King's Souls ~二人の王子の物語~   作:ヨイヤサ・リングマスター

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第十七話:受け入れるな。そして希望しろ

 ファランクスを倒したアリオナは兜を脱いで後ろを振り返る。

 

 

「ウーラン……無事でよかったよ」

 

 

「アリオナ様……」

 

 

 優しげに微笑むアリオナの笑顔。

 

 だがウーランはその笑顔を見ることは出来なかった。

 

 

「あたしは……あたしは守れなかった!

 陛下が楔の神殿の利用をせざるをえなかった時も心の支えになることも出来ず、神殿から出てきたデーモンたちが襲って来た時も部下たちを守ることが出来なかった!」

 

 

 見ればウーランの鎧にはべったりと血が付いているが本人の怪我自体は大したことはない。

 

 かといってその血がデーモンのものではないということはウーランの表情を見ればわかる。

 

 それはすなわち前線でともに戦っていた者たちのものだろう……

 

 

 

 

 ウーランが言うにはボーレタリア王国は楔の神殿から色のない霧が出ると同時にボーレタリアを襲ってきたデーモンたちによって人々は次々と食われてしまったのだという。

 

 騎士も総出で戦ったが、勇猛果敢で強者揃いのボーレタリア騎士がまったく歯が立たない強さに兵士たちも次々に殺されていき、わずかに生き残っていたウーラン直属の部下たちも先ほどのファランクスとの戦いで散っていたそうだ。

 

 

「ビヨールの旦那はちょうど他国へ出かけた大臣の一人の護衛として付いて行ってるからヴァラルファクスの旦那が陛下の護衛として楔の神殿に向かったんだ。

 けど霧の発生のせいでヴァラルファクスの旦那も含めて誰一人として神殿から戻らないということは……そう言うことなんだと思う」

 

 

 俯くウーラン。

 

 ビヨールもヴァラルファクスもアリオナの父、オーラント王の側近ではあるがビヨールはどちらかと言えばアリオナの側近に近い立場にあった。

 

 それは彼が頭が悪い、という訳ではないのだが王であるオーラントの側近よりも、武芸の教師としてアリオナの側にいた方が後のためにもいいとオーラント王の考えだったのだが、それゆえにアリオナがヴァーダイトに旅立ったことで暇を持て余していたビヨールには一般の騎士がするような仕事が多く舞い込んでいたために今のボーレタリアにいないのだろう。

 

 少なくともビヨール一人がいるだけで兵の士気は保たれ、アリオナとライルがここに来るまでの短い間にこれほどまでの被害を受けなかったとも思うが今となってはもう遅い。

 

 ボーレタリアの危機はヴァーダイトからすぐに近隣の国にも広まるだろうからビヨールもその情報を聞けばすぐに帰国することになるだろうが時間がかかる。

 

 結局のところ今ボーレタリアを何とか出来るのはアリオナ達だけということになるのだ。

 

 

「父さんのことは詳しくは分からないけど大体のことはヴァラルファクスから聞いてる。

 ヴァラルファクスはかなり酷い怪我をしていたけど僕が修行に向かったヴァーダイト王国に楔の神殿で起こった情報をちゃんと伝えてくれたよ。

 今はヴァーダイト王国で治療に専念してるはずだけどヴァラルファクスのことだから怪我が治ればすぐにでもこっちに向かってくるだろうね」

 

 

 アリオナはヴァラルファクスが生きて自分のところに来てくれたことと、修行に出てからの今日までのいきさつを説明する。

 

 そしてヴァラルファクスが生きていることを知ったウーランはその無事を喜んだ。

 

 ヴァラルファクスが生きているとは思ってもいなかったのだろう。

 

 

「ヴァラルファクスの旦那が生きていてくれたことは嬉しいよ。

 だけど陛下がどうなったのかはまだ全然分からないから喜ぶわけにはいかないね」

 

 

「そうだね。だけどボーレタリアを救おうとしているのは何も僕だけじゃない。

 今回ついてきてくれた彼、ライルっていうんだけどヴァーダイトの王なんだ」

 

 

「……あぁ、やっと紹介か。

 俺はヴァーダイト王国の国王ライルだ。

 アリオナに国を救われた恩返しで俺もこの国をちゃっちゃと救ってやるから大船に乗った気でいてくれよ」

 

 

 何とも軽い挨拶をするライル。

 

 

「なんだ。あんた王様だったのか。

 アリオナ様が旅の途中で出会った傭兵か何かかと思ったよ」

 

 

 こちらも軽い口調で返すウーラン。

 

 冗談で言ったのだろうがその目は半分ほど本気で言っているようだったのでさすがのライルも苦笑してしまった。

 

 しかし堅苦しい礼儀作法など出来るはずのないウーランは親しみやすい見方だと言ってライルに対しても気さくな態度をとっていた。

 

 

