King's Souls ~二人の王子の物語~   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 今話と次話はアリオナは出ません。

 ちなみに一人称はビヨール以外分からなかったので私のイメージで決めました。

ビヨール=私
ヴァラルファクス=僕
メタス=私
アルフレッド=自分
ウーラン=あたし



第二話:騎士の会話

「ヴァラルファクス。

 私は心配なのだ……」

 

 

「そうですね。

 僕も貴方も騎士としてアリオナ様に修行をつけていた間は厳しく鍛えてますし、アリオナ様の実力に関しては信じていますが、あの方は優しすぎる。

 それが旅の重荷にならなければいいのですがね」

 

 

 アリオナを送り出したあとオーラント王はすぐに政務に戻った。

 

 見送りに出ていたビヨール達もすぐにそれぞれの仕事に戻り、ビヨールは騎士として部下との鍛練を終え、こちらは書類仕事をしていたヴァラルファクスもちょうど仕事が片付いたので一緒に昼食をとることになったので食堂に行き、見送りに来れなかったヴァラルファクスにアリオナのことを話していたのだった。

 

 のだが、ビヨールは先ほどから心配だ心配だ、と同じことを繰り返していた。

 

 

「なんだいなんだい、『王の双剣』ともあろうお二人さんがずいぶんとしょうもない事を話しているじゃない」

 

 

「貴方のことですからアリオナ様が心配なのではなくアリオナ様がいなくなられたことが寂しいだけなんじゃないんですか?」

 

 

「……自分はアリオナ様が帰って来た時にいつもと変わらず平和な国であるために自分に出来ることをすることこそがアリオナ様のためになると考えている」

 

 

 現れたのはビヨールとヴァラルファクスと同様に仕事を終えて昼食を食べに来たこの国の三英雄ウーラン、メタス、アルフレッドだった。

 

 

「おぉ、お前たちか。

 三人もアリオナ様にはお世話になってるし私の気持ちもわかるだろう。

 確かに私はもうアリオナ様の旅に反対している訳ではないがそれでも心配なのだ」

 

 

 三人が来ても机に突っ伏したままビヨールは言う。

 

 彼にしては珍しく昼間から酒を飲んでいるようだ。

 

 

「そりゃまぁビヨールの旦那の気持ちもわかるけどさ。

 アリオナ様はもう旅に出ちまったんだしいつまでもウジウジしてても仕方なくないかい?」

 

 

「ウーランさぁ、君もさっきの鍛練の最中に空を見上げてうわの空だったろ。

 弓の鍛練で百発百中の君が的を外したのを私はちゃんと見ているよ」

 

 

「うっさいメタス!

 あたしが何考えてようがあたしの自由だろ!」

 

 

 『長弓』のウーランは机に置いてあった木製のコップを手に取りメタスに投げつける。

 

 だが、それを見越していた『つらぬきの騎士』メタスはあっさりと避けたため、後ろにいた一般兵に当たってしまった。

 

 コップをぶつけられた一般兵は何か言いたげだったが、投げつけたのが『三英雄』のウーランだったのと彼女の迫力に本能的な恐怖を感じ、何も言わずに席を離れていった。

 

 メタスは言葉は丁寧な癖して人をからかうのが好きという性格のため人の弱みは決して見逃さないのだ。

 

 

 

「メタス、ウーラン。

 話が逸れている。

 自分もアリオナ様がいなくなって寂しく感じているがビヨール殿は我々よりも一緒にいた時間が長い分堪えるものがあるのだろう。

 その心中を察しろ。

 あまりふざけた態度は無礼だぞ」

 

 

 物静かだが確かな実力を持つ『塔の騎士』アルフレッドは普段の口数の少なさも相まって、その発言には大声というわけでもないのにその場にいる全員に響くだけの力が籠っていた。

 

 

「……まぁまぁ、とりあえずご飯を食べよう。

 ほらビヨールも食べて元気出してよ。

 ウーランも言ってたけどいつまでもウジウジしてても始まらないよ」

 

 

