小説書くの、本当に難しいですね。
長くなるとのことだったので秘書艦のメイド服を着た春雨さんがお茶を入れてくれました。
「さて、俺のことはどこまで聞いてる?」
「司令官からは春雨さんを愛してる方としか」
「あの野郎。それだと誤解されるじゃないか」
深海棲艦隊を倒したときに出現する彼らの魂を持ち帰って専用の装置に入れることで艦娘さんとして蘇生させる、通称海域ドロップでしか鎮守府に着任させることができないはずの春雨さんがこんなにたくさんいる鎮守府の司令官をしている時点で誤解されると思いますよ?
「よし、この際君が知らないアイツのことを残さず話してやろう」
「それはうれしいですが、私は鎮守府では最初に建造された艦娘なので司令官として着任される前の話でお願いします」
「あ、そうなのか。ちくしょう、アイツそれを想定して君に頼んだのか」
間違いないでしょうね。司令官は意地悪な性格も持っていますから。
「となれば、学校での話になるのか」
「学校というと司令官を育成するための施設のことですか?」
「そうだ。俺たち候補生はみんな育成校とは言わず学校と呼んでたな」
司令官育成校。私は知識でしか知りませんが、大本営が運営する私たち艦娘に指示を出すための司令官を育成するための教育施設。
「それで、司令官はどうだったのですか?」
「アイツは、まあ、平凡だったな」
「そうなのですか?」
「ああ。だがアイツはかなり早い時期から君たち艦娘のことを『人間と同じ意志を持つ生物』と認識していたよ。そのせいか教官である大本営直属の艦娘との仲は非常によかった」
そういえば司令官は数が増えていくごとに艦娘寮の拡張を優先してましたね。『艦種別に分けることで交流を増やし、互いに意識することで戦力の向上を図る』とおっしゃていましたが、もしかして私たちの生活環境を良くするための処置だったのでしょうか。
「どうかしたかな?」
「いえ、それだけでも司令官に良いお土産ができそうです」
「……君もいい性格してるよ」
1937鎮守府の司令官だけでなくその隣に座る秘書艦の春雨さんも苦笑を浮かべてます。
その後、現在判明している中部海域の情報を教えてもらい、その日は用意された部屋で寝ました。まさか一人一部屋だとは思わなかったので驚きました。そしてなんとなく司令官が中部海域の情報を求める先にこの鎮守府を指名した理由もわかったような気がしました。
翌日。
何時もと同じ時間に起床し、眠気を覚ますため軽くランニングをするため外に出ます。すると外には長門型のお二人がいました。
「ん? ああ、昨日来られた方か?」
「はい。第1929鎮守府の綾波と申します」
「あら、ご丁寧にありがと。私たちのことは知ってるかしら?」
「長門型のお二人ですよね。私たちの鎮守府でもお世話になってますから」
二人とも私と同じように走りやすい服装です。普段長門型のお二人、とくに陸奥さんは肌が多く露出している服を着ていますから、こういう服を着ていると新鮮に映りますね。
「せっかくならどうだ?」
「はい。ぜひご一緒させてください」
初めて来た鎮守府なのでどこを走ろうか考えていたので助かります。軽くストレッチで体をほぐしてから私たちは走り出しました。
「ほう、驚いたな」
「ええ。私たちのところの駆逐艦はここまで付いてこれなかったのに」
「いちおう、きたえて、ますから」
さすがは戦艦のお二人。おそらく一時間くらいは走り続けたのに息が乱れていません。
「いいから休んでいろ」
「お水いる?」
陸奥さんが差し出してくれた水が入った水筒をいただき、のどを潤します。
しかし、これはまずいですね。以前よりも体力が落ちています。この体力は艦としての耐久値とは異なりますが、それでも常に移動が求められる海洋ではこういう力も大事です。帰ったら特訓が必要ですね。
「そろそろ息も整ってきただろう? 朝食に向かうとしようか」
「そうね。お腹すいたわ」
「はい」
立ち上がり、陸奥さんに水筒を返して食堂へと向かいます。
すると私と同行した五月雨さんと熊野さんが、それぞれこの鎮守府の白露型・最上型の皆さんと共に朝食を食べていました。
