訳の分からない現象から解放されると俺は自分の家に帰ってきた。
俺が妹と二人で住んでいる家は二階建ての一軒家で、親が一括払いしているのでローンとかも残っておらず快適な家だ。殺し屋って儲かるんだな。俺のしている仕事はそんなに儲からないけど。
玄関を開けた瞬間に黒髪ショートカットの美少女が俺の右腕に抱き付いてきた。
童顔な割りに発達した胸の感触が気持ち良い。我慢しろ、俺!
「お兄ちゃん! 遅かったから宇宙人にでも攫われたんじゃないかって心配したよ!」
抱き付いてきたのは俺の可愛い妹である皐月だ。ちなみに妹も俺と同じ殺人鬼でもある。まぁ、細かいところは違うが気にするほどのことじゃない。
て言うか、予想があながち間違っていない。俺の妹は妙に勘が鋭くて困る時もある。
ちなみに皐月の年齢は俺の一つ下で同じ高校に通っている。
「雑誌の立ち読みをしていただけだ。宇宙人なんかいるわけないだろ」
俺は皐月の頭を撫でながらリビングに向かう。
「いやぁ、分からないよ、お兄ちゃん。世界には私達の知らない不思議なことがあってもおかしくないんだから」
その不思議なことが、ついさっき合ったな。
まぁ、皐月に言うのはもう少し事態がハッキリしてからでいいだろ。無用な心配をかけることはない。
「そうだな。俺には皐月の可愛さが不思議でしょうがないよ」
これはこれで真実だ。俺の妹は世界一可愛い。
「へへぇ……お兄ちゃんも世界一格好良いよ」
皐月が笑顔でそう言う。この笑顔、守りたい。
「そりゃ、どうも」
素っ気なく答えたが俺の顔はにやけていただろう。
多分……いや、間違いなく皐月が実の妹じゃなかったら押し倒している。
リビングについたのでソファーに座ると俺はリモコンをとってテレビをつける。番組はよく見るバラエティーだ。
気付くと皐月が自然な流れで俺の膝の上に頭を乗せていた。
「あー、お兄ちゃん! 何で先に一人で食べているのさ!」
皐月がレジ袋の中を見ると、俺が先にポテチに食べていたことに気付いて文句を言ってきた。
しまった。皐月はポテチが好きだったんだ。食べるなら別のにするべきだった。
「悪い悪い。後で埋め回せするから」
「本当!? じゃあ、明日デートしてね!」
「あー、明日か……。悪い。明日は用事があるんだ」
「用事? もしかして仕事か何か?」
「いや、違う。あの女に会いに行くんだ」
本当は会いたくないんだけどな。俺、あいつが苦手だし。あの女は何考えているか分からなくて不気味だ。
でも、さっきの謎の人物を調べるためにも会わないといけないし。あー、でも皐月とデートしたいし、また別の日にしようかな。
でも、探さないと嫌がらせしてくるらしいし。
さっきから『でもでも』うるさい! って何、自分にツッコんでんだか。
「……お兄ちゃん、あの女に会いに行くの?」
さっきまで楽しそうだった皐月の声が不機嫌そうに低いものになる。
皐月もあの女が嫌いだからな。俺が仕事関係で会いに行く度に不機嫌になる。
ここは適当に誤魔化すしかない。
「まぁ……そうだな。でも早く帰ってくる予定だから、もしかしたら昼からデートできるかもしれないぞ」
「……本当に? あの女がすぐにお兄ちゃんを帰すとは思えないんだけど」
確かに。あの女は用事が終わったからって、すんなり帰してくれるほど楽な女じゃない。
むしろ嬉々として面倒ごとを押し付けてくる最悪な奴だ。
「こうなったら私も明日、お兄ちゃんと一緒に行くよ! そして、あの女に文句を言ってやる!」
皐月が勢いよく立ち上がるとそう言った。
「やめろ。あの女に会っても録なことはないぞ」
「でも一回、文句を言わないと気が済まないんだもん! 毎回毎回、私のお兄ちゃんに酷いことして!」
いや、面倒くさくはあるが酷いことではないぞ。……たまに物凄く酷い時もあるけど。
「でもなぁ……」
「大丈夫! いつもお兄ちゃんが私のことを守ってくれているだもん! 今回は私が守るよ!」
皐月の中ではあの女はどれだけの悪者になっているのだろうか?
まぁ、言っても無駄だろうし諦めるか。
二話終了です。
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