この話は暑い時期のお話。
「○○さん! 海行きましょうよ! 海!」
水着を着たまま元気よく声を発する彼女こそ現人神と呼ばれる東風谷早苗さんである。
「何でですか」
「○○さんは私の水着が見たいから海に連れて行けばいいじゃないですか」
「待って、話が通じないよ、水着着てるじゃん」
早苗さんのテンションは幻想郷の中でも上である。
「とにかく外界に海があるので連れていってください!」
「早苗さん、最近の結界破損で紫さんもピリピリしてるんだから無理だよ」
そう、ここ最近あることが問題で結界の破損が多くなっているのは確かだ。
「なら湖に行きましょうよ」
「んー、その位なら……」
その言葉に早苗さんは目を輝かせる。
「では行きましょう! 今すぐ! 遅れを取らないように!」
「誰に対してなの……」
早苗さんは俺の手を引っ張りながら空を飛ぶ。
紅魔館周辺の湖にて、
「では早速! 出陣!」
「おー」
早苗さんはハイテンションのまま湖に飛び込む。
「おぉ、中々冷たいですね」
「お、これは中々」
しばらく泳いでいるとあることに気付いた。
「早苗さん、浮き輪外さないの?」
そう俺も外界育ちの人間だから馴染み深い浮き輪に気づかなかった。
「あ、いやこれはその、なんと言いますか……」
早苗さんの反応をみて俺の予想は確信に変わっていった。
「早苗さんもしかして、泳げない?」
「な、何をおっしゃるかと思えば! 私は泳げますよ!」
早苗さんはかなりの焦りを表している。
「じゃあ浮き輪取れる?」
「と、取れますよ! こんなもの……」
早苗さんの手はかなり震えていて、目の焦点が合っていない。
「取ってやりますよ! 取って……グスッ」
早苗さんはどんどん涙目になってきている。
「現人神の名において、水の神に奇跡のお触れを――」
「奇跡使うほど嫌なの!?」
「龍を呼び出し私に力を……」
「待って! やめて! わかったから!」
俺は早苗さんの唱えを無理やり中断させる。
「うぅ…… 申し訳ありません」
「いや、こっちも色々悪かったから……」
互いに謝る。
「では泳げる為に練習します!!」
「練習か、それはいいね」
「泳げるようになるぞー!」
その目には情熱という言葉が似合いそうなほど燃えていた。
「じゃあまず、水の中で目を開けられるようになろう」
「え?……」
早苗さんの顔が真っ白になっていく。
「ほ、ほら少し難易度が高いんじゃないですか?」
「いやいや」
「でも始めは水になれる為にと……」
「その為の練習だけど?」
早苗さんの顔はさらに真っ白になる。
「じゃあ目をつぶったままでもいいからね……」
「う、わかりました……」
「じゃあやってみよう、十数えるからきつかったら手をあげてね」
早苗さんは水面に顔をつける。
「いーち」
早苗さんはまだ余裕だ、
「にー」
早苗さんは少し震えてきた、
「さーん」
早苗さんの髪が少し光る、
「よーん・・・ なんか甘い匂いが・・・」
ふと見ると早苗さんの周辺が赤ワインになっている。
「ちょっと!? 早苗さん!」
それでも早苗さんは顔をつけたままでいる、俺は無理やり顔を上げさせる。
「奇跡使うまで我慢しないでくださいよ!」
「でも、嫌われるから……」
「嫌いませんよ!」
早苗さんは割と本気でやっている時が一番危険だ。
「早苗さんは以前溺れた子供を助けたって聞いたけど」
「あれは大変でした、周りに誰もいないし」
「その時は泳いだんだろ?」
「いえ、泳ぐのが嫌だったので50m程水面を歩きました」
「そっちの方が凄くない!?」
早苗さんは讃えよと言わんばかりにドヤ顔をしていた。
「じゃあちょっと難しくなるけど、浮き輪無しで飛び込んでみようか」
「まだ早いと……」
早苗さんはややびびっている。
「大丈夫、勇気を持って飛び込めばいけるよ」
「……わかりました、行きます!」
早苗さんは目をつぶったまま飛び込む。
「とうっ!」
その瞬間、湖が立てに割れた。
「あ! 凄い○○さん! 私、水を克服しましたよ! 水を全く感じません!」
「……早苗さん、目開けられる?」
「いやそれはまだ難易度が……」
この時○○はもう教えるの無理かなと思ったそうな。
夕暮れの守矢神社縁側にて
「今日はありがとう御座います」
早苗さんは丁寧にお辞儀をする。
「いやいや、もう少ししたら泳げるよ」
「その時は、海に行きましょうね?」
「……そうだな」
この夏はとんでもない事になるとはまだ知らない……
END?
特に理由は無いですが暫くは武者修行前の作品を載せていきます、ペースは早めです。