麦わらの副船長   作:深山 雅

125 / 133
第120話 砂漠越え

 砂漠を歩き始めて、すぐに音を上げたのがルフィ・ウソップ・チョッパーだ。冬島育ちの上にもこもこなチョッパーはそれも仕方が無いと思う。だから、チョッパーは小さくしてポケットに入れた。けど他2人は根性の問題だろうから放置する。

 

 反対にあまり堪えてないのがビビとエース。エース……いいよな、メラメラは! 自分が火だからあんまり暑いとかの感覚無いだろうし! ってか、寒さとも無縁そうだな……便利人間め。

 

 はっきり言おう、昼の砂漠は暑い! そりゃもう、凄く! 砂漠は初体験だし、実は俺も堪えてる。アラバスタ人凄ェな、よくこんなとこで生きていけるよ。俺は今、人間の適応力の真髄を垣間見てる気分だ。

 しかも砂丘が多いから余計に厄介なんだよな、この砂漠は。ちょっとした登山気分を味わった。

 

 

 

 

 反対に夜は冷える! けどまぁ、冷えるなら着込めばいいだけの話だ。俺の個人的感想だけど、昼よりはまだやり過ごしやすい。

 ルフィとウソップがチョッパーカイロを取り合って不毛な争いを繰り広げる中、俺は悠々と大福カイロで温まってました。うん、大福いて良かった。もふもふ。

 あ、エースは火だから、くっ付いたら温かいかな? ………………止めよう。流石に、そんな趣味は無い。凍死しそうなほど切羽詰まってるわけじゃないんだし、この年になって男に引っ付きたくはない。想像しただけでちょっとダメージ来た。やっぱり大福だ、大福カイロが1番だ。もふもふ。

 俺はその夜、大福を抱き枕にして眠った。

 

 

 

 

 次の朝、俺はルフィの声で目を覚ました。

 

 「エビ見っけ!!」

 

 エビ? 砂漠にエビ? ……って!

 まだ少し寝ぼけてたんだけど、それが何なのかの思い至ってテントから飛び出した。

 

 「おれ、本物のエビ見たの初めてだ!」

 

 違うぞそれは!

 

 「ダメだチョッパー、それはエビじゃない!」

 

 「ルフィさん危ない、すぐ捨てて!」

 

 俺とほぼ同時に隣のテントから出ていたビビが叫んだ。

 

 「やだ! もったいない!」

 

 えぇい、ルフィ! 解らずやめ!

 

 「それはサソリだ! 断じてエビじゃない!」

 

 ゴメン、砂漠豆知識というビビのお株奪って。でも言わずにはいられない。何故なら。

 

 「チョッパーに誤った知識を植え付けるな!」

 

 「そこ!?」

 

 え、当然だろ? 何だよビビ、そんなにショック受けた顔して。

 

 「サソリは猛毒を持ってるの! 刺されたら死んじゃうのよ!」

 

 すぐに気を取り直したらしくて、補足説明をしてたけど。

 猛毒=食べられないという方程式に辿り着いたのか、ルフィは途端にサソリへの興味を失っていた。まぁ実際には、種類や調理法によっては食べられないこともないのだが、そこを指摘してやる義理は無い。再び興味を持たれても困るし。

 

 「何だ、食えねェのか……やる」

 

 「いらねェよ!」

 

 え、ウソップいらないの? 勿体ない。

 

 「じゃあ、俺に頂戴」

 

 近寄って聞いてみると、ルフィは本当にサソリに興味を失っているらしくてそのまま渡そうとしてきた。ルフィは渡そうとしてくれたんだ、なのに。

 

 「待て待て待てィ! お前はソレで何をする気だァ!?」

 

 ウソップに思いっきり立ち塞がれた。

 何って……ねぇ?

