麦わらの副船長   作:深山 雅

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第4話 3つの事件

 お久し振りです、『ONE PIECE』の世界に転生した俺、モンキー・D・ユアン。現在3歳です。

 あの、生後数ヶ月でダダン一家に預けられた日から早3年。これといった事件も無かったので話をぶっ飛ばしました。

 前回ダダンに俺を丸投げされたエースだけど、実に甲斐甲斐しく面倒を看てくれた……本当、いい兄ちゃんだよね! 俺ってば涙が出そうだよ!

 まぁダダンたちも、何だかんだ言って完全に放っといたわけじゃない。エースが出かけてる間はちゃんと誰かが看ててくれた。

 そうそう、エースといえば。サボってヤツと仲良くなって海賊貯金をやってるんだって話してくれた。俺がもう少し大きくなったら一緒に連れて行ってやるってさ。

 サボ……原作ではアレ、結局どうなったんだろ……俺が知ってるのは魚人島編が終わってパンクハザードに着いたトコまでだしな。多分生きてるんだろうって思ってるけど……。

 

 

 

 

 さてさて、ついさっき俺はこう言った。『これといった事件も無かったので話をぶっ飛ばしました』。

 逆に言えば、今こうして話をしているのは事件が起こったからだ。

 

 

 

 

 今日は俺の3歳の誕生日。ソレを見計らうように祖父ちゃんがやって来た。

 祖父ちゃんが来たことそのものは事件であって事件じゃない。矛盾した発言だけどそう言うしかない。

 祖父ちゃんが来るととにかくしごかれるんだ、コレが。その暴走振りはある意味事件だよ。

 でも、悪い人じゃないんだよな……他はとにかく、俺の知る限り毎年エースと俺の誕生日にはプレゼント持ってやって来るんだよ。……あの暴走っぷりが無ければ、なんと素晴らしい尊敬すべき祖父ちゃんなんだろうと思えるのに……なんて残念な人なんだろう。色んな意味で。

 話が逸れた。

 とにかく、祖父ちゃんが俺の誕生日に来ること自体は可笑しくないんだ。俺にとっての問題は祖父ちゃんが持ってきた今年のプレゼントにあった。

 

 

 

 

 俺を鍛えよう(苛めよう)とする祖父ちゃんにエースが突っかかって逆にエースが祖父ちゃんに扱かれる羽目になってしまい罪悪感に苛まれていたが、何だかんだ言って仲良さそうだから取りあえず放っておこうと思って止めるのは諦め、俺は1人ダダンの家でプレゼントと言って渡された風呂敷包みを開けていた。

 ちなみに、ダダン一家は祖父ちゃんが来たと聞いてさっさと避難している。祖父ちゃんはアレか? 天災か何かと同じ扱いか?

 中身は、本が数冊に箱が1つ、後は細々とした雑貨。

 箱は飾り気の無い無地なモノだし、本は3歳児が読めるような簡単なモンじゃない。雑貨だってどことなく年季が入ってる。

 けれどそれも当然、これは母さんの遺品なのだから。祖父ちゃん曰く、遺品整理してたら出てきたから俺にあげようと思った、とのこと。

 そしてこの遺品たち……それこそが俺的に色んな事件を巻き起こす品々だった。

 

 

 

 

 まず最初に手にしたのは、雑貨だった。

 櫛とか鏡とか、やっぱり女の人なんだな~と感じる品々だった。それでも、どことなく質素で地味だったのは、海賊だったからだろうか……本人の性格って可能性もあるけど、あんまり可愛らしいものは無かった。

 第1の事件は、俺がふと手に取った鏡にあった。いや、鏡に映ったモノに。

 ……俺は、ものの見事にフリーズしたよ、自分の顔に。

 俺は今まで、自分の顔というものを見たことが無かった。この家には鏡が無かったし、見なくても不自由は無かったから。流石に女であるダダンの部屋には鏡もあるのかもしれないけど、そこは立ち入り禁止だし。ガラスや水に映るだろと思うかもしれないが、それも無かった。これまでは特に気にしてたわけじゃなかったから、言うなれば無意識にスルーしてたってことかな?

 だから俺は、3歳になって初めて今生の自分の顔を見たわけだけど……現実逃避しかけたよ、ホント。

 ブサイクだったわけじゃない。むしろ、転生直前に神ジジイが言ってたように、上等な部類だった。いや本当、自分で言うのもなんだけど将来有望そうなイケメン予備軍だよ。

 ただ……ただね……何となーく、嫌な予感がするんだよ……だってさ……この顔…………ある意味、すっごい見覚えがあるよーな……。

 思い出すのは母さんの経歴と、俺が産まれたときの言葉……まさか、俺って…………。

 止めろ俺!! それ以上考えるな!! 怖いこと考えるんじゃない!!

