艦これMAXスピンオフ? 「兼業提督の浮かない日誌」   作:かちゅーしゃ

1 / 12
プロローグ的なアレ
1.呉鎮に行く前の兼業提督と艦娘達の話


「えー、我々リンガ泊地所属囲炉裏城司令部は、晴れて呉鎮守府へと移転になりました」

 

 そんな、気の抜けた炭酸のような声が、朝礼が行われている食堂に響いた。

 

「提督。それは、栄転なのですか?」

 

 そんな疑問を提督に投げかけたのは、囲炉裏城司令部軽巡最古参の阿武隈だ。

 前線に近いリンガ泊地より、本土にある呉鎮守府所属のほうが、指揮官としては優秀、誉れ高い事ではあるはずなのだが、疑問を投げかけられた提督の顔は浮かない。

 

「んにゃ、栄転ではないんだよね。多分、深海棲艦に起こってる異変に対する云々じゃないかな」

 

 浮かない顔に納得いってない雰囲気を漂わせた提督はそういった。

 

「なら、何故我々の司令部が移転となったのですか?」

 

 艦娘が疑問を投げる。

 それに対して提督は、若干嬉しそうに答える。

 

「うん、それがよくわかってないんだよ。ただ『此度の対深海棲艦作戦の一員として選ばれました』っていう通達が来ただけだから」

 

 何故嬉しそうにする。という呆れの中に、艦娘たちは提督の言った通達の内容を考える。

 

 ある艦娘は、大規模作戦の主力に選ばれたと考えて、それを否定する。

 なにせ、囲炉裏城司令部は、海域開放や艦娘の練度に注力しているわけではなく、どちらかといえば、それらはなおざりになっており、演習では10戦2勝が良いほうである。

 良くて小規模作戦の戦線維持か予備要員かと考える。

 

 ある艦娘は、補給線の護衛要因なのではないかと考える。

 囲炉裏城司令部は、補給線の維持に手を回しているとリンガ泊地ではそれなりに知られている。

 して言えば、以前の大規模作戦において、補給線の護衛と維持に注力していたため、表立った戦果はないが、泊地全体の士気の維持や、損害率低下に大きく貢献していた。

 だが、いらぬやっかみはもらいたくないという、提督の生粋のビビリ根性から、自分が大きく貢献したという事を隠して欲しいと総司令に掛け合った結果、それなりの戦果がもらえただけだ。

 その手腕を買われて、その対深海棲艦作戦において、補給線の維持を任されたのではないかと考える。

 

 ある艦娘は、最前線部隊として選ばれたと考え、怯える。

 最前線部隊とは、一番槍といえば聞こえはいいが、消耗率が一番高い部隊ともいえる。

 作戦初期では、攻略部隊の壁役として、作戦中期では、敵からは潰すべき前線への補給要因の護衛として、作戦終期では、消耗した、言えば狙い目な艦娘の後退を護衛と、休む暇なく働かされる部隊だ。

 他にも深海棲艦の本土侵攻部隊等の想定外の事態において、早急に駆けつけて、すぐさま戦わなくてはならないと、良くて戦果がもらいやすい、悪くて捨て駒である。

 囲炉裏城司令部は、提督の命令で無闇に自軍損害率を高めている一種のいわく付き司令部で、そういった司令部をまとめて葬り去るために、選ばれたのではないかと戦々恐々している。

 

 そういった不安な雰囲気を感じ取ったのか、提督は、

 

「大丈夫、大丈夫。すぐさま取って食われるわけじゃないんだから」

 

 と、落ち着かせる気があるのかわからないなだめ方を取る。

 

 

 しばらくして、艦娘達も落ち着いて、話を聞く姿勢になったところで。

 

「呉鎮守府に移転と言うことになったので、明日までに荷物をまとめといてね。じゃ、解散」

 

 と、あっけらかんと言い放ち、食堂から去る提督を見て、脱力してしまう艦娘達であった。

 

 

 …

 

 

 執務室に向かう提督について行くように歩く艦娘が1人。吹雪である。

 彼女は、囲炉裏城司令部最古参であり、大所帯になってきている今でも、秘書官として度々提督の傍らにいる。

 

「司令官、今回の話...」

 

 そのため、提督の事も他の艦娘よりも知っているのだ。

 その事とは・・・

 

「うん、やっぱり、戦車の件か爆撃機の件だろうなぁ・・・」

 

 提督は兼業提督という事である。

 提督として業務に励むより、戦車兵や航空兵として戦場で戦っている時間のほうが長いぐらいには兼業提督である。

 そのため、新参の艦娘からは放任主義のお飾り提督なんていう風に見られている。

 

 そんな提督の戦車兵や航空兵としての実力は中の下、調子がいい時で中の上といったところ。

 とはいえ、あまり上手くはない実力でも戦果を上げる時はある。

 

 今回の通達に関しては、戦車兵や航空兵の他にアフリカでの傭兵活動の実績があるのも含め、敵戦地への上陸活動を行う指揮官系の役割を与えられるのではないかというのが提督の考えである。

 

 

 今回の話、嬉しいという気持ちもあるが、目立たずひっそりと静かに生きたい臆病な提督の考えもあり、若干複雑な気持ちであるが、

 

「あの滑走路も壊さなきゃならないんだよなぁ・・・」

「ですねぇ・・・」

 

 そう呟いて、廊下の外を見ると、そこには中規模の航空基地ぐらいの大きさの滑走路があった。

 提督の役職を与えられ、司令部として泊地から少し離れた小島を与えられ、初期艦の吹雪と共に銃火器でイ級を追い返しながら作り上げた滑走路。

 それを壊す事も通達に書かれていたため、複雑な気持ちになっている一因と言えよう。

 

「まあ、うだうだ事を悔やんでも仕方ないな。さっさと荷造りをして、呉へ向かうか」

「ですね」

 

 そんな話をしながら、提督と吹雪は執務室に向かう。

 

 

 

 

 これは、深海棲艦と戦う中、機械群と呼ばれる存在が深海棲艦と共に跋扈する前

 

 兼業提督と呼ばれた若者と、その仲間である艦娘達と共に歩んだ

 

 強いて言えば、日記の抜粋とも言える、彼らの日常である。




ラッドローチ2様の作品に登場している、クソザコナメクジの囲炉裏城提督の前日談であり、その二次創作である笑う男様の作品に創作意欲を刺激されて書いた作品です。正直、公開している。

創作意欲が続けば、更新されるのかもしれないので、よろしくお願いします。

本編様に許可を取りに行かなきゃ...
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。