どちらも初期艦ですからね。
大淀さんからいただいた大本営からの指令書を確認する司令官と私。そこに記されていたのは『五十鈴改二を旗艦とし、皐月改二および卯月改による第三十一戦隊を編成、他随伴艦三艦と共に鎮守府近海航路確保任務を実施せよ』です。
いつもなら指令書の内容を見てその内容に驚いたり、編成をどうするか司令官、私、そして各艦種の代表が集まって議論したりするのですが、今回の任務はその必要がなさそうです。
「これって、私たちの鎮守府では……」
「ああ。この海域の旗艦は常に五十鈴にお願いしている。随伴艦はいつもなら育成枠の駆逐艦にお願いしているが、今回は確実にするために…………お願いできるな?」
「はい。お任せください」
何を言いたのかはもはや視線を合わせるだけで分かります。実戦は久しぶりですが、皐月さんの訓練を引き受けていたので海洋移動に関しては問題ありません。
「となればあとは残り二隻を誰にするかだな」
「でしたら私のほうから意見具申してもよろしいですか?」
場所は変わって司令室。司令官と私は大淀さんに呼んでいただいた艦娘の皆さんを待っています。
「失礼するわ」
「よく来てくれたな」
最初に訪れたのは五十鈴さんです。金剛さんに続く改二が実装された艦娘で、その対潜・対空能力にはいつもお世話になってます。
「それで? 今日は誰を率いればいいの?」
「すまないが、今日はいつもの訓練としての出撃ではなく任務としての出撃となる」
いつもと同じ海域なのでどうやらまたしても訓練艦の引率だと思われていたそうですが、任務のことばで一瞬にして表情が変わりました。このあたりの切り替えの早さはさすがです。
「随伴艦はまず皐月と卯月の第三十一戦隊。二人と共に出撃する機会はあまりなかったが、問題ないな?」
「当然。私を誰だと思ってるの?」
自信の表れなのか大きく胸を張る五十鈴さん。……やはり大きいです。いいなぁ~。
「失礼するよ」
「ぴょん!」
続いて司令室に入ってきたのは先ほど改二に改造したばかりの皐月さんと卯月さん。実は大淀さんが指令書を持ってきてくれた時に二人にはすでにお伝えしておいたのです。
今着いたのは皐月さんの改二状態での性能を明石さんと確認していたからで、卯月さんは皐月さんを待っていたからです。
「司令官、これが僕の性能だよ」
皐月さんは明石さんが確認した性能を記した書類を司令官に渡します。事前に性能を知っているとはいえ、それはあくまで数字で表したものや武器の性能に関することです。それを使った本人の状態を加味しての最終的な性能をいつも明石さんには確認してもらっているのです。ついでに近代化改修も可能な限り実施してもらっています。
「なるほど。確かに対空能力は素晴らしいものがあるな」
「うわ、私よりも高いんだ」
横から五十鈴さんも覗き込んでいます。本当に高い対空能力ですね。その能力が低い私から見れば羨ましいですが、純粋な戦闘能力で高い水準を持つ私も嫉妬の対象になっていると他の鎮守府の綾波から聞いてます。幸いここではそういうことがありませんが。
「到着っぽーい!」
「失礼する」
そんなことを考えていると残りの二人、夕立さんと初月さんが到着されました。
私は以前その海域に出撃したことがあるので知っていたのですが、五十鈴さんと駆逐艦だけの編成で出撃することになるので、確実に任務を遂行するために火力に秀でている夕立さんと対空に秀でている初月さんをお呼びしたのです。秋月さん、もしくは照月でもいいのですが、実戦を多く経験してもらおうと初月さんを指名しました。
「さて、これで全員そろったな。では任務を通達する」
全員の視線が司令官に集中します。当然私もです。
「任務対象海域は鎮守府近海航路。輸送任務のように鎮守府に資源を持ち帰るのが主目的だ。戦闘は三回。内一回は敵空母からの奇襲を迎撃するだけなので実質二回となる」
そういえば敵艦載機が飛んでくるのに砲撃は飛んでこない場所がありましたね。あれどうしてなんでしょうか?
