南蛮菓子のまほう使い【凍結】   作:simaAo.

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戦場に咲く花

食戟管理局から一本の電話が入った。内容は当然、食戟に関する事だ。そして、その実況と司会を私が起用されるという話だ。食戟の参加者は、中等部からいるミートマスターこと、水戸郁魅。影では肉魅ちゃんと呼ばれてるらしいが、本人はあまり気に入ってないらしい。食戟中にぶっこんでみても、それはそれは面白いかもしれない。もう一人の顔は知っているが、その調理は見たことがない。薙切えりなの編入試験をパスし、編入挨拶で既存生徒を踏み台と宣った男。この食戟で勝ってしまえば、目立つだろう…それも、私よりずっと。けれど、水戸さんが勝ってもそれは同じだ。彼女もそのプロポーションと整った顔立ちでファンが少なくない、男女共にだ。

 

「この食戟で実況司会をするって事は、目立っても最初だけ。仮に、印象に残るよう立ち回り方をしたとしても、薙切えりなの勢力に喧嘩を売るようなものだよね」

 

私は知っている、女子生徒からの好意が多くない事を。対して、薙切えりなの勢力図は圧倒的に女子生徒が多い。男子生徒は彼女を畏怖の対象として見ているのが多いからだろうけど。ただ、料理技術とその才覚において私は彼女には勝てる自信がない。時に、私は今現在、料理から逃げているのではないだろうかと思案する。甘やかしてくれる人がいる、けれどその甘さでは高等部を生き残れる保証がない。

 

必殺料理(スペシャリテ)を持たない料理人程、この遠月では音もなく去る事になる。このままで良いのかな…」

 

川島麗は中等部時代において、成績は平々凡々よりは少し上の人間だった。けれど、自分には料理人としての才能がないとまざまざと見せつけられた。薙切えりなーそれは、麗にとっては料理人としては至高であり、人気を争う相手としては天敵であった。そして、料理に関しては彼女には既に敵わないと心で負けている。薙切のスペシャリテを見た事はないが、彼女の作る料理に間違いはなく、精錬されたアートのような芸術品であり、誰の舌をも唸らす極上の品々であった。

 

自分の努力不足がない訳ではない、けれどそれを補い努力を重ねたとして、彼女に追いつける、超えるイメージが湧かないのだ。ふと、一人の男性を想い出す。私の為だと言って、高等部一年間で100以上の食戟を行い勝ち続けた彼を。安土柊、特別な才覚はない。けれど、彼の実家は京都でも有名な日本料亭である、育ってきた環境が違う。ただ、彼は食戟において必ず相手の得意料理で戦い、勝っている。自分は全て、デザートであるのにだ。

 

「あ、デザートというか甘いものが食べたくなっちゃった。軽く食べられて身体に良いものがいいなぁ」

 

麗はテーブルの上にあったスマートフォンを手にし、電話を掛ける。勿論、相手は安土柊である。

 

ーーーーー

ーーー

 

 

麗と待ち合わせした場所へと向う。その道で薙切えりな一派である水戸とどうやらヘイト値が高いらしい幸平の食戟が方々で話されていた。一年生の間では、どうも編入初日にこの学園を踏み台扱いした挙句、頂点は貰うと宣言したようだ。大胆不敵だねぇ、そんな事言ってしまったら周りは敵だらけになるに決まってるじゃないか。けど、性格なんだろうな。先日、会った印象的に。

 

「今日もいつもどおり、可愛いね、麗」

 

目的地に着き、目的の少女に笑い掛ける。長い黒髪にはぼさっとした所がなく、手入れが行き届いてるのが分かる。そして、幼い顔立ちだが、その表情は凛としていて気品を漂わせている。声を掛けた時に、少し口角があがり柔らかい微笑みの表情は見ていて飽きを感じさせない。あぁ、可愛いなぁもう。

 

「柊もいつもどおりね。心の中、多分だけど後半お外に出てるわよ」

 

「え?まぁ、いっか。本当の事だし」

 

麗の頬に赤みが掛かる。照れているのだろう、普段からそういったものは慣れているはずだが、直球的なものは案外弱いらしい。そこもまた、可愛い。うん、可愛い。

 

「そ、それで!今日のおやつは?」

 

「今日はさっぱり系をお望みって事で、こちらをご用意致しました。どうぞ、お姫様」

 

そう言って、用意していた料理を麗の前にサーブする。香りは南国を匂わせるが、実はアフリカのおやつデザート。『デゲ』と呼ばれるものをアレンジしたものだ。

 

〜イメージ世界〜

 

砂漠にひとりぼっちの少女がオアシスを探す、額に流れる汗は下に落ちず乾いていく。暑い、そして喉がいや身体が潤いを渇きを癒す潤いをただ、求めている!

 

そこに現れた白き宝石の様な食欲と願いを叶える料理、食べてみろ、お前の渇きを癒すだろうと語りかけてくる。我慢のする必要のない私はそれを口へと運ぶ。

 

「っは、はぁ。はふ」

 

手が口へと運ぶ事をやめない、もう止められない。美味しいという次元を超えて私に新たな渇きを与える、飲めと渇望するのだ、私の喉が胃が、心が!

 

そしてー

勢いよく、それを完食する。

理性は放たれる。

 

「あ♡あ♡ぉ、おぃしすぎるのぉおおお!!!」

 

意識明転。目の前に、料理を作った男が笑顔で私を見つめている。美味しかった、けど毎度の様に美味しすぎて腰が砕けそうになるのはちょっと恥ずかしい。

 

「ご、ごちそうさま//」

 

「うん、お粗末様でした」

 

彼の料理は不思議と怖くもある。そう、麗は思った。




料理
『デゲ』アフリカのおやつ的なデザート。
今回の食材は。
・ヨーグルト
・ホエイ
・ココナッツミルク
・豆乳
・砂糖
・クスクス
・白桃/黄桃
に、なります。
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