The 14 Days ~鎮守府合宿での14日間~【再凍結中】 作:M崎
駄文率が今回、だいぶ高いと思われます。
注意してお読みください。
それでは、久しぶりの25話、どうぞ!
あまり期待しないで読んでください。
西暦2014年、8月4日。
時間は午前6時55分。
この時間、ある1本の放送が、朝の空気を緊迫させていた。
『すごく残念なお知らせだ』
鎮守府全体に、司令官・
ゆっくりと、但しはっきりと。
そして、どこか沈んでいるようにも聞こえるそれを、鎮守府にいる全員が、耳をそばだてて聴いていた。
一言一句、間の呼吸たりとて、聴き逃すまいと。
しかし、彼らは知らない。
この後に流れる一言は、この鎮守府を、精神的に壊す一言だと。
あの、悪夢の一言だと。
午前6時55分47秒、その言葉がついに、
そして、気の向くままに、そこを
『―――
通信はそこで切れる。
―――この一言が、後の大元帥をして「嵐のようだった」と言わしめる
―――ただ1人を除いて、だが。
★
8月4日、午前10時30分。
普段ならば、この
何の変哲もない、月曜日の午前中。
しかし今日に限って、この時間は、
『―――これより、戦没者
厳粛で重苦しい空気が、灼熱の太陽の真下で渦巻いていた(場所は講堂だが)。
理由はもちろん、昨日、8月3日にお亡くなりになられた神城渓吾の、…まぁ端的に言えば葬式である。
未だ遺体は見つかっていないので、本当は行方不明の扱いのはずなのだが、敵の
もちろん、日本海軍始まって以来の惨事で、合宿参加者を死なせた、ということで日本海軍のほぼ全員がここに集結しており、海軍大臣の姿すら見える。
前代未聞、異例中の異例、前例NOTHING。
もちろん、ここにいる大半の一般人は、そのオーラに萎縮して、全く動けなかった。
そんな、神城渓吾の厳かな葬式だが、神城渓吾自体を知らない人もいたため、反応は大きく2つに分かれている。
1つは、真面目に真面目に葬式を受けているグループ。大号泣している皆々様もこちらに分類される。
そしてもう1つは、訳の分からないままここにいるグループ。
今回の葬式では、圧倒的に後者の方が多い。
なので、厳粛な雰囲気とは裏腹に、心の中ではどこか冷めたような感じでこの葬式を見ている者も、少なからずいた。
重巡洋艦・筑摩もその1人である。
彼女は栄えある第8戦隊所属で、姉と共に古くからこの鎮守府に勤める艦娘である。
要は、重鎮というところだ。
そんな彼女は今、ものすごく不機嫌だった。
なぜなら、彼女は、姉である利根の寝顔を見るのを、いつもより30分も短くせざるを得なかったからである。
それは退屈な日常の中で、彼女にとっての半生き甲斐となっていることなのに、たった1度のサイレンによって、至福のときを邪魔されたのだ。だいぶ個人的な理由だが、仕方のないことだろう。
(―――葬式なんて、どうでもいいではないですかー…)
そんなわけで、筑摩はとても、とても不愉快な気分であった。
今ここにいるのは、ただ提督の強制参加によって座らされているから、という理由だけである。
一応、利根が横に座っているのだが、開始15秒弱で睡魔に襲われ、今はうつらうつらと船をこいでいるため、話なんぞ聞いちゃくれない。
まぁ、それで利根の寝顔の不足分を補填できればよいのだが、生憎利根は未だ寝ていない。今が葬式だと分かって、妹に無様な姿は見せたくないのだろう、しっかり起きている。
「―――ぅぅむ、ふぁう…吾輩は、まだ、眠るわけには、いかぬ…ふわぁぁ……」
…あと5分もすると寝そうであるが。
彼女は見かねて、小声で姉に話しかける。
「利根姉さん、寝るなら寝ても構いませんよ?私が起こしてあげますから」
「…ぅにゃ?………いや、いいのじゃ…。今は、葬式、なのだからな…。吾輩が眠って、式を台無しに、するわけには、いくまい…?―――それに、筑摩が、眠ってないのじゃ。…それなのに、吾輩が眠っては、お姉さんとしての示しが、つかないであろう…ふわぁ…」
あそこまで眠りそうなのに、妹に負けたくない一心で、プライド1つで起きているのだ。本当に、頭の下がる姉根性である。
