四葉の龍騎士   作:ヌルゲーマー

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第10話

長野県某市。四葉深夜が療養していた家にザンは来ていた。

深夜はベッドの上に横たわっていた。隣にある椅子にザンは座ると、深夜の右手を両手で握る。穂波は深夜の傍らに立ち見守っていた。

 

「では、始めます」

 

ザンが金色の湯気のようなものに覆われると、それが手を伝わって深夜に広がり、二人は金色に覆われた。ザンが持つ『龍の氣』と人の持つ『氣』を同調させる『龍氣同調』。『氣』を同調させ活性化を促すのだ。『氣』を扱える人間なら、自らの『氣』の活性化も可能ではあるが、深夜や穂波には不可能な事であった。

ザンが深夜と出会った当時、深夜の持つ『氣』は著しく弱っていた。沖縄の問題があった後、ザンは定期的にこの家に訪れ、少しずつ同調させていった。『龍の氣』は『氣』の活性化も行えるが、大量の『龍の氣』は毒にもなってしまう。その為少しずつ、そして根気強く続ける他は無かった。

 

「もう大丈夫でしょう。健康体の『氣』のレベルまで回復しましたよ」

 

ほぼ三年かかったが、深夜の『氣』はようやく問題無いレベルまで回復していた。しかし、『忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)』と言われていたほどの使い手であった深夜は、魔法をやはり使えなくなっていた。魔法の酷使と死の因果関係は、『氣』の衰弱に関連するとザンは考えていたが、それと魔法が使えなくなる事は関連性が見えなかった。『まあ、使えないものは仕方ないわね』そう言った深夜だったが、その顔は穏やかであったという。

なお、穂波もまた『氣』が衰弱していたが、深夜ほどでは無かったため一年ほどで回復していた。深夜は身体を穂波に支えられながら起こすと、頭を下げる。

 

「ありがとう、ザンさん。何から何までお世話になったわね」

 

「いえ、気にしないでください。達也や深雪の悲しい顔を見たくありませんから」

 

「…深雪はともかく、達也は悲しんでくれるかしら?」

 

自分が行った手術により、達也が強い情動に動かされる事は無い。その事を言っているのはザンも分かっていた。

 

「当たり前でしょう。俺は、『人の意思』は『魔法』に負けないと思っています。人が奇跡を起こすのは、いつだってその者の『意思』だ。俺は、それを信じたい」

 

「…そうね。ありがとう」

 

照れくさかったのか、ザンは急に話題を変えた。

 

「夏休み中には、達也と深雪はこちらに来るんですよね」

 

「ええ。今から楽しみで楽しみで。高校に入ってからこれまで、そして九校戦の話なども聞くつもりよ」

 

ザンの肩がビクッと震えたが、深夜は気にしなかった。

 

「あなたには申し訳なかったわね。お友達と遊ぶ約束があったのでしょう?」

 

雫の家のプライベートビーチでいつものメンバーで遊ぶ誘いや、エイミィとテーマパークで遊ぶ誘いがあったが、深夜の治療を優先したのだ。

 

「別に構いませんよ。遊ぶ事はいつでも出来ますが、あなたの治療は定期的にやる必要があった。今日を逃すと何時になるか分かりませんし。それに…」

 

ザンが急に挙動不審になる。深夜は隣に立つ穂波と顔を見合わせた。

 

「以前からま、真夜様がこちらにこ、来られるということで、俺もよ、呼ばれていたんですから」

 

「…ザンくん、少しは落ち着いたらどうですか?顔色が酷いことになっていますよ。…真夜様と何かあったのですか?」

 

穂波の言葉に、今度はザンの身体全体がビクッと飛び上がらんばかりに震えた。そして顔を赤くしオロオロし始める。

 

―帰りの車では、真夜は顔を両手で隠し足をバタバタさせていたわね。聞いてもあの子は何も答えなかった。まあ、悶えてばっかりで鬱陶しかったけれども。何があったかと思えば、やっぱりこの子絡み、か―

 

深夜が声をかけようとして所でチャイムの音が響いた。どうやら待ち人来るだ。

 

 

-○●○-

 

 

