The 14 Days ~鎮守府合宿での14日間~【再凍結中】   作:M崎

12 / 26
 今回は珍しく日常編です。

 …ただ、全然異常(イレギュラー)な日常なんですが…。

 彼が休めるのは、次の13話になりそうです。

 ごめん、休ませてやれなくて。

 それでは、どうぞ…。


第12話 8月3日の暫しの休憩

 西暦2014年8月3日(日)、午前11時04分。

 

 

 「それにしても、神城さんはどうしてここにいらっしゃるんですか?鎮守府なんて、それ相応の許可がないと入れないんですが…」

 「いや、俺はちゃんと許可貰ってるぞ?」

 「え、どうしてですか?」

 「なんか、合宿?みたいなやつらしくてさ。大元帥自ら俺を指名して放り込んできたんだ」

 「大元帥が!?…もし、そうなら、凄いことなんですが…」

 「いいや?あいつ昨日電話で話したんだけど、すっげぇ軽い口調で『行って来いやコラァ☆』って脅されたんだよ。大元帥もへったくれもありゃしない」

 「…確かに、以前お会いしたときも、そんな感じの人だったような…」

 

 俺、神城渓吾(かみしろけいご)は榛名さん、という艦娘と談笑しながら歩いていた。

 鎮守府第3棟へ向かう道すがら、世間話でもしながらと、会話を始めている。

 

 ただ、俺はちょーっと集中できてないけど。

 いろんなところに目がいっちゃって。直視するのも憚られるというかなんというか…。

 

 いや、だってこの榛名さん、綺麗な灰色の髪に、金色のカチューシャみたいなやつがよく映えてて、超美人さんなんですわ。

 巫女さんみたいな衣装も雰囲気的にばっちしだし。

 

 思わず見惚れちゃった俺氏…。俺の行動は間違ってはいないと思う。

 分かってくれる人は、俺と是非同盟を組もうではないか。

 

 ―――あー、話を戻すとですね。

 

 一応、この榛名さんと一緒に、鎮守府第3棟に向かっているのだが…。

 この人、司令官レベルで話しやすい人で、ついつい話し込んじゃうんだよなぁ…。ううむ、やはり俺は女性に弱いのではないか…?

 まぁいいや、現在(いま)が楽しいんだから、そんなことは全然考えないようにしよう!

 

 俺、超楽しいぜっ!!

 全然面白いぜ!

 うん、全然。

 

 周りから何故か怨嗟の目線が飛んでくるけど、気にしてないから!

 俺は今を楽しむ男だから、そんなの気にしないっ!

 

 

 俺は周りを極力視界に入れないようにしながら、榛名さんに再三話しかけた。

 

 「な、なぁ。榛名さんも、俺と同じ第3棟に向かってるのか?」

 「…はい。榛名も第3棟で合宿をしておりますので…。あと、どうか榛名のことは「さん」をつけずに榛名とお呼びください。敬語を使われるのはあまり好きじゃないもので…」

 

 おう、敬称略で呼んでくださいと。結構ハードル高いけど…。

 

 「―――わかった。榛名も合宿してるんだな。同室してる人とかいんのか?」

 

 まあ、このくらいは、この後待っていることに比べたら全然大丈夫だろう。

 そう判断した俺は、「さん」を取り去り、言いそびれた言葉を継げる。

 そしてそこに、さらっと質問をかぶせる。…俺は策士ではないんだが。

 

 「はい、榛名は金剛お姉さま、比叡お姉さま、霧島の3人と同じ部屋で合宿しております」

 「へぇ、4人姉妹なのか」

 

 それを聞き、俺は俄然身を乗り出す。

 他の3人はどんな感じなのかちょっと知りたい。

 

 「はい…お姉さまたちや霧島は、榛名なんか及ばないほどにすごい方々なので…」

 

 榛名は俺の前のめりな姿勢に、若干頬を赤らめながらも、言葉を返してきた。

 軽く俯きながら、まるで悔いるように。

 

 俺はそれになんともいえない違和感を感じ取り、双眸を鋭くする。

 

 およ?ちょっと自虐入ってきた?

