The 14 Days ~鎮守府合宿での14日間~【再凍結中】 作:M崎
すいません、止まらなくなってしまいまして…。
それでは、どうぞ。
2014年8月3日、日曜日。
「―――おい、お前、
渾身の一言を細目のまま言い放った俺に対し、
「ハァ?何ヲイッテイルンダ。ワタシハアヤツラレタリナドシナイ」
笑顔で全否定なさった港湾棲姫さん。
もう超笑顔。全否定。迷いなんて一切ナシ。躊躇ゼロ。
ただこれで、こいつらが何らかの事件に巻き込まれていることは明々白々となった。
いやだってよー、俺たちの知ってる港湾棲姫さんが、こんなこと言うと思うか?
まあまずありえないだろうな。だっておかしいもん。
聞いた話と合わん。
俺の友達に艦娘大好きなアニヲタがいるんだが、そいつは港湾棲姫のことを、
「天使と悪魔が合わさった最強愛がんんっ!!!…か、可愛い生き物」
といってるんだぞ?俺には意味がサッパリだが。特に途中とか。何て言おうとしてたんだろう…。愛が…
まあそんなことはさておき、だ。
正義感のカタマリである俺は、どうにもこういう面倒ごとに巻き込まれてる人間は助けたいと思ってしまうわけよ。
えーっと………どーやって助けるかなぁ…?
傷つけずに助ける方法、傷つけずに助ける方法…。
俺は熟考する。
するとふわっと、1つだけ疑問が浮かんできた。
―――あれ?そういえば…。
何で
―――考えれば考えるほどおかしい。
誰かに操られているなら、それこそ俺が助けに入る前から全力だったはずだ。
艦娘たちを殺しにかかるようなレベルで。
では、何故、
俺を見てから殺気だったのか。
操っている敵の狙いが俺だから?―――これは間違ってないし、説得力もある。
たぶんカメラでも仕込んでいたのだろう。
もしくは洗脳技術かもしれない。―――というか、今はそちらの線
港湾棲姫さんが、敵に洗脳されて、普段言わないようなことを言う。
今までのを見たら十分あり得る話だ。
では、何故、
彼女が俺たちを殺さずに帰す方法をとったのか。
殺気だっているなら、今この場で俺や艦娘たちを
それは、まだ良心が少し残っているのだろう。彼女の残留意識が、それを許さないに違いない。
しかし、あの眼からして無意識下の発動だ。俺を全力で殺しにかかっている
オヲ怖い怖い。
―――では、何故。
何故、彼女は。
俺と、対話するときの眼が、とても
洗脳されているわけではないから?
洗脳の支配に抗っているから?
洗脳よりも強い志を持っているから?
いくら考えても分からない。
何故だ、何故だ、何故だ―――っ!!!
俺はない頭を必死に振り絞って、彼女らを助ける方法を考えた。
しかし―――、
(―――駄目だ、思い浮かばねえ…っ)
何故かひとつも、方法は浮かばなかった。
一欠片のアイデアも、頭をよぎらない。
俺は失望のため息を漏らす。
俺の頭って、ほんっと残念だな。あーあ。
自分の不甲斐無さを嘆くぜ。
だから、俺に残された選択肢はただひとつ。
「―――分かった、この海域からは手を引く」
戦略的撤退。
残念だが、ここは退かせてもらおう。
悪いな、皆。
しかし、―――やられっぱなしでは面白くない。
それに、助けるって決めた自分の目標も守ってない。
これじゃあ駄目だ。俺は失格。
何か手を打たないといけない。
だから俺は、すごすごと尻尾を巻いて逃げ帰る―――フリをすることにした。
横に目を向けると、艦娘たちが一様に驚いている。
