艦これMAXスピンオフ? 「兼業提督の浮かない日誌」   作:かちゅーしゃ

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無線の応答に関してずさんなところがありますので注意。


日常的なアレ
3.司令部にやってきた渡り鳥と兼業提督の話


 司令部の建築も終わり、季節は秋から冬へと移ろい、雨が雪に変わり始める頃。

 日付が変わり、秘書艦も疲れで眠り、執務室で書類を処理し終わって一服入れようかと思っていたその時だった。

 執務室に備え付けである無線機から音が鳴り始めた。

 その音を聞いた提督は慌てて無線機の元へ向かう。

 

 その無線機はいわゆる緊急用の無線で、不審者が島に逃げ込んだ、飛行機の緊急着陸といった、非常時に通信が入る無線機である。

 なので、その無線機が鳴ったという事は、なんらかの非常事態が近辺で起こったと言うわけだ。

 無線を取り、声を出す。

 

「こちら、囲炉裏城司令部。何の要件か?」

『こちら、戦闘機隊4番機。緊急着陸の要請をする』

 

 若干ノイズ混じりの返答は、緊急着陸の要請であった。

 

「了解した。滑走路に問い合わせるため、しばし待たれよ」

『了解』

 

 そう返答をした提督は、無線機から離れ、柱一つ挟んで置いてある少し古い無線機を弄る。

 

「こちら、執務室。滑走路班、応答せよ」

『・・・こちら、滑走路班。何か御用でしょうか?』

 

 少し古い無線機の通信先は、滑走路班と呼ばれる滑走路の管理を主とした班であった。

 

「緊急着陸の要請があった。着陸は可能か?」

『少々お待ちを・・・』

「・・・・・・」

『・・・・・・お待たせしました。滑走路の状態は大丈夫なので、着陸は可能です』

「了解」

 

 望んだ答えを聞けたのか、少し安堵の表情を浮かべた提督は、緊急用の無線機に戻る。

 

「こちら、囲炉裏城司令部。戦闘機は何機で着ている?」

『こちら、戦闘機隊4番機・・・計6機です』

「・・・了解。着陸を許可する。赤い明かりを目印に着陸してくれ」

『了解』

 

 6機着陸すると聞いて、頭の中で整備班を動員させるかと考えながら無線を切る。

 そして、整備班の動員をするように滑走路班に連絡し、防寒着を羽織り、部屋から出ようとしたところで、扉が開く。

 天龍だ。手には遠征報告書がある。

 

「お、提督、どうした? 防寒着なんか着て」

「いや、渡り鳥がやってきたからその保護に、ね」

「あー・・・あっちでも結構あったが、こっちでもやっぱり来るんだな。渡り鳥」

「そうだな。こういうところだからこそ来るのかもしれないけどね。っと、そうだ。私は渡り鳥の保護に向かうから、この後に遠征から帰ってきた艦がいれば、今日は休みだと伝えてくれ」

「おうわかった。こたつ、出していいな?」

「いいぞ。まったりしすぎるなよ?」

「わかってらぁ」

 

 そんなやり取りをして、提督は飛行場に、天龍は執務机に報告書を置いてからこたつを出しに向かった。

 

 

 …

 

 提督が飛行場に向かうと、既に戦闘機隊は着陸しており、整備班の手を借りて戦闘機を滑走路から格納庫へと牽引している所であった。

 提督が滑走路から格納庫へ着いた時には、戦闘機は全て格納庫へ格納済みで、整備班が言葉巧みに搭乗員を機体から離させようとしている。

 そこで提督は「戦闘機隊4番機の搭乗員は誰だ?」と声を上げると、1人の妖精が提督に寄ってくる。

 

