「この子を育てるんじゃ!」
「またかい! 今度は誰の子だよ!?」
「ワシの孫じゃ!」
「ハァッ!?」
どーん、という効果音が付きそうな勢いで俺を抱えるガープさん、基、祖父ちゃん。
ここはドーン島フーシャ村近くのコルポ山。
うん、ぼかす必要は無いな。
今俺の目の前には、山賊ダダンがいます。
………………何で?
まぁぶっちゃけ、アレだ。祖父ちゃんは俺をダダンに預けることにしたらしい。原作におけるエースと同じだな。
確かに、祖父ちゃんは海兵として忙しいから赤ん坊の面倒なんて見られないだろう。母さんは死んじゃったし、父さんは見当たらない。それなら、誰かに預けること自体はやむを得ないとは思う。
でも、何でその相手が山賊なんだよ。ルフィみたいにフーシャ村の人に預けりゃいいじゃん!
あ、そうそう。俺が産まれたのはそのフーシャ村だったらしい。ちなみに、ルフィにも会ったよ。
でもルフィは……何かちっちゃかった。いや、俺よりは大きかったんだけどね。聞くところによると、今1歳らしい。
ちなみにクソガキだった。思いっきり髪の毛引っ張られたし。それで泣き出した俺を、ヤツはきゃらきゃらと笑いながら見ていた。殺意が湧いてしまった俺はきっと悪くないと信じてる。
んで、俺はこれからこの村で育つのかなー、まぁマキノさんもいるみたいだしいっかー的なことを考えてたんだけど、生後2~3ヶ月ぐらいでここに連れてこられてしまった。
うん、この祖父さんホントに方向性間違えてるね!?
俺が軽く現実逃避をしてる間に、祖父ちゃんはダダンに俺を押し付けることに成功していた(色々脅迫してた)。
……仕方が無い、強く生きていくしかない。もうぐだぐだ言ってられない、強くならないと本当に死ぬ! あの祖父ちゃんがいる限り! 断言できる!!
考えてみりゃダダン一家も、そこまで悪い人たちでもないと思う……山賊だけど。原作でも何だかんだ言いつつエースとルフィの面倒見てたし。頂上戦争後にはエースの死に号泣してたっけ。
祖父ちゃんは去り、ものすごく渋々な様子で俺を抱くダダン……何かすいません、あんな祖父で。どうもご迷惑掛けます。
「エース!エースはいるかい!?」
え、エース? 嘘、早速?
「………………。」
無言でこっちに来たのは、小さな男の子。そばかすが特徴的で……うん、すっごい目付き悪いね!? 既にコンプレックスはしっかり植えつけられてるんですねエース君!?
っていうか、実際のところロジャーの悪評ってどれほどのレベルなんだろ。ルフィが1歳だったから、多分エースは現在4歳。そんな幼児がこんな顔するなんて……。
「何だよ、ソレ」
ソレ!? ソレって、物扱い!? せめてソイツって言ってくれよ!
ダダンはフンと鼻で笑った。
「お前と同じさ! ガープに押し付けられたんだよ! 全く……何だってこうも厄介者が増えるんだか!」
……本人に言いなよ、そういうことは。
まぁ、気持ちはわからんでもない。赤ん坊を押し付けられるってのはかなりの面倒事に違いないし。
「コイツはガープの孫さ。名前はユアン。しかも、あの『治癒姫』ルミナのガキだとよ!」
? ルミナってのは母さんの名前だけど、『治癒姫』って何だ? 話が見えてこない。エースもきょとん顔だよ。でも、『あの』って言うぐらいなんだから有名なんだろうか。
ダダンはまだベラベラと話しを続けた。
「海賊『治癒姫』ルミナ……かつてお前の親父の最後の航海の時、船に乗っていた女さ。まさか、ガープの娘だったとはねぇ……!」
な・ん・で・す・と!?
え、母さん海賊だったの!? てか、『お前の親父』って、海賊王ゴールド・ロジャー!? あ、いやゴール・D・ロジャー!? あぁもうそんなのどっちでもいい!! 何やってたのさ母さん!! 海賊!! しかも、まさかのロジャー海賊団!! 例え海賊に憧れてたとしても、何だってわざわざ父親の宿敵の元に!? うわもう何からツッコんだらいいのか解かんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
ん? でも待てよ? エースが4歳なら海賊王処刑は凡そ6年前。解散はその1年前で最後の航海は4年だったはずだから、11年前から7年前の間に母さんはロジャーの船に乗ってたのか? 母さん、20歳そこそこに見えたんだけどな……。
「……ジジイの娘でアイツのクルー……?」
あ、やめてエース君? そんなビミョ~な顔やめて? ソレは俺が一番したい顔だから! 表情筋が上手く動かない生後数ヶ月な赤ん坊じゃなきゃとっくにしてるって!
でもある意味納得だよ。そりゃダダンに預けるよねフーシャ村には置いとけないよね隠すべきだよね! 海賊王本人の子であるエースとは比べ物にならないだろうけど、伝説のクルーの子だって『有害因子』って言われかねない。いくら祖父ちゃんが英雄でも。実際、革命家ドラゴンの子であるルフィも頂上戦争時にそんなこと言われてたし。あの小物くさいバギーも、伝説のクルーだって経歴隠してたし。余程のことなんだろうなぁ。
「てなわけで」
ダダンは俺をエースに押し付けた。おっかなびっくりって感じで俺を受け取るエース。
「お前、コイツの面倒を看な」
な・ん・で・す・と!? (PART2)
この人、いくら何でも4歳児に赤ん坊を丸投げする気か!?
そんなのエースだって迷惑なはず……アレ?
見上げた先には、めっちゃ同情的なエースの顔。え、何で?
「お前も……アイツのせいで……!」
……アレ? 俺お仲間認定された? 同族意識みたいなモン?
結局、エースは特に文句も無くすんなりと俺の面倒を看てくれるようになった。
そして、俺の波乱万丈な第2の人生はスタートラインを切ったのだった。
主人公、ダダンに預けられるの巻。
流石に主人公はまだ赤ん坊なので、エースの態度も当初のルフィに対してほど刺々しくはないです。なのであっさり受け入れてもらえました。エースはお兄ちゃん気質だと思ってます、何となく。
主人公乳児期は今回で終了です。次回からはもうちょっと成長してもらいます。
そして起こるイベント……悪魔の実を食べてもらいます。