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工廠に来た私は並べてあるたくさんの棚の中でも左端の棚に向かいます。たどり着いたのは左端から一つ右の『綾波』と書かれた棚。この棚は各艦娘の装備保管棚で着任順に造られているため、私は左から二番目になります。
本当なら指令室にいた大淀さんや工廠で作業している明石さんの棚もあるべきなのですが、私たちの鎮守府に彼女たちの出撃許可が下りていないためまだ棚がありません。早く許可をもらって一緒に出撃してみたいですね。
「いけないいけない。今は任務のことに集中しないと」
『綾波』と書かれた棚を開けます。上段には探照灯と照明弾、中央には12.7㎝B型と12.7㎝連装砲、そして下段には四連装酸素魚雷が二機あります。
これらの装備のほとんどは私が改装したときに持参したものなのですが、酸素魚雷の一機は開発で造り、もう一機は夕立さんからいただきました。その代わり、夕立さんが出撃するときは私のB型を貸しています。
なお、12.7cm連装砲は私が最初に装備していた物でこれだけはいまだに取ってあります。
それらの装備の中から本日の出撃にあった装備を思案します。幸いオリョール海には出撃したこともありますので敵の編成は把握済みです。
(道中は重巡洋艦がいる程度ですから問題ありません。しかしボスには戦艦や正規空母がいたはずです。でも、こちらの編成には一航戦のお二人に榛名さん、そして古鷹さんと千歳さんもいらっしゃいます。となると私の役割は全体の補助ですね)
結論を出した私はB型と酸素魚雷を取り出し、動作点検をします。赤城さんではありませんがどんなときも慢心してはいけません。
どちらも正常に動くことを確認した後で残る一つ、今回の私にとって最大の目的である照明弾を手に取り、明石さんのところに向かいます。
「作業中すいません明石さん。照明弾の装填をしたいのですが、よろしいですか?」
「あ、綾波さん。いつもお疲れ様です。そちらでしたら空いているのでどうぞ」
戦艦の主砲を点検中の明石さんの許可をもらったので照明弾の装置を置き、近くの棚に置いてある照明弾本体を装填します。
普通ならこういう作業は明石さんにお願いするのですが、見ているうちに動作を覚えたので私は自分の装備は自分で点検や装填をしています。ついでにB型と魚雷にも装填、あと抜錨の準備も整えておきましょうか。
「はい。こちら明石です。はい、いらしてますよ。はい……わかりました。お伝えしておきますね」
突如入った通信を終え、明石さんがこちらに歩いてきます。工廠と通信が繋がっているのは司令室だけなのでおそらく私への伝言があるのでしょう。
「綾波さん提督からです。『編成を変更。綾波を旗艦にする』とのことです」
「へ? 私が旗艦ですか?」
「はい。私がお願いしました」
声が聞こえたので振り返ると榛名さんがいました。他にも今回出撃するみなさんがそろっています。
「あ、榛名さん。主砲の点検終わりましたよ」
「ありがとうございます、明石さん」
明石さんは榛名さんの主砲を持って機関室に向かいます。ちなみに、機関室と言ってもこの鎮守府のではなく、艦娘みなさんの機関部を保管している場所です。あの中で主砲を機関に取り付けるのでしょう。
軽巡洋艦よりも大きい艦の方々は機関部と主砲が一体化しているので点検が終わったら機関部に再び取り付けなければなりません。いつも大変ですね、明石さん。
ってそんなことを考えている場合ではありませんでした。
「榛名さん。どうして私が旗艦なのですか?」
「今回の任務ですが旗艦の条件は練度90です。ならば旗艦大破による強制撤退を避けるためには綾波さんにお任したほうがいいと思ったんです」
なるほど、榛名さんよりも機動力のある私のほうが大破しにくいです。見ると他の皆さんからもお願いしているような視線を感じるので、これを断るのは難しいですね。
