艦これMAXスピンオフ? 「兼業提督の浮かない日誌」   作:かちゅーしゃ

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血とかそれっぽい描写があったりするので注意。
あと、必要なさそうで必要だと判断した解説が小説の流れをぶった切ってあるため注意。


5.少しの闇を見る兼業提督と憲兵総隊長の話

 雪が降っている冬の昼、苦汁を飲まされたような渋い表情をしている提督。

 彼の前、机の上には二枚の紙があった。

 一枚は提督の部下がやったある事に対しての抗議文だ。

 もう一枚には、女性の写真と彼女に関する情報が書かれていて、女性の写真には「BINGO!」とでかでかと判が押されている。

 提督はそれぞれの紙を見直して、気が抜けたため息をついて、司令部館内放送用のマイクの電源を入れる。

 

「憲兵総隊長、執務室に出頭せよ。繰り返す、憲兵総隊長、執務室に出頭せよ」

 

 そう言い、マイクの電源を切ると、元の位置に座りなおし、深くため息をつく。

 

 ・・・

 

 放送から十分経たずに執務室の扉がノックされた。

 

『憲兵総隊長です。入室許可を』

「入れ」

 

 ノックの主は憲兵総隊長のようだ。

 提督は入室を許可する。

 

 扉が開き、入ってくきたのは大男であった。

 体格ががっしりしていて、鍛えているのは一目でわかる。

 顔つきは、厳ついかと聞かれればやや厳ついという答えが多数を占めそうな厳つい顔だ。

 

「憲兵総隊長漁火、出頭しました」

「よろしい。なら、ここに座ってくれ」

 

 まるで老人のようなしゃがれた声で、だが部屋に響き渡るような声で、宣言をする憲兵総隊長。

 それに対して提督は、若干疲れた表情をしながら、机の対面にある座布団に座るように言う。

 憲兵総隊長は「はっ」と応え、提督とは対面の座布団へ座る。

 

「・・・うん、まあ、仕事は順調?」

「ええ、順調です。少し人員を増やしてもらいたいところですが」

「人員ねぇ。これ以上増やすと手に余るから嫌なんだよなぁ」

「そうですか」

「そうだね」

 

 取り留めのない世話話をする二人。

 そこで憲兵総隊長が申し訳なさそうな雰囲気をかもしながら提督に聞く。

 

「提督、失礼ながら、この部屋の惨状は一体・・・」

「うん。そうね。こっちの話しの振り方間違ったのもあるけど、まず、それを聞きたいよね」

 

 そういって少し苦笑する提督。

 執務室は、冬、しかも雪が降るほど寒いのに窓が開いている。

 さらに言えば、いつもの執務机ではなく、ちゃぶ台に座布団だし、部屋は真夏のクーラーが効いてない部屋みたいに蒸し暑いし、提督は制服の上着を脱ぎ、ハンガーラックにかけている。

 そして、上着を脱いでYシャツになっていても、相当暑かったのだろう、Yシャツは汗でグショグショで肌が透けて見えてしまっている。

 

「戦艦達が暑さの我慢比べをしたんだ」

「はい」

「ちょうどいい大きさの部屋が執務室しかなくて、我慢比べが終わるまで私は自室で書類を処理していた」

「はい」

「で、我慢比べが終わって、暖房器具とかを片付けて、最後の書類に取り掛かったところで、君を呼んだんだ」

「そうでしたか」

 

 若干言い訳がましい説明をする提督。

 だが、憲兵総隊長は表情一つ変えず相槌を打つ。

 憲兵総隊長は知っている。

 提督はこんな男であると。

 

「で、だ。この女をまだ拘束しているか?」

 

 と言ってファイルから出して憲兵総隊長に見せたのは、女の写真である。

 写真に写っているのは、性格がきつそうな、そしてケバい女であった。

 

「ええ、まだ拘束しています。書類に不備があったのですが、それが問題ですか?」

「いや違う」

 

 ―――

 ここで軽い解説を行わせてもらいたい。

 

 囲炉裏城司令部は、司令部としての港の他に巨大な滑走路を備えた飛行場を持っている。

 呉鎮守府から近くもなく遠くもないこの飛行場は、呉鎮守府滑走路に着陸できない、広島空港には着陸要請が出せないような、微妙な立場の人達の受け入れ場所となっている。

 呉鎮守府からも、「なるべく遠方から呉鎮守府に用事があって来た者を受け入れて欲しい。そこから呉鎮守府へ向かう際の護衛はこちら持ちにするから」という指令も出ている。

 いわゆる、呉鎮守府専用の飛行場として扱われているのだ。

 