真夜が来たことにより、皆リビングに移動した。二人がけソファに深夜と穂波、三人がけに真夜とザンが座る。深夜は真夜とザンを見ていたが、明らかに挙動がおかしい。まず二人は中々目を合わそうとはしない。そしてよしんば眼が合ったとしても、二人とも弾かれたようにビクリとし、眼を離してしまうのだ。更に二人とも顔が真っ赤という始末。深夜は深くため息を吐いた。

 

「…ザンさん。申し訳ないのだけれど、少し外を見回ってきてくれないかしら?真夜も来た事だし、念のために、ね。穂波、ザンさんはこの辺りには疎いでしょうから、一緒にお願いね」

 

「承知いたしました、奥様。ザンさん、行きましょう」

 

「は、はい…」

 

心ここにあらずといった感じのザンを穂波が連れて出て行った。玄関の閉まる音を聞き、深夜が切り出す。

 

「それで?一体あの九校戦で何があったの?車の中では話にならなかったけれど、今日は聞かせてもらうわ」

 

「ね、姉さん。でも、私…」

 

再度深いため息を吐いた深夜は、言いよどむ真夜の目の前まで顔を下げた。

 

「真夜、貴女の意見は聞いていないの。…大体、このままでいるわけにはいかないでしょう?今日は貴女も泊まるのだから。明日帰るまでこの状態にする気?私は嫌よ。せっかくあのバカ亭主がいない所でのんびりしているのに、何で貴女がそんなおかしな空気を持ってくるのよ」

 

「…私、かえ…」

 

「帰さないわよ!い・い・か・ら・話なさい!何があったの?閉会式後まではなんとも無かったんだから、あの時よね。ダンスパーティだったっけ?貴女あの時は部屋にいなかったんだから」

 

ビクッと真夜の肩が震える。ビンゴだ。

 

「さあ、話なさい。それに、こういった事は、他人に聞いてもらうと少しは楽になるものよ。何か、私がアドバイスできるかもしれない。私は貴女の姉なのよ。少しは頼りなさい」

 

ずっと床を見ていた真夜だったが、一旦頷くと顔を上げ深夜に向き直る。

 

「あ、あのね、姉さん…」

 

普段の真夜では考えられない、要領を得ないものだった。深夜は根気強く話を聞き、自分の中で話をまとめる。そしてそれが理解できたとき、深夜は人生で最も深いため息を吐いた。

 

「はあ~?ばっっっっかじゃないの!ダンスパーティに割り込んで、ステージ上でザンさんにキスをしたの!?それで、後から恥ずかしくなって気まずくなったって、貴女いったい今年で幾つになったと思っているのよ!…いいわよ、言わなくても。双子なんだから」

 

「ね、姉さん、私どうしたら良いのかしら?ザンに嫌われていないかしら?」

 

まるで十代の少女が恋を煩い、暴走をしてしまったかのようだ。深夜が知る限り、真夜の初恋なのかもしれない。しかし、相手は元異世界人で、こちらの世界に来るときに身体が若返ったという年齢不詳の人間。さらに魔法の効かない特異体質(?)ときたものだ。しかし、深夜自身を含め、達也や深雪、穂波が彼に救われている。人間として、まず間違いないだろう。深夜は姉として、一人の女として真夜に向き合った。

 

「ザンさんが貴女をどう思っているかは分からないわ。でも、貴女を嫌っているようには見えない、ただ戸惑っているだけの様に見える。…真夜。今夜一晩かけて良いから、ザンさんとじっくり話しなさい。話さない事には、何も伝わらないわ」

 

「…でも、私、怖いの。私はあの子を傷つけてしまったのではないかしら?それが怖くて…」

 

「いいから、言う通りにしなさい!夕食後、私は穂波を連れて部屋に戻るから、このリビングなり寝室なりで話しなさい。あまり時間を空けてしまうと、修復できるものも出来なくなっちゃうわよ」

 

弱々しく頷く真夜を見て、これは本物だと考えていた。しかし人の心は、それも恋心はなるようにしかならない。精神構造干渉魔法のスペシャリストはそう考えていた。

 

 

-○●○-

 

 

夕食も終わり、最後に風呂から上がってきたザンがリビングに入ると、真夜しかいなかった。緊張が走る。ザンは自らが緊張している事が理解していたし、ソファに座る真夜も緊張している事が分かっていた。一旦のどを鳴らしたザンからは、かすれそうな声が出ていた。

 