もちろん、妹の筑摩としてはその言葉は凄く嬉しいもので、
「姉さん―――…分かりました。でも、寝たくなったら言ってくださいね?」
「――だから、眠らんと言っとるだろうに……ふわぁ……」
姉の意思を尊重することにした彼女は、妥協案を提示して、引き下がった。
まぁ、利根は意地でも寝ないつもりらしい。逆に、何処まで持つか見ものである。
そうも考えた筑摩だったが、葬式の邪魔をするわけにもいかないので、くすりと笑うだけにとどめておく。
(利根姉さんがきちんと葬式に出ようとしているのですもの。―――私も、しっかり出ておきましょうか)
そして改めて、葬式にきちんと参加することにした。
姉に護られ、姉を護るために。
最初のときよりも、まだ心は落ち着いていた。
★
8月4日、午前10時33分。
ここにも、同じように、心の落ち着いていない状態で葬式に参加している艦娘がいた。
第30駆逐艦隊所属、睦月型駆逐艦11番艦、駆逐艦・望月である。
(う~…ねみぃ、なんで、あたし、起きてるんだろ…ふわぁぁぁ…)
思わず出そうになった大あくびを噛み殺す。
彼女は睡眠不足、何よりも睡眠が大切、なのに、サイレンが鳴って叩き起こされたのである。
もちろん、不機嫌にもなる。
しかも、起こした先に待つのがこれほどまでに眠たい「他人の葬式」ときた。
彼女はそのとき、本気で「新手の虐待か…」と思ったそうな。
そんなわけで、今の彼女は、まともに話なぞ聞いちゃいなかった。
心の中で悪態をつく。
(別に、どうだっていいじゃんかよ~、葬式なんて…別にあたし、
―――神城渓吾なんて、今はじめて名前を聞いた、誰?
言外にそう言う彼女は、奇しくも筑摩と同じことを考えていた。
心に
寝る時間を邪魔された不満。
突如葬式に参加させられた不満。
それらすべての不満が、心に残って、イライラする。
心が早く寝ろ、早く寝ろ、と悪魔のささやきを連呼してくる。
だが何故か、彼女は眠れなかった。どれだけ寝ようとしても、それより早く目が覚めてしまう。
心は疲れていても、体が眠ることを拒否してくる。
これでは眠れるはずもない。
結局彼女は、寝ることを諦めた。
(―――ふわ、ぁあ………もう、いいや…寝れない…)
ぼやけた目を手でくしくしと擦り、お気に入りの赤いフレームの眼鏡をかけて、望月は前を向く。
そこでは今まさに、神城渓吾の棺に参列者が花を手向けているところ。
1つ1つ、丁寧に、彼の棺の周りに、花が置かれていく。
彼の体などないのに、花が、棺を埋め尽くす。
まるで、海に散っていったことを、花束で祝福するように。
中には号泣している艦娘もいて、涙で頬をぬらしながら、手に持った小さな花を手向ける。
ゆっくりと、しかし、思いを込めて。
たった1日だけの、叶わなかった想いも一緒に、一輪の花に込めて。
そして彼女たちは、棺の前で泣き崩れる。
本心からの、心の底から溢れ出る涙。
しかし、彼女はその涙が胡散臭くて、思わず顔を逸らした。
何故、そこまで、本心からの涙が出るのだろう。
自分に問い、そして自分で答える。
彼は、それほどまでに魅力的だったのか。
―――いいや、そんなはずはないだろう。
彼が、何をしたのだろうか。
―――そんなもの、知る由もないだろう。
彼は、どんな人だったんだろう。
―――あたしには、分かるはずないだろう。
彼と、…彼と、昨日、一緒に過ごしていたら、何かが、変わったのだろうか。
その自問に、彼女の心は、はっきりと、自答する。
―――そんなもの、過ごしてみなければ分からないだろう。
確信を持った、自分の答え。
彼が変えるのではなく、彼女が自分で変わる。
それが、自分で導き出した、答え。
そのとき彼女は、何故か、彼と8月3日の日常を過ごせなかったことを、後悔した。
★
8月4日、午前10時37分。
軽巡洋艦・天龍も、話を真面目に聞いていない艦娘の1人であった。
(―――ごめん、渓吾。でも、考えたらお前の葬式、知らない人勝手に参加させてたんだ。だからこの話は必要なんだよ、許してくれ……… By 作者)
もちろん、彼女の心が落ち着いていないのは、
ただ、それ以上にもっと大きな理由があった。
(―――ああもう…話が長ぇ…!)
