King's Souls ~二人の王子の物語~   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 この話でようやくメタス登場ですね。

 とりあえずアリオナ達をカッコよく書けたかな。

 それにしてもボーレタリア王城のデーモンの名前が『塔の騎士』と『つらぬきの騎士』なのでアルフレッドやメタスと被ってしまうので書きわけるのが難しいですw

 三英雄も助けるハッピーエンドを目指すのは予想以上に難しいと改めて思いました。

 あとこの物語ではアリオナ達が早くにボーレタリアに来たことでソウルの亡者の数はゲームほど多くないという設定です。

 あんまりたくさんいたら話が進みませんしねw



第十八話:別れの言葉は再会の約束

 突然の助けに……それも自身が仕える主君の一人息子であるボーレタリアの王子アリオナが助けに現れたことにアルフレッドが驚いたのは無理からぬことだろう。

 

 だがアリオナははっきりとアルフレッドの眼を見て答えた。

 

 

「アルフレッド。死なないでくれ。

 強くなった僕を見ていてほしい。

 強くなっていく僕を見続けてほしいんだ」

 

 

 剣を抜いてデーモンに向かって駆けだしたアリオナ。

 

 さすがに体格差があるためかアリオナの攻撃もアルフレッドと同様に全身鎧に覆われたデーモンの脛当てを少しばかり削るだけだった。

 

 だがアリオナの雄姿は消えかけていたアルフレッドの闘志に火をつけるのには十分だった。

 

 

「自分は……大丈夫ですアリオナ様。もう死を受け入れたりはしません。

 それよりもウーランがすでにアリオナ様に助けられたのならば、この場は自分に任せてメタスのところに向かってください。

 今は自分の部下もこのデーモンとの戦闘中に皆死んでしまいましたが、あいつは私と違ってデーモンと闘う前から部下を全て失い最初から一人で戦っているはずです」

 

 

 アリオナが現れたことで気力を取り戻したアルフレッドは疲労を感じさせながらもしっかりとした足取りで落してしまった槍と盾を拾い、もうデーモンの攻撃を受け入れようとは考えずに回避し、少しずつ攻撃を再開する。

 

 

 確かにアルフレッドは生きる意志を再び持ったがアリオナは迷う。

 

 アルフレッドの眼には希望が宿っているがそれでもこれまでの疲れがないわけではないのだ。

 

 いつ倒れてもおかしくないこの状況。

 

 アルフレッドの言うようにメタスの方も気になるが、かといって今のこちらの戦力で自分がこの場を離れては目の前の全身鎧のデーモンを倒すことが出来るとは思えなかった。

 

 あらゆる可能性を思案するが考えはまとまらず、アリオナは鎧の下で嫌な汗をかく。

 

 誰かを見捨てる選択をしなければならないのではないかと。

 

 だがここでアリオナの考えを読んだ者がいた。

 

 

「アリオナ、お前の考えは分かるけど誰一人死なせないためにお前はこの国に駆け付けたんじゃなかったのか?」

 

 

 アリオナに声をかけるのはライル。

 

 

「確かにこのバカでかいデーモンを倒すには人員が必要。

 ならお前がこの場に残って俺がメタスの救助に向かうのが正解だろう?」

 

 

 アリオナの胸中を察して自分が行くと言ってくれているのだろうが、さすがにアリオナはそこまでの危険を親友であるライルに任せるという決断には迷う。

 

 

「だけどライル……

 メタスのところに向かう道中にもソウルの亡者がいるかもしれないし危険すぎる!

 僕は君にも死んでほしくないんだ」

 

 

 ライルにメタスの方に向かってもらえれば確かにメタスは助かるかもしれないがそれでライルが死んでしまっては元もこうもない。

 

 それがアリオナの心を迷わす。

 

 だがライルはその事を必死に考えるアリオナを見ると、腰に手を当てて、やれやれとばかりに言う。

 

 

「ごちゃごちゃうるせぇ!