うん、これはまぁ、しょうがない。だって俺はさっき事実上、「撤退する」って宣言しちゃったんだからな。
でも、話はこれで終わりじゃない。
終わらせては面白くない。
なので、精一杯真面目な顔を作って、俺は頼みかける。
「―――その代わり、1つ頼みがある」
「―――ナンダ?」
案の定向こうは乗ってきた。よーし、次だ次。
俺は一気にまくし立てる。
「今日の夜10時に、もう1度ここに来てくれ。ちょっと俺1人で確認したいことがあるんだ」
「「「「「―――――――ッ!!?」」」」」
敵はおろか味方すら驚く駄目押しの一撃。おお、超効いたみたいだ。ケケケ。
だが、まさか何も考えないでこんな頼みを言ったわけじゃあない。
しっかり考えがある。
これは、敵のほうがメリットの大きい要求なのだ。
それも、俺にはほとんど得がないような。
まず、俺が1人でノコノコ出向いてくるわけだから、向こうは敵を増やして、いくらでも俺を捕らえたり殴ったり殺したりし放題。
敵にとっては願っても見ない
さらに「8月3日の午後10時」とは、今から11時間5分後。
これだけの時間を、敵は何をするにも自由なのだ。警察につかまらない限り。
そしてもう1つ、最大のメリットが敵にもたらされる。
最強の武装たる艦娘が、やってこないのだ。
コレはでかい。いくら俺が
まさに千載一遇のチャンス。これを逃す術は、敵にはないはずだ。
「―――ワカッタ、ソノジョウケンヲノモウ。タダシ、ホントウニヒトリデクルンダゾ!ゴエイナンテツケルンジャナイゾ、イイナ!?」
結局承諾した。あーあ、俺はただ、『エサをちらつかせただけ』なのになぁー。どうして罠に気づかないかなー。
「へいへい、りょーかい」
だから俺は、しぶしぶ承諾する演技をした。我ながらヘタクソだと思ったけど、幸い向こうは気づかなかったらしい。
「―――フン、ナラバ、トットトウセロ!!!」
やはり一瞬悲しげな眼をしながら、次の瞬間には怒りを眼にたたえて叫ぶ。
相も変わらず気持ちが一定しない。洗脳効果が来ちゃってるかな…。
情緒不安定な港湾棲姫さんを置いて、俺はその場を艦娘とともに後にすることにした。
―――ただ、もーひとつ、この場でやっとこう。
俺は移動する直前、
「…え、とな、1つ聞きたいんだが…。この中で、誰か、大破しかかってる、もしくはしちゃってて轟沈寸前、みたいな奴いない?」
くるりと振り返ると、しとろもどろになりながらも1つ、質問をした。
まずは艦娘の入渠が最優先だ。敵なんてどーでもいーからまずはこっち。
ただ、誰も手を挙げる気配がない。ケガは無かったみたいだな。
「何だよ、いないのか?んじゃ、帰るぞー」
そのまま帰ろうとしたとき、
「………ぁ、ハイ…」
手を挙げる子がひとり。
俺の目にはっきりと視認出来た。
おおう、いたじゃん。いるんなら先に言ってくれい。思わず帰ろうとしちゃったじゃないか。
「―――わかった、すぐ行く」
何故か浴びせられる後ろからの非難の目線を振り切って、俺はその子のところへ向かった。
そして到着した瞬間、俺は、何かを言う前にまず――――――硬直する。
その後、体が熱を思い出したかのように、頬を紅潮させ、全力で視線を逸らす。
いやだってさあ。
その艦娘の服は、至る所が破けて、裂けて、壊れており、申し訳程度に大事な部分を隠している程度。正直言って、超
しかもその服を着ているのが美少女だと来た。
これで平静心を保つほうが無理だろっ!!!