「ワタシガ戦闘機隊4番機ノ搭乗員デアリマス!」

「君が4番機の搭乗員か。早速だが、他の搭乗員達をこちらに来させてくれないか?」

「ナゼデアリマスカ?」

「後で帰投する際に大丈夫なように燃料を補給しておきたいんだ。後、緊急着陸するに到った経緯も聞きたいしね」

「燃料補給ハ結構デアリマスガ、経緯ノ事ナラ全員デナクトモワタシガ答エルデアリマス!」

「いや、こちらの規則でね。親深海棲艦派の自爆テロがあって、搭乗機からの隔離も兼ねてるんだ。すまない」

 

 意気揚々と質問に答えると言っている妖精に申し訳なさそうに答える提督。

 ちなみに、自爆テロは前司令部で実際にあった事で、テロに遭ってからしばらく滑走路が使えなくなってしまっていた。

 

「・・・イエ、ソウイウ事情ガアッタトハ知ラズスミマセンデアリマス」

「いえ、そんなに周知されているわけでもないですし...で、他の搭乗員達を来させる事は・・・」

「ソレナラマカセルデアリマス!」

 

 そう言って4番機の妖精は張り切って仲間を呼びに行った。

 

 

「ふぅむ、空母で夜間演習か・・・」

「ハイ 敵空母ガデキルノダカラ、我々ニモデキルダロウト無理難題ヲ押シ付ケラレタノデアリマス」

 

 提督が4番機の妖精以外にも聞いた事をまとめると、空母の夜間演習で隊の一部がはぐれたとの事らしい。

 夜戦で無力化してしまう空母の対策を講じる為に、空母の夜間発着訓練自体は、各鎮守府でも行われていて、それらは現場、主に妖精達から無茶だといわれている。

 で、その無茶を押し通されてしまった結果が、着艦する空母を見失い、囲炉裏城司令部の飛行場に緊急着陸する羽目になったのだ。

 

「・・・とりあえず、その、演習が行われているところに連絡をする」

「ワカッタデアリマス」

「連絡がついたら、再度こちらに来るのでそれまでは、ここの休憩室でゆっくりしていて欲しい」

「・・・感謝デアリマス」

 

 提督はそう言って、執務室に戻る。

 連絡機器は飛行場にもあるが、他の鎮守府へ連絡するためには役者不足である。

 それに、飛行場の連絡機器で連絡すると、通話代が余計にかかるのだ。

 

 

 執務室に戻って演習場―佐世保合同演習―に連絡すると、たしかに撃墜判定でもないのに未帰還機があるとの事だった。

 だが、そこで少し問題が発生する。

 戦闘機隊の帰還機は8機、撃墜判定は0機で、未帰還機は4機であるという。

 しかし、飛行場に着陸した戦闘機は6機。数が合わない。

 不自然に黙り込んだ提督を電話越しに不審がる、隊の母艦大鳳。

 

『・・・何か問題でもありましたか? 囲炉裏城提督』

「・・・あ、ああ、いや、特に問題はない。燃料消費が激しかったようで勝手に補給させてもらったが、大丈夫だっただろうか」

『・・・ええ、補給に関しては問題ありません。後で請求していただければ経費で落とせるはずです』

「そうですか。・・・では妖精と戦闘機はこちらで預かっておきますので、引取りに来てください」

『わかりました。明日、向かいます』

「では」

『はい』

 

 ていとくは ことなかれを はつどうした!

 じゃっかん ふしんがられたが ぶじ ことをおえた!

 

 提督は受話器を下ろして、一つ大きくため息をつき、保護した妖精達に明日まで休んでよいと伝える為に、こたつで鍋パーティが始まった執務室を後にする。

 

 

 …

 

 翌日。

 電話の通りに、佐世保鎮守府所属の大鳳がやってきた。

 随伴艦を連れて。

 

 軽く挨拶をして、保護した妖精と戦闘機を渡すだけであったが、またしても問題が発生した。

 

「・・・・・・」

「どうかしましたか? 囲炉裏城提督?」

 

 昨日まで6機6人いたはずの戦闘機と妖精が4機4人になっているのだ。

 2人はどこへ? 2機はどこへ?