「あ、あの!」
声をかけようとしたその時後方から聞こえてきた声。それは私が誰よりも知っている声。
振り返ると予想通り私、この鎮守府の綾波がそこに立っています。
「あの、よろしければご一緒しませんか?」
「はい。ぜひ喜んで」
笑みで応えるとホッとしたのか息を吐いて安堵する綾波さん。彼女に導かれて席に座るも他の綾波型の皆さんがいません。
「あ、他のみなさんはすでに遠征に出かけてます」
「そうなのですか」
少し残念ですがしょうがありません。そこで私は朝食をもらいに行ってないことに気づき、席を立とうとすると立派なお膳が左から差し出されました。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「ごはんのおかわりはいくらでもありますから」
その人は一礼すると厨房へと戻りました。耳には『9』のイヤリング。
「……この鎮守府って何人の春雨さんがいらっしゃるのですか?」
「確か、30名くらいだったと思います。詳しい数までは私も把握していません」
「よくそこまでドロップできましたね?」
「司令官は早期に大規模作戦の最終目標を叩くことを目指して作戦を立てます。そして他の鎮守府の支援を行いながら春雨さんがドロップした情報を集めて、そこに育成も兼ねた艦隊で出撃していますから」
そこまでの執念はすごいですね。
私の鎮守府にも何隻か同じ名前を持つ方はいます。彼女たちは艦隊として出撃するよりも鎮守府の警備や防衛、また大規模作戦時は偵察をお願いしてあります。他にも遠征資材を多く持ち帰るのことができる大発を多く持ち込むために水上機母艦の艦娘さんにはそれぞれ同じ名前を持つ方がいますね。
「しかし、なぜそこまで春雨さんを?」
「そればかりは私でもわかりません」
うーん、興味はありますが、今の私の目的は昨日教えていただいた情報を無事鎮守府に持ち帰ることです。余計な詮索は止めておきましょう。
「では、お世話になりました」
「はい。いつでもいらしてくださいね」
本日の業務があるため第1937鎮守府の司令官さんはいませんが、秘書艦であるメイドの春雨さんに見送られ、私たちは第1937鎮守府を後にします。
「それでは、よろしくお願いします」
「そこまで緊張しなくても大丈夫よ」
そしてもう二人、この鎮守府の艦娘さんがいます。さきほどの綾波さんと長良型の由良さんです。
実は私の実力を知った綾波さんが「ぜひ! ご教授お願いしたいです!」とおっしゃり、そこにちょうど朝食を食べに来た第1937鎮守府の司令官が来て「こちらからもお願いしたい」と頼まれてしまいました。
話を聞くとこの綾波さんはまだ改になったばかり。本来なら育成艦隊の一員として練度を上げていく予定でしたが、これまでよりもさらに最深部の深海棲艦の拠点が見つかったことで育成計画は中止。
このままだと最深部を攻略できた後でしか練度を上げられないそうです。
さすがにそれは可哀想なので急遽通信室をお借りして司令官に連絡。その結果私たちの鎮守府で練度を上げることになりました。それだけだと第1937鎮守府にしか利点が無いので、こちらの教育担当艦である由良さんも同じく私たちの鎮守府に同行することになりました。
その目的は私たちの鎮守府にはない戦法を教えてもらうことです。
中部海域最深部までたどり着くには駆逐艦・軽巡洋艦の力がかなり重要になることを昨晩教えてもらいました。そこで第1937鎮守府では古参の由良さんに私たちの鎮守府の駆逐艦・軽巡洋艦の皆さんを教育してもらうことにしたのです。当然、その中には私も含まれます。
「では、みなさん! 帰りましょう!」
「「はい!」」
「私たちも出発しましょう」
「は、はい」
こうして私たちは新たな同行者と共に鎮守府に帰ってきました。
そういえば例のアレ当選しました。でも、稼働はいつになるのやら。
来週からは中部海域攻略していきます。
……思い出すだけで、頭が痛くなる。ちなみに、4月入ってからは春イベに備えて備蓄しているので、6-4はまだ一メモリもゲージ減らせてません。