「…さて、俺は部屋に…」

 

「待って!」

 

悲鳴にも近い声は、真夜のものだった。

 

「待って、お願い。お願いよ…」

 

ザンは真夜が何故泣きそうなのかは分からなかったが、ここからいなくなってはいけないことだけは分かった。ザンは真夜の前まで行き片膝をつく。

 

「どうしたんですか、真夜様。私はどうすれば…」

 

「そ、そうね…。ここでは話し辛いから、寝室にいきましょう。私は、あなたと話がしたいの」

 

話がしたい。それだけのことで、あの真夜が真剣な顔をしている。ザンは頷き、真夜の手を取ると立ち上がらせ共に寝室へ向かう。寝室に入ると、真夜はベッドに座り、ザンはその手前にある椅子に腰掛ける。その後、数分間の沈黙が訪れた。

 

「ま…」

 

「ごめんなさい!」

 

ザンが声をかけようとしたとき、真夜から謝罪の言葉が飛び出した。真夜を見ると、頭を下げたままだ。

 

「あの時、本当はあそこまでするつもりは無かった。でも、ステージに上がったあなたを見て、そしてあなたを見る女の子たちを見て、ついしてしまったの!」

 

一気にそこまで話し、真夜は一旦息を吐く。

 

「ただ、そのせいであなたが傷ついてしまったのではないか気になって…」

 

声のトーンが尻すぼみになる。その光景を見て、ザンは緊張がほぐれてきた。

 

「真夜様、別に私は傷ついてなどいませんよ。ただ、あまりに急な事だったものですから、どう対処すれば良いのか分からなくなってしまっただけです」

 

「…でも、オバサンよ?こんな年増からキスされても、嬉しく無いでしょう?」

 

顔を上げた真夜は、やはり泣きそうな顔をしていた。

 

「そんな事はありませんよ。俺にとってのファーストキスだったってだけで、むしろ光栄ですよ」

 

「よかった」

 

そう言って微笑む真夜を、ザンは美しいと思った。見とれていた事を誤魔化すため、ザンは疑問に思っていた事を聞いてみた。

 

「えっと…、そういえばどうしてキスすることになったんです?俺を女子生徒たちが見ていたからって…」

 

「取られたくない、って思ったの!」

 

「へ?」

 

顔を真っ赤にした真夜は両手で顔を覆う。

 

「そ、それって…」

 

「そうよ!私は嫉妬したのよ!ザン、あなたが好きだから、愛しているから取られたくなかったのよ!」

 

真夜の独白に、ザンは冷や水をかけられたような気分だった。それは考えようとしてこなかった事だ。

 

「ありがとう、真夜様。お気持ちは、非常に嬉しいです。しかし、俺には人を好きになる資格なんて無いんですよ」

 

「…どういう事なの?」

 

「いえ…」

 

それまで顔を真っ赤にしていた真夜だったが、ザンの様子がおかしいことに気が付いた。ザンに話しの続きを促す。

 

「いいから、お話しなさい。私が、あそこまで話したんですからね。あなたが言わないなんて許さないわ」

 

ザンは苦笑するしかなかった。一旦息を吐くと、重く語り始める。

 

「…俺が異世界で『龍騎士』として戦っていた事はお話しましたね。自分で言うのもなんですが、俺のいるパーティは魔族だろうと龍族だろうと敵ではなかった。パーティには、俺の他に戦士二人と女魔導師がいました。特に女魔導師とは出発した村から共に歩んだ戦友だった」

 

一旦区切ると、ザンは深呼吸していた。よほど話すことが気乗りしないのであろう。自分のトラウマと向き合うのであれば、尚更だ。

 

「彼女と恋に落ちたのはだいぶ経ってからです。ただ、その時は戦場に立つ身。落ち着いてからその後のことをお互い話そうとしていました。そんなある日、敵の苛烈な攻撃があったんです。爆裂する魔法が雨あられ降り注ぎ、攻撃を避けていたつもりが誘導されていた。気が付いたときには相手の巨大な魔導砲撃が迫っていました。巨大で直線的な攻撃に対し、俺は自分の身体を盾とし立ち塞がりました。しかし、それは()()()でしかなかった」

 

ザンが俯き、肩が揺れる。膝に置く両手の握りこぶしが震えている。

 