 俺の親友のアリオナってのはそこまで弱い人間だったのか!?

 いいからメタスの方は俺に任せろよ」

 

 そう言って一直線に走り出したライルはあっという間に城門までたどり着き、そこで振り返って言う。

 

 

「あとでまた会おう! アリオナ!!」

 

 

 生きるために走りだしたライル。

 

 

「……あぁ、また会おう。ライル」

 

 

 覚悟の弱さに気づき、親友を信じ切れていなかったことを恥じるアリオナ。

 

 

 お互いに親指を立てて元気よく顔を見合せて元気よく再開のための別れの言葉を言った。

 

 

「(ありがとう……。僕の親友)」

 

 

 胸の内でそう呟いたアリオナはメタスのことをライルに任せ、ウーランとアルフレッドに視線を向け、笑顔で言う。

 

 悩んでしまう関係なんて友とは呼べない。

 

 ライルを信じ、任せると決めたアリオナの決意はこれまでのように、ほんの僅かの揺らぎもなく確固たるものとなった。

 

 

「守るんだ! 僕らのボーレタリアを!」

 

 そう言ってアリオナは、二人の家臣と共にそれぞれにデーモンに向かって行った。

 

 先に進んで行った親友と同じように信頼している家臣と共に。

 

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「しかし、どうしたものかな……」

 

 

 ライルは走りながら周りを取り囲むソウルを奪われた亡者を斬り倒しながら進んでいる。

 

 ボーレタリア王城の最初の城門、それに次の長城までの道のりは被害がそこまで及んではいなかった。

 

 それは楔の神殿のデーモンの世界と人間界を繋ぐ穴が広がったことでやってきたデーモン達は何も考えずにソウルを奪うだけでなく、弱い人間をいたぶるということに快楽を見出したために面白半分に食い散らかしたためにこの国の人間はソウルを奪われるという精神的な死だけでなく、生命活動が不可能になるような肉体的な殺されかたをしたからだろう。

 

 それゆえにここまでの道中にソウルの亡者といったソウルを奪われただけの人間は居らず、ライルも多少油断していたのだろうが、二番目のデーモンをアリオナ達に任せて一人先に進んだライルを最初に出迎えてくれたのは金属の棘のついた口輪を嵌めた犬だった。

 

 

「くそっ! まさか犬相手にここまで苦戦するとはな」

 

 

 突然のこととはいえライルも犬程度に負けるほどぬるい人生を送ってはいない。

 

 

「この先に進んでボーレタリアの三英雄の一人、メタスに加勢するとしてもあとから追ってくるアリオナ達のためにも出来るだけ多くの的を始末しておかないとな」

 

 

 倒しはするものの、近くに犬が入っているのだろう荷馬車が放置されており、少しばかり可哀想にも思ったがライルは自分たちの安全のためにその荷馬車に火をつけて燃やし、急ぎつつも丁寧に敵の気配を探りながら道を進んでいく。

 

 噴水のあった広場から左手側の階段を駆け上がっていくとこれまた立派な門があったがそれが開いたままになっている様子からこの国の騎士がデーモンに対して何も対処する間もなくやられたことが窺い知れる。

 

 おそらくデーモンは一直線にこの国にやってきて兵士たちを蹂躙しあのだろう。

 

 石造りの壁や地面に飛び散った血の量からして十や二十以上の人間がここで殺されたはずだ。

 

 

「ったく、メタスってのはこの状況でまだ生きてるのか?