 で、そういう事になれば、呉鎮守府へ向かう目的の人物の書類やらなんやらの検査も必要になってくる。

 テロが絶対起きないわけでもないし、実際にテロ目的で爆弾を持ち込んだバカも捕まえている。

 書類不備や怪しい物を持ち込んでいた場合は、拘束し、事情を聞かなくてはならない。

 そうしないと、呉鎮守府も囲炉裏城司令部も、安全を確保できないからだ。

 なので、憲兵や警備も他の司令部より圧倒的に多い。

 

 それで、囲炉裏城提督が有名になっているかといえば、否で、リンガ泊地でも同じような事をさせられていたため、呉では司令部と飛行場を意図的に離して設計してある。

 近くにある司令部施設といえば、緊急着陸をした飛行機の修理・保管を行う格納庫と、第3食堂ぐらいである。

 

 解説終わり。

 ―――

 

 提督は首を横に振り、一枚の紙を憲兵総隊長に見せる。

 そこには、抗議文が書いてあった。

 要約すれば『私の妻を不当に拘束して何をしている!即刻解放せよ!』的な内容である。

 

 それを見た憲兵総隊長は、

 

「では、解放したほうがよろしいのですか?」

 

 と、提督に聞くが、提督は、

 

「いや、拘束は続けろ」

 

 と答える。

 

「何か解放してはいけない理由でもあるのですか?」

「ああ。ある」

 

 拘束を続けろという提督の言葉に、憲兵総隊長が理由があるのか尋ねると、提督は「ある」と答えた。

 

「では、何が」

「・・・艦娘売買だ」

「!!」

 

 提督の言葉に、厳つく鋭い目つきをさらに鋭くする憲兵総隊長。

 

 艦娘売買とは、文字通り提督間で艦娘を金銭的に売買する事である。

 特殊改造で艤装展開能力をなくし、非力な女性にさせて性的な行為に及ぶ、ぶっちゃけ性奴隷としての用途で売買されるのが大半である。

 もちろん、艦娘売買は違法であり、国を守るモノを私的に使用するのだから、現行犯で射殺しても問題がないぐらいには重罪である。

 

 そんな艦娘売買をしているのならば、処刑しても問題はないはず。

 なら何故、拘束し続けろというのだろうか。

 

「なら、何故―」

「報告書類を見て、この顔に見覚えがあって、伝を使ってとある組織に調べてもらった。そしたらドンピシャ。とある艦娘売買組織の幹部だとさ」

「っ・・・」

 

 提督は苦笑しながら言う。

 拘束している女は、艦娘売買組織の幹部だと。

 

「報告書類では、随伴の艦娘がいたはずだ。その艦娘はどうしてる?」

「・・・対象の女性とは別に拘束しています」

 

 女には随伴の艦娘がいた。

 憲兵総隊長は、女とは別に拘束していると答える。

 

「・・・そうか。なら、その艦娘に艤装展開できるのか尋問してみろ。抵抗するなら司令部の名において保護すると言え」

「了解」

 

 そう言われた憲兵総隊長は懐から携帯電話を取り出し、電話をかける。

 

「もしもし、漁火です。ええ、私です。例の艦娘はどうなってます? ・・・そうですか。艤装展開できるか尋問を行ってください。ええ。抵抗するのなら、訳を話すだけでも保護する用意はあるといってください。・・・はい。では」

 

 電話をかけた相手に話を伝え、電話を切る。

 憲兵総隊長は提督に話をしようとしたが、提督は書類の処理をし始めたため、口をつぐんで提督を見守る。

 

 三十分後、憲兵総隊長の携帯電話が鳴る。

 

「はい、漁火です。抵抗されましたか。・・・ええ。・・・・・・はい。・・・・・・はい。・・・・・・はい。・・・・・・はい、わかりました。ありがとうございます。・・・では」

 

 ちょっと長い応答をして電話を切る。

 書類の処理を止め、憲兵総隊長を見る提督に向き直って憲兵総隊長は言う。

 

「報告が入りました」

「話せ」

「どうやら、艦娘売買専用のいくつも司令部が存在し、そこで幾隻もの艦娘が性奴隷として調教されているそうです」

「・・・うん」

「幾ばくか調教を行って、反抗の意志があるとみなされるとその艦娘はどこかへ連れて行かれ、その晩の食事が豪勢になるそうです」

「・・・うむ」

「幹部である女性の夫と艦娘が入れられていた司令部は、別の鎮守府との事です」

「・・・・・・うむ」

「そして、女性の夫は、他の司令部に睨まれないように工作を行っているようです」

「・・・うん」

「さらに、艤装を展開すると大爆発が起こるように細工されているとの事です」

「・・・うむ」

「以上が尋問で得られた事でした」

「わかった・・・」

 