 それは一大事だ。I don’t like自虐。

 だから全力で阻止させていただき申す。

 

 「いや、そこまで自虐的にならなくてもいいだろ。榛名は十分可愛いと思うし、その榛名っつー名前も、俺は割りと好きだぜ?」

 

 目を笑みの形に変えて、正直ナンパ男と思われても差し支えないセリフを、俺は吐いた。

 ―――は?毒牙にかけた?なんちゅう酷いことを…。俺はそれっぽいセリフをはいただけだ。俺のことを好きになるとか、どんだけ自意識過剰だよ。

 

 でもこれ、意外と俺の本心だったりする。

 だってこの子、素人目に見ても十分美少女と呼べるのに、それをおくびにも出さないどころかいっそ卑下してるんだもん。

 なんだよ勿体ない、もう少し自信もてや、という意味合いを込めていってみたのだが…。

 

 「ぅえええぇぇっ!!?そ、そんなことは、別に…」

 

 ―――あまり褒められるという類に慣れていないらしい。顔を真っ赤にして恥らっていた。

 まあ見てて飽きないから別にいいんだけど。

 

 …後ろから漂う怨嗟の念が強くなった気がするが…き、キノセイだよな?

 というか誰だ怨みをかましてくる奴!俺に何の恨みが!?

 ―――敵意や殺意は見当たらないが、警戒は怠らないでおこう。

 

 「―――ど、どうしたんですか…?そんなに怖い顔をして…」

 

 おっと、榛名を怖がらせてしまったらしい。マジごめん。

 俺は警戒を解いて笑顔を作った。

 

 「いいや、なんでもない。猫でもいたみたいだ。それで、そのお姉さまたちって…」

 

 そのお姉さまとやらのお話を聞こうとしたら、いつの間にか第3棟に着いていたらしい。

 門の前で、榛名が立ち止まってしまった。

 ううむ、時間が経つのは早いなぁ。

 

 「―――すまん、第3棟に着いちゃったみたいだ。この話はまた今度な。今日はありがとう」

 「いえ、榛名も楽しかったので。こちらこそありがとうございました」

 

 榛名はこんな俺との会話も楽しんでくれたらしい。よかった。

 俺は安堵する。

 

 「そうか。…そんじゃな、俺は先に行く」

 

 そして、ぱっと手を挙げて笑顔で手を振ると、

 

 「はい、それでは、失礼致します」

 

 榛名は優雅に一礼して、くるりと(きびす)を返して歩き去った。

 その姿が完全に見えなくなると、

 

 「…おし、俺も切り替えよう」

 

 何故か少し聞こえてきた「はわわわわわ…我ながらよくポーカーフェイスが保てましたね…」という声を完全にスルーして、俺は今までの軽いモードから重いモードに切り替える。

 そして、

 

 

 「―――おーい、俺についてきてる奴は何人だ?」

 

 

 大きな声で知らない人(ストーカー)に呼びかけた。

 

 ―――さっきからずっと、俺を追う気配が、いくつかついてきている。

 それは、恨みをかましてきている奴だけではない。

 俺を観察しながら、間合いを保ってゆっくりとつけてくる気配もあるのだ。

 

 追跡は、気づかれたらそこでおしまい。

 あとは逃げるか戦うかの2択になってしまう。

 だから追跡者は、こうなったら表に出てくる選択肢しかない。

 ゆえに出てくるだろうと読んでのことだ。

 

 そして案の定、

 

 

 「―――あっちゃー、バレちゃいましたかー」

 

 

 どう見てもジャーナリストな人が出てきた。

 

 メモを片手に、首からカメラをぶら下げ、好奇心の宿る瞳と、なんかいろいろ入ってそうなカバンを持った、榛名に勝るとも劣らない美少女。

 薄くピンクがかかった髪を、後ろにポニーテールにしてまとめている。

 正直俺のドストライクな髪型だ。

 

 だが、もう1度言うが、ジャーナリストにしか見えない。

 鎮守府合宿のことは、マスコミには報道していないのだが何故。

 しかも怨み消えてねぇし…。

 

 「あー…俺に何の用でしょうかねぇ?」

 

 女子を無下には出来ないので、とりあえず話しかける。

 ―――うん、怨みが強くなるのはなんでだ。俺話しかけただけジャン。

 しかし目の前のジャーナリスト(艦娘)はそれには気づかなかったらしく、

 

