艦これMAXスピンオフ? 「兼業提督の浮かない日誌」 作:かちゅーしゃ
呉鎮守府の端のほうにある会議室。
そこには、呉鎮守府以外から集められた何人もの提督が集まり、説明を受けていた。
「正体不明の深海棲艦ですか」
そう、自分に言い聞かせるように呟いたのは、タウイタウイ泊地から呼ばれた提督。
呟いた声は説明も一段落し静まり返っていた会議室に響き渡る。
その声を聞いた説明役の提督は、
「そうだ。その深海棲艦は水中を素早く動く」
と、補足をするついでに説明を再開するようだ。
「この正体不明の深海棲艦の出現により、海外、主にドイツ付近へ向かう航路が安全ではなくなってしまった―――」
しばらくして、説明が終わり、集められた提督達は互いに静かに会話を始める。
「しかし考えられないな。水中速力が20ノット以上もある潜水艦とは・・・」
「たしかにな。だが、レ級のようなイかれた戦艦もいるわけだし、そういう潜水艦もいるんじゃないか?」
「だとしてもだ。どうしてドイツ付近で潜水艦狩りなんてしてるんだ?」
「これで、安全な航路の中で一番時間がかからないルートが潰れたわけだが。どう思う?」
「きついな。私の鎮守府ではドイツ艦との邂逅どころか技術導入すら済んでいない」
「いやー、ドイツ艦と邂逅済ませといて良かったわー。後はビスマルクを改二にするだけだしなー」
「テメエ、未だビスマルクが出ずにレーベとマックスとケッコンカッコカリした俺への嫌味か?」
そんな会話でにぎわっている会議室の中、リンガ泊地から呼ばれた囲炉裏城提督は心ここにあらずだった。
(司令部を置く場所、どうしよう・・・)
深海棲艦とは殆ど関係ない事を考えながら。
…
「で、司令官」
「なんだい?」
砂浜が反射する日差しが若干きつい浜辺に立つ二人の男女。
囲炉裏城提督と秘書艦吹雪だ。
夏という旬を過ぎてしまったが、それでも魅力的である浜辺に立つ二人は、きゃっきゃうふふとはしゃぎまわるわけでもなく、どちらかと言うと、吹雪が提督にジト目で睨んでいて、今すぐにでも喧嘩が始まりそうだ。
「なぜ、前の司令部と同じような無人島に私達がいるのですか?」
手を出すほどではなさそうだが、お説教が始まりそうな、そんな声色を吹雪は出している。
「いやね、前の司令部から持ち出した荷物を置ける場所って言ったら、ここら辺しかないって言われてさ...」
「だからと言って! 鎮守府すら! 建っていない! 無人島で! どうやって! 艦隊行動を! すればいいんですか!?」
言い訳にもなっていない言い訳をする提督に、爆発したかのように怒声を浴びせる吹雪。
そう、呉鎮守府の囲炉裏城司令部が置かれる場所は、鎮守府どころかここ数十年使われた形跡がない小さな建物が数軒あるだけと言う、いわゆる無人島であった。
普通の提督が無人島でどうにかしろと言うのは無茶な話である。
「だ、だって、か、艦娘とは別に一式陸攻2機分もの荷物があるなんて誰も想像しないじゃないか」
「ですけど! 司令官は前もって連絡をしたはずですよね!」
「そ、そうだけどさ、受け入れるはずの場所は、一艦隊分の艦娘だけつれてくると思っていたようで――」
「それでもですよ! 別の場所を確保するまでの間に! 私達を呉港裏の資材置き場に放置するのはいかがなものだと思いますよ!?」
事実、無人島を確保するまでの間、大量の荷物と共に囲炉裏城司令部の艦娘達は、呉港裏の資材置き場で野宿を強いられている。
さらに言えば、司令部を置く場所はまともな建物すら建っていない無人島。
提督の非は明らかであった。
「司令官はいつもそうです! この前だって、お土産と言って―――」
その鬱憤は溜まりに溜まっていたのか、ここぞとばかりにお説教にはいる吹雪。
しばらくは収まりそうになかった。
あれから数時間後、怒りが収まった吹雪と疲労の影が見える提督は、仮司令部が建っている場所へ向かい、集合をかけていた。
非番も含め120隻近くの艦娘が集まっているのは、中々に壮大である。
そこで提督は、制服を作務衣に着替え、ツルハシを片手に大声で叫ぶ。
「君達はこの仮司令部に不満を持っているし、艦隊運用が出来ない現状に苛立ちを隠せないはずである!」
たしかに、場所が決まったと言われて向かった先は無人島。
さらに、荷物が置ける場所は、仮司令室と書かれた看板が掛けられている豆腐ハウスであった。
さらにさらに、その仮司令室も大きいわけではなく、濡れると不味いものを入れると、自分達どころか荷物すら野ざらしになってしまう現状である。
さらにさらにさらに、廃港すらないため船として入港して修理すらままならず、艦隊運用すらできないと言う始末だ。
艦娘達も苛立ちを溜めてしまうのは仕方のない事であった。
「そこでだ。私が持っているこれで、この無人島を開拓し、満足の行く司令部を作り上げるのだ!」
提督はそう言い、持っていたツルハシを頭上に掲げる。
それを見た艦娘達は、困惑、期待、あ然、そして呆れといった雰囲気をかもしている。
「提督、それは私達と提督の手で司令部を建設すると言う事ですか?」