 内容はよほど不味い。

 知りたくもない闇に顔を突っ込まされた気分だ。

 だが、知ってしまった以上、普通を自称する司令部の提督は決断する。

 

「どうされますか?」

「・・・女にDの鎮静剤を打て」

「・・・あれは、明日まで起きない代物ですよ?」

「そうだな。で、女が寝ている間に、出来る限り調査する」

「それで、出た結果をどうされるのですか?」

「・・・はは、あいつらに全部丸投げしてやる。こんちくしょう・・・」

 

 決断した提督の目は、若干かかなりか濁っており、雰囲気もネームレス泊地送りにされたかのような悲壮感が漂い、引きつり笑いを起こしている。

 

 

 ・・・

 

 そんな引きつり笑いを起こしてから数日後。

 提督は神妙な顔つきで新聞を見ている。

 新聞には、

『内部反乱か? 十を超える司令部が突如壊滅!』

『舞鶴鎮守府の中将と少将が事故死! だが、不審な点が多し』

 と、二つの見出しが一面二面を堂々と飾っている。

 

「おお、怖いね。いらぬ恨みは買わぬが吉だな」

「ですね」

 

 そう提督がへの字口でぼやくと、憲兵総隊長はそれに応えるようにつぶやく。

 

「ですが」

「ん? なんだ?」

「その、あいつらとやらに丸投げして、こちらにやっかみが来る事はあるのではないでしょうか?」

 

 あいつらという曖昧な人物に事を投げた事で恨みを買ってないか、若干心配である憲兵総隊長。

 だが、提督は明るい口調とは裏腹に疲れた表情で言う。

 

「あいつらは、深海棲艦と繋がってるし、匿名希望で投げたからそう受け取るだろう。あいつらはそういう奴らだ」

「ええ・・・」

 

 あんまりな言い方である。

 

 緑茶を一口すすってから、憲兵総隊長が提督に聞く。

 

「そういえば、まだ拘束しているはずの女性はどうなったのでしょうか?」

 

 そう、あれから一晩明けた後、提督は憲兵総隊長に「憲兵や警備はあの女を入れている牢に近づくな」と命令していた。

 なので、憲兵総隊長は女がどうなっているかが気になっているのだ。

 

「ああ、あの女ね。牢に行けばわかるさ」

 

 提督は興味なさげに答える。

 そのあまりの興味のなさに呆気に取られる憲兵総隊長。

 

「そうですか。では失礼しました」

「ん。紙は取ってきてね」

 

 憲兵総隊長は気が抜けた感じで立ち上がり執務室を後にする。

 出る直前に提督が言った意味深な言葉を耳にして。

 

 

 ・・・

 

 女がいる牢の見張りをしている男に声をかけ、鍵を開け、中に入る。

 

「っ、ぅゎ...」

 

 明かりが消えていたのでつけると、憲兵総隊長は凄惨な光景を目の当たりにする。

 牢の床全体を使って血で五芒星が描かれている。

 五芒星が書かれている事に気がつけたのは、床が白いのもあったのだが、それ以上に血の臭いがむせ返るように漂っているのだ。

 

 そして、女は五芒星の中央で膝から崩れ落ちて仰向けに倒れている状態だ。

 憲兵総隊長は、女の顔を見て絶句する。

 女は、人間でも深海棲艦でもない、まるでありえないものを見たかのような表情で固まっているのだ。

 

 しばらく、その場で佇んでいると、

 

『紙は取ってきてね』

 

 提督の言っていた事が頭の中に響く。

 慌て気味に憲兵総隊長は、部屋を見回す。

 すると、部屋の隅に古ぼけた羊皮紙が落ちている。

 憲兵総隊長は拾い、ちょっとした好奇心で中身を見てしまう。

 そこには、

 

『この件は事故死として処理せよ』

 

 とだけ書かれていた。

 

 と、そこで、憲兵総隊長は気がつく。

 自分が得体の知れない何かに恐怖して小さく震えている事に。




第5話投稿。

流れぶった切って解説を入れないような話運びにしたかったが、結局ぶった切らざるを得ない状態に。
自然と入れられるような技量が欲しい・・・
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