 

 「そりゃ、毒を抽出しておけば後々使えるかな~って」

 

 にっこり笑顔で答えると、ルフィが首を捻った。

 

 「? 何に使うんだ?」

 

 「………………ルフィでは絶対に考えつかないようなことだよ」

 

 「明らかにヤバいことに使う気だよな、それはァ!」

 

 ウソップ……お前、俺を何だと思ってるんだよ。マジで。

 

 「失礼だな」

 

 溜息が出るのが堪えられないよ。

 

 「俺が本当に欲しいのは、毒よりもむしろ解毒剤だよ。チョッパー、今度協力してくれるか?」

 

 「血清とか作りたいのか?」

 

 ちょっと納得したような視線で見上げられ、俺は頷いた。実際には、血清だと副作用が出る可能性も高いけど……それが1番手っ取り早いだろう。

 

 例えば、何か貴重な情報を持った敵を捕まえたとして、だ。『サソリの毒を射った、解毒剤が欲しければ吐け』とか言えたら、拷も……いやいや、尋問も楽になるだろ? 本当に射たなくても、実物があるってだけで信憑性増すし。

 そんな内心は胸の内に綺麗に包み隠して、俺は再度ルフィの手を伸ばしてサソリを受け取った。今度はウソップも止めなかったよ。

 

 でも、生きたままのサソリを所持するなんて危険な事をする気は無い。だから尻尾だけ切り取って胴体は砂漠にリリースする。今後もサソリを発見したら尾を収集しよう。

 いやー、いいモノ手に入れた……と、ホクホクしていたら。

 

 「! 何か……来る!」

 

 チョッパーが不意に真剣な顔つきになり、彼方に視線をやった。

 

 「みんな岩陰に隠れて! 砂嵐が来るわ!」

 

 ビビの忠告通り、その先からは砂嵐が迫っていた。しかも、ここに直撃ルート。

 

 「言い忘れてたけど、砂嵐は砂漠の危険の1つよ!」

 

 いや、危険なら言い忘れるなよ。

 今度の砂嵐は、まさに砂嵐! って感じの砂嵐だった。気を抜けば飛ばされそうな突風に耐えていると、その次には巻き上がった砂で埋もれる。

 口の中に砂は入るし……うげぇ、ジャリジャリ言ってる。

 砂漠、面倒くさっ!

 

 

 

 

 砂嵐も去って、再び歩き出す。

 歩き出したのはいいけど……すぐにルフィが腹を空かせた。

 ビビに対してゴネまくった挙句、次の岩場に到達したら弁当タイムにするとこぎつけたルフィ……口には出さないけど、ありがたい。実は俺も腹減ってたんだよ。

 現金なもので、ルフィはすぐに元気になった。しかも調子に乗って、ジャンケンで勝ったヤツが全員の荷物を運ぶんだとか言い出すし。あ、荷物はそれなりに多いんだよ。小さくしたとはいえ、量が量だから……って、アレ? この流れはアレか? ワルサギに荷物全部持ってかれるフラグか?

 ふ、ふふ……海賊から物を盗もうたァ、いい度胸じゃねェか………………許さん。

 

 「いくぞー! じゃーんけーん!」

 

 どうするかな。手っ取り早いのは俺が勝って荷物守ることだけど。うん、それじゃあ面白くないよな。悪徳詐欺……じゃなかった、サギには鉄槌を下さないと。

 あ、何だ簡単なことじゃん。

 

 「ぽん!」

 

 ………………結果を簡潔に述べよう。

 

 「重い……重いぞ……じゃんけん勝ったのに……何でだ?」

 

 勝ったからだろうが。

 はい、ルフィの勝利です。よって荷物持ちはルフィに決定。

 え? もっと小さくしてやれば負担も軽くなるんじゃないかって? いや、だって……面白いじゃん、頑張ってるルフィ。

 そんな状況をニヤニヤ眺めながら暫く歩いていると、やがてゴーグルの照準を弄りながら前方確認をしていたウソップが大声を上げた。

 

 「前方に岩場発見!」

 

 岩場発見。そう、それはつまり。

 

 「メシーーーーー!!!」

 

 弁当タイムの到来である。最も熱望していたルフィはもの凄い勢いで駆け出して行く……やっぱり、体力じゃなくて気力の問題だったか。

 俺たちとしては、走って無駄に体力を消耗させるのもバカらしいから黙々と歩きながら岩場を目指す。けれどそう掛からずに、1人でさっさと走り去ったルフィが戻って来る……手ぶらで。

 よし、今が頃合いだな。

 俺がワルサギへの報復に思いを馳せている間にも、ルフィはどんどんこちらへと走る。

 

 「大変だ! 大怪我した鳥がいるんだ!」

 

 で、チョッパーを呼びに来た、と。

 

 「行かねェと!」

 

 それを聞き付けたチョッパーが俺のポケットからひょっこり顔を覗かせる。元に戻してくれと視線で催促してくるけど、その前に俺は1つ言いたい。

 

 「ルフィ……大怪我して動けない鳥がいるって?」

 

 既にすぐ目の前に戻って来ていて大きく頷くルフィに、俺は溜息が零れるのを禁じ得ない。

 

 「そうだ!」

 

 何で……何で!