俺は頬を赤くし、あらぬ方角を向きながらも、なんとか話しかけた。
「あー…。え、と、ま、まず、名前を聞こうか」
キョドってて普通にキモい話し方になってしまった…。どこのコミュ障だよ…。
あうふ、大丈夫かなぁ…。
「ぁ―――せ、戦艦、山城です…」
「山城な、分かった」
それをサラリとスルーしてくれた天使ちゃんが1人。ありがとう、本当にありがとう…。
顔が真っ赤なのはもうこの際いいや。恥ずかしいんだろ服装が。んじゃ、お仕事にかかりますかね。
俺は努めて山城を視界に入れないようにしながら、山城に近寄る。
「そんじゃ、ちょいと失礼」
「え…?………ぁ、うひゃぁぁぁあぁぁっ!?」
そこで奇声上げないでくれよっ!
…け、決して変な方角に行ってしまったわけではないですよ。
ただちょっと、歩けなさそうだから、世に言う「お姫様抱っこ」を敢行しただけですから!!そこんとこ勘違いしないで下さいねっ!!
「―――ぁ、あ、あの、こ、これは…?」
…そこで上目遣いしないでくれ、破壊力がヤバい。
「―――ん、ちょっと、な。歩くの辛そうだから、支えてあげようと思って。迷惑だったか?」
ちょっと照れくさいが、迷惑かどうかは聞かなきゃ。迷惑だったらこの近くにいる別の子に運んでもらうが…。
「い、いえっ…!!そんな、迷惑だなんて、とんでもない…」
「そっか、なら良かった」
よかった、迷惑ではなかったらしい。迷惑だったら思わず泣き崩れてるとこだったぜ。
その安堵の意味も含めて、にこっと笑い返したら、
「―――っ!!………ふぁう………」
あれ?なんか顔背けちゃった。…嫌われたのかな…。
ちょっと落ち込んじゃう俺。
…ええい、もういいや!早く帰ろう!そして10時まで寝るんだ!
この際嫌われたのはもういいや!俺は眠い!!
強引に話を斬り、俺は山城ちゃんを持ったまま、ほかの艦娘に帰りを促そうとしたら、
「「「「「………………………」」」」」
無言の
俺はまたも硬直してしまう。
―――え、何これ?
俺の皮膚が、ひしひしと、静かな怒りを感じる。
―――お、俺にどうしろと。
また新たな難関にぶつかってしまった俺は、前よりもさらに思考を重ねる。
前よりも1.5倍のスピードで、頭を回転させながら。
何か怒られる要素、何か怒られる要素………はっ!?
まさか俺が山城ちゃんとばかり話してたから、疎外感みたいなのを感じちゃったのだろうか?
そうだ、きっとそうだ!!
…そうだと信じたい…。
「―――その、なんかスマン…」
「「「「「……………………」」」」」
あれ?謝ったけど許してもらえなかった…。
と、とりあえず、早く帰ろう…。針のムシロだし…ここは戦略的撤退だな…。
「…わ、分かった。とりあえず帰ろう、な?せっかく退いてくれた深海棲艦に悪いし、な?」
「「「「「…………………はぁ」」」」」
なんだこの「こいつ分かってねぇな」みたいな感じのため息。
一転俺が針のむしろ状態だよ…。ごめんなさぁい…。
「まあ、積もる話はあとでしましょうか。まずは帰ることが先決ですね」
「………そうだ、よーし、帰ろう。あー、えっと、名前は…?」
「加賀です。以後、お見知りおきを」
唯一俺の味方をしてくれた艦娘は、加賀さんというらしい。…覚えておこう。
ちなみに後ろでは、出遅れた艦娘たちが「「「しまった!」」」という表情をしていたが、彼には知る由もない。
俺は気だるげに背を向ける。
…もういいや、とりあえず帰ろう。
俺は
―――あー、ちなみにこれも、
ちなみに、左手の痒みは知らぬ間に消えていた。
★
なんとか帰還した俺氏16歳男は、
そして、
「黒岩司令かぁああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあん!!!!」
叫びながら入室した。耳がキンキンする。
ああ、壊れちゃった俺氏。
しかし今の俺はそんなことにも気が回らず、ただ一言。
「俺の部屋どこよぉおおおぉぉおぉぉぉおおぉぉぉぉぉおぉぉぉおおぉぉぉおぉぉ!!!」
早く寝たい!30分でここまで疲れたの初めてだから、早く部屋で寝たいっ!
