四葉の龍騎士   作:ヌルゲーマー

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はい、説明回です。次回から入学編突入です。


第15話

二日後、深夜達と風間は別荘ロビーに集まっていた。先日の謝罪と戦闘、そして達也、ザンについての説明だ。達也について一通りの説明があったあと、ザンの番となった。

 

「次に桐生君なのだが、あの力はいったい…」

 

「それについては、私という人間がどういうものか、から説明する必要があります」

 

一息つくと、ザンは全員を一旦見渡してから口を開いた。

 

「私は、別世界から来た異世界人です。信じられないかも知れませんが、そこは信じていただくほかは無い」

 

深夜を除く全員が驚愕した。ザンが普通の人間では無いことは、皆うすうす感じてはいた。しかし、異世界から来た人間など、本当に存在し得るのか。

 

「…異世界の人間は、皆あのような力を持っているのかね?」

 

「いえ、基本的に前にいた世界の人間は、この世界と大差ありません。しかし、私は『龍の因子』を持つ者です。前の世界では、龍の因子を持つ者を『龍騎士(ドラゴンナイト)』と呼んでいました。龍騎士はその龍の因子の力を用いオーラを自在に操り戦闘を行います。こちらの世界の方々には馴染みが薄いかも知れませんが、所謂『氣』の力に似たようなものです」

 

「なるほど。では敵兵の銃弾や魔法が効いていないようにも見えたが、それも龍の因子が関係するのかね?」

 

「はい。オーラで覆われた人間は非常に堅牢な鎧を着ているようなものです。銃弾など通用しません。あと、魔法ですが、これは龍騎士の性質が関係します」

 

「性質?」

 

「はい。お分かりになったと思いますが、龍騎士は非常に大きな力を有します。この力が悪用されないよう、特に精神関連の魔法には鉄壁を誇ります。例えば、マインドコントロールのような事は影響を受けませんが、達也の『あの魔法』であれば多少のダメージを受けるでしょう」

 

ザンの説明に皆あっけに取られていた。『あの魔法』は間違いなくマテリアル・バーストを指しているだろう。それを持って多少のダメージとは。

 

「ああ、前に居た世界では、あの威力の魔法がバンバン飛び交っていましたので、その程度で死ぬ様では龍騎士は務まりませんよ」

 

開いた口がふさがらないという言葉を、ザンを除く全員が実感していた。

 

「ご認識済みと思いますが、私の存在を公表しないでください。必ず、私を狙うものが現れます。そうしたら戦争となるのは明白です。この力は、一国が持つべきものじゃない」

 

「ああ、承知した。この件は私の胸にしまっておく」

 

 

-○●○-

 

 

風間が帰った後、今度は深夜達から質問攻めにあうことになった。

 

「私達を護った、あの魔法は?」

 

「魔法は、正直専門外だからな。なんといえば分からないんだ。ただ、皆が後ろに居たあの時、護る力を強く欲した。その時魔法演算領域が塗り替えられたのを感じたよ。俺だけの護るための力。しかし、他の魔法はうまく使えなくなったようだけどね」

 

「そうなんですか!?私達を護るために…」

 

「いいんだよ、深雪。俺が心の底から欲したものなんだ。それより謝らなくてはいけない。皆、すまない」

 

頭を下げるザンに、皆頭の上に疑問符を乗せていた。

 

「何故、謝るのですか?」

 

「実はあの魔法、四系統八種類全てを含み、且つ精神干渉魔法でもあるんだ。護る対象の精神に干渉し、その人が『死ねない』理由を持ってくる。その想いを付与して鉄壁の盾を構築する魔法のようなんだ。その為、皆が隠していることすら俺には見てしまう」

 

「…ま、まさか」

 

「そのまさか、だ。決して他人には知られたく無い秘密もね。例えば、『深雪の達也に対する想い』『深夜の達也にしたこととその真意』『その真意に気づいている達也の意思』などがある」

 

顔を真っ赤にした深雪の隣でそれまで沈黙していた深夜が、がたっと立ち上がる。

 

「私がしたことが、分かるというの?」

 

「はい。人工魔法演算領域を植え付ける精神改造手術を施した真意も。貴女は建前上、先天的な魔法演算領域を『分解』と『再成』に占有されていたため、通常の魔法師としての才能を持たなかった達也が、魔法師でなければ四葉家の人間として居られないことから、『強い情動を司る部分』を白紙化し精神改造手術を施したとしていると思いますが、実際は違う」

 

「…やめて」

 

「達也が六歳のときに、自分を分解と再生をしてしまうことで死にかかったのですね。二度とさせまいと感情を押し殺してでも、精神改造手術をして生かしたかった。例え息子に恨まれようとも」

 

「やめて!…真意を気づいている?」

 

ザンが答えようとしたときに、達也が遮った。その目には決意が見て取れる」

 

「はい。私にされた精神改造手術について、奥様の想いについては察しておりました。強い情動が無いからこそ、この真意にたどり着いたと考えております。ありがとうございます」

 

礼を言う達也に、深夜は泣きながら抱きついた。

 

