The 14 Days ~鎮守府合宿での14日間~【再凍結中】 作:M崎
今回は8月3日編のラスト、元13話を分割してみました。
それでも長いって、元の話は何文字あったんだろう…。
それでは、どうぞ!!
西暦2014年、8月3日。
この日は天下往来万歳祝日の日曜日。日曜日と可愛いは正義だ。異論は認めない。
時間はただいま22時47分、世間一般のお遊びの時間。
そのタイミングにぶつかった俺、神城渓吾は。
(――――ああ、神は死んだ)
なんか軽く鬱が入ってました。
どんよりとした空気を肩に纏っていました。
顔色が悪く見えるのは、何も夜のせいではないでしょうねっ!
では何故、俺がここまで顔色を悪くしているのか。
答えは、今現在の状況にある。
うう、聞いてねぇよ…。
何で俺、こんな夏休み中盤に変なイベント入るんだよ…。
「夜戦」時点で十分辛かったのに…。
なんで、なんで俺は。
「私の夜戦を邪魔しないでよっ!!」
「悪かったって!ホントごめんって!」
―――美少女と殴り合いしてるんだよ…。
普通に生きてたらありえないだろこれ…。←これが答え。
まあ、俺からは別に殴ってないし、目の前の美少女から一方的に殴られているだけなんだがな。
…ワタシ、ドMジャアリマセーン。いやマジですよ?
その俺をタコ殴りにしかかってる美少女は、口からふしゅーと息を吐きながら、俺を睨みつける。
「なんで邪魔するの?せっかくいいところだったのに!」
拳が左わき腹に命中する。
「ぐはっ!…あ、あれは…」
「あれは何よ!」
拳が右頬を掠める。
「うおっ………ただの嫌がらせのつもりだったんだけど…」
「…何ですと?」
一言、俺が申し訳なさそうに告げると、美少女はぴくっと反応し、そして急に静かになった。
流石に俺でもわかる。
…怒らせたらしい。あ、怒りのオーラが彼女の背後から…。
「夜戦を阻害するやつは成敗してくれるーっ!」
「ちょっ、危ないって!俺死ぬからそれ!」
お怒りモードに入ってしまった彼女は、あろうことか俺に酸素魚雷をぶっ放してきた。
かろうじて避けてるけども!ちょっと危ないっ。
俺は美少女に何とか反論を試みる。
「お前がそんなに夜戦に情熱かけてるとは思わなかったんだっ!」
「許さない…絶対に許さない…」
「お前そろそろヤバいぞ、それ!」
「天誅ぅーーーーっ!!!」
「どぶおうっ!?」
―――反論することも許されずに横向きにぶん殴られた。砲塔で。
我ながら良く生きていたなと思う一撃だった。
とりあえず、
「…痛っっってーなおいっ!!」
「当然の報いだよっ!!私がすべての情熱をかけてる夜戦に対して、そんな酷いこと言っちゃダメ!」
「情熱を費やす方向が間違ってるだろっ」
「夜戦が間違ってるというの!?」
「誰もそうとは言ってないだろうが!」
俺が何か言葉を発せば、彼女も負けじと感情論理を並べ立ててくる。
ああ言えばこう言う。まさに水掛け論。話が全く進まない。
…もういいや、なんか会話を続けるのが面倒臭くなってきた。
俺は一旦反抗を止め、大して興味もなさそうな口ぶりで、投げやりに言う。
「…あーあ、もういいや。なんか、こんな会話面倒だ。キリがない」
「そうね。私も、もうこの会話の流れに飽きちゃった」
…時が止まる。
見事に思考がシンクロした。
そう気づいた俺
「「何でアンタまで同じこと言うんだよ」」
今度は言葉までかぶった。一言一句同じ言葉を、同時に吐いた。
「「……………………(ぷいっ)」」
さらに行動まで同じだった。同じように互いから顔を背ける。
何か以心伝心でもしているかのような、見事なモロかぶりだった。
奇跡のシンクロを見せる俺とその美少女に、周りにいた
そしてくすくすと笑う声の間に、こんな声も聞こえてくる。
「―――ねえ、あの人って、今日の会議で壁壊してた、神城ってヤツじゃない?」
「そうかぁ?………ま、確かに、司令官が海の上歩いてんの見たことねぇなあ」
「…ん……確かに、
「というか、初雪ちゃん、あの会合にいたの?私はそっちの方がびっくりなんだけど…」
「私も、びっくりしましたけど…あれは、本当に、神城さんなのでしょうか…?」
全員が全員、俺の正体を不審がる声だったな。…若干1名、なんかピントがずれてたけど…。
ま、俺も自己紹介くらいはしたほうがいいのかもしれん。
そうしないと、最初に言ってた「艦娘が異性に慣れる」という条件が達成されないからな。俺にだって鎮守府の条件に報いようという気持ちはある。
…かといって、あのジジイの思惑に乗っかる気は全然ないけどな。HAHAHA。
さぁて、どうしたらいいもんか。
頭の回転がうなりをあげ始める。
俺は思案に暮れる回数が最近異様に多くなってきたな…はは、これも面倒ごとのおかげか?