「そしていつもなら大破したら撤退しているが、この海域は三回目の戦闘の後は母港へ帰るだけだ。そのことを忘れないようにな」
「「「「「はい!」」」」」」
「いい返事だ。よし、出撃!」
「「「「「「了解!」」」」」」
「さて、ここから先がいよいよ対象海域ね」
「それにしてもここまで深海棲艦とほとんど遭遇しませんでしたね」
両手にB型を持ちながら周辺を警戒しています。五十鈴さんは慣れているのでさすがの落ち着きですが、空母の方が誰もいないので索敵ができないので私はいつも以上に周辺警戒を厳しくしています。
きっと他のみんなも同じように経過しているは……
「結構退屈っぽい」
「夕立さん、それは不謹慎じゃないのか?」
「せっかく新品の機銃なのになー」
「皐月ちゃんかっこいいぴょん」
……厳しくしているの私だけでしょうか?
「綾波さん。訓練艦ならともかく、あなたほどの練度を持つ艦娘なら後れを取られることなんてないから安心していいわ」
そう言いながら爆雷を投下する五十鈴さん。そして轟音が鳴り響きと水柱が出現します。
「唯一問題となる潜水艦も私がいれば傷なんて負わないわ」
「……助かります。では私は砲撃で皆さんを守りますね」
「ええ。よろしく」
「二人とも何してるっぽい?」
「そろそろ行くぴょん!」
夕立さんと卯月さんの声に反応し、視線を動かせば他の皆さんが待っています。
「今向かいます!」
「あんまり先に行くと潜水艦に攻撃されるわよ!」
五十鈴さんと二人して皆さん目指して加速します。
その後は対空電探で警戒していた初月さんが敵艦載機を発見したのでみんなで対空砲火をして迎撃し、最後の戦闘では先ほど五十鈴さんと約束した通り、私の砲撃で敵軽巡を撃沈させたので、小破することなく全員が鎮守府に帰投しました。
「あとは報告だけですね」
「だったら僕が行くよ! 僕が改二になったから通達された任務だと思うから最後は僕が報告したい」
「わかりました。お願いします」
「任せてよ!」
皐月さんに報告書を渡し、私たちは装備を明石さんに渡します。
「久しぶりに楽しかったわ」
「楽しかった、ですか?」
「ええ。普段は訓練艦だから私がいろいろ指示しなくちゃいけないけど、今日はそんなことする必要なかったからね」
この海域は潜水艦の雷撃、敵艦載機の奇襲、そして砲弾戦とそれぞれ異なる戦闘なので、ある程度訓練を終えた艦娘が実戦を経験する海域としてよく使われています。一方でそのたびに五十鈴さんは出撃していることになります。
何回か「だれか交代で出撃してもらいますか?」と訊いたのですが「平気よ」としか言われないのでそのままお願いしてもらいましたが、やはりだれか交代要員を用意するべきですね。司令官に伝えておきましょう。
「ふむ、わかった。私としてもそれは考えていたことだ」
「もしかしてすでに準備を?」
深夜、司令室には司令官と私しかいません。急な出撃だったため少し仕事が残ってしまったからです。
業務が終わり次第先ほど考えていたことを話したら、どうやらすでに対策をしていたようですね。
「ああ。練度を高める目的も兼ねて鬼怒にお願いしようと考えている」
「鬼怒さんですか。確かまだ20代後半くらいでしたよね? 大丈夫なのですか?」
「その心配は大丈夫だろう。実は夕立を随伴に指名する予定だ。ここ最近出撃させろと言われ続けたのでな」
あらら。まあ、これで何とか静まってくれるでしょう。
「では、私はこれで失礼しま……」
「待ってくれ。実は君たちが出撃している間にさらに大本営から通達があってな」
え、まだ続くのですか?
作中にも書きましたが私はいつも1-6は五十鈴さんにお願いしてます。ベールヌイみたいに強化アップデート来ないかなぁ~。
ではまた来週です。
明日は秋葉原という戦場に逝ってきます。