呼んでいたのだがこれほどまでにタイミングよく現れるとはまさに天の思し召しと言えるのかもしれない。
「メルタ殿……僕はアリオナ様を……オーラント陛下を……」
「あなたの気持ちは分かります。
私もアリオナ様にはよくしていただきましたしボーレタリアでの出来事は情報伝達が上手くいかず詳しくは分かりませんが私に出来ることはさせてもらいます。
まずは少し時間はかかりますが私のすべてを賭けてでもその怪我は必ずを治させてください」
メルタの治癒魔術はヴァーダイトにおいて並ぶ者はいない。
ヴァラルファクスの時間の問題だと思われていた怪我も少しずつだが確実に治癒していく。
「(陛下、必ず助けてみせます……)」
徐々に薄れていく傷の痛みとともに、胸に熱く滾(たぎ)っていた決意を今は静かに抑えるヴァラルファクス。
次に目を覚ました時こそは守るべき主を必ず守れるようにするために。
銀の触媒の説明文でヨルメダールは名門って書いてましたが何の名門かよく分からないのでフレーキが立ち上げた魔術学を教える学院と思います。
貴族の名門とかの可能性もありますがここでは学院ということでw
それとアレフが光以外の属性魔力を預けた四人の魔術師はちゃんと生きていて、アルフレッド王と一緒に隠居しているという設定です。
ですが本来死ぬはずの怪我を負っていたヴァラルファクスの怪我を助ける手段がほかに思いつかなかったので今回助っ人として参加したという流れです。