「…後ろには誰もいませんでした。何もありませんでした。俺は自分が愛した女を見殺しにしたんだ!救う事ができなかったんだ!何が『龍騎士』だ!何が『救世の英雄』だ!俺はとんだ愚か者だ!自分の力を過信し、何一つ守れない無能者だ!俺は、俺は…!」

 

涙でぐしゃぐしゃになりながらの心の叫びは続きが言えなかった。真夜がザンの頭を自分の胸に抱きこんだからだ。

 

「もういい。辛い話をさせてしまったわね。ただ、それで『人を好きになる資格が無い』ことにはならないわ」

 

「でも、俺は…」

 

「確かに悔いが残ることでしょう。でも、その女性はあなたを恨んで死んでいったとは到底思えない。確かに自分は助かりたかったかもしれない。でも、それ以上にあなたに助かって欲しかったと思うわ」

 

「…どうしてそう思えるんですか?」

 

涙交じりの声でザンがうめく。真夜は笑顔だった。

 

「同じ、女ですもの。それも同じ男を愛した、ね。もし私がその場にいたら、きっとそう思っていたわ。その女性には悪いけれども、私はあなたが助かっている事が嬉しい」

 

真夜はそう言ってザンに口づけをする。前とは違うバードキスだ。

 

「人を愛する事に、資格なんて無いわ。人を想うから成り立つの。ザン、あなたは私が嫌い?」

 

「いえ、そんな事はありません。でも、俺は異世界人ですよ?それに『龍騎士』だ。それに…」

 

「そんな事、異世界とかどうでも良いの。あなたにどんな過去があり、どんな事をしてきたかもどうでも良い。それら全てを含めてのあなたなのだから。それらを全て私は受け入れるから。私、四葉真夜はあなたを愛しています」

 

「俺は、…俺も愛している、真夜」

 

二人は抱きしめあい口づけすると、そのままベッドに倒れこんだ。

 

 

-○●○-

 

 

カーテンを開ける音がする。部屋に朝日が差し込む。外では小鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 

「ん…」

 

「起きた?」

 

ザンが寝惚け眼でその声をたどると、しゃっきり眼が覚めた。

 

「ま、真夜!何て格好で!」

 

真夜は生まれたままの姿で立っていた。艶やかな肢体をさらしている。日光が真夜を天女の様に照らしていたと言うのは後のザンの言葉だ。

 

「今更何言っているの。昨夜はもっと恥ずかしい格好をさせたくせに。ああ~、腰が痛いわ…。まったく、加減というものを知らないんだから」

 

ザンは苦笑すると、タオルケットを真夜にかける。そのまま背後から抱きつき、肩越しにキスをする。ただ、その顔は赤いままだ。

 

「さて、ひとっ走りしてくるよ、真夜」

 

そう言うとザンは部屋から出て行った。顔を赤くしたままのザンを思い出し、真夜は吹きだしてしまった。

 

真夜が服を着てリビングに出ると、深夜と穂波も寝室から出てきた。

 

「おはよう、姉さん。清々しい朝ね。昨日はありがとう…。どうしたの、その顔?」

 

深夜と穂波の眼の下にはクマがあった。深夜は答えず半眼でにらむと真夜の頭に手刀を落とした。

 

「痛っ!何よ、姉さん!」

 

「…貴女たちの声が一晩中鳴り響くものだから、眠れなかったの!まったく、話し合えとは言ったけど、どうしてそうなるのよ。貴女は『四葉家当主』なのよ!」

 

深夜が苛立ちを隠さず怒鳴ったが、真夜は照れて聞いていない。口からは『にへ~』と謎の言葉が漏れてくる。これは駄目だとさじを投げた。

 

「…ただ、姉としてはお祝いしなくちゃね。おめでとう、真夜」

 

「…ありがとう、姉さん」

 

「でも、その歳で子供を生むのは大変じゃないかしら?」

 

「大丈夫です、奥様!妊娠中でもよい運動があります。いまから始めれば間に合います」

 

「気が早いわよ!…でも、男の子かしら、女の子かしら。男の子ならザンに似て男前ね」

 

「はいはい、ご馳走様。穂波、コーヒー入れてくれる?濃い目でお願い。口の中が甘いったらありゃしない」

 

「…今日も泊まっていこうかしら。そうしたら、もう一晩…」

 