その気持ち1つで叫んでいた。
司令官は俺の剣幕に(状態に)たじろぎながらも、部屋の場所を教えてくれた。
「だ、第3棟の216号室!カギはこれだぞ!」
「あぁりがとうございまぁぁぁぁあぁぁあぁぁす!!!」
またも大感謝祭を勝手に執り行うと、机に置かれたカギを掻っ攫ってそのまま風のように出て行った。
その後を静寂が駆け抜ける。
「―――場所、分かるのかな…?」
しかも、敵の報告してないし…。
★
「迷っちまったぜっ!」
司令官の予想は的中、後先考えずに飛び出していった俺は、見事なまでに迷子中。
いや、今更冷静になってみたら、第3棟ってどれやねん。
さっき飛び出したのが確か第1棟だったんだよ。柱に書いてあった。
あ、柱に書いてあるんだな、納得納得。って思って、そのまま3の数字を探しに行ったわけよ。
で、今目の前にあるのが第4棟、さっき素通りしたのが第2棟…。
3はどこじゃいっ!?
あー、完全に道が分からん。
これで
帰れないなう。
つまり、絶賛大迷子中ってわけ。
うーん、この近くに第3棟があるはずなんだがなぁ…。
近くを誰も通りかからんし…道を聞きようが無いよなぁ…。
俺がうーんうーんあんのうーんと唸っていると、
「………………(ひょこっ)」
視界にチラッと赤いスカートが映った。
え?誰か来た?マジ?
そいつに第3棟ってどこか教えてもらおうぞ。
「あのー、すいません」
「…っ!はい、なんでしょう…」
お、反応アリ。そんじゃ、聞いてみるか。
「第3棟って、どこですかね?」
「ああ、それなら、あちらに見える建物になります」
そういって彼女が指差したのは、第1棟の奥。
つまり…、俺が進んできた方角と、真逆の方角。
それが指し示すは、俺の、間違い。
(ただの逆走ぢゃん!)
驚きのあまり泣き崩れたい。ちょっと泣きたい。
ウソでしょう…俺の進む方向がただ逆だっただけなんて…。
驚愕しすぎて膝をついてしまった俺を、彼女も哀れに思ってしまったのか、
「あの…お送りしましょうか?榛名でよろしいのなら、お手伝いいたしますが…」
と、道案内を買って出てくれた。
…いやぁ、優しい子やねぇ(ジジ臭くなった俺)。
「ああ、ありがとう…そうしてもらえると、ありがたいかな…」
「わかりました。では、ついてきてください」
榛名さん、というらしい艦娘が、俺を案内してくれることになった。
よかった、ラッキーだぜ!
★
「―――ほう、そうきたか、神城渓吾」
彼の予想通り、港湾棲姫を操っていた
「些細な罠だ…小賢しい真似を」
そしてそこに仕掛ける、罠の内容も看破していた。
何かしらの裏が必ずある。
そして敵は、その狙いを見切ってしまった。
「―――ならば、それを利用しつくして、彼の罠を超えるとしようか」
―――世界は、
作者「よし、10話からうまく繋げられたぞ!!」
渓吾「良かったなー。こりゃいいや」
作者「元7話は前11043文字というえげつない量だったもので…誠に勝手ながら2分割させていただきました」
渓吾「というか、この後も割りとそんくらいの量のやつばっかしだろ…」
作者「それも分けるから安心しろって」
渓吾「え、マジで。面倒臭いなお前」
作者「今の流れで面倒くさいという単語が出る理由が分からないんだが」
作者「次は珍しく休息編です」
渓吾「やっと休めるのか…」
作者「まあ、神様が渓吾のことをほっとくわけが無いんだけどね」
渓吾「やめろ安直なフラグ立てるんじゃねぇよ!!」
作者「それでは、また12話で!!」
渓吾「頼むから撤回してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」