紅茶を飲むザンを、真夜は妖艶な笑みを浮かべて見つめていた。
「はぁ~、やっと一息つけた。葉山さん、お代わりいただけますか?」
真夜の傍らに立っていた紳士は、ティーポットからザンのカップに紅茶を注ぐ。紅茶の香りがふわっと広がった。
笑みをそのままに首を傾げ頬に手をそえた真夜はザンに問う。
「何故あなたには薬が効かないのかしらね?庭に現れたときも魔法が効かないと報告があったけど、それも関係あるのかしら?」
「言うと思う?着いた途端にいたいけな子供を怖い大人達がこの部屋まで連行してきてさ」
「あら、あなたが言ったんじゃない?若返ったって。うらやましいわ」
「そこだけ信じるのかよ!まったく、うらやましいって言ったって、あんた20台前半くらいだろう?その歳で当主をしているのはすごいって思うけど、そこまで歳を気にすることないだろう?」
光速の動きを見せた真夜は、目をキラキラ輝かせながらザンの両手をガシッと掴んだ。
「そう思う?ほんとうに?」
若干引きながら、ザンは肯定した。
「あ、ああ。当然だろう。当主って…」
「そこじゃない!その前!」
「…えーっと、20台前半?」
真夜は立ち上がり、右の拳を天に掲げていた。どこかの覇王のように。
「ザン殿、真夜様はこう見えて…」
「葉山さん?」
ザンに何かを伝えようとした葉山だったが、壮絶な笑みを浮かべる真夜のプレッシャーから最後まで言えなかった。
-○●○-
「部屋を用意してもらえるとは思っていなかったな」
夜も遅かったので、続きは明日にと言われていた。これだけの屋敷だ、座敷牢のようなものもあるかもしれない。脱出も考えてはいたが、何より疲れていた。
「政治家か何かの家なのかな?えらく広いし、この部屋もベッドも何もかも高級そうだ」
運が良いのか悪いのか判断しかねるところだが、気にしてもしょうがないと判断したのかベッドに横になる。
「気配も人か、あとは…犬かな。まぁ気にしても仕方ない」
ザンは目をつぶると、すぐに寝息を立て始めた。
-○●○-
監視カメラの映像を、真夜と葉山が見ていた。
「肝は据わっているようね。葉山さん、監視は怠らないように」
「はい。朝まで監視を続けます。しかし、よろしかったのですか?いくら見た目が少年とは言え、得体の知れない者を。10歳前後の魔法師がいないわけではありませんし、もし暗殺者であれば…」
当然の疑念であるが、真夜は一笑にふした。
「大丈夫よ。もしあの子が暗殺者であれば、私達は全員死んでいたわ。魔法は効かない、薬も効かない」
「魔法による自爆攻撃でもされたら、ですか」
「そう。それにあんな意味の分からない言い訳をしても、誰も信じないわ。あの子の処遇は明日で問題無いわよ。それに…」
「それに?」
「それに夜更かし、寝不足はお肌の天敵だわ!」
ザンの言葉によりいつも以上にハイテンションな真夜を見て、心の中で嘆息する葉山だった。真夜様はこんな御仁だったかと。
話が短いこともありますが、相変わらずまったく進まないですね。
構成の関係上真夜の性格がかなり改変されておりますが、お気になさらずに。