 

 「どうして医者を呼ぶんだ。そのまま狩れば鳥肉が手に入るのに」

 

 「……おォ、そうか!」

 

 指摘すると、ポンと1つ手を打った。そんな俺たちに対して、エースが手を炎に変えながら更なる提案をする。

 

 「何なら、焼いてやろうか?」

 

 よっしゃ、焼き鳥! ……って、エースの目的は自分も食べることなんだろうけどね。

 何にしても、この時俺たちの心は1つだった。

 

 「お前ェらの頭には食う事しかねェのか!?」

 

 失敬な。他にもあるぞ、考えてることは。ただ、今は鳥を食べたいなってだけのことだ……ん?

 

 「どうした? チョッパー」

 

 何だかポケットが震えてるなと思って見てみたら、チョッパーが青くなっていた。

 

 「! お、おれは肉じゃねェぞ!」

 

 いや、解ってるから。地味にトラウマになってんだな、食料扱いされたこと。

 

 「ちょっと待って、ルフィさん!」

 

 今まで少し考え込んでいたビビが、慌てた声を出した。

 

 「その鳥って、まさか!」

 

 二の句が告げずにいるようだったから、補足しようと思う。

 

 「ワルサギだろうね」

 

 事もなげに言うと、ビビに食って掛かられた。

 

 「知ってるの!? なら、何でそんなに落ち着いてるのよ!?」

 

 「え、だって」

 

 俺はちょっと頭を掻いた。

 

 「ルフィが荷物を放りだして逆走してきてるのを見た瞬間に、手は打ったから。アラバスタ……特に砂漠の生物に関しては調べておいたから、念のためにね」

 

 手を打ったんだよ、実は。こっそりとね。

 言いながらビビの肩を叩いて宥めると、幾分落ち着いてくれた。けれどそんな俺たちのちょっと不穏なやり取りに嫌な予感を感じたのか、ナミが割って入ってきた。

 

 「ちょっと待って! ワルサギって何!?」

 

 何って……そりゃあ。

 

 「ワルサギは……鳥だ」

 

 「そのまんま!? もう、あんたには聞かないわ! ビビ!」

 

 ………………無視された。ちょっと悲しい。

 

 「ワルサギは、旅人を騙して荷物を奪う砂漠の盗賊よ」

 

 変わって行われたビビの説明を聞いて、ウソップが眼を剥いた。

 

 「そりゃサギじゃねェか!」

 

 「だから、ワルサギなんだって」

 

 さっきから言ってるのに。

 ワルサギについて聞いて多くの者が慌ててる中、ルフィが『のほほん』としか言えないような能天気な顔で笑った。

 

 「なら大丈夫だな! ユアン以上にサギが上手ェやつなんて滅多にいねェから!」

 

 ルフィ……お前、それはフォローしてるつもりなのか? まぁ、実際に手は打ったけど。

 

 「でも……手を打ったって、何をしたの?」

 

 尤もと言えば尤もと言える疑問を口にしたのはビビだ。それに俺は肩を竦める。

 

 「行ってみれば解るよ……上手くいけば、そのままサギ鳥も捕まえられるかもね」

 

 さぁ、鳥肉鳥肉!

 

 

 

 

 何と言うか……ここまで上手くいくと、実は俺って運がいいんじゃないかと思ってしまう。

 

 「こいつらだ、倒れてた鳥!」

 

 ルフィが『騙された!』って怒ってるけど……お前、今更じゃん。騙されるのなんて。

 荷物を置き去りにしてしまったという岩場の陰は、日陰になっていて少しだけ涼しい。

 そしてそこでは、ワルサギたちが無様に潰れていた。何で潰されてるのかって? 俺たちの荷物でだよ。

 

 この荷物が持ち運び出来るのは、あくまでも俺の能力によって小さくしてあるからだ。そうでなければ、とてもじゃないけど無理な量がある。だからそれを解除してしまえば、ワルサギたちが運び出すなんて出来やしない。解除だけならば俺が触る必要なんて無いし。