本日何度目かも分からない思考の海に、俺が引きずり込まれたそのとき。
「―――あの、神城、渓吾さんですよね?」
…まさにその海の渦中にいた艦娘が、俺を海から引っ張り挙げてくれた!
―――はい、比喩です。俺が沈んだわけではありません。
つーか、俺がここで沈んじゃったらマジヤバいでしょ。4話から先の話はなんの話だっつうの!俺は沈むわけにはいかないのだ、一応主人こ………ゲフンゲフン。
俺は、艦娘に話しかけられたことに、純粋に感動していた。
おお、こんな変な俺にもついに話しかけてくれる人が!
思えば今までって、ほとんどが俺『から』話しかけて会話してたんだよなぁ。
それが
俺にも、多少の人望が出てきたのか…?
くーっ、身にしみるぜーっ!
俺が歓喜に身悶えていると、話しかけてきた艦娘は、顔を引きつらせたまま固まっていた。
「―――あの…えっと…」
「おお、スマン…。どうしたんだ?」
俺は何とか、その艦娘の呼びかけに答える。
「私たち、
「…いや、別に。もう、仕事も終わったし、俺はそろそろ深海棲艦のほうに向かうよ」
「深海棲艦の方に?…っははー、こりゃすげぇや。お疲れ様、だぜ」
「心配してくれてありがとな。ま、深海棲艦にも話せる奴はいるから、いいんだけどさ」
「―――し、深海棲艦と対話するなんて…アンタ、いったい何者よ?」
境遇話したら驚かれた。…同情はしてくれなかったけど…。
その最後、1人の女の子が、俺に質問をしてきた。まー答えられない質問でもなかったので、俺が答えようとしたそのときである。
最後の子の後ろ。そこで、おっかなびっくりといった感じで、こわごわとこちらをのぞき見ている、長い黒髪と眠そうな目を持った女の子が、
「………ね、ねぇ…あなた…だ、誰、なの……?お、…教え…て?」
殺人的うるうる上目遣いと、震え気味で可愛い言葉遣いで、俺に向かって恐る恐る質問してきた。
―――――――――。
―――――。
…すいません、ちょっと破壊力抜群すぎて回想に入ります。
いやこれマジのやつです。なんなら読み飛ばしていただいても構いませんよ?
というか読み飛ばしてください。マジお願いします…。
それでは、入ります―――。
(~頭の中での
オヲ俺よ、清らかな俺の心よ、静かなる俺の体よ。
正直に、誠実に、己の本能に
お前たちはか弱い女子が困っていたら、それを冷酷に見捨てるような奴だったのか?
「可愛いは正義」などと口では言っておきながら、目の前で困っているこんなにも「
俺は、美少女の頼みをにべもなく斬り捨てるような奴だったのかッ!?
答えは―――――断じて
美少女を見殺しにするなど、俺の中では
そんなことをする胆力を、俺は持ち合わせていないだろう?
俺は男なんだろ?男なら、女子の頼みくらいなんだって聞くんだろうが!