「すまんなヴァラルファクス。

 私としたことがアリオナ様について過保護になりすぎていたのかもしれない。

 確かにもうアリオナ様は旅に出られたのだから我らはこの国を守るというそれぞれの使命に支障をきたすわけにはいかないな」

 

 

 机から顔を上げ、先ほどよりは多少元気を取り戻したビヨールは食事を再開することにした。

 

 

「ところでビヨールの旦那はアリオナ様が生まれた時から側仕えみたいだけどあの方は幼い頃からあんなにお人好しだったのかい?」

 

 

 自分の料理を皿に盛ってきたウーランが尋ねる。

 

 彼女の食器は彼女専用の大皿でその体のどこに入るのか疑問に思うほど盛られていた。

 

 

「それは私も気になりますね。

 ヴァラルファクスさんもビヨールさんの同期みたいですけど陛下の護衛が主でしたし、幼い頃のアリオナ様に一番詳しいのはビヨールさんでしょう。

 少し興味がありますね」

 

 

 メタスも自分の料理を取ってきたが彼は小食のため、こちらも彼専用の小皿に盛られていた。

 

 ちなみにアルフレッドは最初にビヨールとヴァラルファクスに声を掛けた時には自分の食事は持ってきていたのですでに食べ終えていた。

 

 

 聞かれたからには、とビヨールはゆっくりと語り出す。

 

 彼の話はとにかく長いのだがアリオナ王子の事を語るのならと、他の四人も黙って耳を傾ける。

 

 

「ふむ、アリオナ様は幼い頃から今と変わらず誰にでも優しく、そして自分にも厳しいこの国の次期王となるのにふさわしい素質を持っていた。

 それに赤ん坊の頃は特に可愛くてな、城のメイド達が当番を決めて順番に面倒を見ていたのだが、私はそれを全て無視してアリオナ様の世話をほとんど一人で行っていたのだ」

 

 

「うっわビヨールの旦那、マジせこいよそれは。

 騎士としてこの国のかなりの実力者なのにメイド達から嫌われてるのはそんな理由があったんだね」

 

 

「私ごときが言うのもなんですがビヨールさんは少々自分勝手な所がありますのでそう言うところが婦女子に嫌われてるのだと思いますよ。

 陛下もビヨールさんがいつまでも独身なのを気に病まれていましたし、そろそろその性格を治してみてはどうですか?」

 

 

「……うむ」

 

 

 他国にも知られる『三英雄』とはいえ三人はビヨールよりも下の立場なのだが、遠慮ない物言いである。

 

 それはビヨールがそれだけ親しみやすい性格だからだろう。

 

 誰もこの会話を聞いても不敬と考えないくらいビヨールの大雑把な性格は知られているのだ。

 

 

「仕方がないだろう!

 アリオナ様はそれだけ可愛かったのだから!!」

 

 

「まぁ、それはいいからビヨール続けてよ」

 

 

 ヴァラルファクスも苦笑しているがそれでも他の三人、特にウーランとメタスよりは静かに聞いていた。

 

 

「……では続けるぞ。

 そこからアリオナ様はすくすくと育ち、アリオナ様が5歳の時に私は陛下から命令を受けたドラゴン退治の任務にこっそり連れて行ったこともあるのだが「ちょっと待ったー!?」……なんだ?」

 

 

 話を遮られて不機嫌そうにビヨールは言うがそれを遮ったウーランは構わず言う。

 

 

「アリオナ様が5歳の時にドラゴン退治に連れていくなんてあんた何考えてるんだよ!!

 というかメタス! 