 「あ、どうもどうも。私、青葉ですっ。…ではでは、一言お願いします」

 「あー、はい、えーとですね………オイコラ」

 

 青葉、と自己紹介した艦娘は、いきなりインタビューのように話を進めてきた。

 

 おおう、危うく乗っちまうところだったじゃねぇか。マスコミマジ怖い。

 青葉さんもえへへ、とおどけたような笑顔になっている。

 これはしてやられた。

 

 「おい、あんまからかうなよ…。俺、今現在いろいろありすぎて疲れてるんだよ…」

 「あははっ、きょーしゅくです。でも、青葉は取材に全力を費やしていますので。マスコミはちょっとやそっとのことではへこたれないのですっ!」

 「お前、いい感じにジャーナリズム精神が身についてるな…」

 

 俺は青葉さんの返しに、思わず敬称もつけずにジト目で言い放つ。

 

 快活でいい子なんだが、ちょっと、いやかなーり、マスコミ色に染まってるのが、玉に瑕というかなんと言うか…。

 まぁ、いいや。もう半分諦めた。

 

 「―――んで?俺にストーカーしてまで何を聞きたいんだ?生憎話せることなんてそんなにないんだが」

 

 というか、明日以降にしてくれない?いろいろと理由があって…。

 

 「いえいえ、そんなにお暇は取らせませんよ?ただ、青葉が聞きたいのは1つ」

 

 1つ…?どうせ世界(エレメント)についてだろう?

 話す気はぜんぜんないんだがなぁ。

 

 「―――その1つって、なんだ?」

 

 聞いてみる分には何も影響はなさそうなので、ちょっと質問内容を聞いてみる。

 

 「とっても簡単なことです。このリストに載っている、1278の質問に答えていただくだけです」

 「却下だよオイッ!!!」

 

 影響ありありだった。

 なんだ1278って!?1人何個質問書いたらそんなに質問できるんだっ!!?

 

 そしてコイツ(青葉)はそれをこのリストにまとめたのか!?1278の質問をこれだけに?

 文字がびっしりありすぎて海苔みたいになってんぞ!?空白が見当たらないんだが。

 

 というか、俺、こんなに人気あったっけ?

 

 「なんでそんな量の質問をさせようとしたんだよっ」

 「えー、今日全艦娘181艦にアンケートをとったんです。そしたらこぉんだけ集まっちゃって」

 「今日!?これ、俺がここに来てから今までの35分足らずで、本当にこれだけやったのか!?」

 

 もし本当なら、恐るべし青葉さんなのだが、流石にそれはなかったらしく、

 

 「もちろんウソですよ?いくら私がマスコミでも、これだけ膨大な情報をこんな短い時間でまとめるのは無理ですね。遠征に行っている艦娘たちもいますし。予めとっておいたんですよ、このアンケート♪」

 「―――ああ、そう…」

 

 予めって、お前なぁ…。

 戦慄せざるを得ないマスコミ魂だ。全国のTVはこの人を見習え。

 

 まぁでも、げんなりはさせられるが面白い人だ。

 俺はこういう人は嫌いではない。

 

 だから、少し心が弱くなってしまったらしく、

 

 「…と、いうことで、神城さん。青葉の取材、受けてくれますよね?」

 

 という上目遣いの下心満載の問いを、

 

 「―――わかった、取材は受けるよ」

 

 結局、お人よしな俺は、引き受けてしまった。

 

 その途端、俄然元気になる青葉さん。むふーっと鼻息を荒くし、いそいそと動き始める。

 

 「本当ですかっ!よーし、そうと決まれば早速セッティングを…」

 「―――ただ、2つほど条件がある」

 

 ただ、俺がこう呟くと、それもぴたりと止まった。

 

 「―――なんでしょう?条件次第なら引き受けますけど」

 

 よかった、聞く気はあるらしい。俺は誰にも見られないように、こっそりと安堵のため息をつく。

 そして青葉さんの方に向き直ると、毅然として言い放った。

 

 「んじゃ2つ、言わしてくれ。1つは、取材日は明日以降でお願いできないか?少なくとも今は、変に(エレメント)使っちゃったから、疲れちゃって。早く寝たい気持ちでいっぱいなんだ」

 「分かりました。青葉としても準備期間が与えられるのは嬉しいですしね」

 

