King's Souls ~二人の王子の物語~ 作:ヨイヤサ・リングマスター
登場人物が死にまくるゲームが原作なので本当のハッピーエンドにするためには色々と変えなきゃならないところが多いんですよね。
アリオナが次に目を覚ました時、そこは柔らかなベッドだった。
「おかしいな。
確か僕はガラン渓谷の洞窟の中で魔物に襲われていた女性を助けて……それから…………」
だんだんと意識がはっきりとしてきたアリオナは一気に跳ね起きた。
「そうだ!
あの娘は大丈夫なんだろうか!!」
周りを見るとガラン渓谷に似た岩壁だが周囲に魔物の気配もなく、ベッド以外にも色々な物が置いてあり誰かの住処のようだった。
さらに周囲を見渡そうと身体をひねると傷が痛み、アリオナは思わず顔を曇らせてしまう。
「痛っ、傷はさすがにまだ完治していないか……」
「あ、気がついたんですね」
振り向くとアリオナが助けた女性が包帯を体中に巻いた姿だが今のアリオナよりは元気そうに声を掛けてきた。
「洞窟の中では助けていただきありがとうございました。
私は見ての通りエルフで商人をやってるミーナ・クーと言います。
あなたのおかげでこうして私も生きながらえることができました」
そう言って頭を下げる女性ミーナは確かによく見てみれば人間とは違う特徴的な長い耳をしていた。
「こちらこそ介抱していただきありがとうございます。
ボーレタリアからやってきた……オストラヴァと申します。
僕の方こそ結局怪我をしてしまい迷惑掛けてしまって申し訳ありません。
もっと強ければこんな事にはならなかったのですが……」
アリオナは段々とはっきりした頭で考えていくうちに自分の未熟さを恥じていった。
自分を鍛えてくれたビヨールや他の騎士たちならガランリザードが相手でも怪我ひとつ負うことなく倒していただろうがアリオナにはまだそこまでの力量はない。
もちろんそんじょそこらの普通の騎士ごときでは勝てないくらいガランリザードは強い魔物で、それに勝てるアリオナも並みの騎士以上の力量はあるのだが。
「ところでここはどこでしょう?
僕は鎧を着込んでいましたから体重もかなりありますし、あのガラン渓谷からそう遠くない場所のようですが」
「ここはドワーフ族のグーリンさんの鍛冶屋よ。
あなたのくれた薬草はこの国では見たこともないくらい効果があったからお互いに命は助かったけどしばらくは絶対安静ね。
あ、ちょうど話をしてたらグーリンさんが来たわよ」
部屋にあった階段から足音が響き、立派な髭を生やした大きな男が降りてきた。
「君がミーナを助けてくれた青年か。
感謝する。本当にありがとう!
ワシは鍛冶屋のグーリン・ホドルブじゃ!」
「あ、どうもはじめましてオストラヴァと申します。
なにやらベッドをお借りしたうえに怪我の手当までしていただくなんてご迷惑掛けてしまい申し訳ありません」
とりあえずアリオナは自己紹介をした。
だがグーリンは起き上がれるまでに回復した姿を見ると勢いよくアリオナの手を取り、涙を流し始めた。
「君がいなければワシは大切な友人の娘さんを死なせてしまっていたかもしれない。
これには感謝してもしきれんのじゃ」
ドワーフ族だけあってかなりの巨漢だが情に厚くミーナを本当に大切に想っていたのだろう。
「そんなに大したことはしてませんよ。
僕は無我夢中で剣を振り回しただけでガランリザードを倒せたのもマグレみたいなものですし」
「それでも私は助かったわ。
オストラヴァさんが来てくれなかったら私はあそこで絶対に死んでたもん」
「そうじゃ、まったくミーナの奴はワシが止めたのに一人で洞窟に入っていくなど何を考えているのだか」
「ありがとうございます。
ところでミーナさんはそもそも何であの洞窟に入ったのですか?