 そして今回は更に良いことに、丁度ワルサギたちが荷物を持ち去ろうとした瞬間に解除のタイミングが重なったらしくて、ヤツらは揃って潰れている。そりゃもう、プチッと押し潰されてもがいている。

 もしワルサギたちが知恵を働かせて、その大量の荷物から自分たちが持てる分だけを持って行ってたとしても、それはそれで問題無かったけど。腹立たしいことは腹立たしいけど、その程度で物資に困るような量じゃない……それぐらい大量に持って来てる。

 さて……。

 

 「海賊のモノに手を出そうとした報い……しっかり受けてもらおうか?」

 

 1番手近で潰されていたワルサギの首を掴んで持ち上げながら、視線を合わせて勧告した。

 何だろうね、焼き鳥が食えると思ったら笑みが止まらないよ。

 

 

 

 

 本来ならばワルサギのような連中は、煮ても焼いても食えないとかって評されるんだろう。けど、実際の所は焼いたワルサギは美味かった。結構締まった肉してたし。

 

 俺たちは今、岩陰で鳥や弁当を食べながら休憩している。

 そんな中突如地響きがしたと思えば、砂漠の向こうから大量の砂埃を巻き上げながら何かがこっちに走って来た。

 何か、とは言ってもそれは。

 

 「ありゃあ……ラクダか?」

 

 真っ先に口に出したのはゾロだった。目ェいいな、お前。

 そう、それは必死に逃げるラクダとそれを追い掛ける……。

 

 「サンドラオオトカゲ!!」

 

 そう。でっかい紫色のトカゲ、サンドラオオトカゲだ。何でも、鋭い鉤爪と牙を持つのに獲物を丸呑みしてしまうことの方が多くて、それは滅多に使われないんだとか。

 ………………うん、色々可笑しいな。生物って環境に適応して進化していくモノじゃなかったか? 何で使いもしない物が凄くなってくんだ? ある意味、生命の神秘だよ。いや、ひょっとしたらサンドラオオトカゲ同士の縄張り争いとかに使われるのか?

 って、そんなことはどうでもいい。それよりもだ。

 

 「恐竜肉は美味かったよな……アレも美味いのかな?」

 

 「何!?」

 

 食い意地では無く、純粋に興味を覚えたからこそ出た疑問だったんだけど、その呟きをルフィに聞かれていたらしい。見てみると、目をキラキラさせていた。

 

 「美味ェのか、アレ!」

 

 いや、俺は『美味いのかな?』って疑問を口にしただけであって、一言もアレが美味いだなんて断言はしてないんだけど……って。

 

 「トカゲーーーーー!!」

 

 聞いてませんね。涎を垂らしそうな顔でバヒュンとトカゲに向かって飛んで行くぐらいに、聞いてませんね。

 しかも。

 

 「ゴムゴムの~~~~~バズーカーーーーー!!!」

 

 ドゴォン、と。サンドラオオトカゲは倒れた。

 一撃必殺ですね。ゾロやサンジの出番も無いぐらいに、クリーンヒットしましたね。

 

 「……あいつの食欲はどうなってんだ?」

 

 すまん、サンジ。また料理してくれ、コックとして。

 あれ? そういえば……。

 

 「サンドラオオトカゲって、ペアで狩りをするんじゃなかったっけ?」

 

 聞くと、ビビは明らかに『しまった』という顔になった。

 

 「言い忘れてたわ!」

 

 天然出た! 

 そして次の瞬間、まるで見計らったかのように俺たちの背後で砂が盛り上がる。

 サンドラオオトカゲPART2が登場である。そして、その1番近くにいるのは……。

 

 「エース!」

 

 「危ない!」

 

 そう、エースである。1人だけ少し距離を取ってたからなぁ。でも。

 

 「危ないのはサンドラオオトカゲの方だよ」

 

 あれがロギアをどうこう出来るとは思えないし。そうでなくともエースにしてみれば、慣れたものだろうし。

 結果はすぐに出た。ヒョイッとトカゲの口の中に入って、体内から丸焼き。よし。

 

 「食べよう」

 

 「切り替え早ェな、おい!」

 

 だって、気になってたんだ!