そう、単純に、「話が長い」のである。
提督の話から大元帥のスピーチから何から、1つ1つの動作が緩慢で、じれったくて見ていられないのである。
元来待つのが苦手である彼女にとって、話が長いということは苦痛でしかなかった。
(…なんだよ、何でこのオレが、黙って話を聞かなきゃいけねーんだよ………)
座席を暖めるという作業が、どれほど飽きる作業であることか!
ここまで簡単ですぐに飽きる作業を、彼女は見たことがない!
…とまぁ、大概自分の飽きっぽさのせいで、天龍は行事を満喫できてない部分もあるのだろう。
余談だが、椅子にプルプル震えながら座っている天龍を見て、こっそりカメラを構えている艦娘や、あらあらと笑っている艦娘がいたようないなかったような。
(―――っていうか…神城ってヤツ、何をしたんだよ…?)
そんな天龍は、ふと考える。
何故、彼はここまで手厚く、弔われているのだろうか、と。
何か戦果を残したとは思えない…が、
(まぁ、なんかやらかしたんだろーな)
なにぶん、何かどでかいことをしそうな顔をしている。
(実際、
つまり、何か大きなことをして、鎮守府に貢献した、といった感じなのだろう。
(要は、鎮守府を救った英雄、ってとこか)
彼女はそれを、「英雄」と解釈する。
自分には到底出来そうにないことを、軽々とやってのけた者―――英雄。
それこそが彼、神城渓吾。
彼女はそう、勝手に納得して、静かに目を
(ま、あいつが何をしようと、オレには関係のないことだ。っつーわけで、遠慮なく寝かしてもらうぜ?)
そして、5秒と待たずに、寝息をたてはじめた。
同じ8月4日、午前10時38分。
それを見て、隣で、静かに笑う艦娘が1人、いた。
名を、軽巡洋艦・龍田。
(あら~、やっぱり天龍ちゃん、寝ちゃいましたか~…うふふっ♪)
彼女は姉・天龍の動作を、最初から最後まで、1つたりとて逃さず、見ていた。
葬式なんか、そっちのけである。耳から音は入ってくるが、意識はすべて姉に向いている。
理由はただ一つ、姉が心配だから。
…相当な過保護だが、それが
(お葬式、早く終わらないかしら。天龍ちゃん寝ちゃったし、そろそろ面白くなくなってきたわ~)
そんな彼女は、
目的がなくなってしまい、面白みを失くしていた。
まぁ、凄くざっくり言うと、暇になったのである。
ヒマになってしまった彼女は、ぼんやりとした目を、前に向ける。
長門さんみたく、真面目に話を聞く気にもなれず、本当に無意識に。
すると、遺影となってしまった神城渓吾の顔写真と、ばっちり目が合ってしまった。
(へぇ~…あれが、かの
そして紫の双眸を、すっと細める。
彼と会話したことは無いが、だいぶ、面倒そうな人らしい。
―――なんでも聞いたところによると、一部の艦娘の支持を一瞬でとった、とか。
恐るべき存在だ。逆に、何をしたらそんなことになるのか知りたい。
そして、あいつが姉をもし毒牙にかけたら…と想像してしまった彼女。
途端、彼女の纏うオーラが一段階黒くなる。
隣で寝ていた天龍が思わず起きてしまうほど、怖い笑顔を
(…うふ、うふふふふふふふふふっ♪もし、そんなことをしたら…絶対に、許さないから♪)
念押しするように、告げる。
甘く囁くような声で背筋も凍るようなことを言ってのける。
遺影の表情に、冷や汗が見えたのは気のせいか。
神城渓吾は、彼のあずかり知らぬところで、サラッと敵を増やしていた。
渓吾「―――え、ここで斬るのか!?」
作者「いやー、元16話を二つに大分割した結果、こうなっちゃって…」
渓吾「おおーい、終わりが不吉すぎるわ…」
作者「知らんし」
渓吾「お前が悪いんだろうが!!」
作者「次が一応、ちゃんとした元16話の真面目なほうだと思います」
渓吾「おお、そうなのか。なら、まだ良かった」
作者「それではまた、26話で!!」
渓吾「感想もどしどしどうぞー」