King's Souls ~二人の王子の物語~ 作:ヨイヤサ・リングマスター
「ふぅ~けっこう歩いたけど今どの辺かな。
僕はあてもなく南に向かって旅に出たけど、南にある国といえばボーレタリアに負けないくらいの大国のヴァーダイト王国だからきっと強い騎士が多くいるだろうし修行の地としてはもってこいだね」
城を出たアリオナはあくまで自分の力で旅をするために最低限の荷物と出かける直前に父からもらったルーンソードとルーンシールドのみを持ち、街道を南下しているわけだがなぜか北に向かって逃げるように大荷物を持った人たちがヴァーダイト王国に近づくにつれて増えていってるのに疑問を感じ始めていた。
ヴァーダイトはかつてはボーレタリアのように賢王として知られるアルフレッド王が統治している豊な地と聞いていたのだがここ数年は魔物が国内に増殖しているのにそれを放置するなどと言った悪評しか聞かないのは気にはなっていたのだ。
ついに気になったアリオナは通りかかった背の高い屈強な男性に声を掛けてみた。
「すいませーん。
僕はボーレタリアから来た……オストラヴァという者なんですけど先ほどから北へ向かう人を多く見かけますが何かあったんですか?」
王子であることを隠してのお忍びの旅でもあるので咄嗟に偽名を使う。
声を掛けられた男はその問いかけに対し、何かに脅えるように語り始めた。
「たぶんあんたが見てきた連中も俺と同じく荷造りをした連中だろう。
それはみんなヴァーダイト王国から逃げ出した連中なのさ。
兄ちゃんも悪いことは言わないから今のヴァーダイトには近づかない方がいいぜ。
今のヴァーダイトはモンスターが跋扈する危険な地になっちまってるからさ。
俺も命からがら逃げ出すのに成功したんだ」
「しかし僕は剣の修行のためにも旅を途中で投げ出すわけにはいかないんです。
それにモンスターが大量に発生しただなんて逃げ出すこともできないようなお年寄りや土地に愛着を持った人たちは逃げないのでしょうし、騎士として僕は逃げることができません!」
アリオナの決意は確かに立派なものだし、実際にボーレタリアの英雄として名を知られる『王の双剣』ビヨールとヴァラルファクス、『三英雄』のメタス、アルフレッド、ウーランたちに鍛えられたアリオナは騎士としての実力はヴァーダイトのモンスター相手にも通用するだろう。
しかしアリオナのことを知らない目の前の男は英雄願望の血気盛んな若者だと思ったのようだ。
頑張れよ、と言い残してさっさと北へと逃げて行った。
「義を見てせざるは勇無きなり。
僕はビヨールからは騎士としての心を特に鍛えられているから一人でも多くの人を救いヴァーダイト王国を救うことを今回の旅の目的にしよう」
アリオナは覚悟を新たにし、さらに険しさは増していき、すれ違う人も完全にいなくなったがそれでもアリオナは歩みを止めない。
彼の進む先は道中の立て札を見る限り『ガラン渓谷』と呼ばれる魔物の数が特に多い場所としても知られている場所なのだがアリオナはその事を知らず、ただただ真っ直ぐに道を進んでいく。
~ガラン渓谷~
ガラン渓谷。
そこはかつてドワーフ族が住んでいた地。
慈悲を知らぬ魔物の殺戮によりこの渓谷は死の渓谷となった。
元々モンスターもある程度は住んでいたのだがここ最近国内全土でモンスターが大量発生しているように、この渓谷は昔よりもずっとモンスターが増えてきているのだ。
アリオナもその噂は道中嫌と言うほど多くの人に聞いていたのでその場所の脅威を甘く見るつもりはなかったが実際に来てみるとそのあまりの魔物の多さには辟易してしまった。
「いったいどれだけの数がいるんだ。
ビヨール達に鍛えてもらってなければここに来る途中でもう5回は死んでいたな」
ここはブロミウスという特殊な鉱石が埋まっているため、今でも鍛冶職人はこの渓谷を訪れるそうだが魔物の数が増えたこともあり、今この渓谷にはアリオナしか人はいないようだ。
「ここにいた人たちは全て余所に移住したのかもしれないな。
ならば僕も別の場所に行くべきかな。
