綾波のんびりお茶日和   作:神楽美凪

8 / 21
第八話:睦月型のお茶会

司令官にお願いを頼まれた翌日の夜、私は駆逐艦寮の広間の一室を貸し切りにしてお茶会の準備を整えました。

 

「「「「「「「「「「こんばんは~」」」」」」」」」」

 

事前に如月さんにお伝えしておいた通り21:00に睦月型の皆さんがいらっしゃったのでそれぞれ席にご案内します。いつも元気な皆さんですがやはり皐月さんだけは緊張しているようです。

あえてそれには触れず、お茶を皆さんに配ります。私を含め全員にお茶が行き渡ったところで睦月さんが代表して「いただきます」と発してくれたのでみんなお茶を口に運びます。

てっきり皐月さんだけかと思っていましたが、すぐに飲み干したのでみなさんも緊張していたようですね。

 

その様子に少し笑い声が漏れましたがすぐに二杯目を注ぎます。皆さんがお礼を言って口に運ぶ中、一人だけ湯呑をじっと見つめている艦娘がいます。当然皐月さんです。

その表情は何かを我慢しているようにも見え、見かたによっては何かを迷っているようにも見えます。その皐月さんの後ろで睦月さんが「がんばれ」と呟いているのが口の動きで分かります。

 

それからしばらくお茶を飲む音だけが響く中、決意の表情となった皐月さんが体ごと私に向きます。私も同じように体を皐月さんのほうに向けます。この感じ、榛名さんがケッコンカッコカリを私に相談してきたときと同じですね。

 

「あ、綾波さん!」

「はい。なんでしょうか?」

 

かなり興奮しているようなので私はいつも以上に落ち着いた口調で話しかけます。相手が冷静であれば自らも落ち着かせることができるのは私の経験から導いたことです。

 

「……」

 

どうやら皐月さんも私の意図を理解してくれたようで一度深呼吸をします。息を吐き終わったタイミングで文月さんが皐月さんの湯呑を差し出します。このあたりの阿吽の呼吸はさすがですね。

 

「綾波さん」

「はい。何ですか?」

 

皐月さんが落ち着かれたようなので私も少し口調を崩します。

 

「今日はありがとう」

「いえ。お礼なら司令官に伝えてください」

 

今回は司令官にお願いされたから用意したお茶会です。もし司令官からお願いされなかったから私は何もしなかったでしょう。

しかし皐月さんは首を横に振ります。

 

「ううん。実は僕が司令官に頼んだんだ。綾波さんにお願いしたいことがあるから話し合うにはどうすればいいのかって」

「私にお願いですか?」

 

これは意外でした。あまり睦月型のみなさんとは関わりが無かったのでお願いされるとは思ってもみませんでした。

 

「どのようなお願いでしょうか?」

「その前にこれを見ていただけますか?」

 

私の隣に座っていた如月さんが紙の束を差し出してきます。束と言っても数枚程度です。その束の表紙には『書画計二改月皐』と書かれています。

つまり皐月さんが改二に改造されたときの詳細が記されている書類です。

 

「私が見ていいのですか?」

 

皐月さんを向くと頷かれたので紙をめくります。みなさんが私に視線を向け無言なので紙をめくる音だけが耳に入ります。

 

一枚目は火力や雷装、さらに出撃した時の補給資材量など数値で表される項目が記されています。今の計画書は私の時と違って最大値も記されているので戦力が一目でわかるのが少し羨ましいです。

そんな私の感情を一旦置いて数値を眺めていきます。睦月さんや如月さん同様補給資材量は改の状態と同じようですね。しかしお二人と全く違う点がありました。

 

「すごい対空能力ですね」

 

思わず口に出してしまうぐらい高い対空能力値が記されています。私の記憶違いでなければ秋月型を除けばもしかして駆逐艦で一番高いのではないでしょうか? あと回避性能も高いですね。この辺りは私同様史実が影響しているのでしょう。

さらに対潜能力も高く、索敵値も優秀。さすが最新の改造だけあって全体的な能力向上が行われていますね。

 

一方対空能力が秀でている代わりに火力と雷装の値が少ないので夜戦には向かないみたいですね。この辺りは睦月さんや如月さんとの比較なのでしょうか?

 

「どうですか?」

 

恐る恐る訪ねてくる皐月さんに「すごい性能になるんですね」と返答すると照れたように赤くなりました。本当にあの時の榛名さんを見ているようです。

私の発言に皆さんもホッとされたのか息を吐いたり隣通りで嬉しそうに話し合ったりと緊張した空気が緩和されました。

 

続いて二枚目です。こちらは持参する装備のようですね。

吹雪さんの改二から駆逐艦の改二がほぼ確実に持参する61㎝三連装酸素魚雷。いつも疑問なのですがどうしてこの魚雷を搭載すると回避と装甲の値が上がるのでしょうかね?

 

続いて13号対空電探改。こちらは納得の装備ですね。

そして最後の装備の項目を見て少し驚きました。

 

「『25㎜三連装機銃 集中配備』? 確かこれって麻耶さんの機銃では?」

 

去年改二になったことで防空巡洋艦になった麻耶さんが持参した機銃です。最初に見たときに圧倒されたのをよく覚えています。

 

「そうだよ。それを知ってからよく麻耶さんに対空戦闘を教わってるんだ。本当は大和さんにも教わろうと思ったんだけど、資材の都合上厳しいみたいでね」

 

そういえば大和さんも戦時中この機銃を活用していた艦娘ですね。ですが大和さんが訓練とはいえ戦闘をしたらとんでもない量の資材を消耗することになります。大規模作戦が終わったばかりの私たちの鎮守府でそれはできませんね。

 

では三枚目を見ていきましょう。これはどうやら改の状態との違いですね。……えっと、何ですかこれ?

 

「大発を搭載できて、特殊対空砲撃も『25㎜三連装機銃 集中配備』だけで可能?」

 

秋月型の皆さんですら対空電探が必要なのにこれはすごいですね。

さらに大発も搭載できるのなら東京急行遠征がさらにはかどります。搭載可能だったのが水上機母艦の千歳型のお二人と瑞穂さん、そして改二になった阿武隈さんだけでしたのでいつも大変そうでしたからね。交代できるのならみなさん喜びます。

 

最後の四枚目は制服ですね。これは後で雷さんにも見せたほうがいいかもしれません。

 

「ありがとうございました。でも、お願いって何なのですか?」

 

これを見てもさっぱりわかりません。夜戦火力が低いからそれ関連かと思いましたが機能の問題なのでどうしようもありません。

 

すると皐月さんは今までとは異なり真剣な表情になって私に頭を下げました。

 

「私に探照灯と照明弾の扱いを教えてください!」




せっかくの改二だったのでしっかり性能を書いたらそれだけで1話分になってしまったので、今回は二本立てです。

その代わり、ホワイトデーネタは14日中に投稿できないかもしれません。申し訳ありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。