The 14 Days ~鎮守府合宿での14日間~【再凍結中】 作:M崎
さあ26話です!!
ここまで長かった。
それでは、どうぞ!!
8月4日、午前10時42分。
またかい、と思うかもしれないが、ここにも、話をちゃんと聞いていない艦娘たちがいた。
(―――話聞いてなさすぎだろ…みなさん、提督のお話はちゃんと聞きましょうね? By 作者)
…かの、潜水艦グループである。
「…ゴーヤちゃん、大丈夫?寝たり、しない…?」
「ゆーちゃん、大丈夫でち!寝たりとか、しないから!」
「ああそう、それなら、いいのだけれど」
「イムヤ冷たい…」
「しおいちゃんも酷いと思う…」
「はっちゃんがそれ言うの!?はっちゃんもだいぶ酷いの!」
とにかく
3人寄れば文殊の智恵というが、6人も寄らなくていいと思う。
まぁ、要はうるさいのだ。
現に彼女らは、この葬式の話を真面目に聞いている艦娘たちに、「話ノ邪魔ヲスルナ…」と、キッと睨まれている。
…その全員が涙目だから威力は半減どころか可愛さが有り余っているのだが、そこは置いておこう。
それにいち早く気づいたユーが、未だ楽しくお喋りをしている他の子たちを、慌てて注意する。
「…ねぇ、そろそろ、静かにしたほうが、いいと思うよ…」
「え?…ゆーちゃん、なんて言ったの?教えて?」
「あははははー、はっちゃんには負けないの~」
「待ちなさい、イク…!」
誰も話なぞ聞いちゃいない。ユーの懸命の注意にも、耳を貸してくれたのはイムヤのみ。
まるでというかかなり、幼稚園児の集会である。
もちろん、提督や海軍のお偉方にも楽しげな声が届いているのだが、「まぁ潜水艦なら仕方がないか」、と諦められている始末。
まさかの権力公認のお喋りなのだ。
しかも、葬式で。
現実ならば到底許されない出来事である。
(―――というか、
「ゴーヤは、こんな話、飽きたのでち」
「ゴーヤ?それは、しおい的にも、ダメだと思うよ?」
「うはははははー、やっちゃんにはまだ負けないの~!」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「イク、そろそろ静かにしなさい。あとやっちゃんも走りすぎ」
「…えと、あの、その…」
ところ構わずお構いなしに、楽しげに喋る。
彼女たちの声だけが、厳粛な葬式に華を添える。
―――まぁもちろん、それを聞いて、
「―――そろそろ静かにしてくれる?いい加減、キレそうなんだけど」
まず、意外や意外、伊勢がキレた。
戦艦らしく、ドスの効いた声で、潜水艦たちを威圧する。
それに潜水艦グループがびくり、と怯えたのを皮切りに、容赦ない文句が彼女らを攻め立てる。
「―――あの、静かにしていただけますか?
熊野が、
「―――申し訳ありませんが、今は渓吾さんのお葬式中です。お静かに願えますか?」
赤城が、
「―――もう、静かにしてよ!話が聞こえなかったじゃない!」
暁が、
彼女たちに、言葉という刃を浴びせる。
助けを求めて周りを見ても、同じような怒りの目か、無関心の目かの2つ。
自分たちの味方をしてくれそうなものは、いない。
「…あ、その…ごめんな、さい…」
徐々に、彼女たちの目に、涙が溢れてくる。
そして周りの艦娘も、にわかに騒がしくなる。
さすがにやりすぎたか、と伊勢たちが反省したそのときである。
『―――あー、あー、あー、鎮守府の諸君、聞こえるかな?俺だ。神城渓吾だ』
突然、死んだはずの神城渓吾の声が、スピーカーから鳴り響いた。
「「「―――――――へ???」」」
彼は、死んだはずなのに、何故か、声が聞こえる。
思わず後ろを振り向くが、誰もいない。
今度は前―――講堂のステージの上に全員が目を向ける。
すると、黒岩司令官がニィっと笑って、自分のスマートフォンを、マイクに近づけていた。
―――電話!?かと思われたが、どうやら違うらしい。
『…ええと、このメッセージは、8月3日、日曜日の、午後11時57分に録音されている。…うん、遺言みたいなもんだ。俺もうそろそろ死ぬし』
