なお、なんとか二隻確保したのでようやくろーちゃんに会えます。
まさかの光景に声を出せず、口をパクパクさせるしかできません。
「アノ~?」
「は、はい!?」
「……ア、ソウデシタ。イマノワタシ、シンカイセイカンデシタネ」
てへっと声に出しそうな感じのトーンでしゃべる駆逐棲姫。
なんでしょう、この態度? 私が知ってる駆逐棲姫とまるで違うんですが。彼女って確か「ススミタイノカ?」と言いながら戦艦並みの装甲で私たちの妨害をする強敵のはずです。
それなのに、目の前の駆逐棲姫はまるで正反対でとても気さくですってそういえば!
「傷、癒えてる?」
「ハイ。シンカイヨウナンデスガ、シュウフクザイガキイテヨカッタデス」
シュウフクザイ……修復材!? しかも深海用!?
「それってだいじょう……痛!」
「ダメデス! マダカンチシテナイデスカラ」
駆逐棲姫さんはそっと私を横たえます。その時気づいたのですが、どうやら私は何かの液体に体半分を沈めていました。おそらくこれが深海用の修復剤なのでしょう。
色は青色でちょっと不気味ですが、状態を見ると小破に近い中破という感じです。
「それより、ここは?」
「ココハ、MSショトウオキカラスコシハズレタカイイキノコジマ。ワタシノカクレガ」
小島と言っていましたが、私の視界にはどこかの洞窟のように見えます。ドックのような場所ということでしょうか?
「ココハシゲンスクナイカラ、ホカノレンチュウコナイ」
「それは助かります。でも、どうして助けてくれたんですか?」
私たち艦娘と深海棲艦は敵同士です。助けてくれたことはありがたいですが、それが私たちの鎮守府の情報を得るためという可能性もあります。そうなれば、私は自害するしかありません。
「…………シンジラレナイトオモイマスガ、ワタシハモトカンムスデス」
「!?」
たまに艦娘そっくりの深海棲艦もいますから実はそうじゃないと思っていた仮説を証明する存在だったとは。つまり、この駆逐棲姫はかつての艦娘だったころの記憶をそのまま残しているということです。
「……それを信じろと?」
「タシカニ、ワタシニハショウメイスルモノハナニモアリマセン」
しょぼくれる駆逐棲姫。その様子からだましているようには見えませんが、もう少し詳しく話を聞くことにしましょう。どのみちまだ体を休める必要がありそうですし。
その後しばらく雑談を交わしてわかったことは三つ。
一つは、彼女は間違いなく元艦娘だということ。鎮守府では当たり前のことをほとんど知っていましたし、なにより白露型皆さんのことをかなり詳しく話していました。
そのことから、やはり彼女は轟沈したどこかの春雨さんなのでしょう。初めて発見されたときから白露型のみなさんが「似ている」と発言していますし、何より私も関わりある方ですから間違いないでしょう。
二つ目は何処の鎮守府なのかはわからないこと。駆逐棲姫になったときから艦娘のころ持っていた装備は何も持っていなかったようです。それは身に着けていたものも全てです。せめてドックタグだけでもあればよかったのですが。
三つめは他に艦娘の記録を持っている深海棲艦はいないそうです。そのため他の深海棲艦と上手く関われず、こうやって誰も来ないようなところで密かに暮らしているようです。
そのため「できたら私の鎮守府に来ませんか?」と誘ったのです。命の恩人ですし、もしかしたら元所属していた鎮守府を探すお手伝いもできると思ったのです。
返答は「サスガニ、ムリデス」でしたが。
そして一日過ぎ、ようやく私の体はほぼ治りました。最も、体感や妖精さんの意見なので鎮守府に戻ったら明石さんに点検してもらわないといけませんね。
「お世話になりました」
「ドウチュウキヲツケテ」
洞窟を出て振り返ると確かにそこは小島でした。本当に小さく、だれもここを拠点にしないでしょう。
そのまま海中に乗って進んでいくとどこか見たことある風景、そうMS諸島沖に到着しました。
「ここまで来れば無線がつながるみたいですが……」
試しに無線をつないでみると〈こちら大本営直属MS諸島沖補給基地担当五月雨です〉と返信があったので私は救助を依頼し、しばらくして私は救助部隊によって補給基地に案内され、翌日第1929鎮守府から榛名さんと神通さん、夕立さんと時雨さん、そして加賀さんが迎えに来てくれました。
「あやなみさーん! ぶじでよかったーー!」
「ゆ、夕立さん。痛いです」
「ぽいーーーーーーーーー!」
本人は泣いているのでしょうが、こちらはかなりの力で抱きしめられているので正直キツイです。火力って腕力でもあったのでしょうか?
「無事再会できてよかったです」
「ご迷惑をかけました」
私が謝った先にいるのは先ほど無線で話した五月雨さん。轟沈ではなく行方不明というのは初めてだったようで大本営と何度もどうするか議論を交わしていたようです。
「それで、調書のほうに間違いはないんですね」
「はい」
本来なら大破していた私が今の状態まで治った経緯については『意識を失って漂流した先、偶然にも修復剤が溜まっていた小島を発見し、そこで休めていたから』と答えてあります。さすがに『元艦娘としての記憶を持ってる駆逐棲姫に助けられました』と素直に話したらそれこそ大問題ですから。
なんとかごまかして第1929鎮守府に帰ってきました。帰る途中に教えてもらったのですがどうやら私たちがMS諸島沖に出撃してからすでに四日も経っていたようで、私の生存は絶望的だったようです。
その反動なのか鎮守府はまるで大規模作戦を完全制覇した時のような盛り上がりでした。少し恥ずかしかったですが、それでも皆さんがこうして出迎えてくれて本当にうれしかったです。
そう思うとやはりあの駆逐棲姫さんを所属元の鎮守府に返してあげたくなります。せめてなにか手がかりでもあればよかったのですが。
「それはまた、とんでもない経験をしたんだな」
「ええ、私も驚きました」
皆さんに出迎えられ、皆が盛り上がった日の夜。すっかり静かになった鎮守府で私は司令官に全ての事実を包み隠さず話しています。司令官なら笑い話にせず、きちんと聞いてくれるという信頼からです。
「轟沈した春雨を特定するだけなら可能だ。しかし、時期がわからないとどうすることもできないな」
司令官曰く、大本営は轟沈した際もきちんと報告するよう徹底させているのでその情報をまとめた部署があるはずだから調べること自体は可能だそうです。
できればもう一度会ってお話したいですが、しばらくは検査の日々ですから無理ですね。
「報告後苦労。ゆっくり休んでくれ」
「はい……そういえば、MS諸島沖の攻略はどうするのですか?」
「それに関しては『綾波さんの敵討ちするっぽい!』と士気が上がってるのがいるから任せることにしたよ」
間違いなく夕立さんですね。カットインは私のほうが得意ですが、通常の砲撃戦なら夕立さんのほうが強いので、大丈夫でしょう。
「それにしても司令官、物まね下手ですね」
「…………やはりそう思うか?」
「ええ」
ニッコリを笑って答えるとガクッとうなだれる司令官。一度轟沈の危機にあったせいか、こういう日常こそかけがえのないものだと実感します。
「では、お休みなさい」
司令官に一礼して司令室を出ます。このまま休みたいところですが、先に明石さんのところですね。
駆逐棲姫はまた出る予定です。というかバレバレですよねw
次回から少し回想の話になります。イベント海域とかは全ての海域で綾波を使えていないのでこの小説では書きません。2016冬イベのように札無しなら書くかもしれませんが。
では、また。