「さて、それじゃ順々に城の中を進んで可能な限り王城に蔓延るデーモンとソウルの亡者を倒しながら生き残りの兵を集めてボーレタリアを救わないとね。

 僕達は負けるわけにはいかないけど、時間さえ稼ぐことが出来れば情報を得た他の国からの援軍が来てくれるかもしれないし他国に出かけているビヨールも間に合うかもしれない。

 それに何より父さんが心配だ……」

 

 

 オーラント王は王城の最後にいるはず。

 

 アリオナは直感的にそう思い、遠くに見える城を眺める。

 

 父親の安否は気になるが、城をデーモンから取り返すことができればそれだけでより長い時間生き残り、世界を平和に戻す時間が稼げる。

 

 今アリオナ達がいるのは城の入り口。

 

 アルフレッドとメタスもそれぞれに戦っているのだから早くいかなければならない。

 

 

「まずは道順通りに行くならアルフレッドが警備にあたっている長城からだ。

 霧の発生はまだ始まったばかりだし急げば急いだだけ多くの人が救えるはずさ」

 

 

 そしてウーランの治療も済ませたことで、三人は王城の奥へと向かって走り出した。

 

 城を出る前は見慣れていた光景も、人が誰もいないだけでまったく別の場所に思えてくる。

 

 アリオナは子どもの頃白から抜け出して遊んでいた時のことを思い出す。

 

 

「こう言うのもなんですが、デーモン達は遊んでいるように感じました。

 最初はアリオナ様が幼い頃に拾ってきた二頭の竜達に、一般兵、奴隷兵、騎士団の総出で戦ったけどあっさりやられちまってね。

 竜達はおかしくなっちまうし、兵士はみんな食われちまったし。

 そんなこんなで死体もほとんど残ってないのさ」

 

 

 城門までの道を進みながら説明をするウーラン。

 

 アリオナとライルはそれぞれに黙って聞いていたが、この状況の深刻さと比べてその心は沈んではいなかった。

 

 

「なぁアリオナ」

 

 

 ライルはアリオナを見る。

 

 

「うん、わかってる」

 

 

 アリオナはここからの国を救う策を考える。

 

 

「確かに状況は最悪だけど僕らはこうして生きているし、諦めなければどうにでもなる!

 ウーラン。僕は必ずアルフレッドも、メタスも、父さんも、この国のすべてを救ってみせるよ」

 

 

 アリオナの真剣な眼差しにウーランは思わずときめいてしまう。

 

 

「(あ、あたしとしたことがアリオナ様に忠誠を誓っておきながらこんなことで赤くなってどうする!)」

 

 

 アリオナはこれまでにそういう経験がなかったために人の感情には疎いところもあるが、それ以前に城で働く人間全員を家族と思っていた。

 

 はてさてウーランのこの仄かな想いはどうなることやら……

 

 

ドゴォォォォーン!

 

 

 それは突然響いた。

 

 アリオナ達三人はまだ生き残っている者たちを出来る限り救うために足を速める。

 

 

 

■ ■ ■ ■

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

ギィィン

 

 

 一人の男が人間とは比べものにならないほどの巨体のデーモンと対峙していた。

 

 

「どらぁぁぁー!」

 

 

 この男、『塔の騎士』アルフレッドは右手に持つ槍が全身鎧を纏ったデーモンの脛当てを削り取り、左手に持つ全身を守るかのような自身の象徴たる巨大な盾『塔の盾』がデーモンの攻撃を受け流す。

 

 その攻防は見ただけで分かるが、一挙手一投足のすべての動作に全神経を使い、人間ではありえないほどの巨体と力を持つデーモン相手にそう何度も行えるものではない。

 

 だが男はその作業を繰り返し、決して諦めることなく突き、防ぎ、避け、相手の攻撃が届きにくい背後に回り込んで戦いを続ける。

 

 

「(……アリオナ様が国を離れておられたのはある意味僥倖だ。

 陛下が楔の神殿でのソウルの採取に失敗したのはヴァラルファクス殿が付いていながら達成できなかったのだから自分がいても状況は変わらなかっただろう。

 だが! 陛下が、ヴァラルファクス殿やアリオナ様が無事に帰ってこれるようにこの国を守ることこそ騎士である自分の責務!)」

 

 

 そんなことを考えながら坦々と、決して無理をせず自分に出来ることの最たるデーモンの足止めという作業を行う。

 

 

「(しかし自分はこのデーモン一体を相手にするのが精いっぱいだ。

 ウーランやメタスもそれぞれの持ち場で同じようにっ戦っているのだろうが二人は自分のところよりも兵を失い過ぎている)」

 

 

 三英雄『塔の騎士』アルフレッドの部下は、アルフレッドと同じく防御を念頭においた前線で盾として戦えるように鍛え上げた重量級の重騎士部隊と、その援護をするための機動力重視のボウガン部隊がいるが、すでに前衛の重騎士も後衛のボウガンも全員殺されている。