 

 

 

 

 さて、何だかんだでサンドラオオトカゲも結構美味かったわけだが。

 

 「ラクダの瘤って、八珍の1つなんだよな……」

 

 「つまり何だ?」

 

 「珍味」

 

 これは、焼きサンドラオオトカゲを頬張りながらルフィと交わした会話である。実際にはラクダの瘤って脂肪の塊で調理が難しいらしいし、八珍って時代によって変わるけど。

 

 「いや、お前ェらどんだけ食うんだよ」

 

 ウソップのツッコミは気にしない。気にしないったら気にしない!

 

 「いい加減にしなさいよ! 怯えてるじゃない!」

 

 ナミの言う通り、ラクダは怯えていた。そりゃあもう、涙目で震えるぐらいに。

 サンドラオオトカゲに食べられそうになって、助かったと思ったら今度は人間に食べられそうになってる。何て不運なラクダなんだ。

 

 「……冗談だよ」

 

 本当はちょっと惜しいけど、その辺の本音は心の奥底に沈めておこう。

 砂漠のど真ん中で出くわしたラクダは鞍を背負っていた。何だ、この鴨が葱を背負ってきたような状態は。

 ラクダはチョッパーと顔見知りだったらしい。何だか盛り上がっている。

 そのチョッパーの通訳によればこのラクダ、助けてもらったことには感謝しているものの男は乗せない主義なんだとか。当然ながら、それでみんなが納得するわけがない。ラクダはルフィ・ウソップ・サンジによってリンチされる羽目に……おいおい。

 

 「やめなよ」

 

 殴る蹴るの暴行でこのラクダが再起不能にでもなったら本末転倒だと思い、俺は割って入らせてもらった。

 

 「冷静に話し合おう。ほら、世の中、ラブ&ピースって言うじゃんか」

 

 海賊が何言ってんだ、と内心で自分にツッコみつつそれとなく宥めていると、背後でラクダが何か言った。明らかに話しかけてきているみたいだけど俺はラクダ語なんて理解できないから、『何て言ってるんだ?』的な視線でチョッパーに通訳を求めた。

 

 「『その通りだ、暴力は好かねェ。が、話し合っても同じことだ、おれは男を乗せない主義は曲げねェ。解ったか、チビ』……って言ってるぞ。」

 

 …………………………あはは、何を言ってんのかな、この畜生は。

 

 「うん、ちょっとあっちに行こうか?」

 

 俺はラクダの手綱を握り引っ張る。そして次に、振り返った。あれ? 何かみんなが遠い気がするな。いや、そんなの今はどうでもいいか。

 

 「ルフィ、ラクダに乗りたいのか?」

 

 ここはやっぱり船長の意向は確認しておかないとな。それによって話し合いの内容も変わってくるし。

 

 「おう! 乗る!」

 

 どん! と胸を張っちまって。けど、よし。それならその辺も含めて……と。

 落ち着いて、平和的に話し合いで解決しないといけない。なら怒りは押し隠さないとな。笑顔だ笑顔。友好的なスマイルで行くんだ、俺。スマイル0円、ゴー。

 

 「取りあえず、じっっっっっっっっっっっくり話し合おうか?」

 

 俺とラクダは、少しだけみんなから離れた岩場の陰に行き向かい合う。

 ラクダとの話し合い……ってか言い聞かせは極めて平和的に進めさせてもらったよ。けれど残念ながら俺はラクダ語を理解できないから、解ってくれたかどうかは後でチョッパーに通訳してもらうしかない。

 それで元の場所に戻って頼んでみました。そのチョッパー曰く。

 

 「『おれは男は乗せねェ主義だ……が、お前らは命の恩人だ。その限りじゃねェ。』って言ってるぞ」

 

 うん、解ってくれて良かった。やっぱり話し合いって大事なんだな。

 

 

 

 

 その後ラクダはナミによってマツゲと名付けられた。やっぱりそうなったか……ってか、ナミのネーミングセンスもそこまで良くないんじゃんか。何で俺ばっかり微妙な目で見られるんだ?

 しかも、マツゲに乗ったのは結局ナミとビビ。折角マツゲを脅は……いや、説得したのに。ナミに『か弱い女の子をこれ以上歩かせる気?』って詰め寄られて。しかもサンジもそれに同調した。おのれ。

 砂漠の船という足も手に入れ、俺たちはさらに砂漠を進む。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。