「わかりました。旗艦任命の件、承りました」
「申し訳ありません。急な変更をお願いしてしまって」
「大丈夫ですよ」
しかし今の装備は補助を目的としています。旗艦になるなら、そして大破撤退を避けるなら機動力を上げたほうがいいですね。
決まったらすぐ実行です。私はB型から弾を外し棚にしまいます。そして機関室に入ります。
「あれ? どうかしましたか?」
「旗艦に任命されたので機関部に強化型艦本式缶を取り付けようと思いまして」
私が入ろうとすると明石さんが出てきたのですれ違う際に事情を説明して中に入ります。
ここに入れるのは明石さん以外だと私だけです。装備の点検や弾の装填なら私以外にもできる艦娘もいますが、機関部の装備や点検ができるのは私だけです。
これに関しては明石さんにお願いして教えてもらいました。
機関室に入り備え付けのクレーンを操作して自分の機関部を作業机に置きます。装備保管庫から缶を一つ取り出し装備させます。もちろん自分で背負ってみて動作確認も怠りません。
機関部を降ろし、出撃用のクレーンに取り付けます。あとは出撃を待つだけですね。
機関室から出ると加賀さんが出撃待機室に向かっていました。他の皆さんの姿が見えないのはすでに出撃待機室にいるからでしょう。
「すみません。遅くなってしまいましたか?」
「大丈夫よ。私もこれから向かうところだから」
「わかりました。みなさんを待たせてはいけませんから私たちも急ぎましょうか」
「そうね」
加賀さんに続いて出撃待機室に入ります。部屋に備え付けの椅子に座って待っていた皆さんと視線を合わせ、それぞれの出撃位置に並びます。
順番は右から私、榛名さん、古鷹さん、赤城さん、加賀さんそして千歳さんです。
みなさんの顔を見て、全員が頷いたのを確認して私は出撃号令を出します。
「抜錨! 出撃です!」
「「「「「はい!」」」」」
私の号令と共に全員が出撃と書かれたパネルに足を載せます。
パネルが割れ水上滑走用の装備と魚雷が装着されます。その後斜めに設置された水路を下り、途中背後の海中から鎖によって現れた機関部を背負います。
そして間もなく海に出るところで一旦減速し背後を振り返ります。それを確認した明石さんが照明弾入りのコンテナを流します。以前誤作動が起こり、ちょっとした騒ぎになったので、以後照明弾を装備するときはこのような仕様にしています。
近くまで流れてきたコンテナを開け照明弾を取り出して装備。再び機関部を動かし海に出ます。
「みなさん、問題はありませんか?」
「はい、榛名は大丈夫です!」
「問題ないですよ」
「お腹すきました」
「こちら加賀。問題ないわ」
「千歳です。問題ありません」
一名不安な受け答えでしたが、いつものことなので無視します。
「それでは、これより南西諸島海域、東部オリョール海に向かいます!」
機関を最大にして海を駆けます。鎮守府近海はすでに哨戒任務担当の艦娘さんたちから「深海棲艦の鎮圧に成功」との連絡を受けているので全速力で駆けても戦闘になることはありません。
到着した南西諸島海域の入り口付近でとある島に向かいます。この島は補給物資を貯蔵している専用施設で、遠くから来た艦娘はここで一旦補給してから出撃していきます。当然、ここを守るために配備されている艦娘さんたちもいます。
「今日は多いですね」
「ですが、ほとんどが潜水艦娘のみなさんですね」
「これがオリョクルですか」
早めに補給を終えた私と千歳さん、そして合流した古鷹さんが補給を待つ長い列を見ています。私たちの鎮守府所属の潜水艦娘のみなさんもここで補給を受けて出撃しているのですね。
「お待たせしました」
「お腹一杯です」
「遅くなりました」
列をのんびり眺めていると榛名さん、赤城さん、加賀さんがいらっしゃいました。全員の補給を確認すれば、いよいよ戦闘区域へ突入します。さあ、久しぶりの戦闘です。
今週はなんとかもう一回投稿できるようがんばります!