では、本文どうぞ。
話されてしまった距離を縮めようと再び接近を試みますが、やはり簡単にはいきません。
由良さんの的確な砲撃といつの間にか近づいている魚雷への対処だけで精一杯ですが、少しずつ対応策を固めていきます。
(砲撃は連続三回まで。それだけあれば正面と左右どこも対応できますが、これはすでに私の砲撃によって防がれています。問題なのは魚雷ですね。一体いつ放っているのか、それが見えないのが不思議です)
由良さんは神通さんのように膝に魚雷を搭載しているわけではありません。つまり、背中の艤装から発射しているはず。しかし、その場合どうしても止まるか減速しないと安定しないと他の皆さんからも聞いています。
(まさか、減速しないで発射できる? だとしても魚雷を背中側から発射して私のほうに向けることなんて可能なのでしょうか?)
普通魚雷は発射した後は前方にしか進めないはず。つまり後方に放った魚雷が私に向かうことはまずない。
(……考えてもわからないのなら考えるだけ無駄です。やはり接近するしかありませんか)
その後何度か挑戦するも一向に距離が縮まりません。視線を横に向ければそろそろ日が暮れる時間です。さすがに夜戦までは今回の模擬戦には含めていないので、そろそろ決着を付けないと被弾している私の敗北となってしまいます。
(こうなったら、一か八かです!)
私は残ってる燃料を使い切る覚悟で前進。当然由良さんは私に向けて砲撃してきます。
これまではその砲弾を撃ち落としていましたが、私は砲を向けません。その行動にさすがに驚いた表情を見せる由良さん。
そして最初にはなった砲弾、つまり正面から向かってくる砲弾に対し、私は右手のB型を手放します。
私がとった行動に今度は鎮守府のみんなからも「えー!?」という声が響いてきますが、今は無視。これから行おうとしていることは集中力が全てです。
迫ってくる砲弾に何も持っていない右手を向けます。このままでは手に当たった衝撃で爆発してしまいますが、私は砲弾が手に触れた瞬間旋回。その遠心力で砲弾を投げ飛ばします。
≪ええー!?≫
無線から由良さんの驚愕の声が聞こえてきます。この砲弾投げ飛ばしは以前金剛さんが「演習した鎮守府のワタシから聞いたのですが、どうやら深海棲艦の砲弾は弾き飛ばせるようなのデース。なので特訓に付き合ってplease!」と言われ、金剛さんの特訓に付き合ってる最中に私なりに生み出した技術です。
実は成功率そんなに高くないのですが、こうでもしないと接近できないと思ったので賭けに出たのです。
それにより、私は初めてB型の射程圏内に入れました。こうなればもう、撃って撃ちまくるしかありません。
「よく狙って……てぇえええ~い!」
「負けないから!」
お互いの砲弾が飛び交います。さすがにこの状況では砲弾を撃ち落とすことは無理なのでとにかく相手の行動を読んで撃つしかありません。
直撃こそないですが、衝撃で由良さんを小破にします。一方こちらは中破に近い小破という感じです。
このままいくとやはり私の敗北になるので、私は最後の切り札を発動させる決意をします。
急速に移動し、ある物を取りに行きます。それは先ほど手放したB型。実は潮の流れを計算したうえで投げていたので、どこにあるかはだいたい検討が付いています。鎮守府近海にはなんども抜錨しているので、その特性をすでに把握しているからこそできた最後の策です。
由良さんは私の突然の行動に戸惑っているようで砲撃が止みました。しかし、違和感があります。いくらなんでも砲撃を止めるほど動揺するわけがありません。
横目で由良さんを見れば、15.2cmを真っ直ぐ向けています。どうやら由良さんも私が何か考えがあると思っているのでしょう。
そしてようやく気付きました。由良さんがどうやって魚雷を放っていたのか。
(まさか、妖精さんが投げていたとは)
私が横目で見ていると由良さんの背後から複数の妖精さんが魚雷管を頭上に掲げて魚雷を発射していました。ええと、魚雷管ってそう簡単に持てるものでしたっけ?
動揺している私でしたが、こちらの妖精さんがB型を発見してくれたので急いでそれを持ち上げ由良さんに向けます。
「よく狙って……てぇー!」
15.2cmから放たれる砲弾。その数5。さすがにこれは避けきれませんし、先ほどの砲弾投げ飛ばしをしようにも砲弾の間隔が短いので旋回している間に次の砲弾で被弾します。
それに加えて海からは先ほど放たれた魚雷。逃げ場は完全に閉ざされています。
「なら、ここは立ち向かうしかありません!」
両手のB型に装填し、魚雷発射管も調整します。この動きは珍しいことではありません。
今がまだ日が暮れる前ということを除けば。
「この海域での勝利は、譲れません!」
その言葉と共に両手のB型と魚雷発射管から一斉に砲弾と魚雷が発射されます。そう、これは私たちが夜戦の時にたまに発生させることができるカットインと呼ばれる攻撃方法。
前から夜戦でしか発揮できないことを疑問に思っていた私は訓練を重ね、ついこの前やっと日が暮れる時間帯なら発動が可能になりました。
発射された砲弾は正面から飛来する由良さんの砲弾を撃ち落とし、迫っていた魚雷も同じく爆発させます。
砲弾と魚雷のほぼ同時爆発により視界が完全にふさがれますが、構わず残った弾薬を全て消費して装填。そのまま由良さんが立っていた位置よりも右寄りに発射します。
煙を突き抜けて飛んで行った砲弾。そしてその後聞こえてきた悲鳴。
煙が晴れた先では服装がはだけた由良さん。どうやら砲撃は見事命中したようです。
「や~りまし……」
声は続かず、響くのは魚雷による爆発音。
「そこまでです!」
同時に響く榛名さんの声。時間的に模擬戦終了予定ですが、おそらくその前に私の大破でしょうね。まだまだ訓練が足りませんか。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ。予想外の攻撃ばかりで驚いたわ」
模擬戦の結果は私が大破で由良さんが中破。私の敗北です。今はドックに入渠しています。
「それにしても、妖精さんを使う発想は思いつきませんでした。参考にしてもいいですか?」
「もちろん。私も砲弾投げとか夜戦以外でのカットインとか、参考になる戦術が得られたから」
それからしばらくお互いの戦術について語り合い、あまりにも長く話していたせいで心配した明石さんがドックに入ってきてしまい、由良さんともども説教されてしまいました。
聞けば第1937鎮守府の明石さんも怒ると怖いようです。どこの明石さんも同じなのですね。
この模擬戦の後、私も由良さんの訓練に参加しましたが、やはり厳しかったです。一方あの模擬戦を見てからみなさんも今まで以上に真剣に訓練に打ち込み、結果として新たな戦術の会得や砲雷撃の精度が向上しました。
「これなら続けていけば中部海域でも通用すると思います」
「続ければ、ですか?」
「日々鍛錬よ」
そして私も訓練に参加してから二週間後、ようやく私たちは中部海域MS諸島沖に出撃することになりました。
来週はいよいよ6-2です。思えば中部海域唯一の癒しでしたね。戦艦や空母の力のありがたさを改めて実感したのがいい思い出です。
そういえば春イベント真っ最中ですね。5月8日21時現在でE-6甲ゲージ半分という感じです。今回のイベントはいつも以上に運ゲーですね。支援がんばれ!
ではまた来週です。