 ただでさえもう一杯一杯なんだ! ガープの孫でエースの弟分でルフィの従兄弟って、設定詰め込みすぎなぐらい詰み込まれてるんだ! これ以上余計な設定を増やすな! 忘れるんだ俺! 今浮かんだ考えは綺麗サッパリ忘却の彼方に追いやるんだ!!

 とにかく、コレに関しては現時点では保留することにした。

 

 

 

 

 次に手にしたのが本。事実3歳だったら読めないような本なんだろうけど、俺はどんな本かぐらい解る。

 小説2冊、航海術と医術の本が1冊ずつ。あと簡単な地図帳。ここまではまぁ良かった。

 けれど第2の事件は……最後の分厚い1冊にあった。

 最後の1冊は母さんの日記だったんだ。それも、ただの日記じゃない。

 母さんが海賊として活動していたらしい数年間分の日記だったんだ。

 それのどこが事件だと思うかもしれないが、思い出してほしい。母さんは伝説のクルーだったのである。パラパラと捲ってみただけでも、ロジャーだのレイリーだのクロッカスだの、当時の仲間のことから航海の様子、立ち寄った島に出会った人々……そういったモノが記されていた。

 1日のことを詳細に記しているわけじゃない。中には『今日は何事もない平和な1日だった』なんて、たった一言で終わってる日もある。『お昼ご飯に出てきたカレーが絶品だった』なんてどうでもいいこと書いてる日もあれば、何も書かれていない日もある。けれど逆に、ハッと驚くようなことも書いてあるのだ。

 例えば偶々見つけたのは、『船長に空島について聞いた』という一文だ。気になってちゃんと読んでみると、空島について色々書かれていた。ダイアルって面白そうなものがあるらしいとか、空島には船長……つまりはロジャーの友人のガン・フォールって神がいるとか……どうやら母さんはロジャーの船に乗っているとき、かつて彼らが行った空島の話を聞き、それが心に残って記録に残していたらしい。

 特に驚いたのは、空島の大鐘楼、そしてポーネグリフについても書かれていたことだ。そのポーネグリフに記されていたのが古代兵器ポセイドンについてだってことまで。しかも……ソレが海王類を操れる存在だってことも、魚人島にあるってことも……。

 ……うん、この日記ヤバくね!? この調子じゃリオ・ポーネグリフだのラフテルだののことまで書いてありそうじゃね!? 祖父ちゃん、この日記確認しなかったのかよ!! ……してないんだろうな。アレでも一応海軍の上層部なんだし、確認してたら没収だの処分だのしてるだろうなぁ……少なくとも孫に渡したりしないだろ。

 とにかくコレは、今は置いとこう。また今度じっくり読んでから今後について考えようか。

 

 

 

 

 最後に手にした箱……コレが最後の、そして最大の事件を引き起こした。

 何の変哲も無い箱だった。そう、箱はただの箱だったんだ。問題はその中身。

 

 「…………」

 

 俺の目の前には、ぐるぐる渦巻き模様の紫色のリンゴ……。

 うん、悪魔の実以外の何物でもないね!?

 そりゃ冷静に考えれば、母さんが悪魔の実を持ってても可笑しくは無い。いくら希少とはいえ、仮にもグランドラインにいた海賊なら手に入れる機会はあっただろう。それを自分で食べずに保管していたのかもしれない。

 しかしこれは……神ジジイめ……俺に食えって言ってんのか? これはアイツの企みか?

 …………よし決めた。

 

 「売ろう」

 

 誰が食ってなどやるもんか。あいつの思い通りになんてさせん。家族や容姿は自分で選べなくても、これは俺の意思でどうとでもなる。

 この悪魔の実は、保管しておいて後々売ろう。売れば1億ベリーだ。ベリーは多分円と同じくらいだし……大金だ。

 もう1度言おう。

 こんなモン、断じて食ってたまるか!!

 俺はその思いを胸に刻み込んだのだった。

 

 

 

 

 しかし……世の中、そう上手くはいかないものだと、俺はこの後まざまざと実感する羽目になるのだった。




ユアン、3歳になりました。悪魔の実に関しては次回で。

 ユアンの容姿については、いずれまた。……本人は軽く現実逃避気味ですが、数年後にはその考えないようにしていた現実を突き付けてくる存在と出会うことになりますので、その時に明言します。

 ロジャーが空島に行った時期については不明なので(ガン・フォールも『20年ほど前』としか言ってませんでしたし)、ルミナは行ったことはないけど話に聞いたことはある、という風にしました。

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