遺言。
そう、遺言。
彼が死ぬ2分前に託した、最期のメッセージ。
腕も、足も使えないのに、根性と
ずっと傍で聞きたかった、想い人の、もう2度と聞けない声。
それが、このメッセージ。
場が、たちまち静かになっていく。
『―――それじゃぁ、俺の、最期の言葉を言おうか。…といっても、お前らどーせ俺の葬式でケンカしてて、まともに聞いちゃくれないとは思うけどさ』
サラッと図星をついて、死ぬ2分前の彼は語りだす。
鼻声を見せず、終始哀しそうな声を、響かせて。
『…ホントのこと言うとさ。俺、鎮守府になんて、最初は行きたくなかったんだよ』
ゆっくりと語りだした彼が最初に語り始めたのは、自分の心のうちだった。
自分の、正直な、気持ち。
『ああメンドクセー、俺なんか別に行かなくてもいいじゃん、ってな』
とても、2分では言えそうに無いことを、彼は早口で言う。
『―――そしてその気持ちは、今日、鎮守府に来て、変わるかなと思ったけど、あんまり変わらなかった』
一応、気持ちは決めたが、まだ、怠惰の感情が少し残っていたのだという。
彼らしいことこの上ない。
『んで、あの時、俺が捕まったあたりから、事態はどんどんややこしい方向に転がって転がって、…もうこりごりだよ、あんな1日』
突然の召集。
突然の拘束。
突然の乱入。
突然の戦闘。
突然の夜戦。
突然の…死。
この合宿で起こった出来事は、すべてがあまりにも唐突すぎた。
常人が耐え切れるようなレベルではない、めまぐるしいスピードで、事態が回る。
本当に、もうこりごりなのだろう。
彼を慕う艦娘たちや、提督の肩が少し、落ちる。
『―――でも』
しかし彼は、それを否定する。
他ならぬ
『いつしかその面倒ごとが、楽しい、って思えてきてしまったんだなこれが…』
少し、疲れたような声だった。
なのに、哀しさは見られない、そんな声。
あれだけ騒いでいた潜水艦グループも、胸を打たれたように、今度こそ完全に押し黙ってしまう。
それほどまでの説得力が、この言葉にはあった。
『―――ま、そんなわけで、俺は、この鎮守府での1日、超楽しかったぜ?』
そして吐き出される、彼の、心からの、言葉。
苦笑と共に。
精一杯の皮肉の裏に、涙を隠して。
それがはっきりと分かるような、かなり無理をした、声だった。
黒岩司令官やそのほか海軍のお偉方が、「惜しい男を亡くした」とでもいう風に目を伏せる。
艦娘にも、その輝く両の目に、出し尽くされたと思われていた雫が、1つ2つと、出現する。
『―――とまぁ俺は、残念ながらここでお亡くなり、人生のバッドエンドを迎えてしまったわけだ』
その声に混じって、すすり泣きの音が、そこかしこから聞こえてくる。
それは10や20などという数ではない。もっと、たくさんの艦娘が、涙を流す。
「―――神城、くん…」
「渓吾さん…」
「―――渓…、吾…」
口々に、愛しいあの人の名前を呼ぶが、当然のように届きはしない。
彼はもう――――――いないのだから。
彼は少し言葉を切ると、搾り出すように、彼の本当の最期の言葉を、告げた。
涙に濡れた、掠れるような声だったが、自分の思いを、伝える。
『―――じゃーな、お前ら。最期まで、なんにもしてやれなくて、ごめんな?…死ぬなよ』
そこで音声は切れた。
後に流れるのは、とどまることの無い沈黙と、『―――このメッセージを、もう1度再生しますか?』という、機械の音声のみ。
不気味なまでの沈黙が、講堂を満たす。
まるで、嵐の前のような、静けさが。
そして、
「―――う、うわぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁん!!!」
1人の潜水艦が、声をあげて泣き始めた。
それを皮切りに、講堂が涙と泣き声で包まれる。
「…渓吾、さん…!なんで、なんで、死んだんですかっ…!!」
「榛名、榛名っ…!Sorry、私が、護ってやれなくて…!!ゴメンネ、榛名ッ…!!」
「わぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!なんで、なんで、しんじゃうんだよ゛ぉ~、クソ、渓吾ぉ!!」
「曙…」
「曙ちゃん…」
「―――神城さん…三隈をおいて、逝かないで下さい…」
「…うっ…ううっ…!神、城さん………」
「ほらほら~、熊野…大丈夫、大丈夫だよ…この鈴谷がついてるからね…」
「神城くん…もう、逝っちゃったんだなぁ…」
「渓吾さん、死なないで下さい…死んだことはウソだったって、もう一度私の前で微笑んでください…私たち一航戦からの、切実なお願いです…」
神城渓吾と、生前、会話をした人たちも。
「川内姉さんが、あんなに涙を流していらっしゃいますね…ぐすっ」
「そういう神通だって泣いてるしー…でも、那珂ちゃんもちょっと、泣けてきたかなー…」
「―――瑞鶴、今だけは、強がらずに、泣いてもいいのですよ?」
「翔鶴姉………わかった、ちょっとだけ、胸貸してもらえる?」
「…青葉…衣笠さんも、ちょっと辛くなってきたねー…はは、涙なんて、流さないって、決めてたのに…」
「うぅっ、神城渓吾…お前、なんて、男らしいヤツなんだ!俺は…俺は…!」
「木曾、大丈夫かにゃ?」
「…クマー…クマー…」
「うう…神城渓吾よ。おぬし、相当苦労しておったんじゃのう…」
「利根姉さん…そうですね」
無い人たちも、
皆が同様に涙を流す。
西暦2014年、8月4日(月)、午前10時46分。
神城渓吾の葬式は、涙のまま、進む。
『死ぬなよ』という最期の言葉を、胸に刻み込んで。
西暦2014年、8月4日、午前10時47分。
神城渓吾の葬式の、真っ只中の出来事。
鎮守府にある、「開かずの部屋」と呼ばれる、
そこは誰も近寄らない、誰も入ろうとしない、魔物が棲むといわれる部屋の前。
もう3年も、この部屋の門扉は閉ざされたままだろうか。
誰のノックに対しても
その中にいる人のことを、この鎮守府では提督と古株の艦娘以外は、誰も知らない。
「開かずの部屋」に立てこもっているのは、1人の
「―――死んだわね、神城渓吾…」
黒く長い髪をかきあげて、その艦娘は、さして興味なさげに呟く。
彼女を変えるはずの男だったのに、惜しいことをした。
彼女の心に去来したのは、ただ、それだけだった。
(…私は、また、救われる路を断たれてしまった…)
そして落胆する。
彼女は、もう、ここからは出られない。
彼女は出られない。
彼女は、二度と、出られない―――。
―――
渓吾「―――俺のあのメッセージ、役立ったんだな、一応…」
作者「今回だいぶシリアスな話だったからね…いいのかな、これで…」
渓吾「読者の皆様、今回、こんな話になってしまい、すみませんでした…」
作者「………さて、気を取り直して次回予告でも、と行きたいところなのですが、その前に1つ、読者の皆様に伝えさせていただきたいことがあります」
渓吾「…お?なんだ?まさか、なんかあったのか?」
作者「実はそのまさかだ」
渓吾「…え、それって…?」
作者「―――はい、私、M崎は、この26話を最後に、しばらく連載をお休みさせて頂きます」
渓吾「どぅおえぇぇぇえぇぇ!?まさかのお休み!?」
作者「活動報告でも言ってたんだが…お前、気づいてなかったのか…」
渓吾「うん、俺、そういうの基本見ないクチだから」
作者「お前は………!…はぁ、もういいや」
作者「次の27話の投稿は、何時になるか分かりません」
渓吾「本格的な休み体勢だな…失踪すんのか?」
作者「いやー、ちょっとね」
渓吾「ま、俺たちは逃げないから、安心して待っとけ」
作者「りょーかいっと」
作者「それでは次回予告でも!27話は26話の裏側をたっぷりお届けするようになる…はずです」
渓吾「…はず、って…」
作者「うるさい!次投稿するのがいつなんだか分かんないんだから。そのときの私の考えによる」
渓吾「まぁ、そりゃそうだろうな」
作者「それでは、またいつか、27話で!」
渓吾「感想も忘れんなよ!?絶対だぞ!?」