麦わらの副船長   作:深山 雅

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プロローグ

  「と、いうわけで、転生してね♡」

 

   「どういうわけだ」

 

  ツッコミました。ええ、思いっきり。

 

 これはアレか、よくある転生ってやつか。コイツ自身言ってたし。

 見渡せば、辺りは一面の白世界。

 俺、ただの高校生だったのに……短い人生だったな……。

 

 「つーか、キモい。皺くちゃなジジイが語尾に♡付けんなよな」

 

 「ガーン!! 神ちゃんショック~!」

 

 いや、だからちゃん付けとか、もうね・・・。

 てか、神か。やっぱコイツは神なのか。この、イジイジと地面にのの字を書いてるジジイが。

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 「………………って、ツッコまんかい!」

 

 お前がツッコむのかよ! ちょっと無視しただけでそれか!?

 メンタル弱いな、この神ジジイ。

 でも、メンタルは弱くても立ち直りは早かったらしい。

 神(?)らしきジジイは2・3回頭を振ると俺に向き直った。

 

 「お主は、わし等の手違いで寿命前に死んでしもうた。よって、別の世界に転生させてやろう」

 

 「ふっ、だが断る!」

 

 「即決!?」

 

 いや、この名言使ってみたくてさ。

 けど、面白いなこのジジイの反応。今も『ガーン』状態だし。

 よし、からかってやろう(黒笑)。

 

 「つーかさ、マジ無いって。何だよ、寿命前に死んだから転生って。ありがちな設定過ぎて引くわー。マジで引くわー。どーせなら生き返らせろよ、神ならさ。何、無能なの? どうせアレだろ。転生先はもう決まってて、それは死亡フラグ満載な世界。んで、チートか否かはともかく何かの能力もあげるってパターン。違う? そうだろ? もうちょっと設定凝れよな」

 

 「………………。」

 

 ジジイの落ち込みが増した。図星かよ、オイ。

 

 

 

 

 あれから、ちょっと苛めすぎたかと思ってジジイを宥めること数分。

 メンタルは弱いが立ち直りは早い神ジジイは見事に顔を上げた……めんどくさいヤツ。

 

 「早速じゃが……転生先は『ONE PIECE』の世界じゃ」

 

 「うん来たね、死亡フラグ!」

 

 軽く10回死ねる自信がある。……まぁ、何て情けない自信だこと。

 …………ん? 待てよ?

 

 「よって、幾つか能力を与えてやろう」

 

 「いや、いらない」

 

 「何!? お主死ぬ気か!?」

 

 おい、何でそこまで驚く。どんだけ恐ろしい世界だよ。

 

 「能力なんていらないからさ。それより、俺を平和な国の平凡な一般家庭に生まれさせてくれない? 出来れば海から離れた内陸の土地で」

 

 そうだよ、何も危険に飛び込むことは無いじゃないか。

 海に出れば危険だし、海岸沿いの町や村なら海賊が襲撃してくる可能性もある。ドラム王国のように碌でもない王サマの国に生まれても悲惨だけど、アラバスタ王国やリュウグウ王国のような良い王サマの国だってある。

 『ONE PIECE』の物語やキャラクターは好きだけど、俺は極々平凡な一般人だ。無理に首を突っ込んでもどうにもならん。あんな時代のうねり、俺のようなちっぽけな存在は弾き出されるって。

 

 「うぬぬ……若いクセにここまでやる気の無いヤツは初めてじゃ……」

 

 放っといてくれ。

 今なら他人事で済むんだよ。もしも登場人物に関わってしまって、それが他人事で無くなってしまったら、後々キツイじゃないか。

 新聞読んで『わー、エニエス・ロビーが落ちたー。』とか、手配書見て『あー、麦わら一味のトータルバウンティがえらいことにー。』とか言ってる一般人でいるのが1番楽なんだよ。

 

 「こうなったら……どうしても強くならざるを得ない環境に放り込んで……」

 

 「……って、待て! 何言ってんだお前!」

 

 俺が食って掛かっても、ジジイは楽しそうに笑うだけだ。

 

 「よし、そうしよう……お主は望まなくとも鍛えざるを得ない星の下に生まれさせてやろう!」

 

 「待てっつってんだろ!?」

 

 「そうじゃな……戦闘の素質は充分。鍛えればどんどん強くなれるぞ。悪魔の実も食べられるよう計らおう。そうじゃな、容姿も上等な部類で……」

 

 「いや、だから待てって……」

 

 言いかけて、俺の言葉は止まった。気付いてしまったからだ。

 このジジイ、心底楽しそうにしてやがる!!

 これはアレか? さっき苛めた仕返しか!?くそっ!!

 

 「じゃ、そういうわけで……バイビー!!」

 

 「古いわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ツッコんでも、もう無駄だった。

 俺は地面に突如として現れた穴に吸い込まれていったのだった。

 


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