明日はホワイトデーと呼ばれる日です。先月のバレンタインデーのお返しをする日だそうです。
というわけでただいま司令官は間宮さんに指導されてクッキーを作っています。バレンタインで渡すものがチョコのようにホワイトデーではクッキーが定番とのことです。
そのため本日の仕事は私が代行しています。
「ただいまでち~。出撃10回終わったでち~」
「お疲れ様です。報告書頂けますか?」
「ええ。確認お願いするわ」
ハチさんから報告書を頂き、出撃回数や増える資材量、補給に使用した資材量を大本営に提出する書類に書き写します。最後に記入漏れや相違がないことを確認します。
「これで大丈夫です。後は休んでください」
「ありがと~。いつもなら綾波さんのお茶があるといいけど、今日は無理だよね」
「すみませんしおいさん。まだお仕事があるので」
「うん。だから今日はみんなでのんびりお昼寝するんだ。じゃね~」
しおいさんの言葉に他の皆さんもそれぞれ言葉を発しながら司令官室から出ていきます。時間を見ればまだ14:00。午後の演習にも時間がありますがそろそろ編成予定のみなさんは集合してもらったほうがいいかもしれません。
「大淀さん、演習に向かう皆さんを呼んでもらえますか?」
「了解しました」
同じように仕事をしていた大淀さんが通信用の装置の前でみなさんを呼び出してくれます。それから約五分後、みなさんがそろいました。
「午前中に演習してもらったのでみなさん編成は大丈夫ですね」
「当然よ。旗艦としての責任は果たすわ」
現在の演習艦隊旗艦は満潮さん。まだ確定ではないのですが朝潮型の誰かに改二が実装される予定が大本営から通達されたので、私たちの鎮守府ではレイテ沖に参加された満潮さんではないかと予想して最優先育成艦娘に指名されています。
他の艦娘は演習には毎回出撃してもらっている香取さんと鹿島さん。いつも演習に参加してもらっているので香取さんはすでに練度97。鹿島さんは遅れて参加されましたが練度は92まで成長しています。
そして戦艦育成枠の日向さん、駆逐艦育成枠の初月さん、空母育成枠の大鳳さんです。
「では、みなさん少し早いですが準備してください。15:00になり演習相手が決まり次第、即演習を開始します」
「「「「「「了解!」」」」」」
私に敬礼をしてくれ、私も敬礼で返します。
みなさんが司令官室から退出したらまた仕事が待っています。司令官もがんばっているはずなので私もがんばりましょう。
そして当日。司令官室には長蛇の列が並んでいます。みんなクッキーを待っている艦娘です。
私たちの鎮守府では提督自ら手渡しでクッキーを渡すのが恒例となっているからです。
「いつもありがとうな」
「いえ! こちらこそ、ありがとうございます司令官!」
クッキーを渡された吹雪さんがかなり緊張しています。改二艦なのですからもう少し余裕ある態度を期待したいのですが、まだまだですね。
なお、渡される順番はこの鎮守府に着任した順番となっています。そのほうが公平だと艦娘全員で話し合った結果です。
「はいはい。次が待ってるからもたもたしない!」
「は、はい!」
吹雪さんの横、正確には行列の最前の隣に立っている叢雲さんが吹雪さんを急かします。吹雪さんの気持ちもわかりますが、あまり長時間余韻に浸っていると後ろに並んでいる艦娘さんたちの殺気が飛んできますからね。特にケッコン艦娘やケッコン待ちしている艦娘さんたちが。
なお、私は司令官の隣に立って司令官にクッキーの入った袋を渡す役目を担当しています。本来であればここに立つのは初期艦の叢雲さんが適任なのですが「私だと渡される艦娘に嫉妬の視線を飛ばしそう」と本人から頼まれています。現に今も飛ばしてますからね。最初にもらっているはずなのに。
ちなみに、クッキーの指導した間宮さんも列に並んでいます。今では艦隊の一員として出撃できる艦娘さんですからね。
あ、次は金剛さんですね。
「はい、金剛。いつもありがとうな」
「Thank youテートク! ところで指輪はまだですか?」
「金剛さん!?」
あ、叢雲さんが一番反応してます。その隙に司令官の机に視線を落とします。そこには各艦娘さんの進水日が書かれたメモがあります。それによると金剛さんは5月18日。あと二か月後ですね。
「それは進水日と言っただろ?」
「でもでも! 早くテートクと絆を深めたいデース!」
金剛さんももう少し落ち着いてもらいたいです。ほら後方の艦娘さんたちがピリピリし始めました。叢雲さんに至ってはもう少しで擬装を展開しそうです。
仕方ありません。
「金剛さん? クッキー燃やされたいですか?」
「ではテートクsee you!」
私は左手に持っていたB型を金剛さんに向けるとすぐさま退出されました。万が一を想定して私は最初から擬装を展開しています。ちなみにこれで四人目です。
あと何人これ繰り返すのでしょうか?
ようやく全員にクッキーが配り終わり、司令官室にもいつもの静けさが戻ってきました。しかし、私にとってこれは前半戦終了なのです。
「では、私も配ってきますね」
「いつも思うのだが、綾波まで配る必要あるのか?」
「一応、私もチョコをいただいた立場なので」
なぜか私もバレンタインにはチョコをもらいます。みなさん曰く「日頃の感謝」だそうです。同じように雷さんや間宮さん、明石さんなども多くの艦娘からチョコをもらっているようです。
「では、行ってまいります」
私は司令官に一礼し、司令官室を退出して自室に戻ります。クッキーはすでに作っておいてるので問題ありません。
そして部屋にたどり着くとすでに睦月型の皆さんと私と同型艦である綾波型のみんながいます。
「ごめんなさい。待たせてしまいましたか?」
「ううん。勝手に待ってただけだから」
ぶっきらぼうな言い方ですが私の一番の親友である敷波が返答してくれます。それはいいのですが、その『最後尾はココ』という看板は何ですか?
「去年は混雑したから作ってみた」
それはありがたいのですが、そこまでする必要あるのでしょうか? その看板鋼材使ってません?
「綾波のクッキー人気あるんだよ? これくらいの強度じゃないと壊れちゃうよ」
私のクッキーはお茶の葉を細かくしたものを生地に練りこんでいるので口に入れるとさわやかなお茶の香りが広がるように工夫しています。それだけなのに人気があるのはうれしいですね。
「さてと、みんな待ってるから早く配ったら?」
言われて敷浪の視線をたどれば並んでいたみなさんがまだかまだかとこちらを見つめています。
「す、すみません! すぐに用意しますね!」
まもなく日が落ちる時間帯になってようやく終わりました。雷さんや間宮さんと明石さんのところに並んでいた艦娘もいるので全員配り終わるのに時間がかかりました。誰もいない間は敷浪とのんびりお茶を飲んでいたのでそこまで大変ではありませんでしたね。
「では、最後に敷波の分です」
「ありがとー」
敷波の分はみんなよりも数が多いです。手伝ってもらったのですから当然です。
「どうせなら肉じゃが作ってほしかったなー」
「えっと、それはまた今度で」
「ええー。もしかして得意料理は司令官にだけとか?」
ニヤニヤする敷波に少し顔が赤くなります。そういえば最近作ってませんね。せっかくなので後日作ってみましょう。その時に敷波にも上げましょうかね。
今日も鎮守府は平和です。
駆逐艦の母ポジションは雷なのは否定しませんが、綾波も母性高いと思います。肉じゃが食べたいです。
ではまたいつもの時間にお会いしましょう。