 そんな疑問がよぎり、整備班に聞いてみるが、整備班も気がついたらいなくなっていたと答えるのみ。

 いなくなった。どうする?

 

「妖精と戦闘機の確認は済みましたか? 大鳳さん」

「? ええ、全員いますし、何か問題でもありましたか?」

 

 全員いる。

 なら、別に問題にしなくてもいいじゃないか。

 

「いえ、退屈しのぎにでもなればとワインを振舞ったのですが、1人悪酔いしてまして・・・」

「まあ、どの子かしら?」

「いえいえ、昨日の事ですし、既に酔いは醒めているはずです」

「そう? ならいいのだけれど」

 

 事なかれ万歳と心の中で呟きながら、大鳳と話をする提督。

 ちなみに、他の随伴艦は、遠路遥々とご苦労を兼ねて食堂に招待している。

 

「一応、今回の事に関しては上に報告させていただきます。私のところの飛行場がなかったら、もう少しややこしい事になっていたのかもしれませんから」

「そうですね。今回の事はありがとうございました。囲炉裏城提督」

「いえいえ、窓際の提督が出来た些細な事ですから」

「そんな謙遜をなさらずに・・・」

 

 

「それでは、また機会がありましたらお会いましょう。「大鳳ラブチュッチュ艦隊」の皆さん」

「え、ええ。そうですね。機会がありましたら」

「はい」

 

 そんな風に見送りをして、一つため息をした提督は、軽くこった肩を鳴らしながら執務室に向かう。

 

 

「あっ司令官! 手紙がありますよ!」

「え?」

 

 執務室に戻ると、秘書艦である吹雪が手紙があると言って、1通の手紙を渡された。

 変に思って、封を切り中身を開けると。

 

『緊急事態デアレド歓迎感謝』

 

 とだけ書かれていた。

 

 なんで、こんな一言の手紙があったんだ? と疑問に思うと、一つ思い当たる節が。

 それは、緊急着陸した戦闘機隊の一部の妖精だった。

 他の妖精とは違い、なんとなく悲壮感とかそういったものが漂っていた。

 その妖精達は翌日大鳳達が引き取りに来たときには既にいなかった。

 もしかすると...

 

「・・・まさかね」

「? どうかしましたか司令官?」

「・・・・・・いや、なんでもない。それじゃ、業務を開始しますか!」

 

 もし本当なら、それはそれで嫌だなぁと思いながら、業務を開始する。

 木っ端の提督である自分が、過去の手助けになってればいいなぁと考えながら。

 

 

 

 

 

 …

 

「―ですので、私にはわかりません! 私が整備班に指示したのは燃料補給だけで、整備班もその通りに報告書を出しています!」

『けれど、囲炉裏城提督のところで保護された戦闘機が弾薬を空中補給されたのですよ? ですので、そちらで何かがあったのではないかと・・・』

「でしたら、その時の報告書を送りますので、確認してください!」

『それだけでは足りないと思いますので、囲炉裏城提督がこちらへいらして検証を―』

 

 後日、飛行場で燃料補給を行った戦闘機が空中で弾薬補給されるというオカルトじみた現象が起こり、提督が佐世保鎮守府まで呼び出されて検証をする羽目になるのは、全くの余談である。

 




第3話投稿。


話のネタは結構溜まったが、作中時期的に入れられそうなのはこの話しかなかった。
これからは自由に出来るかな?


*簡単な捕捉
・渡り鳥
囲炉裏城司令部の滑走路に緊急着陸を求める飛行機の隠語。
リンガ泊地でも結構あった。

・親深海棲艦派
文字通り、深海棲艦に親しみを感じている提督やその部下達の事。
「俺、離島棲姫と話したんだぜー」と嘘を言うファッション親深海棲艦派から、手を組んで自分が所属していない鎮守府に襲撃をかけるズブズブな親深海棲艦派まで様々。
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