麦わらの副船長   作:深山 雅

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第7話 目的

 ジジイに夢で悪魔の実の話を聞いてから俺は、その能力制御が出来るように、と特訓を始めた。

 1年の間に、手で触れたものを1/10にまで小さく出来るようになっていた(副産物として、通分にも強くなりそうだ)。

 頑張れ、俺! 目標は最小の1/100だ! 芸は身を助けるって言うしな! (←何かが違う)

 

 

 

 この1年で俺がしてたことがもう1つある。それは、あの母さんの日記を読むこと。

 ……いやもうね、本当にとんでもない日記だったよ。

 ちなみに、俺が気になったラフテルやリオ・ポーネグリフについては、書いてなかった。

 いや、正確には失われていたんだ。

 ロジャー海賊団の最後の航海、ラフテルに到達したと思しき日々の記録が、ごっそりと破り取られていたんだ。それを誰がやったのかは解からない。母さん本人が流石にマズイと思ってやったのかもしれないし、他の人がコッソリ抜いたのかもしれない。

 でもそれ以外は、かなり詳しく書かれていた。かなり母さんの主観が入っていたけど、それは仕方が無い。これは航海日誌ではなくあくまで日記なのだから。

 そうそう、母さんの年齢だけど、やっぱり俺を産んだときは20歳だったみたいだ。ロジャー海賊団ではまだ見習いって立場だったらしい……見習い……見習い、ねぇ…………いや止めろ俺、それ以上考えるんじゃない。

 ついでに言うと、母さんはロジャー海賊団解散後も海賊をやってたらしい。その頃の記述もあった……そう、海賊を……しかもその頃所属してた海賊団は……いや止めろ俺、それ以上思い出すんじゃない。

 日記は俺の産まれる数日前、即ち母さんの命日のほんの数日前まで続いていた。母さんは決して文章は上手くなかったけど、筆まめではあったらしい。

 グランドラインのデタラメさ、覇気や六式、七武海、天竜人、魚人と人間の歴史、古代兵器、ポーネグリフ等など……俺は原作を読んだから知ってることもあるけど、知らなきゃ作り話だと思ってるだろうな。

 でも逆に言えば、俺が原作知識を一部披露しても怪しまれないってわけだ。

 流石に末来に関して明言はできないけれど、『昔これこれこういうことがあったんだ』って過去を語るのは可能だし、『かつてこういうことがあったから、現在起こっていることと合わせて考えればこういう予想が出来る』と忠告も出来る。

 この日記はかなり分厚いから1日2日で読み込むことなんて出来ないし、母の形見だから他人には見せたくないと言えば大抵の人は触れずにいてくれるだろう。それならば、ここに書いていないことも『日記に書いてあった』と言えば多少は通る。

 これはひょっとして、お得なアイテムかもしれない。

 

 

 

 

 俺がどうしてこんなことを考えるのか?

 正直言えば、俺は厄介事なんてゴメンだ。地味に静かに暮らしたい。けどそれは恐らく祖父ちゃんのせいで叶わないだろうし、だったらいっそのこと、目一杯鍛えて海に出ようと思う。海賊だとか賞金稼ぎだとかって明確なことは決めてないけどね。

 今の俺の目的は、頂上戦争だ。もっと言うなら、エースを助けること。

 既にエースは俺にとって兄ちゃんであり、育ての親に等しく、とても大事な人だ。それが殺されるなんて、冗談じゃない。

 恐らく、傍観していれば世界は俺の知ってる原作どおりに進むだろう。現に日記を読む限り、これまでがそうだった。

 全く……こんな風に思ってしまうのが嫌だったから、無関係なところに転生させて欲しかったのにさ。今更言ってもどうしようもないけど。

 俺のようなたった1人の人間が、あんな大きな戦争を止められるとは思えない。だからこそ、俺の目的はとにかくエースを死なせないこと。それに尽きる。

 まぁ冷静に考えれば、エースを助けることだけが目的なら海軍に行ってもいいのかもしれないんだけど。いざって時に内部から裏切れば、よっぽど効果的だろう。でもそれはヤダ。主に俺の精神衛生的に。軍人なんてきっと耐えられない、性格的に合わない。正義ってガラじゃないし。それを押し付けられるのも嫌。

 

 

 

 

 とにかく、なんにせよ原作知識は大きなアドバンテージになる。それも、俺だけの。

 それでも1人の行動なんて所詮限界がある。周囲を上手く誘導すること、それが肝心だ。

 そのためには、原作知識を披露しなきゃならない機会もあるかもしれない。その時、<予言>と<推察>では意味が全く違ってくる。

 <予言>ならば、1度でも外れれば信用は地に落ちてしまう。けれど、<推察>ならばちょっとぐらいズレても大丈夫。

 日記+原作知識。これを使えばかなり正確な<推察>が行える。

 

 

 

 

 まぁ、小難しいことは後々考えればいいか。

 今考えなきゃいけないことは、強くなることだ。この大海賊時代、強くなきゃ海に出てもすぐに死んじまう。

 俺ももう4歳。そろそろ身体を鍛え始めても大丈夫だろう。

 エースにも、『不確かな物の終着駅』に連れてってやろうかって誘われてるし。まずはこのコルボ山の猛獣程度は倒せるように、を目標に頑張ってみよっかな。




 ユアン、腹を括るの巻。彼には頑張って強くなってもらいます。

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