 あんたは何を笑ってるんだい!!」

 

 

 ウーランはビヨールの話に思わず突っ込みを入れたがそれは彼女だけでメタス、アルフレッド、ヴァラルファクスは何も口をはさんでいなかった。

 

 そしてメタスはその上に大笑いをしていたのだ。

 

 

「いやぁ、ビヨールさんならそんな事があっても不思議じゃないしさ。

 5歳の子どもをドラゴン退治に連れていくという発想こそビヨールさんらしくておかしかったんだよ」

 

 

「……落ち着けウーラン。

 ビヨール殿もメタスもいつもの事だ」

 

 

「そうそう、それにアリオナ様は現に生きてるんだからそれもビヨールなりにアリオナ様を想っての行動だったんだよ」

 

 

 三人にそう言われてはウーランもこれ以上口を挟むわけにもいかないので黙った。

 

 ただしその時のビヨールの顔が自信気なのが気に入らなかったのでまたも木製のコップを投げつけて今度は命中した。

 

 

「痛いぞウーラン……

 とりあえず話を続けるがアリオナ様のすごい所はここからなのだ。

 私はドラゴンを陛下の命令通りに殺そうと思ってドラゴンの巣に単身入っていったのだ。

 ドラゴンの方も私に気づいて方向を上げ、番(つが)いだったので一頭が陸から尻尾により薙ぎ払い、もう一頭が巣の天井に飛び上がり炎を吐いてきたのでそれに呼応するように私は突っ込んだのだが、巣の入り口で待たせていたアリオナ様が巣の中に入ってきてな。

 さすがに私もこれはマズイと思ったのだがアリオナ様を見たドラゴンは攻撃を止め、おとなしくなったのだ」

 

 

そこでビヨールは一旦区切りグラスの酒を一気に煽り、口を湿らせる。

 

 

「でだ、私も驚いたのだがドラゴンはアリオナ様に頭を垂れたてな。

 それが今この城を守っている二頭のドラゴンとなったのだ。

 まったくもってアリオナ様の魅力というのはドラゴンまでも従わせるとは生まれながらに王の素質があるんだろうな」

 

 

 がっはっはっは、と笑うビヨール。

 

 だがそんな経緯を初めて知った三英雄たちは驚いてポカンとしていた。

 

 ヴァラルファクスはその話をすでに知っていたので静かに笑いながら自分のグラスを傾けている。

 

 ちなみにこちらは酒ではなく水だ。

 

 

「ん?

 つまらなかったか?

 アリオナ様の凄さを聞きたがっていたからその一つを語ったのだがな」

 

 

 反応が薄いことに首をかしげるビヨール。

 

 そして最初に口を開いたのはやはりウーランだった。

 

 

「まさかアリオナ様の魅力がそこまでだとは思わなかったよ。

 ていうかビヨールの旦那も、もしそこでアリオナ様の魅力がドラゴンに通じなかったら死んでたかもしれないじゃないか」

 

 

「まぁ、そうなるな」

 

 

「そうなるな、じゃないわよ!

 それってあんたの失敗談でもあるんじゃないの!?」

 

 

「ビヨールは昔っからこんな性格だからね。

 今の話は陛下もその時に報告を受けているのでこの国のトップの人たちの中では割と有名だよ」

 

 

「私は初めて知ったね。

 情報通を自負するこの私がそんな事も知らなかったことに驚いてしまったよ」

 

 

「……ああ、自分も驚いたよ。

 ビヨール殿の無茶もそうだがアリオナ様もドラゴンに近づこうと考える時点で子どもらしからぬ胆力を持っているのだな」

 

 

 確かにこの世界にはビヨールのようにドラゴンに立ち向かえる度胸と腕っ節を持った人間も何人かはいるがわずか5歳の子供がドラゴンに向かっていくなど信じられないだろう。

 

 

「さぁ、私は語ったぞ。

 次はお前たちがアリオナ様との思いで話を聞かせてくれ」

 

 

 ヴァラルファクスがビヨールとアリオナの間の出来事は全て知っていたようにビヨールもヴァラルファクスとアリオナがこれまでどんな事をしていたのかを知っているので必然的に三英雄の話となるのだった。

 




 後々のことを考えたらここでビヨール達がどれだけアリオナを大切に思ってるかを入れておきたかったので書きました。
 それにしてもなげぇ!4000字超えちゃいましたw

 あと私のイメージするヴァラルファクスの外見ですが、水谷豊さん演じるドラマ『相棒』の杉下右京みたいな感じだと思います。この話ではずいぶんと柔らかなキャラになりましたけど。

 ビヨールとは正反対っぽいイメージがあるので。
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