真夜中にたたずむ黒い影。ビルの屋上に二人の男が立っていた。
「それにしても、この格好はどうにかならなかったのか?」
全身黒い布で覆われ、顔も黒頭巾で覆われている。所謂ニンジャファッションだ。
「貴様の情報が漏れないようにするために決まっているだろう。それに貴様はこれがテストであることを忘れているのか?これに失敗するようであれば、その身がどうなるか分かっているのだろうな」
男の答えにうんざりしながら、ザンは掌をひらひらと振る。
「はいはい、わかっていますよー。まったく真夜のヤツ、本当に中学に上がったら仕事振ってきやがった。もう少し労わりの心ってものが無いのかね?」
しゃべっている途中で拳が降ってきた拳を軽くかわしてため息を吐くザンだった。
「貴様、敬称もつけず呼び捨てとは何事だ!よく私の前で言えたものだな!」
「気にしないでくださいよ、貢さん。ちょっとイラついていただけですから」
「真夜様に10歳で拾われてご恩寵を受けてきたくせに、貴様は恩を仇で返すのか!?」
「嫌だなー、ちゃんと恩は感じておりますし、だからこそこの場にいるんじゃないですか。そんなくだらないことを言っていないで、行きましょうか」
「きさ…っ!…再度確認する。今回のミッションは?」
軽い調子のザンに怒りをあらわにしていた
―へぇ、さすがプロってとこか―
「はい。最低限『ソーサリー・ブースター』の奪取、可能であれば施設内全員の殲滅およびデータの破壊です」
「よし。私は裏から潜入する。貴様は表からだ。足手まといは置いて行くからな」
「はい。承知しました」
二つの黒い影がビルの屋上から落ちていった。
-○●○-
「以上がご報告となります」
「ありがとう、貢さん。ご苦労様」
通信を切り真夜は紅茶を一口飲んだ。
「突入後、目的のものを奪取。5分後にはナイフ一本で24名全員を殺害して、データ破壊には30分ってアンバランスなものね。あとは、『組織の一員としての自覚が不足している。離反の可能性あり。』か。まあ、当たり前よね。自ら組織に属さないって言っていたくらいなんだから」
「よろしかったのですか。彼に『殺し』をさせて」
傍らに立つ葉山の問いに、真夜はけだるそうに答えた。
「いいのよ。もしできないのであれば、それがわかるだけでも良しと思っていたし。彼の『悪』に対する基準がわからなかったし、ね。私は理不尽に対するカウンターがあれば良いと、そう思っているの。それ以外は私達の領分よ」
「それでソーサリー・ブースターの話をしたのですか」
「ええ。私と同じように嫌悪するのか知りたかったから。あんなもの、この世に存在すべきものではない」
ソーサリー・ブースター。起動式を提供するだけでなく、魔法式の構築過程を補助する機能も持つ。ただのCADにも思えるが、極め付きはその材料。魔法師の脳を加工した物を中枢部品としているものだった。
「魔法師は戦争の道具ともなる存在だけれども、道具そのものになるつもりは無いわ…!」
冷たい怒りを発する真夜だった。
-○●○-
「旅行?」
「ええ、そうよ。この間の一件の慰労も兼ねてね。もう夏休みなのだし、ヒマだろうから良いでしょう?」
「別にあれは仕事なのだから、気にする必要は無いだろう?俺も『アレ』には思うところあったし」
「子供が遠慮しないの。姉さんもちょうど旅行に行く予定があるようだから、話しをつけておいたわ。私は用事があるのでここを離れられないから、一人で行ってらっしゃいな」
「お姉さんがいるのか?聞いてないんだけど」
「あら、言っていなかったかしら?」
さも驚いた様子の真夜に、芝居がかった嘘くささがあった。
「そんな目で見ないで頂戴。私の双子の姉で『
「出さねーよ!ったく、家族旅行に部外者が行くって、気まずいったらないだろう?いいじゃん、家族水入らずで行かせてあげれば。俺は要らないだろう?」
よよよ、と芝居がかった泣きまねで真夜は一言。
「私を
「人聞きの悪いことをいうな!大体いつの話だよ。紅茶の件はもう時効だろう?」
「あなたに弄ばれて、捨てられるのね、私」
「だー!!しつこい!わかった、わかったよ!行けばいいんだろ、行けば!」
「ええ、お願い」
満面の笑みの真夜を見て、口では勝てそうも無いと確信したザンだった。
「…で、いつ何処にいけばいいの?」
「8月4日に沖縄よ。穂波さんにも話しておくから大丈夫」
「…だれだよ、それ」
しれっと戦闘シーンばっさりカット。
この後追憶(沖縄)になるので、そこでよいかなと。
予約投稿ってあったんですね。すぐぽちってた。