 

 少し前まではボウガン隊が撹乱をしていてくれたおかげでヴァラルファクスも攻撃に集中出来ていたのだが後衛のボウガン隊が皆死んでしまっては攻撃に移る回数が減らされてしまう。

 

 ぽっかりと空いたボーレタリア王城への門を守るのはすでにアルフレッド一人となっているのだ。

 

 時間もだいぶ経過し、すでにデーモンの攻撃を受け流す盾を持つ左手も疲労からまともに動けず、体全体を使うという無駄な動きの繰り返しになっている。

 

 

「(そろそろ自滅覚悟で盾を捨てて突貫でもするか……)」

 

 

 もとよりこの戦いで自分一人生き延びるという考えを持っていなかったアルフレッド。

 

 時間さえ稼げば、オーラント王も生きていれば楔の神殿から他国へ脱出することも出来るだろうし、遠征中の『王の双剣』ビヨールもボーレタリアに戻ってくるはず。

 

 そんな事を考えての時間稼ぎと、もしあとから生き残りが目の前のこの巨大なデーモンと戦う時に少しでも勝率が上がるように手傷の一つでも負わせて弱らせておこうというこの戦いも自分の役割はそろそろ終わりではないかと思っていた。

 

 すでに握力などなくなってしまった両の手が、これまでずっと一緒に戦ってきた槍と盾を落としてしまったことでいい頃合いだろう。

 

 

「陛下……アリオナ様……

 このアルフレッド、ボーレタリア王国に仕えることができて幸せにございました……」

 

 

 アルフレッドは自分の死後にこのデーモンを倒してくれる可能性の最も高い尊敬する騎士ビヨールに丸投げとなってしまうだろうこの状況に少しばかり心苦しい思いだったが、ビヨールならこの国を救ってくれるという思いを抱き、デーモンの攻撃が目の前に迫っているというのに安心しきった笑顔を浮かべて自分の死を受け入れようとした。

 

 

ガガガキィィィーーン!

 

 

 だがアルフレッドの命を刈り取ろうとしていたデーモンの一撃はアルフレッドに当たることはなく、離れた位置からの弓矢の狙撃により大きく逸らされた。

 

 

「てめぇ何勝手に死のうとしてやがんだっ!」

 

 

「勝手に死ぬことは許さないよ、アルフレッド」

 

 

 聞き覚えのある声がする。

 

 

「……アリオナ様…………」

 

 

 そこにいたのは他国へ修行に出ていたはずのアルフレッドが忠誠を誓ったオーラント王の一人息子、アリオナだった。

 

 

「ったく、あたしと肩を並べていたあんたがそんなあっさり死んじまったらこのあたしが弱いみたいじゃんかよ、アルフレッド!」

 

 

 そしてアリオナの後ろで弓を構えた粗暴な口調の女性。

 

 アルフレッドと同じ、『ボーレタリアの三英雄』の一人『長弓』のウーラン。

 

 

「俺とははじめまして、だな。

 ヴァーダイト王国国王にしてアリオナの無二の親友のライルだ。

 あんたを含めたこの国を救いにきた」

 

 

 最後の一人はアルフレッドにとって初めて見る人物だがアリオナの友人であり、助けに来てくれたことがうかがえる。

 

 

「アルフレッド……、君はこの国にとっても僕にとっても大切な家族なんだ。

 だから、自分の死を受け入れないでくれ」

 

 

 そう言って悲しそうな、だがアルフレッドが生きていてくれたことに安堵したような表情を浮かべるアリオナ。

 

 しかしその穏やかな表情とは裏腹にアリオナは内から湧き上がるような怒りの感情をデーモンに向けていた。

 

 

「僕の大切な家臣(かぞく)を襲うというのならまずは僕を相手にしろ!」

 

 

 そう言って腰に提げていた美しく輝く剣『バキュラシアソード』を抜き放ったアリオナはアルフレッドと対峙していたデーモンに向って斬りかかって行った……




 いやぁ、自分でもこんな文章書けるんだな、という話ですが読み返してみると自分の書きたいものが表現しきれていない気がします。

 アルフレッドをカッコよく! ウーランを可愛く! そしてアリオナとライルを最高に!

 そんな描写がなかなか難しいですが練習になりますね。

 書いてて実力がメキメキ上達してくる気がします。

 一作目と比べると格段に文章力は上がりましたが私の実力はこの程度ではないのでもっと面白く、上手い小説を書くために精進していきたいと思っています。

 私は「趣味が本職の人並みに上手い」って言われるくらいに色んなことを極めた人間になりたいと思っていますのでいつかはプロのような文章を書けるアマになりたいです。

 趣味とはいえ、それくらいやり込みたいですからね♪ 器用貧乏ではなく。
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