 もしこれだけの惨状の中生きてるなら英雄なんて言葉で収まる器じゃねーよ」

 

 

 だがその言葉に反応する者は居らず、ライルの言葉はただの独り言として辺りに響く。

 

 ライルも腕に自信はあるのでメタスが生きてさえいればデーモン相手に共闘するし、薬などによる簡単な治療手段も行える。

 

 しかし視界に入るのは死体と血痕だけというこの状況ではそれらが全て希望的観測として終わってしまうのではないかとさえ思えてくる。

 

 だがライルは自分が信じる親友のアリオナが信頼するのが三英雄『つらぬきの騎士』メタスなのだからライル自身もメタスの実力とその幸運を信じて、歩みを速める。

 

 そして聞こえた。

 

 

「ウォォォォォォー!」

 

 

キィン! ズドォン!

 

 

 激しい剣剣戟の音とともに響き渡る怒声。

 

 悲鳴を上げるかのような石畳の地面が砕ける音。

 

 

「どうやら生きているらしいな。

 まっ、アリオナの家臣を名乗るならそう簡単にくたばったりはしないだろうとは思ってたけどさ」

 

 

 一人そう呟いたライルは周囲に対する警戒を忘れずに駆け出しながら声のする場所に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

ズドン!

 

「くっ、この私がここまで手こずるなんてさすがは私の姿を模したデーモンだね。

 完璧なまでに隙がなく、もはや美しさすら感じさせる動きだよ……」

 

 

 精一杯の皮肉がこの程度しか言えないというのも彼、メタスが疲労している証拠かもしれない。

 

 それでも闘いを諦めていないからこそ、こうして隙のない敵に対して回避を繰り返すしかない立ち回りをずっと繰り返しているわけだが。

 

 

「助太刀するぜ『つらぬきの騎士』メタス!」

 

 

 すでにデーモンの攻撃によって瓦礫の山と化した王城へと続く最後の門の下で戦っていたメタスは声のする方を向いた。

 

 それは疾風の如き速さをもって走り、メタスを苦しめていたデーモンにすれ違う形で剣先が三つに分かれた不思議な剣によるう一撃を叩き込んだ。

 

 

「確かに私は三英雄の一人メタス。君は誰だい?」

 

 

「おう、俺の名はライル。

 ライル・ウォリシス・フォレスター!」

 

 

 その名前に聞き覚えのあるメタスは記憶をたどってみる。

 

 

「ヴァーダイト王国の国王だ。

 今回ボーレタリア王国がデーモンに襲われたという情報を聞き、友であるアリオナのために助けに来た」

 

 

 メタスが答えを出すよりも早くライルは自己紹介をする。

 

 

「(アリオナ様……、ご無事だったのですね)」

 

 

「ほら、あんたもボケっとしてないでデーモンの攻撃に備えてろよ。

 アリオナはあんたと同じ三英雄のアルフレッドのところでウーランと一緒に戦っているはずだから俺達は俺達で目の前のこのデーモンを倒してみんなを出迎えてやろうじゃねえか」

 

 

「フフッ、失礼ながらあなたはあまり王らしくはないですね」

 

 

 確かに初対面でこう言うのもどうかとは思うがメタスもウーランの影響を少なからず受けていたということだろう。

 

 まぁライルが王らしくないのはヴァーダイトにいるライルの家臣の総意でもあるのだが。

 

 

「ですがあなたは王の器は持っている。

 その考え方、アリオナ様のご友人というのは間違いなさそうですね。

 私の力不足を恥じてしまいますがこのメタスの力が足りないために目の前のデーモンを倒すためにあなたの助力をお貸しいただきます」

 

 

 普段は軽い男に見られがちだが、三英雄の中でも知恵者として知られるメタスはいきなり現れたライルに対しても本能的に信頼に足る人物だと見抜き助力を願う。

 

 この柔軟さこそがメタスがオーラント王に評価されて三英雄に選ばれた所以でもあった。

 

 

「よっし、アリオナ達を笑って出迎えるためにも俺達はここで負けるわけにはいかねーからな。

 さっさと片をつけさせてもらうぜ!」

 

 

 ライルとメタスは共に剣を握り直すと再び目の前のデーモンに向かって行った。

 

 あとから来るであろう友を、主を信じて。

 

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