King's Souls ~二人の王子の物語~   作:ヨイヤサ・リングマスター

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第三話:三英雄は語る

「それでは今度は私が話しましょう」

 

 

 イスから立ち上がり大仰な動作と共に語り出したのは『つらぬきの騎士』メタス。

 

 三英雄はそれぞれボーレタリア王城の警備場所が違うため今日みたいにアリオナ王子の修行の旅を見送るなどのイベントがなければ揃って食事をするという事もないので同じ三英雄といえども知らないことも多いのだ。

 

 必然的にその場の全員が興味を持つのも当然だろう。

 

 

「私がアリオナ様と出会ったのはまだこの国の騎士となったばかりの下級兵の訓練が嫌で宿舎の陰でサボっていた時のことでした。

 そんな時アリオナ様に出会ったのですがその時10歳のアリオナ様は私を見ても咎めることもなく手に持っていた果物を下さったのです。

 あの果物が私の大好物だと知って渡してくれたのでしょう。

 それからも度々サボっていた私のところに差し入れを持ってきてくれたので色々と遊びを教えて差し上げたのはいい思い出ですよ」

 

 

 懐かしむように語るメタスだったが周りの反応はあまりよろしくないようだ。

 

 

「……お前は今も昔も変わらないのだな」

 

 

 突っ込みを入れたのはアルフレッド。

 

 メタスとアルフレッドは同期なのだが配属先が違ったので三英雄になるまで面識のなかった彼がどのようなことをしてきたのか興味があって聞いていたのだが、あまりにもガッカリな内容だった。

 

 

「そう言うなよアルフレッド

 私は天才だからあんな汗だくになるような訓練には向かないのさ」

 

 

 自分で言うのもどうかと思うがメタスは他に類を見ないほどの天才剣士という触れ込みで軍に入ったので多少ふまじめな態度が目につくがそれでもこうして三英雄の地位を確立しているのだ。

 

 そこで黙って聞いていたヴァラルファクスが面白そうに口を開いた。

 

 

「ちなみに僕もその話をアリオナ様から聞いてるけどそれはアリオナ様が嫌いで残した食事をこっそり処分しようとして外に出た時に偶然会ったメタスにあげてたみたいだよ。

 僕は秘密を漏らすことはしないから色々とアリオナ様の秘密を聞いてたからメタスのこともが三英雄になる前から知っていたけど、陛下から君が三英雄として勲章を授与される時に初めて会ったけど笑いをこらえるのに大変だったよ」

 

 

「私も聞いているぞ。

 メタスは嫌いなものがないのだとアリオナ様がうれしそうに語っていたのを今でも覚えている」

 

 

 『王の双剣』の二人の語る真実に少しばかり恥ずかしくなってしまうメタスはつい顔を背けてしまったが表情には出なかっただけまだマシだろう。

 

 

「……では次はウーランの話が聞きたいな。

 私はアリオナ様と一緒に何かをしたという事はないがウーランはまだボーレタリア王国の端で蛮族をやっていた時にアリオナ様から直接説得されてこの国の騎士となったのだから思い出もたくさんあるだろう」

 

 

 

 

 

「私も是非聞きたいですね。

 アリオナ様がどうやって意地っ張りのウーランをこの国の騎士にしたのか。

 あなたはこの国を嫌っていたでしょ?」

 

 

 アルフレッドの言葉を聞き、話を変えるチャンスだと思いメタスもアルフレッドの言葉に乗っかる。

 

 だがそれと同時に人の弱みを握るのが大好きなメタスはウーランをからかいたいがためにニヤニヤと笑いながら言うのだった。

 

 もちろんそんなメタスの考えていることにウーランも気づいているが自分だけ語らないのは不公平だとも思い、ウーランはゆっくりと語り始めた。

 

 ボロを出すまいと慎重になりながら。

 

 

「あたしがアリオナ様と初めて会ったのは辺境部族をまとめあげてこの国を潰そうとしていた時だね。

 今思えばそこまでのことでもないんだけど、あの時はこの国の騎士があたしら一族の縄張りを荒らしたのがきっかけで、いつ戦争になってもおかしくないくらい怒り狂ってたからね。

 あたしも謝罪や物品をいくら積まれても死ぬまで戦ってやると決めてたんだけどアリオナ様が一人でやってきて話をするうちに自分の未熟さを教えられたんだよ。

 で、それからはなんだかんだあってアリオナ様の一の家臣となりこの国の三英雄となったわけさ……」

 

 

 ボロを出すまいと細かいところを随分と省略したが、ウーランは話は済んだとばかりに自分の皿に残っていた料理を頬張りこれ以上語るつもりはなさそうだ。

 

 

「……ウーラン。

 今の話のあとに面白いことがあるはずだがそれを言わないのか?」

 

 

 無口だがその分しゃべる時にはしゃべるアルフレッドにウーランは火をつけてしまったらしい。

 

 

「な、何も隠してないさ!!