そんな中、手を挙げ質問したのは、司令部の中では比較的新参者の矢矧である。
その質問に対し、提督は、
「そうだ。場所を気にする事はない、上から拡張する事に対しての許可はもらってある」
と、若干ずれた答えを返す。
「てーことは、前よりも部屋を大きくしてもいいんだな? 提督よぉ?」
「そうだな。計画はある程度余裕を持って立ててあるから、許容範囲内であればいくらでも出来るぞ」
許可をもらったと言う答えに対して再度質問をしたのは、司令部古参である天龍。
それに対して提督は肯定の答えを返す。
その答えに、若干喜色が浮かんだのは司令部古参の艦娘達だ。
「前は10人ぐらいでイ級を撃退しながらやっていたが、今回はこれだけいるからな。いくらか哨戒に回して、総動員でやるぞ。哨戒ぐらいならなんとかなるだろう」
「っしゃぁ!」
「やりますか!」
「えぇ~」
提督の言に気合を入れるのは古参組み、不満を言うのは新参組みだ。
「なんだ? 不満でもあるのか?」
「ありますよ! 一から司令部を作るなんて正気の沙汰ではないですよ!」
声を張り上げ文句を言うのは、新参組。
普通だったら、自分達で一から建設なんて狂気に犯されてるなんて思うのが普通だ。
だが、それに対し提督は困惑顔でぽつり、
「前の司令部も、自分達で建ててたんだけどなぁ...」
と呟く。
「はぁ!?」
そんな事を聞いて、新参組の艦娘はありえないものを見たような声を出す。
新参組から抗議らしき声が挙がり始めるが、提督は疲れ半分で無視して声を上げる。
「建設だけをやる組と、建設と哨戒を交代でやる組と、哨戒だけをやる組で分かれるように話しあってくれ。2時間後に再度ここに集合だ。以上、解散!」
…
「提督だ」
「若葉だ」
「これから山を削りにいくぞ」
「大丈夫だ」
「ツルハシはまだ石のツルハシだが大丈夫か?」
「安心しろ」
「鉄鉱石が見つかれば鉄のツルハシにできるぞ」
「この瞬間を待っていた!」
「だが、若葉。お前は交代組だ。無理はさせられないぞ」
「また、この手を汚せと言うのか...」
「じゃあ、山班は山削りにいくぞ~」
「若葉、出撃する」
と、なんか訳のわからない問答を提督と若葉がやり終えて、提督と若葉を先頭とする、提督の言が本当なら、山を削りに行くというおかしな班が出発するのを吹雪は見送る。
「提督は出発してしまいましたね。吹雪さん」
「そうですね...では、1時間もしたら司令官達は大量に石材を持ってくるので、皆さんそれまでに司令部の基礎の場所を決めましょう!」
「・・・吹雪さん、あなたの言っている事も大概おかしいとは思わないのかしら」
「?」
提督を見送った後は、気合を入れて基礎の場所を決めるために班員に声を上げる、司令部建設班班長吹雪であった。
その傍らで呆れている矢矧に気付かず。
「・・・なあ、天龍」
「ふっ・・・っと、なんだ、木曾」
「何で俺達は、石のスコップで延々と地面を平らにしてるんだ?」
「そりゃあ、あれだよ。ここが滑走路になるからだよ」
「・・・え?」
「滑走路だよ。前の司令部でも立派な滑走路があっただろ? あれ、提督主導で作ったんだぜ?」
「マジかよ・・・」
「マジだよ」
「木曾さーん。スコップが壊れちゃいましたぁ。替えはどこにあるのでしょう?」
「あー、ちょっとまってくれ。・・・天龍、替えのスコップはどこにあった?」
「替え? えーっと、20本までならさっき俺達で運んできたのが・・・あそこのチェストの中に入ってるが、それ以上となると格納庫班のところまで取りに行かなきゃならないぞ」
「あんがと。あっちのチェストに入ってるとよ!」
「わかりましたぁ」
ただただ広い草原を、ひたすらに石のスコップで整地し続けている天龍率いる滑走路班。
あまりの単調さと、すぐに壊れる石のスコップに四苦八苦しながらひたすらに整地を続ける。
滑走路を敷く為にもう一段低く掘らないといけない事に気がつかぬまま。
…
1ヵ月後。
数軒集まって建っていただけの廃墟と、生い茂る木々と、中途半端に高い山がそびえ立ち、港なんていう物がなかった無人島は、広大な飛行場と滑走路、爆撃機も何十機も入りそうな巨大な飛行機と戦車共有の格納庫に、自給自足が出来そうなほど立派な農場に、空母が並んで入っても余裕がありそうな大きな港その他諸々がある、豪華な司令部になったではありませんか。
と、得意げに仕様を説明している提督の前には、前の司令部を越える立派過ぎる司令部に唖然とする新参組と、前の司令部でやらかした事以上の事をやらかしたために、これから起こる事を考えて溢れる涙を隠す為に顔を手で覆って隠している古参組の姿がそこにあった。
後日、案の定呉鎮守府に召喚されて、司令部の仕様を馬鹿正直に話して、大目玉を食らうのは言うまでもなかった。
第2話投稿。
この作品の導入はこれで終わり!
あとは、自分の発想の赴くままに適当に書き上げるだけだ。
という訳で、ここからは実際に不定期になります。
ご了承ください。
こんなネタ見てみたいといった方がいれば、感想にて言っていただければ、次話への燃料になるかもしれません。