 快く承諾してくれた青葉さん。ありがたや、ありがたや。

 …最近へりくだりすぎな気がする。まあいいけどな。直す気もないし。

 

 それじゃぁ、2つ目の条件を言おう。

 俺が、ここにいたという記録を残すために。

 

 「んで2つ目の条件は―――」

 

 そのあと言った条件も、青葉さんは快く了承してくれた。

 

 「―――分かりました。こちらで用意しておきます」

 「助かる」

 

 よかった、条件が通ったぜ。

 

 「それにしても、神城さんって家族想いなんですね」

 「…まーな。俺はあんな力(エレメント)持っちゃったわけだし、両親や妹は、俺がしっかり守っていかなきゃ、ダメだと思ってな」

 

 ぱっと言ったが、これは俺のポリシー。

 

 守るべきと俺が判断したものは、どんな手段を用いてでも守り抜く。

 俺がいつも、心に秘めている思い。

 

 今まで、自分はなまじ強力な能力を持っているがゆえに、基本的に大抵の敵は瞬殺で倒してきた。

 そのときは、世の中が面白くなかったんだよな。退屈の一言だったんだ。

 

 敵もいないし、味方はよそよそしくなるし。

 もういっそいなくなってやろうかとも本気で思った。

 

 でも、()()()()以来、俺は変わった。

 あの地獄のような2週間を経験したあとでは、価値観が大幅に変わった。

 

 ()()()目覚めた世界(エレメント)という新たな力を、人の役に立つ、力に変えたいと本気で願った。

 

 力が有り余ってしまった俺が選んだ道。

 間違ってはいないと、信じている。

 

 「…そうなんですか」

 「ま、今の俺は鎮守府も守らなきゃいけないしな。お前もしっかり守ってやるよ」

 

 その道を脱線しないために、俺が今しなきゃいけないのは、鎮守府と艦娘の守護。

 それを結構ストレートに、笑顔で伝えたら、青葉さんに何故か真っ赤な顔でそっぽを向かれた。俺は山城ちゃんに引き続き、ここでも嫌われちゃったらしい…。何故だ…。

 その顔のまんま、青葉さんは俺に話しかける。

 

 「―――青葉は『お前』じゃなくて『青葉』です。青葉のことは、これから先青葉って呼んで下さい」

 「へいへい、りょーかい、青葉」

 

 それきり会話が続かなくなる。俺としてはそろそろ眠さがヤバくなってきた(ピークになってきた)から、ここら辺が潮時かな。

 

 「んじゃ、それで頼むわ。じゃーな、青葉」

 「…は、はい!それでは、また後日、お伺いいたします~」

 

 榛名の時と同じように、すちゃっと片手を挙げて挨拶をすると、青葉さんは忙しいのかそそくさといなくなってしまった。

 うーむ?俺はまたなんかしたんだろうか。仕事の邪魔しちゃったかな?

 

 まぁ、考えても仕方ないか。

 

 俺は強引に思考をぶった切ると、自分の部屋に向かうために、第3棟に向かった。

 殺気は未だ引きずってるが…。というか、よりいっそう強くなってない?

 

 

 

 




 作者「というわけで12話でしたー」
 渓吾「最後が不穏すぎるぞこれ…」
 作者「いいじゃないのー」
 渓吾「その手には乗らん」
 作者「………(チッ)」
 渓吾「よーし、表出ろや♪」
 作者「むーりー」
 渓吾「………………」
 作者「無表情で迅雷剣(ヴァナルガンド)出しても無駄だよ」
 渓吾「くそ…」

 作者「とまぁ、13話ももうちょっと休憩することになりそうです」
 渓吾「こんな気の抜けない休憩、もうしたくないけどな」
 作者「仕方ないよ。それが私の描く、神城渓吾という人間なんだから」
 渓吾「はは…(スラッ)」
 作者「だから無表情で迅氷剣(テュルフィング)出しても無駄だよって」

 作者「次は何とか投稿できたらいいなと思っています!(サイクル超不安定ですが…)」
 渓吾「あっ、ごまかすんじゃねぇ!」
 作者「それではまた」
 渓吾「逃げるなぁ!!」
 作者「感想等もどしどし待っております~。ではまた~」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。