「帰りなさい!」

 

その日は快晴だった。

 

 

-○●○-

 

 

「おい、勝手に一人で行くな!連携というものがあるだろう!」

 

「うるさいなぁ、将輝。お前じゃ俺にはついてこれないよ。日本で待っていろよ」

 

「ふざけるな!俺だって修行をして力をつけたんだ。大体、ここまで来ているんだぞ。今更引き返せるか」

 

ザンは海上にいた。日本刀を背負い、船の行き先を見つめる。かつて鎮海軍港があったところだ。現在は円形に抉り取られた跡があり、その海岸に人影が見える。

 

「おい、四葉!」

 

「ザンと呼べっていっているだろう?お前の頭はスライムでも入っているのか?」

 

「やかましい!友人でも無いのに勝手に名前で呼びやがって。それよりどうするんだ?こんな小船では撃沈されるぞ」

 

軍艦よりボートを下ろし、ザンと一条は鎮海軍港跡に近づいているのだ。

ザンは高校卒業後に真夜と結婚し、その事を公表している。その為今は『四葉斬』と名乗っていた。

 

「俺がいるのに、撃沈なんかするものか。それより、劉雲徳のその後の動向は掴めているんだろうな?」

 

「ああ、ジョージと司波が追尾している。まず振り切られる事は無いだろう」

 

達也と吉祥寺が先行して進入していた。ザンたちはあえて隠さず侵攻することにより、そのカモフラージュも兼ねているのだ。

劉雲徳は灼熱のハロウィンにて死亡しているとされていたが、先日東京で『霹靂塔』によるテロ未遂があった。これはザンの『アイギス』により防がれており未遂となったが、軍部は劉雲徳が生きているのではないかと考え、また十師族も同様の考えだった。十師族の中でも考えがまとまる前にザンが動き出してしまった為、一条がお目付け役でついてきている状態だった。

 

海岸からは煙が見える。ロケット砲などが発射されたようだ。轟音も遅れて届いてくる。しかし、ミサイル群は凹面に展開された『無限の小盾』に阻まれていた。ミサイルの一つが上下逆の小盾に当たると、爆発せずに金色に光るとものすごい速度で戻っていった。

 

「あ、『逆鱗』に当たったな」

 

『無限の小盾』のオプション、『逆鱗』。それに触れる攻撃は『龍の氣』による攻撃力強化され攻撃した者に戻る、おまけつきのカウンターだ。ミサイルが集団の一部を吹き飛ばしていた。

 

「それじゃ、行きますかね」

 

ザンは金色の『龍の氣』を噴出させる。立ち上がる氣に覆われたザンは髪が青く、肌は褐色となっていた。背負っていた日本刀を抜くと肩に担ぎ、右足をひき構える。

 

「お、おい!」

 

ただならぬ光景に、流石の一条も気圧されていた。

 

「あそこらを一掃するから、そこにつかまっていろ。振り落とされても知らんぞ」

 

言うや否や刀を振りぬくと三日月形の斬撃が海を割り海岸を吹き飛ばしていた。ボロボロと崩れ落ちる日本刀を捨て、足元の予備の日本刀を腰に差す。ザンの一撃を間近で見た一条は、開いた口が塞がらなかった。

 

「何時まで呆けているつもりだ。いくぞ、将輝」

 

「だから、名前で呼ぶな!」

 

友人に名前でからかわれていて常に訂正している男の顔が浮かび、ザンは思わず笑みがこぼれていた。

 

後に大亜連合が解体されるきっかけとなった事件の始まりであった。元大亜連合の人々は日本の事を『龍の逆鱗』と呼び、交戦を避けたという。




7月から始まりましたこのお話ですが、完成いたしました。
アニメ、コミックをみて、非常に印象的だったことを覚えております。
このハーメルンはいろいろな方の作品を読んでいた事もありまして
自分も書いてみたいなと思ったのがきっかけでした。
5巻以外の原作は読んでおらず、
主にコミック、アニメ、Wikiで情報収集しておりました。

また時間がありましたら横浜騒乱編を書いてみたいです。
それ以降のお話は、コミックやアニメ化があればいいなと思っています。
(小説を読むと、私の実力ではその表現方法に引っ張られると思いますので)

いままでお読みいただきありがとうございました。
もし次の機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

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