「ごめんなさい、達也!…ごめんなさい。あの時はそれしかなかったけど、それでも後悔しなかったことは無かった。ごめんなさい」

 

「謝らないでください。私はあなたに助けられたのです。『分解』『再生』は通常の精神状態では使いこなせないでしょう。何も謝ることは無いのです。私は感謝しているのですから」

 

達也は抱きながら、深夜の嗚咽が止まるまで抱き合っていた。

 

 

-○●○-

 

 

「あの葉が落ちたとき、私もこの世を去るのね…」

 

「それでしたら、硬化魔法で動かないようにしてきますね」

 

「…情緒もへったくれも無いんだから」

 

「それは情緒とは言いません!縁起でもない。今週末には退院するんですから、今はゆっくりしていてください」

 

病院の一室。二人の女性はコントをしていた。ジト目で見る穂波に対し、深夜はそ知らぬふりをしていた。

コンコンとノック音が病室に響く。穂波は扉を開けると、そこには真夜が居た。

 

「こんにちは、穂波さん。ごきげんいかが?」

 

穂波は真夜と軽く挨拶をすると、病室から出て行ってしまった。真夜は別途の傍の椅子に腰掛けると、深夜の顔を見つめる。

 

「こんにちは、姉さん。調子はどう?沖縄では災難だったわね」

 

「ええ、まったく。それにしても今日まで見舞いにも来ないなんて、薄情な妹も居たものね」

 

「私には四葉の仕事があるのよ、姉さん。知っているくせに、嫌味を言わないで頂戴。…本当に心配したんだから」

 

そういうと、真夜は深夜に抱きついた。微かだが真夜の身体が震えている。左手で真夜の頭を軽く撫でると、深夜は微笑んだ。

 

「ごめんなさい、心配をかけて。大丈夫よ、検査結果待ちなだけなのだから。それに…」

 

「それに?」

 

顔を上げた真夜に、深夜は微笑んだ

 

「それに、今度あの家を出ようと思っているの。穂波にも話してはいるんだけれど、空気の良いところで療養をしようとかんがえているのよ」

 

「どうしたの、急に」

 

「ええ。私は、あの子達の母親なんだと思い知らされて、ね。あの子達の成長を見守りたくなったのよ」

 

「そう。やはり『母は強し』かしらね。…昔は無茶ばかりしていたけど。聞いたわよ、昔私のプリンを食べたことをごまかすために、私の『経験』を『知識』に変えたんですってね?『忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)』とまで言われた人が、何・を・し・て・い・る・の」

 

最後の一言一言に合わせて、指で深夜の額を小突く真夜。

 

「…っ!あの、バカ!何話しているの…!」

 

涙目でそこに居ない人物に恨み言をいう深夜だったが、真夜にジト目で見つめられて観念した。

 

「だって、しょうがないじゃない?あの時あなたは、いつまで経っても『プリンー!プリンー!!』って泣け叫んで収まらなかったんですもの。でも、魔法を使ってから後ろめたくなってしまって、あなたのことを見ていられなくなったのよ。本当に申し訳ないと思っているわ」

 

「…でも、彼が切っ掛けをくれた。でしょ?姉さん」

 

「そうね、本当にそう。色々なことがあったけれど、私にとっては子供達と、そしてあなたと向き合える切っ掛けをもらった事が、一番かしらね。そうだ。薄情な旦那とは別れて、再婚を考えようかしら。あの子達も顔見知りの方がいいと思うし。彼ならいいでしょう?」

 

「駄目よ!ぜっったいに、駄目!姉さんにはあげないんだから!大体何考えているのよ。ザンはまだ中学生よ、中学生。自分と同い年の父親なんて、受け入れられるわけないでしょう!」

 

そう真っ赤になって抗議をあげていた真夜だったが、口に手を当ててニヤニヤ笑っている深夜に愕然とした。そう、からかわれていたことに気がついたのだ。

 

「ふーん、そう。私は『彼』としか言わなかったけど、真夜はザンだと思ったのね。何でかしらねー?」

 

「知らない知らない!お大事にね、姉さん!!」

 

真っ赤になって真夜は出て行ってしまった。一人残された深夜は窓の外の青い空を見ていた。

 

「私達が中学生になったとき、真夜を助けてくれた彼への私達の想いは『あこがれ』だった。でも、今のあなたはどうなのかしらね、真夜?」

 

 

-○●○-

 

 

中学三年生になったころ、ザンは達也や深雪と同じ中学に転向した。これはザンがさらに魔法について学びたいと真夜に言ったことがきっかけだった。ザンは達也や深雪と同じく国立魔法大学付属第一高校を志望しているとの事だった。どうせ二人に会うのであれば、予め同じ中学出身としたほうが都合が良いだろうとの判断だ。

学力的にはザンには非常に高い関門だったが、達也の指導によりメキメキ成績を上げ、無事三人とも合格した。

ザンは四葉邸を出て、達也達の自宅近くのアパートに引っ越すことにした。四葉邸は何より遠いし、達也達の邪魔はしたくないとの事でそうなった。この件は後日深雪に大変不評を買った。

 

いよいよ、三人の激動の高校生活が始まる。

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