 あたしはあったことをそのまま言っただけだよ!!」

 

 

「……いや、私もアリオナ様の護衛としてその時、君たちの拠点を陰から覗いていたから知っているぞ」

 

 

「お!アルフレッド。

 何か知ってるなら教えてくれよ。

 いつも気丈なウーランの嬉し恥ずかしな過去話には興味があるからね」

 

 

「がっはっはっは!

 やはりウーランにも何かしら面白い過去があるのか。

 私もそれは気になるな」

 

 

「こらこら止しなさい。

 女性の過去を語るなどよくありませんよ」

 

 

 この場で最も地位が高いビヨールは酒が入ってるためメタスと一緒になってアルフレッドに語るようにすすめる。

 

 もちろんビヨールのことだから酒を飲んでいようがいまいが変わらないだろうが。

 

 

 そしてビヨールと同格のヴァラルファクスも口では止めながらも実際に止める気がないのは明らかだった。

 

 

「……実は「わーわーわー!モガッ」ウーランは当時13歳のアリオナ様に惚れてしまったのですよ。

 彼女の髪型もアリオナ様がポニーテール好きという理由でしているのです」

 

 

 途中で邪魔をしてくるウーランの口を塞ぎ、アルフレッドはウーランの過去を暴露。

 

 その顔は滅多に表情を見せない彼にしてはとても楽しそうだった。

 

 

「ウーランはアリオナ様に惚れてたのか。

 こいつはいい事を聞いた。

 アリオナ様が帰ってきたら私から伝えてあげよう♪」

 

 

 いたずらっ子のように目を輝かしたメタスは早速メモに取り始めた。

 

 その目もには他にも多くの人間の弱点や弱みなどが書き込まれており、それが彼を城の情報屋と言わしめる由来でもあった。

 

 

「絶対にアリオナ様には言うなよ!!

 あたしはアリオナ様に一目惚れしちまったけどあたしみたいなガサツな女じゃ釣り合わねえんじょはわかってるからさ」

 

 

 顔を真っ赤にしてそっぽを向くウーランをなだめるようにヴァラルファクスは、

 

「おやおやウーランともあろう者が何を言ってるんですか。

 僕はアリオナ様の側にいることは少ないですがそれでもウーラン以外の女性がアリオナ様の近くにいるのを見たことがありませんよ」

 

 

「ああ、私もアリオナ様は次期国王にして頭もよく剣の腕も立派で女性にモテそうな顔をしているのに女性関係の噂を一切聞かない。

 アリオナ様自身も恋よりも剣術と学問を優先しておられるから旅から帰って来た時に告白すれば案外ウーランも次期王妃さまかもしれんな」

 

 

 酒の勢いだろうが、ビヨールが明るく言うとその場の皆はそれも現実にありえるのではないかとも思えてくるのが不思議でもあった。

 

 

「そんな……でもあたしはもう25歳だしアリオナ様は今18歳。

 年の差だってあるのに」

 

 

「……自分は同じ三英雄としてもアリオナ様に仕える騎士としてもウーランならアリオナ様の隣にいても納得できるし辺境の蛮族を完全に見方につけることができると思うと政治的にも悪くないと思う」

 

 

 辺境の蛮族に対して圧倒的な支配力を持つウーランがボーレタリア王国の軍門に下ったことで蛮族との争いは昔ほどではなくなったとは言え、まだまだ小競り合いは後を絶たないのだ。

 

 そんな中、ウーランが次期王妃となればこの国はより盤石なものとなるだろう。

 

 

「まっ、それもアリオナ様が帰ってきてからの話だわな」

 

 

 ビヨールが明るくその場を締める。

 

 その様子を嬉しそうに見つめるヴァラルファクスは先ほどまで元気のなかったビヨールをここまで元気にした三英雄の三人に心の中で感謝をした。

 

 

「(アリオナ様。

 僕達はいつでも貴方様のお帰りを心待ちにしていますよ)」

 

 

 食堂での騒ぎも落ち着き、5人はそれぞれの仕事に戻って行った。

 

 

 アリオナ王子はこの国に無くてはならない存在。

 

 その成長を見守ることができた騎士たちはそれぞれに幸せをかみしめるのだった。

 

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