都合のいい男だと誤解されてもいい、利用され、パシられたりも仕方ない。
女とは元来怖いものだ、内面なぞ推し量る必要性もない。
ただ、バッシング覚悟で、俺は言うぞ。
どれだけ俺が、ずさんに扱われても。
どれだけ俺が、心をズタズタにされても。
ポーカーフェイスくらいは、日常でしっかり保っとけよ、俺!!
美少女の裏に悪意を感じたからといって、聞かないという選択肢はないだろうが!!
表面上くらいは、優男でないとなぁ?
くだらない考え方と斬り捨てていただいて結構、俺は別に気にしない。
反論は別に自由だ。生き方を他人の何気ない一言ですぐ修正するほど、俺は
しかし。
青春とは、嘘と欺瞞と悪意に満ちている、と誰かが言った。
そりゃそうだ。この世に信実なんてものはない。
所詮、ただの一発でいともたやすく崩壊するもの。それが、人間関係だ。
人は、無意識に人を騙し、人に騙される。
ならば、それに対抗するにはどうすればいいのか。
答えは簡単。
―――騙されたら騙し返せばいいだけのことだ。
それで信頼を失ったとしても、俺は別に全然構わない。
胆力がなかろうと、勇気がなかろうと、別にいい。
まずは行動しない限り、人を騙すための「方程式」は完成しないのだから。
…ああ、俺ほんと、女子に都合のいい男だな、はは…。
甘っちょろい考え方で、ごめんな、俺の心…。
―――はい、以上、回想しゅ~りょ~。
…自分にまた1つ、
―――あれ?今の61文って、冷静に考えたら別にいらなくね!?
また作者の文字稼ぎの術か!?…今度あったらしばくぞあいつ。
あと俺本当にロリコンじゃないです。俺お姉さん属性のほうが好みです。
世のロリコンどもはマジで変態だからな…だって学校の
俺マジでロリコンじゃないですからあっ!!
ちょっと見惚れちゃっただけなんですよ!興奮するとかんなバカなことしてないですって!
信じてくださいっ!!!
…
何とか思考の海から戻ってきた俺は、美少女の頼みに答えるべく、そちらに向き直る。
「―――俺は
「……んーん、……違う…そういう、ことを、聞いてるんじゃ、ない……け、渓吾」
「およ?じゃー、何なんだ?」
自己紹介かな?と思ったが、どうやらお気に召さなかったらしい。
さりげなく名前を呼ばれた気がするが、とりあえず意図するところを尋ねる。
「……渓吾が…深海、棲艦を、手懐けれる……ようには、見えない」
「ほうほう」
「…ん……それに、一部の、艦娘の、支持……一瞬で、とった……不自然」
「ふむふむ」
「…間宮、さん、が…珍しく……不機嫌、そう、だった…」
「あ゛」
完全に忘れてた…明日行っとこう…。
「…これらの、ことを………総合、して、
「どうぞ?」
「…神城、渓吾―――あなたは、いったい、何者…?」
びしっと指をさされた。
後ろで「初雪ちゃんがあんなに喋ってる…珍しい」と言う声が聞かれたが、この際放っておく。
…それにしても、何者、ねぇ。何者も何も、
「―――俺、一応人間なんだけどなぁ」
「ウソはついていませんよね?」
「こんなところで嘘をついて、俺に得はないからな」
一応嘘じゃないことを伝えてみたが、やはり信用されていないようだ。皆一様に怪訝な顔をしている。
…話さなきゃならんようだな。結構ハズいけど。
「はぁ…わかった、話すよ」
「…ん、……ありが、と…」
俺は了承の意を伝えると、ゆっくりと口を開いた。
「まずはじめに、1つ聞こうか。―――お前ら『艦娘』にとって、深海棲艦、とは何だ?」
「…
利発そうな先頭の子が、俺の最初の問いに答える。
回答は…予想通りか。
「確かに、そうだな。お前らにとっては、そうかもしれない」
言うと、俺は今日の思い出を、唇に噛みしめる。
―――艦娘が、たくさんの深海棲艦と、何のためらいもなく、
さも、
そして、艦娘側も、それを日常として取り入れている風潮を。