ボーレタリアの次の王となるために学ぶためにも人を救うための戦いがしたい。
魔物とはいえこんな人もいない場所で自由に暮らしてるだけの生き物を理由もないのに殺すのは胸が痛むな。
でもここである程度狩っておかないとここに住んでる人はいなくてもここを通る人が襲われるかもしれないし仕方がない事なんだよな」
アリオナはここに来る道中にも多くの魔物を斬り殺してきたがその事で胸を痛めていた。
ビヨールたちはアリオナの魔物にすら心を痛めてしまう優しさを心配していたがその心配は的中してしまったことにもなる。
彼は誰よりも優しいが故に誰よりも他者を傷つけることを嫌うのだ。
しかしそうしたことの繰り返しこそ自身を王たる存在に近づけるための修行だと割り切り、アリオナは旅を初めてからわずかの間に成長していたのだった。
「でもだいぶ魔物の数も減らしたしこれでここを通り抜ける人も安全に他国へと逃げることができるな」
魔物の数を減らしたことで次はどこか人里に向かって誰か困ってる人を助けてあげようと考えたところで渓谷に女性の悲鳴が響き渡った。
その声は洞窟の中から聞こえてきたのでアリオナは急いで中に入って行った。
「どこにいるんだー!
返事をしてくれー!!」
アリオナは声が洞窟内では声が響いて位置を特定しずらいためとにかく奥へ奥へと走っていった。
「ぐっぅぅぅぅ。
逃げて……くださ……い……」
声のした方を見てみればガランリザードと呼ばれるこの地特有の魔物が今まさに血だらけで地面に倒れている女性に向けて魔法を撃とうと魔力を体内で練り上げているところだった。
アリオナはその女性を助けるべく剣を抜いたが女性はアリオナに逃げるように言ってきた。
「僕は決して逃げない!
だから君もそんなに簡単に生きることをあきらめちゃ駄目だ!」
アリオナもこの魔物が強いことは理解できてるがそれでも逃げることなく倒れた女性に駆け寄りすぐさま抱えて横っ跳びをしてガランリザードの『ウインドカッター』を回避した。
だが女性を助けることに必死になっていたため完全に避けることはできず、ガランリザードの魔法は彼の鎧を大きく切り裂き、右肩から腹にかけて大きな裂傷を作った。
助けた女性もアリオナが逃げない様子を見て必死に闘おうとしているが彼女の傷は今のアリオナよりもひどく動くことは困難だろう。
「くそ、こんなに強い魔物がいるなんて思わなかったよ。
でもこの程度で僕が戦いを、生きることを諦めたと思ったら大間違いだ!」
息も絶え絶えにアリオナは言う。
彼の怪我は傍目から見てもひどく、とても戦えるような状況ではなかったのだがその目から戦意は消えていなかった。
「もう……逃げてください……
あなた一人でならこのまま逃げ切れるはずです……」
ガランリザードはアリオナが倒れたことで興味を失ったのか再び女性に近づいていき、トドメとばかりに魔法を放とうとしていた。
「僕は……王になるためにこの国に来たんだ!
これくらいの怪我でたった一人の女性も救うことを諦めるような男が王になんてなれるかぁー!!
ウォォォォォォォォー!」
アリオナは死力を振りしぼり自分に対して背中を向けていたガランリザードに駆け寄り、その首を切り落とした。
「さすがだよ父さん……
この剣の切れ味は本物だ」
ガランリザードを倒したあと城を出る前に過保護なビヨールに渡されていた『暗月草』という薬草を使って女性と自分の傷を治療し、そこで安心しきった彼は意識を手放した。
その直前に誰かの足音を聞き、自分よりも早くに回復していた女性がその人物の名前を呼んでいたようだがアリオナにはそれを聞くことはできなかった……
ええ、アリオナが助けた女性はミーナです。
ミーナは死なせるわけにはいきません!
もちろん『キングスフィールド3』でのミーナの死は、流石はフロム♪ と、フロムらしさをほめたたえましたが、自分で小説を書くなら助けずにはいられなかったので助けちゃいましたw
死んで輝くキャラは大好きですけど、そういう死んで輝くキャラってたいてい死ぬには惜しいキャラなんですよね。