こう言ってはなんですがミーナさんは戦うことに向いてるとは思えないのですが」
そうしたら突然ミーナは顔を背け、代わりにグーリンが説明する。
「ミーナとはワシも今日会ったばかりなんじゃが彼女の父親はワシの親友でもあってな。
彼女の父も商人だったのじゃがこの洞窟にしか存在しない『ブロミウス』という鉱石を求めて入って行ったきり未だに帰ってこないのでな。
もう死んでいるのだろうと思ってワシはあきらめていたのだが今日突然彼の娘だと言って来たんじゃよ。
洞窟の中は危険じゃからワシも入ったことはなかったが彼女は勝手に一人で中に入って行ったところに君が駆けつけてくれたというわけじゃ」
グーリンはそう言いながらミーナの頭を撫でる。
それは本当の親子のような暖かな雰囲気でそれを見ているアリオナの心も熱くこみあげてくるものがあった。
――あぁ、自分がこの娘を助けることができて本当に良かった――
「洞窟の中で私のお父さんの白骨死体を見つけたわ。
……やっぱりお父さんは死んでたみたい」
「……そうか彼もエルフだったが種族に関係なくドワーフのワシとも片を並べて夜を語り明かしたりもした大切な友じゃからもしかしたらどこかで生き延びていればと思っていたのだがな。
だがそれでもミーナが助かっただけでも良かった。
ワシは過去に自分の息子を亡くしてからはずっと一人だったのじゃが生きておればミーナ位の年になっていただろうからな。
だからワシにとって娘のように見えるのじゃよ。
そんなミーナを助けてくれたオストラヴァ君を助けるのは当然なんだから君も傷が癒えるまでここでゆっくりしていきなさい。
何もない所じゃが精一杯のもてなしをしよう」
「ありがとうございます、グーリンさん」
そしてミーナとグーリンが部屋を去ったあと、アリオナは横になり再び眠ることにした。
二人の前では平気な様に見せていたが傷はかなり深く、最初よりは痛みもおさまってきたとはいえ、まだ痛みは続いているのだ。
そしてミーナとグーリンはオストラヴァの寝ている部屋の上にあるグーリンの鍛冶工房にいた。
「グーリンおじさん。
それは何を作っているの?」
先ほどから黒い鉱石を炉で溶かし、職人の目でそれをジッと見つめるグーリン。
「これは『ブロミウス』じゃよ。
彼、オストラヴァ君の鎧はガランリザードの魔法で大きく切り裂かれておったからのぅ。
あれは魔法による影響だがせめて物理攻撃だけでも緩和できればと思って修理のついでに強化をしているんじゃよ」
その答えにミーナは驚いた。
ブロミウスと言えばミーナの父が求めていた鉱石で、とても珍しくひとかけらあれば一年は遊んで暮らせるだけの値打ちのある幻の鉱石だったからだ。
「おじさん、そんな鉱石を使ってもいいの?」
「ああ、彼の武具を見てみたんじゃがあれはボーレタリアでも数少ない王家専属の鍛冶職人の技法が用いられた一級品じゃ。
その加工技術を見る限り彼はボーレタリア王国でもかなりの地位があるだろうに、君を助けるために命がけで戦ってくれたのじゃ。
だからせめて少しでもその恩に報いたいんじゃよ」
ブロミウスは高価で貴重というだけでなく、ドワーフの鍛冶職人にしか加工が出来ず、とんでもなく重い鉱石でもあるため、使う鉱石は一つだけ。
それを薄く延ばしてメッキのようにオストラヴァの装備していたフリューテッドシリーズを覆っていく。
重さに関してはかなり気をつかったので担ぐにはこれまでよりは重いかもしれないが、着込んでしまえば以前ほどの重量は感じないだろう。
「ワシの一世一代の鍛冶技術を終結して彼に二度と大怪我を負わせることのない最強の鎧にしてみせるぞい!」
グーリンは今でこそ防具専門の鍛冶職人だがかつては武器も作り、この大陸で知らぬ者がいないほどの職人だった。
だがそのグーリンの息子はグーリン自身が鍛えた武器によって命を奪われてしまい、その事がきっかけとなって防具専門の鍛冶職人となったのだ。
武器を作れなくなったからといって結局は鍛冶屋という仕事への誇りを捨てきれずにこうして生きてきたわけだがグーリンはこれまでの人生は決して無駄ではなかったと語るだろう。
こうして防具専門の鍛冶屋となったことで言葉には出来ないとてつもない宿命を背負った雰囲気を漂わせるオストラヴァの……アリオナの助けとなることがこの先大きな影響を与えるのだから。
ハンマーを叩きつけ、鎧を強化していくグーリンの眼にはそんな息子を失った悲しみを二度と味わいたくないという思いのあったのだろう。
それをミーナは黙って見ているのだった。
ミーナのパピーとグーリンは友達です。
確かグーリンの息子はグーリンが作った武器で死んだことで防具専門の鍛冶屋になって、ミーナの父はブロミウスを探していたというのは本当だったと思うけど二つをつなげちゃいましたw
こちらの物語のテーマはオーラント王を救うことです。