年端も行かぬ美少女たちが、美少女を相手取り、互いに殺し、倒し、消し、溶かす。
俺には、それの意図が理解できないんだ。
だから、俺はそれを、間違いだと、弾劾しなければならない。
たった、一言で。
「―――でも、深海棲艦にだって、『意思』はあるだろ?」
「「「―――――――ッッッ!!!」」」
まるでそれが盲点だったかのように、大きく驚く、俺の目の前の女の子たち。
それには、前にいた5人だけではなく、俺と殴り合いをしていた子も含まれていた。
…あと、2押しか3押しくらいかな。
もうちょい、言ってみるとするか。艦娘には悪いけど。
「―――意思が明確にあるのなら、それは
…なんかしんみりした空気が漂ってきましたよ…?…まぁ、いいけどさ。
「そして、深海棲艦は、上位のものだと、言葉も喋れるんだろ?ならこれで決まりだ。俺が護るべき対象に、深海棲艦も含まれるようになる。何故か?…逆転の発想で考えてみろよ」
俺は言葉をここで切り、深呼吸をしてから、静かに告げる。
今ここにはいない、黒岩司令官にも伝えるために。
「―――そもそも、深海棲艦を倒してもいいんだったら、俺は、おんなじような感じの
『「「「…………………」」」』
通信機器も沈黙している。
これ、結構効いたかな?
相当なボディーブローをカマしたんだが。
…これ、紛れもない事実なんだけど、皆案外気づかないんだよなー。
俺も最初友達の艦これヲタクに話し聞いたときは、深海棲艦=打ち倒すべきものって思ってたもん。
でも、今日、この眼、この耳で深海棲艦というものを体感したとき、
そのイメージはいとも簡単に、崩れ去ったんだ。
あれほどまでに、人間味に溢れた敵がいてたまるか。
戦場の兵士たちよりも、ある意味人間らしかったぞ、彼女たちは。
だから、俺は、万感を込めて、訴える。
もう、これ以上殺し合いをするな、と。
言外に。
「深海棲艦だって、好きで
「―――それが今日わかったから、俺は深海棲艦を助けに行く。戦を望む世は、この世にはないから。絶対に、そんな世の中はおかしい、狂った世の中になるから」
だから、
「―――俺は、護るべきだと思うものはすべて護る。最後に頼れるのは、自分自身の直感だけなんだよな、はは」
その上で最初の質問に答えるぞ?
「俺は、人間だ。―――どうしようもなく高い理想を持って、勝手に挫折しかかってる、人間だ」
「俺は、人間だ。ただ、考えがちょっと他と合わない、哀れで、何も出来ない、人間だ」
言い切った。
俺のポリシーを、出会って3分足らずの女の子たちに。
…互いにびっくりしてるな、こりゃ。
俺は、まさかこんな話を真面目に聞いてもらえるとは思ってなかった。
彼女たちは、俺のする話がここまで突拍子もないとは思ってなかった…だろう。
でも、十分伝わったはずだ。ならば、俺はもうすることはない。
俺は彼女たちの顔をもう一度見回すと、くるりと背を向けた。
港湾棲姫さんを、深海棲艦を、助けるために―――。
★
あー…やられた。
何あのいい男。道理で暁ちゃんたちが惚れるわけだ。
はは、こりゃ本格的に駄目かもな、あたし。
スーパー深雪さまが、崩れちまうじゃんかよぉ…。
渓吾「俺説教垂れてるだけじゃん!!」
作者「単純なもんだよねぇ」
渓吾「俺が単純だとでも言いたいのか、ああん?」
作者「むしろそれ以外に何があんだよ、ああん?」
作者&渓吾『(両者にらみ合い)』
作者「そんじゃ、次回予告するぞ、ああん?」
渓吾「おうおう、バッチ来いってもんよ!!」
作者「オーライ、次はお前が…」
渓吾「………え、マジで?」
作者「…ドンマイ」
渓吾「いやぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!」
作者「それでは、また21話で!!」